マーケの目

キャッチコピーの作り方とコツ|型5つと手順を名コピーの例で解説

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最終更新:2026年10月17日

キャッチコピーの作り方とは、「誰に、何を一番に約束するか」を先に決め、たくさん書いた案の中から、捨てる基準で一本に絞っていく手順のことです。この記事で扱うのは、商品やサービス、仕事の企画で使うキャッチコピーです。学校の宿題や自己紹介のキャッチフレーズは主な対象にしていません(考え方は応用できるので、よくある質問で触れます)。結論から言えば、キャッチコピーは書く作業ではなく、捨てる作業です。いい一本はひらめきから生まれるのではなく、ほかの案を捨てる理由が言えたときに残ります。型5つの一覧と名コピーの例、作る手順、2026年の注意点まで順に書いていきます。

キャッチコピーの型5つ一覧──ベネフィット・問いかけ・数字・対比・呼びかけ

キャッチコピーの型は、一番前に何を出すかで5つに分けると使いやすくなります。便益を出すのか、問いを出すのか、数字を出すのか、差を出すのか、読み手その人を呼ぶのか。この5つを持っておくと、書いている途中で手が止まったときに、別の入口から書き直せます。

型ごとに、名コピーとして知られている一本を例に挙げました。

型 一番前に出すもの 名コピーの例(広告主・年) 向いている場面 失敗しやすい形
ベネフィット提示 生活者が受け取るもの 「10秒チャージ、2時間キープ。」(森永製菓 ウイダーinゼリー・1999年) 機能の違いがはっきりある商品 特徴を並べただけの「高性能」「多機能」
問いかけ 読み手の中にある空白や迷い 「恋を何年、休んでますか。」(伊勢丹・1989年) まだ自覚されていない欲しさを起こしたいとき 「いいえ」で会話が終わる問い
数字 量・時間・強さの手触り 「君のひとみは10000ボルト」(資生堂・1978年) 違いや効き目を一瞬で伝えたいとき 根拠のない数字、比べる相手のない数字
対比 古い基準と新しい基準の差 「モノより思い出。」(日産自動車 セレナ・1999年) 選ぶ基準ごと変えたいとき 競合をけなすだけの比較
ターゲット呼びかけ 読み手が誰なのか 「死ぬのが恐いから 飼わないなんて 言わないで欲しい。」(日本ペットフード・2004年) 特定の人に「自分のことだ」と思わせたいとき 「30代女性のあなたへ」のような属性だけの呼びかけ

ウイダーinゼリーの一本は、二つの時間を並べるだけで、何がどれだけ得られるのかを言い切っています。伊勢丹の一本には商品が出てきません。問われた人が、自分の暮らしに空いている場所に気づくところで仕事を終えています。資生堂の一本は、目の印象という測れないものに単位を与えました。数字は根拠を示すだけでなく、感覚を翻訳する道具にもなります。

日産の一本は、車というモノの広告でありながら、モノを下に置いています。比べる軸そのものを取り替えると、対比は競合の悪口ではなく、新しい選び方の提案になります。日本ペットフードの一本は、ペットを飼わない理由を口にしている人だけに向けて、その人の言葉を借りて語りかけています。呼びかけの強さは、属性の細かさではなく、相手の言い分をどれだけ正確に言い当てたかで決まります。

実際のコピーには、たいてい複数の型が重なっています。ウイダーinゼリーはベネフィット提示であり、数字の型でもあります。ここでは、その一本でいちばん効いている型で分けました。型は分類のためではなく、書けなくなったときに入口を替えるための道具だと考えると使いやすいと思います。

キャッチコピーの出どころ──和製英語と、型に原典がない事情

キャッチコピーは和製英語で、英語の広告用語では、広告の見出しにあたるコピーはheadline(ヘッドライン)と呼ばれます。上の5つの型にも、特定の提唱者がいる原典はありません。

型の分け方は、解説する人によって違います。広告の現場や指南書の中で、書き手が自分の経験を整理するために作ってきた分類で、5つで分ける人もいれば、10を超える型を挙げる人もいます。この記事の5つは、ぼくが実務で書き直しの入口として使っている分け方です。どれが正しい分類かを決めるより、自分が書けなくなったときに使える分け方を一つ持っておくほうが役に立ちます。

