最終更新:2026年10月12日
UGCとは、User Generated Contentの略で、企業ではなく生活者が自分の意思でつくって発信するコンテンツのことです。日本語では「ユーザー生成コンテンツ」と訳され、SNSの投稿、商品レビュー、写真や動画、Q&Aサイトの回答などが含まれます。マーケティングでUGCを考えるときに確かめたいのは、生活者が語りたくなる設計があるかどうかです。お金や指示で仕込んだ声は、いずれ仕込みだと見抜かれますし、2023年10月からは広告であることを隠せばステマ規制の対象にもなります。この記事では、UGCの種類の一覧、CGMや口コミとの違い、ステマとの境界線、そして実務での使い方まで書いていきます。
UGCとは?マーケティングでの意味と種類の一覧
UGCは、企業の外にいる生活者が、頼まれたからではなく自分で語りたくてつくったコンテンツです。誰がつくったかと、なぜつくったかの二つが、UGCかどうかを分けます。
マーケティングで扱うUGCには、主に次のような種類があります。
| 種類 | 生まれる場所の例 | 中身の例 | マーケティングでの効き方 |
|---|---|---|---|
| SNS投稿 | X、Instagram、Threads、TikTok | 使ってみた感想、買ったものの写真、行った店の動画 | 知らなかった人に、友人の声として届く |
| レビュー・口コミ | ECサイト、地図アプリ、比較サイト | 星の評価、良かった点と気になった点 | 買う直前の迷いを、ほかの人の体験で解く |
| 写真・動画 | SNS、動画サイト | 開封の様子、使い方の工夫、着てみた姿 | 公式の写真では伝わらない、暮らしの中での姿を見せる |
| Q&A・掲示板 | Q&Aサイト、コミュニティ、掲示板 | 「これとあれ、どっちがいい?」への回答 | 比較の場面で、実際に使った人の判断材料になる |
| ブログ・note | 個人ブログ、note | 長く使ってみた記録、選んだ理由 | 検索から長く読まれ続け、深い納得をつくる |
| 二次創作・ハッシュタグ参加 | SNS、動画サイト | ファンアート、踊ってみた、キャンペーンへの投稿 | 参加した人の数そのものが、盛り上がりの証拠になる |
種類は違っても、効き方の根っこは同じです。人は企業が自分で言うことより、利害のない誰かが言うことを信じます。この心理の土台にある人の性質は、社会的証明の原理とは?例と実験、バンドワゴン効果との違いを解説で書いています。UGCの力は、この「利害がない」という一点から生まれています。だから、その一点が崩れた瞬間に、UGCはただの広告になります。
UGCの出典──CGM・口コミ・インフルエンサー投稿との違い
UGCという言葉には、はっきりした一人の提唱者はいません。2000年代半ば、ブログや動画共有サイトが広がった時期に、ネット上で生活者がつくるコンテンツを指す言葉として自然に広まりました。企業が使えるメディアの分類では、こうした生活者の声はトリプルメディアとは?意味と古いと言われる理由、PESOとの違いで書いたアーンドメディアにあたります。
定義の手がかりとしてよく引かれるのが、OECD(経済協力開発機構)が2007年に出した報告書「Participative Web and User-Created Content」です。ここでは、ネット上で公開されていること、一定の創意や工夫が入っていること、職業としての仕事の外でつくられていることの3つを、ユーザーがつくるコンテンツの条件として整理しています。三つめの条件は、素人がつくったという意味ではありません。プロ並みの腕を持つ人でも、仕事としてではなく自分の意思でつくったなら、UGCに入ります。
似た言葉との違いは、次の表で整理できます。
| 言葉 | 指しているもの | UGCとの関係 |
|---|---|---|
| UGC | 生活者が自分の意思でつくったコンテンツそのもの | ― |
| CGM | UGCが集まる場所やサービス(レビューサイト、掲示板、SNSなど) | CGMは「器」、UGCは「中身」 |
| 口コミ | 人から人へ伝わる評判。対面の会話も含む | ネット上に書かれた口コミはUGCの一部 |
