マーケの目

KPIとKGIの違いとは?KAI・OKRも含めて1枚の比較表でわかりやすく解説

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最終更新:2026年10月6日

KGIとKPIの違いは、測っているものの位置にあります。KGI(重要目標達成指標)は最終的に着きたいゴールを測る指標で、KPI(重要業績評価指標)はそのゴールに向かう途中の工程が順調かを測る指標です。そこにKAI(重要行動指標)を足すと「何をどれだけやったか」という行動量の物差しになり、OKRは「どこまで大きく伸ばすか」を決める目標の立て方になります。一言でまとめるなら、KGIは「着く場所」、KPIは「進み具合」、KAIは「歩いた歩数」、OKRは「跳ぶ高さ」です。以下では4つの違いを1枚の表で整理し、KGIからKPIツリーを作る手順と、マーケティングの現場でKPIが数字遊びになってしまう失敗の流れまで書いていきます。

KGI・KPI・KAI・OKRの違いとは?1枚の比較表

KGI・KPI・KAI・OKRは、どれも目標を数字で扱うための言葉ですが、答えている問いが違います。KGIは「最後にどうなっていたいか」、KPIは「そこへ向かう工程は順調か」、KAIは「そのために何をどれだけやったか」、OKRは「どこまで挑戦するか」に答えます。

指標 正式名称と日本語 答える問い マーケでの例 達成の前提
KGI Key Goal Indicator(重要目標達成指標) 最後にどうなっていたいか 年間売上、新規顧客数 100%の達成をめざす
KPI Key Performance Indicator(重要業績評価指標) ゴールへ向かう工程は順調か サイト訪問数、購入率、客単価 計画どおりの達成が前提
KAI Key Action Indicator(重要行動指標) そのために何をどれだけやったか 記事の公開本数、広告の入稿本数、商談の件数 やれば必ず達成できる
OKR Objectives and Key Results(目標と主要な成果) どこまで大きく伸ばすか 「迷っている人が最初に思い出すブランドになる」+測れる成果 挑戦的なものは6〜7割で成功

KGI・KPI・KAIは上から下へつながる親子関係で、KAIを積むとKPIが動き、KPIが動くとKGIに近づく、という因果の鎖でできています。OKRだけは少し性格が違って、この鎖の外側から「今期はどこを大きく伸ばすか」を決める役割を持っています。

もう一つ、KSF(Key Success Factor=重要成功要因)という言葉も一緒に出てきます。KSFは指標ではなく「何が勝負を分けるのか」という見立てのことです。KGIを決めたあと、KSFを言葉にしてからKPIを選ぶと、測る数字に理由がつきます。

KPI・KGI・KAIはどこから来た言葉か

KPIの考え方には、一人の提唱者がいるわけではありません。源流としてよく挙げられるのは、ピーター・ドラッカーが1954年の著書「現代の経営」(ダイヤモンド社)で示した目標管理と、ロバート・キャプラン(Robert Kaplan)とデビッド・ノートン(David Norton)が1992年にハーバード・ビジネス・レビューで発表したバランスト・スコアカードです。

バランスト・スコアカードは、会社の業績を財務の数字だけで見ずに、「財務」「顧客」「業務プロセス」「学習と成長」という4つの視点で測ろうとした枠組みです。売上や利益はあとから出てくる結果なので、それだけを見ていると手を打つのが遅れる。だから、その手前で動く数字も一緒に見ておこう、という発想でした。KPIを「結果の手前で動く数字」として扱う考え方は、ここでかなり整理されたと言えます。

ただ、KGIとKAIの出どころははっきりしません。KPIは英語圏でも広く使われる言葉ですが、KGIとKAIは英語の文献ではあまり見かけず、日本の実務やビジネス書のなかで広まった呼び方です。ぼくが確認した範囲では、誰が最初に使ったのかを裏づける資料にはたどりつけませんでした。英語圏ではKGIにあたるものを単に「ゴール」や「アウトカム」と呼び、KAIにあたるものは「アクティビティ指標」と呼ぶことが多いようです。

OKRは出どころが比較的はっきりしていて、インテルのアンディ・グローブが1970年代に社内で運用し、ジョン・ドーアが1999年にGoogleへ持ち込んだ目標管理の方法です。ドーアの著書「Measure What Matters」(日本語版は日本経済新聞出版社・2018年)に詳しくまとまっています。

KGIからKPIツリーを作る手順

KPIツリーは、KGIを掛け算と足し算に分解していき、いちばん下に「人が直接動かせる行動」が来るまで枝分かれさせた図です。上から順に分けるのがコツで、測りやすい数字を下から積み上げると、KGIとつながらない枝が混ざります。