体系立てて学びたい人には、コピーライターの谷山雅計さんの「広告コピーってこう書くんだ!読本」(宣伝会議・2007年)があります。谷山さんは、新潮文庫の「Yonda?」や資生堂TSUBAKIの「日本の女性は、美しい。」を手がけた人で、型より先に「なんかいいよね」を禁止する考え方の本です。もう一冊、仕事で使うキャッチコピーに絞った入門書としては、川上徹也さんの「キャッチコピー力の基本」(日本実業出版社)が手に取りやすいと思います。

型のもっと手前、人がなぜ反応するのかという心理の側から考えたいときは、シュガーマンの30の法則とは?心理トリガーの要約と実務での使い方が参考になります。型は形で、心理トリガーはその形に込める中身です。

キャッチコピーとボディコピー・タグラインの違い──受け持つ壁で分ける

キャッチコピーが受け持つのは、読み手が通り過ぎようとする最初の一瞬だけです。広告や文章の部品は、それぞれ越えるべき壁が違うので、キャッチコピーに全部を背負わせないことが、いいコピーを書くための前提になります。

部品 受け持つ壁 そのときの読み手 一番の仕事
キャッチコピー 読まない 通り過ぎようとしている 足を止めさせ、続きを読ませる
ボディコピー 信じない 興味はあるが、疑っている 根拠を示し、納得してもらう
行動の呼びかけ 行動しない 納得したが、まだ動かない 次の一歩を小さく示す
タグライン 覚えていない 別の日、別の場面にいる 名前と一緒に思い出してもらう

上の3行は、読み手の前に立ちはだかる「読まない・信じない・行動しない」の壁に対応しています。壁ごとの越え方は3つのNOTとは?読まない・信じない・行動しないを越えるコピー術で詳しく書きました。キャッチコピーで信じさせようとして根拠を詰め込むと、長くなって最初の壁を越えられません。信じてもらう仕事はボディコピーに任せていい、と割り切るだけで、一行はかなり軽くなります。ボディコピーに置く根拠の選び方はRTB(Reason to Believe)とは?意味と種類、例で種類ごとに整理しています。

キャッチコピーのあとに続く本文を、どの順番で組み立てるかはQUESTフォーミュラとは?セールスコピーの型を例文つきで解説が使えます。キャンペーンが替わっても長く使い続ける一行との違いは、タグラインとは?キャッチコピーとの違いと例、作り方にまとめています。

実務でどう作るか──誰に、一番の便益、20案、捨てる基準

キャッチコピーを作る手順は4つで、時間をかけるべきなのは書いている途中ではなく、書く前の2つと、書いたあとの1つです。書く作業そのものは、手順の中でいちばん機械的に進めていい部分です。

  1. 誰に:一人の場面まで決める。「30代の働く女性」で止めず、「平日の朝、7時半に家を出るまでに朝食を食べる時間がない人」のように、その人がどこで何に困っているかまで書きます
  2. 一番の便益:一つだけ選ぶ。商品の特徴を、相手が受け取るものに裏返してから一つに絞ります。言いたいことが三つあるなら、残りの二つはボディコピーに回します
  3. 20案:型を替えながら書く。表の5つの型で4案ずつ書くと、20案になります。同じ型で20案書くと、似た案が並ぶだけで比べられません
  4. 捨てる基準:下の表で一本に絞る。いい案を探すのではなく、捨てる理由がある案から消していきます

手順の2で、特徴を便益に裏返すやり方はベネフィットとメリットの違いとは?特徴・利点・便益のFAB一覧表で整理しています。ここで便益が一つに決まっていないと、手順の3で書く20案は全部、少しずつ違うことを言う案になり、手順の4で比べようがなくなります。キャンペーン全体で信じてほしいことを一つに決める考え方はキーメッセージとは?作り方3ステップと例で書きました。

手順の4で使う捨てる基準は、次の5つです。例は架空のコードレス掃除機のコピー案です。

捨てる基準 確かめる問い 捨てる案の例(架空)
主語が商品になっている 主語を生活者に替えても意味が通るか 「業界最高水準の吸引力」
競合でも言える 社名を競合に替えても成り立たないか 「暮らしに、もっと快適を」
二つ以上言っている 読点で二つの主張に割れないか 「パワフルで、静かで、軽い」
一息で読めない 声に出して、途中で息継ぎが要らないか 説明文のように長い一行
事実で支えられない 根拠を一つ、すぐに挙げられるか 「誰でも、どんな部屋でも、一瞬でピカピカ」

広告の現場では、一本のコピーのために何十もの案を書くことが珍しくありません。ただ、数を書くこと自体に意味があるわけではなく、意味があるのは、並べたときに「なぜこれではないのか」を言える状態になることです。ぼくは20案を目安にしています。20案あると、型どうしを比べられるようになり、捨てる理由が言葉になるからです。5案では、どれも捨てがたく見えてしまいます。

