マーケの目

プレスリリースの書き方|例文テンプレートと記者に読まれるコツ

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最終更新:2026年10月17日

プレスリリースの書き方とは、会社の新しい事実を、記者がそのまま記事にできる順番と形に並べる技術のことです。上から順にタイトル、リード文、本文(背景・詳細・今後)、商品やサービスの概要表、会社概要、問い合わせ先を置くのが標準の構造で、全体はA4で1〜2枚に収めます。結論から言えば、リリースは会社が言いたいことを伝える告知文ではなく、記者が記事を書くための素材です。この記事では、標準構造の一覧表、タイトルの型5つとメディアフック7つ、架空の新商品の例文、記者に嫌われるNG集、表示のルールまで、記者がどう読むかという視点で書いていきます。

プレスリリースの書き方とは?標準構造と各部の役割の一覧

プレスリリースは、上から読むほど情報が細かくなる逆三角形の構造で書きます。記者は上から順に読み、途中で「記事にならない」と判断したらそこで読むのをやめるので、大事なものから先に置くのが基本です。

部位 目安 役割
タイトル 30字前後・長くても40字 記者が数秒で「記事になるか」を判断する場所。何が新しいのかまで入れる
サブタイトル(任意) 40字以内 タイトルで削った数字や固有名詞を補う
リード文 200〜300字 いつ・誰が・何を・どこで・なぜ・どのように、を全部入れる。ここだけで記事の1段落目が書ける状態にする
本文①背景 300字前後 なぜいま発表するのか。社会の動きや統計と結びつけると、会社の宣伝が社会の話題に変わる
本文②詳細 400〜600字 中身・仕組み・使い方・価格。特徴は3つに絞り、箇条書きや表を使う
本文③今後の展開 150字前後 展望や目標。記者が続報を書くときの手がかりになる
キーパーソンのコメント(任意) 100〜200字 記者がカギカッコでそのまま引用できる素材。想いより判断の理由を語る
商品・サービス概要表 表形式 名称・価格・発売日・URL・仕様を一覧にして、記事への転記ミスを防ぐ
会社概要 100字前後 社名・所在地・代表者・事業内容・URL。毎回同じ文でよい
本件に関する問い合わせ先 担当者名・メール・電話 ここがないと取材の連絡が来ない

表の中でいちばん手を抜かれやすいのはリード文です。記者は忙しく、毎日届く大量のリリースを全部は読めません。リードだけで「誰が、何を、いつから、なぜ」が分かれば、本文は確認のために読まれます。リードで分からなければ、本文まで届きません。全体の字数は1,000〜2,000字が目安で、写真はメイン1枚とサブ2枚ほどをキャプション付きで添えます。

もう一つの見方として、リリースの各部は記者の質問への先回りの答えになっています。「何が新しいの?」にタイトル、「要するに?」にリード、「なぜいま?」に背景、「いくらで、どこで?」に概要表、「誰に聞けばいい?」に問い合わせ先が答えます。この質問に一つでも答えが欠けると、記者は電話で確かめるより、次のリリースを開くほうを選びます。

タイトルの書き方──型5つとメディアフック7

タイトルの書き方は、記者が記事にする理由(メディアフック)を一つ決めてから、その理由がいちばん伝わる型を選ぶ順番で考えます。型から先に選ぶと、中身と見出しがずれます。

タイトルの型 形 例(架空) 気をつけること
数字型 具体的な数字を主役にする 導入施設が300か所を突破 数字は具体的なほど強い。数え方と時点を本文に書く
日本初・業界初型 「初」を主役にする 日本初、手話で注文できる無人カフェ 根拠を必ず用意する。自社調べなら調べ方を明記する
困りごと解決型 相手の困りごとをタイトルに入れる 夜勤明けでも予約できる歯科の新サービス 誰の困りごとかを具体的にする
時流接続型 季節や報道テーマに乗せる 防災の日を前に、通勤かばんに入るヘルメットを発売 時流と中身のつながりが薄いと便乗に見える
意外性型 常識とのギャップを見せる 老舗の和菓子店が、あえて甘さを半分にした羊羹 乱用すると釣りになる。中身の裏づけが必要

型の前に決めるメディアフックは、次の7つです。①新規性(初・最速・最大)、②時事性・季節性(いま書く理由)、③社会性(社会の問題とのつながり)、④意外性(常識とのギャップ)、⑤地域性(地元の話題)、⑥人間性(開発の背景や人の物語)、⑦データ(独自の調査や統計)。リリース1本につき、主フック1つと補助フック1つに絞るのが原則です。全部盛りにすると、全部が弱くなります。

フックによって、届けるべきメディアも変わります。データが主役なら経済や業界のメディア、地域性なら地方紙やローカル局、人間性なら情報番組やインタビュー記事を載せるWebメディアが拾いやすい。タイトルは、届けたい記者の机の上で目に留まる言葉で書くものです。

タイトルを一文にまとめる作業は、キャンペーン全体の芯を決める作業とよく似ています。1本のリリースで伝えることを一つに絞る考え方はキーメッセージとは?作り方3ステップと例で、言葉の型の考え方はキャッチコピーの作り方とコツ|型5つと手順で書きました。ただ、リリースのタイトルはコピーほど飾りません。記者が自分の記事の見出しに使えるくらい、事実寄りに書きます。

