最終更新:2026年10月17日
ステマ規制とは、広告であるのに広告だと分からない表示、いわゆるステルスマーケティングを、景品表示法の不当表示として禁じるルールのことです。2023年10月1日に施行されました。わかりやすく言えば、規制の対象は商品やサービスを売る事業者(広告主)で、依頼を受けて投稿したインフルエンサー個人は対象外です。ただし、個人事業主や小さなお店の店主は「事業者」の側に入ります。結論を先に書くと、ステマかどうかを分けるのは口コミの中身が本当かどうかではなく、誰がその内容を決めたのかと、それが見た人に分かる形になっているかの2点です。この記事では、告示と運用基準の要点、引っかかりやすい5つのパターン、PR表記の書き方、公表された違反事例を順に書いていきます。
ステマ規制とは?告示と運用基準の要点一覧
ステマ規制の中身は、内閣府の告示1本と、消費者庁の運用基準1本でほぼ決まります。告示が「何を禁じるか」を定め、運用基準が「どこからが違反か」の線を示しています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 法律上の根拠 | 景品表示法第5条第3号(内閣総理大臣が指定する不当表示) |
| 告示 | 「一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示」(令和5年3月28日内閣府告示第19号) |
| 運用基準 | 同告示の運用基準(令和5年3月28日消費者庁長官決定) |
| 施行日 | 2023年(令和5年)10月1日 |
| 禁じられる表示 | 事業者が自分の商品・サービスについて行う表示なのに、見た人がそれを事業者の表示だと見分けにくいもの |
| 判断の2段階 | ①事業者が表示の内容の決定に関与したか(事業者の表示か)/②事業者の表示であることが明瞭か |
| 規制の対象 | 商品・サービスを供給する事業者(広告主)。依頼を受けたインフルエンサーやアフィリエイターは対象外 |
| 対象になる媒体 | SNS投稿やレビューだけでなく、テレビ・新聞・ラジオ・雑誌なども含む |
| 違反したとき | 措置命令(行政処分)。ステマ告示だけの違反は課徴金の対象外 |
告示と運用基準のPDFは、消費者庁の「令和5年10月1日からステルスマーケティングは景品表示法違反となります。」のページからたどれます。実務で読むべきなのは、事業者の表示になる例・ならない例が並ぶ運用基準と、消費者庁のステルスマーケティングに関するQ&A(21問)です。
規制の理屈は単純です。人は広告なら、ある程度の誇張を割り引いて受け取ります。でも第三者の感想に見えると、そのまま信じてしまう。だから運用基準は、問題を「内容のうそ」ではなく「語り手の偽装」に置いています。中身が事実でも、語り手を偽ればステマになります。
規制の対象と判定基準──広告主は対象、依頼を受けた個人は対象外
ステマ規制で罰せられる側に立つのは、商品やサービスを売っている事業者だけです。Q&AのQ1は、広告主から依頼を受けて投稿するインフルエンサーやアフィリエイターは規制の対象外だと明記しています。例外は、インフルエンサーなどが広告主と共同して商品を供給しているような場合です。
ここで誤解されやすいのが「個人なら関係ない」という読み方です。景品表示法の「事業者」は商売をしている人すべてを指すので、ハンドメイド作品を売る個人やひとりで営むサロンも、売る側に立った瞬間に事業者です。依頼を受けて投稿する側としては対象外でも、自分の商品を売る側としては対象になります。
では、どこからが「事業者の表示」になるのか。運用基準の判定軸は、事業者が第三者の表示の内容の決定に関与したかどうか、言い換えれば、客観的に見てその投稿が第三者の自主的な意思によるものと言えるかどうかです。
| 事業者の表示になる例(ステマになりうる) | 事業者の表示にならない例 |
|---|---|
| 第三者に、SNSや口コミサイトへ自社商品の投稿をさせる | 第三者が自分の好みで、自主的に投稿する(何度投稿しても同じ) |
