マーケの目

ストーリーブランド戦略とは?SB7の7要素を要約し怪しさにも答える

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最終更新:2026年10月6日

ストーリーブランド戦略とは、顧客を物語の主人公に、自社をその主人公を助けるガイドに置いて、ブランドの伝え方を組み立てるフレームワークです。アメリカの作家ドナルド・ミラー(Donald Miller)が体系化したもので、主人公・問題・ガイド・計画・行動喚起・失敗・成功の7要素をまとめて「SB7」と呼びます。要約すれば、売れるメッセージの主役は会社ではなく顧客です。7要素の一覧と出典、PASONAやQUESTとの使い分け、「怪しい」と検索される理由まで、広告とBtoBマーケの現場にいた目線で整理します。

ストーリーブランド戦略とは?SB7の7要素一覧

SB7とは、映画や小説に共通する物語の骨格を7つに分け、ブランドの伝え方に当てはめた型です。顧客が主人公で、ブランドはガイド。この配役を守ったまま7つの欄を埋めていくと、何を言い、何を言わないかが決まっていきます。

番号 要素 英語原文 中身 埋めるときの問い
1 主人公 A Character 顧客。ブランドではない この人がいちばん欲しいものは何か(一つに絞る)
2 問題 Has a Problem 行く手をふさぐ悪役と、外的・内的・哲学的の3層の問題 何がこの人を足止めしているか
3 ガイド And Meets a Guide ブランド。共感と権威の両方を見せる なぜこの会社なら導いてもらえると思えるか
4 計画 Who Gives Them a Plan 進め方の手順と、不安を消す約束 何をどの順でやれば着けるのか
5 行動喚起 And Calls Them to Action 今すぐの行動と、段階を踏む行動の二種類 今日、何をすればいいのか
6 失敗 That Helps Them Avoid Failure 行動しなかったときに失うもの このままだと何を失うのか
7 成功 And Ends in a Success 行動した先で変わった姿 手に入れたあと、暮らしや仕事はどう変わるのか

英語の原文をつなげると、一つの文として読めるように作られています。主人公が問題を抱え、ガイドに出会い、計画を受け取り、行動を促され、失敗を避けて成功にたどり着く。どの映画にもある流れを、そのままブランドの説明の順番にしたものです。

7つのなかで、いちばん効くのは2番目の問題の3層です。外的な問題は目に見える困りごと、内的な問題はそれによって生まれる感情、哲学的な問題は「そもそも、こうあるべきではない」という理由にあたります。ミラーは、会社は外的な問題の解決を売ろうとするけれど、人がお金を払うのは内的な問題の解決だと述べています。

たとえば個人事業主向けの会計ソフトで考えてみます。外的な問題は「確定申告の書類が作れない」。内的な問題は「数字が苦手な自分が情けなくて、毎年この時期が憂うつになる」。哲学的な問題は「本業で稼ぐ人が、事務作業に何十時間も奪われるのはおかしい」。機能の説明は外的な問題にしか届きませんが、内的な問題まで書けた瞬間に、読む人は「自分のことだ」と感じます。人の根っこの欲求から内的な問題を探すときは、LF8(ライフフォース8)とは?人間の8つの欲求一覧と使い方の8つの欲求が手がかりになります。

出典──ドナルド・ミラー「ストーリーブランド戦略」

SB7の出典は、ドナルド・ミラーが2017年に米国のハーパーコリンズ・リーダーシップから出した「Building a StoryBrand」です。日本語版は2018年にダイレクト出版から「ストーリーブランド戦略」(力丸祥子訳)として出ていて、2025年には改訂版の「Building a StoryBrand 2.0」と、その日本語版「ストーリーブランド戦略2.0」も出ています。

ミラーはもともとマーケターではなく、2003年のエッセイ「Blue Like Jazz」でベストセラー作家になった書き手です。その後、物語の作り方をビジネスの伝え方に持ち込む会社を立ち上げ、そこで練り上げた型をまとめたのがこの本です。広告理論の研究者が作った枠組みではなく、物語を書いてきた人が、売る側の言葉の混乱を整理するために作った道具と考えると位置づけがわかりやすいと思います。