| インフルエンサー投稿(依頼あり) | 企業が依頼し、対価を払って投稿してもらうもの | 見た目は似ていても広告。UGCには入らない |
| UGC風広告 | 生活者の投稿のような見た目でつくった広告素材 | 形式を借りた広告。広告であることの明示が前提 |
CGMはConsumer Generated Mediaの略で、日本では「口コミサイト」とほぼ同じ意味で使われてきました。UGCがコンテンツを、CGMがそれを載せる場を指すと覚えておくと混乱しません。表の下の二つは、見た目がUGCに近いだけで中身は広告です。この区別が、次のステマの話に直結します。
UGCとステマの違い──2023年10月施行の規制の境界線
UGCとステマを分けるのは、その投稿の中身を企業が決めたかどうかです。企業が依頼や指示をして、対価も絡んでいるのに広告だと分からない投稿は、2023年10月1日からステマとして景品表示法違反になりました。
消費者庁のページ「ステルスマーケティングに関する景品表示法違反」によると、規制の対象は商品やサービスを売る事業者、つまり広告主です。依頼を受けて投稿したインフルエンサーなどの第三者は対象になりません。どこからが事業者の表示になるかは、消費者庁が告示と同時に出した運用基準に例が示されています。その中身を、UGCに関わる場面に絞って整理すると次のようになります。
| 場面 | 事業者の表示(広告)になるか | 運用基準での考え方 |
|---|---|---|
| 生活者が自分の好みで、SNSに感想を投稿する | ならない | 第三者の自主的な意思による表示。複数回の投稿でも同じ |
| 企業が投稿を依頼し、内容を指示して、対価を払う | なる | 企業が表示内容の決定に関わっている。広告と明示しなければステマ |
| はっきり依頼しないが、投稿すれば今後の取引がありそうだとほのめかす | なりうる | 言外に利益を感じさせた結果の投稿は、自主的な意思とは認められない場合がある |
| 無料で商品を渡して投稿を依頼したが、内容は本人が自由に決めた | ならない場合がある | 客観的な状況から、自主的な意思による内容と認められるかで判断 |
| レビューのお礼に次回クーポンを配るが、内容のやりとりは一切ない | ならない場合がある | 投稿内容について直接・間接のやりとりがないことが条件 |
| 自社サイトで生活者の投稿を紹介する | 恣意的に選べばなる | 良い意見だけを抜き出したり、内容を変えたりせず、そのまま引用するなら第三者の表示として扱われる |
広告であることを示すには、運用基準にあるとおり「広告」「宣伝」「PR」といった文言や、「A社から商品の提供を受けて投稿している」といった文章で、見た人に事業者の表示だと分かるようにする必要があります。文言を入れていても、全体として分かりにくければ明示とは認められない場合もあります。
この表を見て気づくのは、法律の線引きとUGCの本質がほとんど同じ場所に引かれていることです。企業が中身を決めた声は、UGCではない。法律がそう言う前から、生活者はとっくにそれを見分けていました。
実務での使い方──語りたくなる設計があるかを確かめる
UGCを実務で考えるとき、最初に確かめるのは「投稿をどう増やすか」ではなく、「この商品には、人が誰かに語りたくなる理由があるか」です。語る理由がない商品に投稿のお願いを重ねても、出てくるのは頼まれた声だけです。
広告会社にいた頃、「UGCを増やしたい」という相談はよくありました。でも、そういうときに本当に足りていないのは投稿の仕掛けではなく、語りたくなる体験のほうであることが多かった。ハッシュタグを用意しても、写真に撮りたくなる瞬間が商品の中になければ、投稿は増えません。
語りたくなる設計を確かめるには、次の3つの問いが使えます。
| 問い | 確かめること | 足りないときの打ち手の方向 |
|---|---|---|
| 語る理由はあるか | 人に言いたくなる驚き、自慢したくなる選択、誰かの役に立つ発見があるか | 商品や体験そのものに、話したくなる一点をつくる |
| 語る瞬間はあるか | 開封、初めて使う日、結果が出た日など、撮りたくなる場面が決まっているか | その瞬間が来るように、パッケージや使い方の流れを整える |