| ECサイトのレビューを、レビューを集める業者や購入者に頼んで書かせる | 購入者が自分の意思でレビュー機能を使って投稿する |
| 口コミの投稿に「星5を付けること」を条件にして割引する | 投稿の内容を指定せずに、口コミ投稿のお礼として割引やクーポンを出す |
| 明示の依頼がなくても、対価や今後の取引をにおわせて、方針に沿った投稿をさせる | 商品を無償で提供して投稿を頼んだが、相手が自分の判断で内容を決めて投稿する |
| 販売を促進する立場の役員・管理職・担当者が、販促のために投稿する | 販促の立場にない従業員が、一般に知られている情報で販促目的でなく投稿する |
| 自社サイトに第三者の投稿を載せるとき、良い意見だけを抜き出したり書き換えたりする | 第三者の投稿を、恣意的に選ばず、内容を変えずにそのまま引用する |
表の左右を分けるのは、お金の有無ではありません。割引やクーポンを出していても、内容に口を出していなければ、通常は事業者の表示になりません(Q&AのQ6・Q7)。逆に、明示的に頼んでいなくても、関係性から見て相手が自由に書けない状況なら事業者の表示になります。判断の材料は、やり取りの内容、対価の中身と目的、過去と今後の取引関係です。
生活者が自分の意思で語る声と、頼まれて語る声の境界は、UGCとは?マーケティングでの意味と種類、ステマとの違いを解説で、依頼の組み立て方はインフルエンサーマーケティングとは?種類一覧とステマ規制、選び方で書きました。この記事は、条文と判定の線に絞ります。
個人発信者・小規模事業者が引っかかる5つのパターン
実務でステマ規制に引っかかるのは、悪意のある大がかりな仕込みより、「みんなやっている」と思われている小さな販促のほうが多いと感じます。公表された処分と運用基準を突き合わせると、つまずき方は5つに整理できます。
| パターン | よくある場面 | なぜステマになるか | 根拠・公表事例 |
|---|---|---|---|
| 1. 高評価を条件に特典を出す | 「Googleマップで星5を付けてくれたら次回500円引き」 | 評価という表示の中身を事業者が決めている | Q&A Q6、医療法人社団祐真会・医療法人社団スマイルスクエア(措置命令) |
| 2. 依頼した投稿を「お客様の声」として転載する | 無償提供して書いてもらったSNS投稿を、自社サイトに「SNSで話題」と並べる | 依頼した投稿であることを示さず、自発的な声に見せている | Q&A Q16、大正製薬株式会社・ロート製薬株式会社・高光製薬株式会社(措置命令) |
| 3. 自分やスタッフが客のふりをする | 店主や従業員が、一般の利用者を装って口コミを書く | 販売を促進する立場の人の投稿は事業者の表示になる | 運用基準 第2の1⑴、株式会社LAVA International(確約計画の認定) |
| 4. 頼んだあと、表示を相手任せにする | 報酬を払って投稿を頼み、PR表記を入れるかどうかは発信者に任せる | 規制されるのは依頼した側。相手が書き忘れても責任は事業者に残る | Q&A Q19、「SNOW」の提供事業者2社(措置命令) |
| 5. 表示したつもりで、見えていない | 大量のハッシュタグの中に「#PR」を混ぜる、末尾やリプ欄にだけ書く | 事業者の表示であることが明瞭になっていない | 運用基準 第3の1⑵、Q&A Q14・Q15 |
5つのうち、小さなお店や個人事業主がいちばん踏みやすいのは1番目だと思います。口コミを増やしたい気持ちは自然ですし、割引を付けること自体は問題になりません。線を越えるのは「星5で」と評価の中身を指定した瞬間です。Q&AのQ6は、星5ではなく「推奨するコメントを書くこと」を条件にした場合も同じだとしています。
2番目は、元の投稿にPR表記が付いていても起きます。抜き出して自社サイトに「お客様の声」として並べた時点で、見た人には自発的な感想に見えるからです。