下敷きにあるのは、映画や小説で繰り返し使われてきた物語の構造です。神話学者ジョーゼフ・キャンベル(Joseph Campbell)が示した「英雄の旅」のような、古くからある物語論とつながっていると見るのが自然です。ただ、SB7を使うと売上がどれだけ伸びるのかを示した、第三者による効果検証のデータは、ぼくが確認した範囲では見当たりませんでした。だからこの記事では「効く」と断定せず、実務で考えを整理する型として扱います。

PASONA・QUEST・英雄の旅との違い

SB7とPASONAやQUESTの違いは、一本の文章の段落の順番を決める型か、ブランド全体の配役を決める型かにあります。前の二つはセールスレターやLPをどう並べるかの設計図で、SB7はWebサイト・営業資料・広告のすべてに通す「誰が主役か」の設計図です。

型 決めるもの 向いている場面
PASONA 問題提起から行動までの文章の順番 セールスレター・LP
QUEST 絞り込み・共感・教育・刺激・行動の段階 読み手を選ぶセールスコピー
英雄の旅 主人公が旅立ち、試練を越えて戻るまでの長い弧 映画・小説・ブランドの長期的な物語
SB7(ストーリーブランド) 顧客が主人公、ブランドがガイドという配役と、伝える要素 サイト全体・会社紹介・営業資料・広告の一貫性

使い分けの目安はシンプルで、SB7で配役と要素を決めてから、個々のLPやメールをPASONAやQUESTで並べる順番がいいと思います。QUESTの段階の組み方はQUESTフォーミュラとは?セールスコピーの型を例文つきで解説にまとめています。SB7が上流で、文章の型が下流です。下流でよく使うPASONAの段の組み方は、PASONAの法則と新PASONAの6要素で整理しました。

英雄の旅との違いは、ブランドの立ち位置にあります。英雄の旅をそのままブランドに当てはめると、ブランド自身が英雄になりがちです。SB7はそこを反転させて、英雄の旅に必ず出てくる師匠や助言者の役だけをブランドに割り当てます。顧客を狙う対象ではなく物語の主役として扱う考え方は、ペルソナキャスティングとは|顧客を「狙う」のをやめ、物語の主役に配役するマーケティングでも書いた発想と同じ根っこを持っています。

実務での使い方──主語を自社から顧客に倒す

SB7を実務で使うときの要点は、7つの欄を埋める前に「主人公が欲しいものを一つに絞る」ことと、書き上げたあとでブランドが主人公の座を奪っていないかを点検することの二つです。欄を埋める作業そのものは難しくありません。崩れるのは、たいていこの二か所です。主人公が欲しいものを商品ではなく「片付けたい用事」から探る方法は、ジョブ理論(JTBD)の要約と事例で書きました。

手順に落とすと、次の順番で埋めると崩れにくいと思います。

  • 主人公の欲しいものを一つだけ書く(「時間を取り戻したい」「失敗したくない」など、顧客の言葉で)
  • 問題を外的・内的・哲学的の3行で書く。内的な問題が書けないうちは先へ進まない
  • ガイドの欄には、共感の一文と権威の一文を一つずつだけ置く
  • 計画は3ステップ以内にする。手順が長いほど、主人公は旅に出ない
  • 行動喚起は「今すぐ申し込む」と「まず資料を見る」の二段にする
  • 失敗と成功は、抽象語ではなく具体的な場面で書く

広告の現場やBtoBの提案の場にいると、会社案内や提案資料が自社の沿革と技術から始まっている場面によく出会います。主語が「当社は」のまま進む資料は、SB7で言えばブランドが主人公の席に座っている状態です。権威を示しているつもりでも、読む側からすると他人の自慢話を聞かされている時間になります。権威は、主人公を助けられる根拠として一行あれば足ります。

もう一つ崩れやすいのが、2番目の問題の欄です。問題がぼやけたままの物語は、そもそも始まりません。ぼく自身、駆け出しの頃に先輩から「で、結局、何が課題なのか分からない」とブリーフを突き返され続けた経験があり、SB7の問題欄が埋まらないときは、表現を磨く前に、顧客が何に困っているのかを聞き直すほうが早いと思っています。