手順は次の5つです。

  • KGIを一つだけ決める。「売上」と「認知」のように性格の違うゴールを同じツリーに入れない
  • KGIを掛け算に分ける。ECなら「売上=購入件数×客単価」のように、抜け漏れのない式にする
  • その下の段も、掛け算か足し算で分ける。「購入件数=訪問数×購入率」「訪問数=検索からの訪問+SNSからの訪問+広告からの訪問」
  • いちばん下の段に、担当者が自分の手で増やせる行動(KAI)を置く
  • 枝のなかから、いちばん伸びしろがあってKGIへの効きが大きいものを、今期のKPIとして数本に絞って選ぶ

架空の数字で例を置いてみます。以下はすべて説明のための例で、実在の会社の数字ではありません。

階層 指標 数字(例) 分け方
KGI 月の売上 300万円 購入件数×客単価
KPI(1段目) 購入件数 300件 訪問数×購入率
KPI(1段目) 客単価 1万円 1回あたりの購入点数×商品単価
KPI(2段目) 訪問数 3万 検索1.8万+SNS0.6万+広告0.6万
KPI(2段目) 購入率 1% カート投入率×購入完了率
KAI 記事の公開本数・SNSの投稿本数・広告の入稿本数 チームで決める 担当者が直接動かせる行動

この例で、売上を330万円に伸ばしたいとします。訪問数を1割増やす道もあれば、購入率を1%から1.1%に上げる道もある。ツリーにしておくと、「どの枝を動かすのが一番安いか」を会議で比べられるようになります。KPIを選ぶとは、数字を並べることではなく、この比較のうえで枝を選ぶことです。

ブランドの仕事のように、KGIが売上だけでは表しきれない場合もあります。そのときは、市場全体の広告量のうち自社が占める割合のような、競合との相対で見る指標をKPIに入れるやり方もあります。詳しくはシェア・オブ・ボイス(SOV)とは?意味・計算式・実務での使い方で書いています。

マーケの現場でKPIが「数字遊び」になる失敗の手順

KPIが数字遊びになるのは、KPIが達成されているのにKGIが動かない状態が続いたときです。そこに至る道筋はだいたい決まっていて、測りやすい数字を選び、数を増やし、評価に結びつけ、見直さない、という順番で進みます。

ぼくは博報堂で13年、アクセンチュアで5年、そのあと独立してからも、広告やマーケティングの報告の場にずっと立ち会ってきました。そこで何度も見たのは、レポートの指標が増えるほど、会議で「で、売上はどうなったの?」という質問が出にくくなる光景です。数字はたくさんあるのに、どれがKGIにつながっているのかを誰も説明できない。その状態に至る流れを、手順として書き出してみます。

  • 手順1:KGIから分解せず、ツールですぐに出せる数字をKPIにする。表示回数、クリック率、フォロワー数のように、取りやすい数字から決まっていく
  • 手順2:KPIが増えていく。会議のたびに「これも見ておこう」が足され、何を優先するのかが分からなくなる
  • 手順3:KPIを担当者の評価に結びつける。すると、KPIを上げること自体が仕事になる
  • 手順4:KPIだけが上がる。クリック率を上げるために中身と合わない強い言葉を使えば、クリック率は上がっても購入率は下がる
  • 手順5:KGIが動かないのに、KPIは達成しているので誰も見直さない

この流れには名前がついています。イギリスの経済学者チャールズ・グッドハートが1975年に金融政策の文脈で指摘し、のちに人類学者マリリン・ストラザーンが「指標が目標になると、その指標はよい指標ではなくなる」と一般化した、グッドハートの法則です。もう一つ、起業家のエリック・リースは著書「リーン・スタートアップ」(2011年・日本語版は日経BP社)で、見栄えはいいけれど意思決定に使えない数字を「バニティ指標(虚栄の指標)」と呼びました。累計の登録者数やページビューのように、何をしても右肩上がりに見える数字がその典型です。

KPIの選び方には、もう一つ落とし穴があります。リピート率のようなロイヤルティの数字をKPIにすると、既存の顧客を囲い込むことが成長の近道に見えてしまいます。でもブランドの成長を研究したアレンバーグ=バス研究所の知見では、ブランドが伸びるときに大きく動くのは顧客の数のほうで、ロイヤルティは顧客の数にほぼ連動して動くとされています。詳しくはダブルジョパディの法則とは?意味とロイヤルティ神話への示唆で書きましたが、KPIに何を置くかで、チームが向かう方向そのものが変わります。顧客一人が取引の期間を通じてもたらす利益をKPIに置く場合の計算式と注意点は、LTVの意味と計算式3種、CACとの関係で整理しました。