捨てる基準を通って最後に2〜3案が残ったら、そこから先は会議ではなく、生活者の反応で決めるのが確実です。バナーや広告文なら、残った案を同じ条件で出し比べることができます。比べ方の手順はABテストとは?やり方の手順と有意差の考え方に書きました。

2026年時点でのキャッチコピーの注意点──AIと景品表示法

2026年のキャッチコピーづくりで変わったのは、案を出すコストがほぼゼロになったことです。生成AIに商品の情報を渡せば、20案でも100案でも数秒で並びます。そのぶん、作り手の仕事は書くことから、捨てる基準を持つことへと移っています。

AIが出す案は、表の「捨てる基準」に引っかかるものがかなり多く含まれます。主語が商品のまま、競合でも言える、二つ以上を言っている。AIは渡された情報を全部使おうとするので、便益を一つに絞る判断はしてくれません。手順の1と2を人が決めてから案を出させ、手順の4を人が行う。この役割分担なら、AIは20案を書く手間を肩代わりしてくれる、かなり頼れる道具になります。

もう一つは、表現の規制です。景品表示法は、商品の品質などを実際より著しく優良だと示す表示を、優良誤認表示として禁じています。消費者庁の優良誤認表示の解説によれば、消費者庁は表示の裏づけとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めることができ、出せなければ不当表示とみなされます。「必ず」「誰でも」「No.1」のような強い言葉ほど、根拠の資料が手元にあるかを先に確かめる必要があります。捨てる基準の5番目「事実で支えられない」は、表現の良し悪しの前に、法律の線でもあります。

2023年10月1日からは、広告であることを隠した表示、いわゆるステルスマーケティングも景品表示法の不当表示に加わりました(消費者庁のステルスマーケティング規制のページ)。インフルエンサーの投稿や口コミ風の文面にキャッチコピーを渡すときは、広告であることが分かる形になっているかまで見ておくと安心です。

キャッチコピーの作り方に関するよくある質問

キャッチコピーを作るコツは何ですか?

書き始める前に、誰に向けるかを一人の場面まで決め、伝える便益を一つに絞ることです。そのうえで型を替えながら20案ほど書き、主語が商品になっていないか、競合でも言えないか、といった捨てる基準で絞ります。いい案を探すより、捨てる理由のある案から消していくほうが早く一本にたどり着けます。

キャッチコピーの作り方を学べる本はありますか?

コピーライターの考え方を知るなら、谷山雅計さんの「広告コピーってこう書くんだ!読本」(宣伝会議・2007年)が定番です。仕事で使うキャッチコピーに絞った入門書としては、川上徹也さんの「キャッチコピー力の基本」(日本実業出版社)があります。本で型を知ったら、自分の商品で20案書いてみるのが一番の練習になります。

自己紹介のキャッチコピーにも同じ作り方は使えますか?

使えます。「誰に」を、自己紹介を聞く相手に置き換え、自分が相手に一番役立てることを一つに絞れば、同じ手順で作れます。ただ、仕事の自己紹介では、目を引くことより、何をしている人かがすぐ分かることのほうが大切です。面白さより分かりやすさを優先して捨てる基準を当てると、外しにくくなります。

キャッチコピーは何案くらい書けばいいですか?

決まった数はありませんが、この記事では20案を目安にしています。5つの型で4案ずつ書くと、型どうしを比べられるようになり、捨てる理由が言葉にできるからです。数が少ないとどれも捨てがたく見え、多すぎると比べる作業が回らなくなります。

おわりに──キャッチコピーは、書いた一本ではなく、捨てた十九本でできている

完成したキャッチコピーを見ると、つい、才能のある誰かが一筆で書き上げたように感じます。でも、広告に載った一行の後ろには、たいてい、載らなかった何十本もの案があります。表に出るのは一本だけで、捨てられた案は誰の目にも触れません。

だから、コピーがうまく書けないと感じたとき、足りないのは書く力ではないことが多いと思います。誰に向けるかが二人いる、言いたいことが三つある。捨てる判断が済んでいないまま、一行に全部を背負わせようとしている。

キャッチコピーは、書いた一本ではなく、捨てた十九本でできている。

次にコピーを書くときは、いい一本を探す前に、20案を並べて、捨てる理由を一つずつ言ってみてほしいと思います。最後に理由が言えなかった一本が、たぶん、あなたのキャッチコピーです。

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