プレスリリースの例文──架空の新商品で1本書く(テンプレート付き)

例文は、架空の会社が架空の新商品を発表する想定で1本書きます。メディアフックは「時事性・季節性(防災の日)」を主に、「人間性(通勤中の被災という困りごと)」を補助に置きました。会社名・数字・日付はすべて架空です。

部位 例文(架空) 書き方のポイント
タイトル 防災の日を前に、通勤かばんに入る厚さ3cmの折りたたみヘルメットを9月1日に発売 時流(防災の日)・新しさ(厚さ3cm)・日付を一文に入れる
サブタイトル 重さ約400g、A4書類と同じ幅。通勤中の被災に備える「持ち歩く防災」を提案 タイトルで削った数字を補う
リード文 防災用品を企画・販売する株式会社〇〇(本社:東京都、代表取締役:〇〇)は、通勤かばんに入れて持ち歩ける折りたたみ式ヘルメット「〇〇」を、2026年9月1日から自社サイトと全国の雑貨店〇店で発売します。たたむと厚さ3cmになり、毎日持ち歩けるため、自宅や職場の外で被災したときにも頭を守れます。 社名は事業の説明つきで初出させる。5W1Hをここで全部言う
本文①背景 大きな地震は、通勤や外出の途中に起きることもあります。でも、ヘルメットは自宅や職場に置いてあることが多く、移動中には手元にありません。 実際のリリースでは、ここに公的な統計を1つ入れて出典を書く
本文②詳細 特徴は3つです。1. たたむと厚さ3cm・A4幅で、かばんの書類の隣に入る 2. 〇〇の規格に合格 3. 片手で10秒あれば広げられる 特徴は3つまで。規格や数字には根拠を用意する
本文③今後 今後は子ども向けのサイズを開発し、2027年春の発売を予定しています。 続報の種を置く
コメント 「防災用品は、しまってあるほど使われません。毎日持ち歩けることを、性能と同じくらい大事に考えて設計しました」(代表取締役 〇〇) 想いではなく、設計の判断の理由を語る
概要表・会社概要・問い合わせ先 商品名/価格/発売日/販売場所/URL、会社概要、広報担当者名・メール・電話 本文と日付や価格が食い違っていないかを最後に確かめる

この例文をテンプレートとして使うなら、表の右の列を上から順に埋めていけば骨組みはできます。ただ、埋める前に一つだけ自分に聞いてほしい問いがあります。「So What?(だから何)」です。いつ・誰が・何を、が全部そろっていても、読者の暮らしや仕事の何が変わるのかを一行で言えないリリースは、記事になりません。例文で言えば「ヘルメットが自宅にない時間の被災に備えられる」がその一行にあたります。

実務でどう使うか──記者の読み方から逆算するコツとNG集

プレスリリースのコツは、書き上げたあとに自分が記者になったつもりで読み直し、「このまま記事を書けるか」で判定することです。会社の側から見て伝えたいことが全部入っているかではなく、記者の側から見て記事に必要なものがそろっているかで見直します。

広告会社にいた頃、PRと連動するキャンペーンの企画を見ていて感じていたのは、うまくいく企画は広告の表現を考える前に「これは何のニュースになるのか」が決まっていることでした。広告は枠を買えば必ず出ます。でも、リリースは記者が書くと決めない限り、一行も世に出ません。だから、書く側の熱量より、読む側の判断の材料が足りているかが勝負になります。

記者に読まれなくなる書き方には、決まった型があります。

NGな書き方 なぜ嫌われるか 直し方
「画期的」「革新的」「圧倒的」「こだわりの」 根拠のない自己評価は、記者が記事に書けない言葉 事実と数字に置き換える。どう画期的なのかを一つ示す
社内用語や業界の略語を説明なしで使う 記者が意味を調べる手間が増え、読まれなくなる 中学生が読んでも分かる言葉に開く
リード文に想いを書く リードは記事の1段落目の素材。想いは記事にならない 想いはコメント欄へ。リードは事実だけにする
「〜させていただきます」の連発 過剰な敬語は情報を薄め、読む速度を落とす 「〜します」「〜を発売します」で言い切る
発表と関係のない自社の宣伝を混ぜる 何のニュースなのかがぼやける 1本のリリースには1つの発表だけ書く
タイトルと本文で日付や価格が食い違う 実務でいちばん多いミス。記者は誤報を何より嫌う 配信前に数字・日付・曜日を全部照らし合わせる
問い合わせ先がない、代表番号だけ 書きたくても確認が取れない 広報担当者の名前・メール・電話を必ず載せる

この中でも、最初の行の「根拠のない自己評価」はとくに起きやすいと思います。書いている側は自社の商品を本当に良いと思っているので、形容詞が勝手に増えていく。でも、記者が欲しいのは評価ではなく、評価を自分で下せるだけの事実です。言葉の根拠の考え方はRTB(Reason to Believe)とは?意味と種類、例に書きましたが、リリースでも同じで、根拠より大きい言葉はかえって疑われます。