| 語りやすい型はあるか | どう書けばいいか、どこに書けばいいかが、見た人にすぐ分かるか | 投稿の例やハッシュタグを示す。ただし内容は指示しない |
三つめの「型」を用意するのは、投稿のハードルを下げるためで、中身を決めるためではありません。ここで「この言葉を入れてください」と内容に踏み込むと、声は自発のものではなくなり、運用基準の考え方では広告の側に寄っていきます。
集まったUGCを使うときにも、守ることがあります。投稿を自社の広告やサイトに使うなら、投稿した人の許諾を取る。良い意見だけを抜き出さない。中身を書き換えない。名もなき人たちの声が市場を動かす流れはモブマーケティングとはに、熱量のある人たちが自分から語り出す構造はファンエコノミーとは?意味と仕組みにまとめています。どちらも、企業が声を「つくる」のではなく、声が生まれる場所を「整える」話です。
2026年時点での注意点──UGC風広告とUGCクリエイター
2026年のUGCで気をつけたいのは、UGCの見た目を借りた広告が増え、本物のUGCとの境目が見えにくくなっていることです。境目が見えにくいほど、明示のあるなしで信頼が大きく分かれます。
サジェストに「UGC風」「UGCクリエイター」「UGC広告」が並ぶように、生活者の投稿のような質感で広告素材をつくる手法は、すでに一つのジャンルになっています。UGCクリエイターは、企業の依頼を受けて、生活者目線の動画や写真をつくる人を指すことが多い言葉です。依頼して対価を払っている以上、それは広告です。広告として出すなら問題はありませんが、あたかも一般の人の自発的な投稿であるかのように見せれば、ステマ規制の線を踏みます。
もう一つは、見抜かれるまでの速さです。SNSでは、同じ言い回しの投稿が同じ時期に並ぶと、すぐに誰かが気づいて指摘します。仕込んだ声が見抜かれたとき、失うのはその施策の効果だけではありません。それまでに集まっていた本物のUGCまで、「どうせこれも頼まれたんでしょう」と疑われるようになります。UGCは、信頼を前借りして使う資産でもあります。
UGCに関するよくある質問
UGCとは簡単に言うと何ですか?
企業ではなく、一般の生活者が自分の意思でつくって発信するコンテンツのことです。SNSの投稿、商品レビュー、写真や動画、Q&Aサイトの回答などが含まれます。利害のない第三者の声なので、企業が自分で発信する情報より信頼されやすいのが特徴です。
UGCとステマの違いは何ですか?
投稿の中身を企業が決めているかどうかが違います。生活者が自分の好みで投稿したものはUGCで、企業が依頼や指示をして対価も絡んでいるのに広告と分からないものはステマです。2023年10月1日から、ステマは景品表示法違反になり、規制の対象は依頼した事業者です。
UGC風広告は違法ですか?
広告であることが分かるように明示していれば、UGC風の見た目であること自体は問題になりません。問題になるのは、企業がつくらせた素材を、一般の人の自発的な投稿のように見せる場合です。「広告」「PR」などの文言や、商品の提供を受けている旨の文章で、事業者の表示だと分かるようにする必要があります。
UGCを自社の広告やサイトで使うときの注意点は?
まず投稿した人の許諾を取ることです。そのうえで、良い意見だけを抜き出したり、内容を書き換えたりしないこと。消費者庁の運用基準でも、第三者の投稿を恣意的に抽出せず、内容を変えずにそのまま引用することが、第三者の表示として扱われる条件として示されています。
おわりに──UGCは、頼んで増やすものではない
UGCを増やす方法を探し始めると、どうしても「どう投稿してもらうか」に目が向きます。お願いの文面、プレゼントの中身、ハッシュタグの名前。でも、そこを磨くほど、声は頼まれた声に近づいていきます。
人が誰かに何かを語るのは、語りたい理由があるときだけです。驚いたとき、自慢したいとき、誰かに教えてあげたいとき。その理由を商品や体験の中に置けているかが、UGCの量と質を決めています。
UGCは、集めるものではありません。語りたくなる理由を置いた結果として、生まれるものです。仕込んだ声は、いつか必ず仕込みに聞こえます。