ぼく自身、このブログにはアフィリエイトのリンクを置いている記事があり、広告を含む旨はサイトの仕組みで記事に表示するようにしています。そして同じぼくが、自分の有料記事を売るときは、告示でいう事業者の側に立ちます。依頼される側と依頼する側、どちらの帽子をかぶっているかで、守るべき線の引き方が変わる。発信する人ほど、その切り替えを自分で意識しておく必要があると考えています。
PR表記の正しい書き方──位置・文言・分かりやすさ
PR表記で問われるのは、表記があるかどうかではなく、見た人が一目で「これは事業者の表示だ」と分かるかどうかです。運用基準とQ&Aの例を、位置・文言・分かりやすさの3つに分けると、次のようになります。
| 観点 | 明瞭と認められやすい書き方 | 不明瞭とされる書き方 |
|---|---|---|
| 位置 | 投稿本文の冒頭やタイトルの近く。動画は全体を通して分かるように(画面上に常に表示するなど) | 視認しにくい末尾だけ。SNSのツリー(リプライ)にだけ書く。長い動画の冒頭だけ、または途中や最後にだけ一瞬出す |
| 文言 | 「広告」「宣伝」「PR」など。「A社から商品の提供を受けて投稿している」のような文章でもよい | 見た人が意味を受け取れない言葉。「私は〇〇社の社員です」と所属を書くだけ。冒頭に「広告」と書きながら文中で「第三者としての感想です」と打ち消す |
| 分かりやすさ | 周囲の文字と同じくらいの大きさと濃さで、ほかの情報と分けて書く | 周囲より小さい文字や薄い色。長文の中に埋もれさせる。大量のハッシュタグの中に紛れ込ませる |
運用基準は、これらの文言を使っていても表示全体から明瞭と認められない場合があるとし、Q&AのQ11は、ほかの言葉でも全体として明瞭なら認められるとしています。言葉選びより、見え方が先です。
ブログの場合はQ&AのQ13が手引きになります。サイトの冒頭に広告を含む旨を書いていても、文字の大きさや色まで含めて明瞭である必要があり、報酬を払って依頼した専門家のコメントのような箇所は、その近くに依頼して掲載している旨を書きます。
もう一つ見落とされやすいのが、過去の投稿です。Q&AのQ20によれば、施行日より前に行われた投稿でも、施行後も表示され続けていて、事業者の表示であることが明瞭でなければ、違反として行政処分の対象になりえます。依頼した側は、過去の依頼投稿の棚卸しまでが自分の仕事です。
2026年時点での注意点──公表された違反事例と罰則
2026年時点で押さえたいのは、ステマ告示の処分が毎年続き、口コミの星の条件付けから報酬付きのX投稿まで、違反の型が出そろってきたことです。消費者庁の報道発表資料で確認できた事例を、公表資料どおりの名称で並べます。
| 公表日 | 事業者(公表資料どおり) | 処分 | 何が問題とされたか(要約) |
|---|---|---|---|
| 2024年6月7日 | 医療法人社団祐真会 | 措置命令 | インフルエンザワクチンの接種費用の割引を条件に、Googleマップの口コミで星5または星4の投稿をさせた |
| 2024年11月13日 | 大正製薬株式会社 | 措置命令 | 無償提供と対価を条件に依頼したInstagram投稿を、依頼したことを示さずに自社通販サイトに抜粋して掲載した |
| 2025年3月18日 | 医療法人社団スマイルスクエア | 措置命令 | 5,000円分のギフトカードか治療費からの5,000円の割引を条件に、来院者にGoogleマップの口コミで星5を投稿させた |
| 2025年3月25日 | ロート製薬株式会社 | 措置命令 | モニター募集サイトを通じて方針に沿った投稿を依頼し、その画像を自社サイトに「“わたしも”使っています」などと掲載した |
| 2025年9月19日 | 冷凍宅配食の販売事業者2社 | 確約計画の認定 | 無償提供を条件に依頼したInstagram投稿を、販売サイトの「投稿レビュー」欄などに抜粋して表示していた疑い |
| 2026年6月29日 | 高光製薬株式会社 | 措置命令 | 無償提供して依頼したSNS投稿の画像を、自社サイトに「SNSでも大人気!」などと掲載した |