数字遊びを防ぐ方法は、難しくありません。KPIを一つ置くたびに「この数字が上がったら、KGIはどの式を通って上がるのか」を一文で説明できるかを確かめることです。説明できない数字は、見るのをやめてもかまいません。転職の面接で「そのKPIを設定した理由は?」とよく聞かれるのも、同じことを確かめているからだと思います。その話はマーケターの「市場価値」が高い人と低い人、何が違うのかに書いています。

KPIとOKRはどう使い分けるか──2026年時点の注意点

KPIとOKRは、どちらかを選ぶものではなく、役割を分けて併用するものです。KPIは計画どおりに進んでいるかを見張る「守る数字」、OKRは今期どこを大きく伸ばすかを決める「伸ばす目標」です。

観点 KGI・KPI OKR
役割 計画どおりかを見張る 大きく伸ばす方向を決める
目標の高さ 達成できる現実的な水準 届かないかもしれない高さ
期間 年度・月次で追い続ける 四半期ごとに決め直す
評価との関係 結びつけることが多い 切り離す

OKRを入れるときの注意は、評価と切り離すことです。ドーアの著書もGoogleの目標設定ガイドre:Work「Set goals with OKRs」も、OKRを人事評価や報酬と結びつけないよう求めています。評価に響く仕組みにすると、人は届く目標しか書かなくなり、OKRがKPIの言い換えになってしまうからです。OKRの起源と、Googleが6〜7割の到達を成功とみなす理由は、OKRの意味とGoogleの達成率60〜70%で詳しく書きました。

2026年時点で、マーケティングのKPIにはもう一つ見直しどころがあります。AI検索が広がると、検索結果の画面の中で答えを読み終えて、サイトまでは訪れない場面が出てきます。訪問数を1段目のKPIに置いたツリーは、訪問数が減ってもKGIが減らない、あるいはその逆が起きるかもしれません。ツリーの式が今も成り立っているかを、四半期に一度は確かめておくと安心です。KPIツリーは一度作ったら終わりの図ではなく、生活者の行動が変わるたびに描き直す地図だと思っています。

KPI・KGIに関するよくある質問

KGIとKPIの違いを一言で言うと何ですか?

KGIは最終的に着きたいゴールを測る指標で、KPIはそこへ向かう途中の工程が順調かを測る指標です。KGIが「着く場所」、KPIが「進み具合」と考えると分かりやすいと思います。KPIはKGIを掛け算や足し算に分解して選ぶので、KGIを先に決めないと正しいKPIは決まりません。

KAIとは何ですか?KPIとどう違いますか?

KAIは重要行動指標のことで、KPIを動かすために担当者が直接増やせる行動の量を測ります。記事の公開本数や商談の件数がその例です。KPIは行動の結果として動く数字なので担当者が直接は決められませんが、KAIはやれば必ず達成できます。KAIだけを追うと「やったのに成果が出ない」が見えなくなるので、KPIとセットで見ます。

KPIとOKRはどちらを使えばいいですか?

役割が違うので、併用するのが一般的です。KPIは計画どおりかを見張る守る数字で、100%の達成が前提です。OKRは今期どこを大きく伸ばすかを決める目標で、挑戦的なものは6〜7割の到達で成功とみなします。日々の健康診断はKPIで、四半期の挑戦はOKRで、と分けると噛み合います。

KPIはいくつ設定すればいいですか?

決まった正解の数はありませんが、少ないほど機能します。KPIが増えるほど優先順位が分からなくなり、どれがKGIにつながっているのかを説明できなくなるからです。KPIツリーのなかから、伸びしろが大きくKGIへの効きが強い枝を選び、その数字が上がるとKGIがどう上がるかを一文で説明できるものだけを残すのがおすすめです。

おわりに──数字が足りないのではなく、線が足りない

KGI・KPI・KAI・OKRの違いは、言葉の定義を覚えれば分かります。でも現場で本当に困るのは、定義ではなく、数字と数字のあいだがつながっていないことです。表示回数もクリック率もフォロワー数も、それぞれは正しく測れている。それでも売上が動かないのは、どの数字がどの式を通ってゴールに届くのかが、誰にも説明できないからです。

KPIが足りないのではありません。KGIまでの線が引けていないだけです。

次にKPIを一つ足したくなったら、その前に一本だけ線を引いてみてほしいと思います。もしツリーの分け方で迷うことがあれば、ぼくのXアカウント(@yosooi3)に問いかけてもらえれば、できる範囲で答えようと思います。

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