最後に、配信前のチェックを記者の目線で並べておきます。タイトルだけで記事の見出しが書けるか。リードだけで記事の1段落目が書けるか。「So What?」に一行で答えられるか。数字・固有名詞・日付(とくに西暦と曜日)に誤りはないか。「初」「No.1」に根拠の注記があるか(No.1表示のルール)。写真・概要表・問い合わせ先はそろっているか。この6つに全部「はい」と言えたら、配信してよい状態です。

日本市場・2026年時点での注意点──配信のタイミングと表示のルール

2026年の日本でプレスリリースを出すときに気をつけたいのは、配信の手段が増えて誰でも出せるようになった分、中身の確かさと表示のルールで差がつくようになったことです。出すこと自体は簡単になりましたが、載ることは簡単になっていません。

配信の手段としては、記者に個別に送るほかに、配信サービスを使う方法が一般的になっています。たとえば国内の配信サービスのPR TIMESは、従量課金プランを1件3万円(税抜)としています(PR TIMESの料金プランのページで確認、2026年10月17日時点)。個人事業主や小さな会社でも手が届く金額ですが、配信サービスに載せることと、記者が記事にすることは別の話です。配信サービスは届ける手段であって、載せてくれる仕組みではありません。関係づくりはメディアリレーションのやり方に書きました。

配信のタイミングは、平日の午前、なかでも10〜11時ごろを基本にし、金曜の午後や連休の前は避けるのがぼくの型です。これは実務の経験則で、出典のある統計ではありません。季節の話題に乗せるなら当日の朝に出し、発売日や解禁日はタイトルの上に明記します。商品の同梱やタイアップを絡めるなら3か月前から、原稿は配信の1〜1.5か月前には固めておくと、記者が企画に組み込む時間を取れます。

表示のルールで外せないのは「日本初」「No.1」の扱いです。消費者庁は2024年9月26日に「No.1表示に関する実態調査報告書」を公表し、根拠が十分とはいえないNo.1表示が存在することを指摘しました。報告書は消費者庁の実態調査のページから読めます。リリースの言葉は、記事や自社サイトや広告にそのまま転用されることが多いので、タイトルに「初」や「No.1」を入れるなら、調べ方・対象・時点を本文に書けるものだけにしておくのが安全です。この記事は一般的な解説で、個別の表示が問題になるかどうかの判断は、消費者庁の相談窓口や弁護士に確かめるのが確実です。

生成AIで下書きを作るときも注意が要ります。AIは「画期的」「業界をリードする」のような根拠のない形容詞を足しがちで、数字や日付をもっともらしく作ってしまうこともあります。AIに書かせた原稿ほど、NG集とチェックの6項目を人の目で通してから配信したほうがいいと思っています。

プレスリリースの書き方に関するよくある質問

プレスリリースとは何ですか?ニュースリリースとの違いはありますか?

プレスリリースとは、会社や団体が新商品・新サービス・調査結果・人事などの新しい事実を、報道機関に向けて文書で発表するものです。ニュースリリースも同じものを指す言い方で、実務ではほぼ区別せずに使われています。読み手が記者であることを前提に、記事にしやすい構造で書く点が、広告や自社サイトのお知らせとの違いです。

プレスリリースを書くコツは何ですか?

記者が記事にする理由(メディアフック)を一つ決めてから書き始めることです。新規性・時事性・社会性・意外性・地域性・人間性・データの7つのうち、主フック1つと補助フック1つに絞ると、タイトルとリードがぶれません。書き終えたら、リードだけで記事の1段落目が書けるかを確かめます。

プレスリリースの文字数はどれくらいが目安ですか?

タイトルは30字前後で長くても40字、リード文は200〜300字、全体で1,000〜2,000字、A4で1〜2枚が目安です。長いほど丁寧に見えますが、記者は全部を読む時間を持っていません。足りない情報は概要表と問い合わせ先で補い、本文は短く保つほうが読まれます。

個人事業主や小さな会社でもプレスリリースは出せますか?

出せます。配信サービスを使えば1本から配信でき、記者に直接送ることもできます。会社の規模より、地域性や人間性のように小さな会社ほど立てやすいフックがあるかどうかが、記事になるかを左右します。大企業と同じ新規性で勝負するより、その地域やその人にしかない話を主フックにするほうが届きやすいと思います。

おわりに──リリースは、記者に渡す素材

リリースを書いていると、伝えたいことがどんどん増えていきます。商品のこだわりも、開発の苦労も、会社の想いも、全部入れたくなる。でも、それを全部読んで記事を書いてくれる記者はいません。記者が欲しいのは、自分の読者に向けて記事を書くための材料です。

言いたいことを書いたリリースは、読まれて終わる。書きたくなる理由を渡したリリースだけが、記事になる。

プレスリリースとは、会社の告知文ではなく、記者が記事を書くための素材だと思っています。次にリリースを書くときは、最初に「これは何のニュースか」を一行で書いてから始めてほしいと思います。その一行が書けないうちは、まだ書き始める時期ではないのかもしれません。

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