| 2026年8月6日 | 「SNOW」と称するアプリケーションの利用サービスの提供事業者2社 | 措置命令 | 対価の提供を条件に、指示した方針に沿ったXへの投稿を第三者に依頼した |
2024年8月9日公表のRIZAP株式会社への措置命令は、優良誤認とステマ告示の両方に該当するとされた事例です。確約計画の認定は、2024年10月1日施行の改正で入った手続きで、事業者が自ら是正計画を出すものです(違反の認定ではないと消費者庁は明記しています)。消費者庁の令和7年度の景品表示法の運用状況によると、2025年度に認定した確約計画8件のうち、ステマ告示に関わるものは4件でした。
罰則についても整理しておきます。ステマ告示だけの違反は課徴金の対象になりません(Q&AのQ2)。ただし、同じ表示に優良誤認や有利誤認が含まれれば、そちらは課徴金の対象になりえます。措置命令に従わなかった場合は、景品表示法第46条で2年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金、法人には第49条で3億円以下の罰金が定められています(条文はe-Gov法令検索の景品表示法で確認できます)。最終更新日の時点で、消費者庁のステマ規制のページに掲げられている告示と運用基準は2023年3月28日のもので、改定は確認できませんでした。
この記事は、消費者庁の公開資料をもとにした一般的な解説で、法的な助言ではありません。個別の表示が違反にあたるかどうかは、消費者庁の景品表示法に関する情報提供・相談の受付窓口や弁護士に確認してください。
ステマ規制に関するよくある質問
ステマ規制は個人のインフルエンサーも対象ですか?
広告主から依頼を受けて投稿するインフルエンサーやアフィリエイターは、規制の対象外です。規制されるのは、商品やサービスを売る事業者(広告主)です。ただし、インフルエンサーが広告主と共同して商品を供給している場合や、個人でも自分の商品を売る事業者である場合は、事業者として対象になります。
ステマ規制に違反するとどうなりますか?罰則はありますか?
消費者庁から措置命令(行政処分)を受け、違反した事実の周知や再発防止策の実施などを命じられます。ステマ告示だけの違反は課徴金の対象外です。措置命令に従わなかった場合には、景品表示法第46条により2年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金などの刑事罰が定められています。
PR表記はどこに、どう書けばいいですか?
投稿本文の冒頭など目につく位置に、「広告」「宣伝」「PR」などの文言か、「A社から商品の提供を受けて投稿している」のような文章で、周りの文字と同じくらいはっきり書きます。末尾やリプ欄だけ、大量のハッシュタグの中、小さく薄い文字は不明瞭とされます。動画は冒頭だけでなく、全体を通して分かるようにします。
自分で買って気に入った商品を紹介するときもPR表記は必要ですか?
事業者から依頼されたのではなく、自分の意思で投稿するなら、事業者の表示にはあたらないので、PR表記は必要ありません。過去にその会社の別の商品で依頼を受けたことがあっても、自分で買った別の商品を自主的に紹介する投稿は同じ扱いです。消費者庁のQ&AのQ18とQ21に例があります。
おわりに──ステマとは、うそをつくことではなく、語り手を偽ること
ステマ規制の話になると、「本当に良いと思って書いているのに」という声をよく聞きます。でも、規制が見ているのは、口コミの中身の真偽ではありません。その声を誰が決めたのか、そしてそれが見た人に分かるかどうかです。
中身が正しくても、語り手を偽れば、ステマになる。語り手を明かしていれば、宣伝でも、信頼は残る。
PR表記は、売れなくなるための印ではなく、自分が誰の言葉を借りて話しているのかを先に伝えるための印だと思っています。発信する側も依頼する側も、投稿する前に「この声は、誰が決めた言葉か」を一度だけ自分に聞いてみてほしいと思います。