BtoBの場合は、主人公を「発注する会社」ではなく「社内で稟議を通す担当者」に置くと、内的な問題が急に書きやすくなります。選んだ自分の評価が下がるのが怖い、説明に時間を取られたくない。こうした感情は会社の資料にはまず書かれませんが、意思決定を動かしているのはむしろこちらです。

「ストーリーブランド 怪しい」と言われる理由と、日本市場での注意点

ストーリーブランド戦略そのものは怪しい手法ではありません。中身は昔からある物語の構造を、伝える順番に置き換えたもので、魔法も裏技も入っていません。怪しく見える理由は、型の中身ではなく外側にあります。

理由の一つ目は、売り文句の印象です。日本語版は、ダイレクトレスポンス・マーケティング系の書籍を多く手がけるダイレクト出版から出ています。こうした本の広告で見かける強い言い回しの印象が、本の中身と重ねて受け取られている面はあると思います。二つ目は、情報商材やセミナー集客のLPで、6番目の失敗の要素が「このままだと人生が終わる」のような煽りに使われてきたことです。型が悪いのではなく、失敗の強度を上げすぎた使われ方が、型ごと胡散臭く見せています。三つ目は、前の章で書いたとおり、効果を裏づける公開データが見当たらないことです。道具として使い、効き目は自分の現場で確かめる。この距離感でいれば、怪しさに振り回されることはありません。

日本市場で使うときに気をつけたいのは、失敗の欄の強さです。米国の原典の例をそのまま訳すと、日本の生活者には脅しに聞こえることが多いと感じます。失うものは、怖がらせる道具ではなく、行動しない選択にも静かな代償があることを示す一行くらいに留めるのがちょうどいいと思います。

逆に、ブランドが一歩引いてガイドに回るSB7の発想は、日本の文脈とかなり相性がいいと思っています。前に出て自分を語るより、相手を立てて支える振る舞いのほうが信頼されやすい場面は、日本のビジネスの現場では少なくないと感じています。ガイドの権威を、自社の宣伝ではなく業界への視点の発信で示すやり方は、ソートリーダーシップとは?意味と実践をBtoBマーケ経験者が解説で詳しく書いています。

2026年の時点で付け加えるなら、顧客が自分で比べて選ぶ時代になったぶん、ガイドの「共感」の欄が先に見られるようになったと感じます。実績の数字より先に、この会社は自分の困りごとをわかっているか。そこで外すと、権威の欄まで読まれません。

ストーリーブランド戦略に関するよくある質問

ストーリーブランド戦略を一言で要約すると何ですか?

顧客を物語の主人公に、自社をその主人公を助けるガイドに置いて、伝える内容を7つの要素で組み立てる方法です。7つは主人公・問題・ガイド・計画・行動喚起・失敗・成功で、まとめてSB7と呼びます。いちばんの要点は、ブランドが主人公の席に座らないことです。

SB7はBtoBマーケティングでも使えますか?

使えます。BtoBでは主人公を「発注する会社」ではなく「社内で決裁を通す担当者」に置くと、内的な問題が書きやすくなります。評価が下がる不安や説明の手間といった感情まで書けると、機能の比較だけでは動かない相手にも届きやすくなります。

ストーリーブランド戦略は怪しいのですか?

型そのものは、昔からある物語の構造を伝える順番に置き換えたもので、怪しい中身ではありません。怪しく見えるのは、強い売り文句の印象や、失敗の要素を煽りに使った使われ方のせいだと思います。効果を示す公開データは見当たらないので、自分の現場で効き目を確かめながら使うのがいい距離感です。

本は初版と2.0のどちらを読めばいいですか?

これから読むなら、2025年に出た改訂版の「ストーリーブランド戦略2.0」を選べば足ります。改訂版も7要素を軸にした構成なので、SB7の考え方はどちらでもつかめます。原書は「Building a StoryBrand」とその2.0版で、いずれもハーパーコリンズ・リーダーシップから出ています。

おわりに──主人公の席を空ける

SB7の7つの欄は、埋めること自体が目的ではありません。書き終えたときに、ブランドが主人公の席から降りているかを確かめるための点検表です。会社の歴史や技術を語りたくなる気持ちはよくわかります。でも、それを語る場所は主人公の欄ではなく、ガイドの欄の一行で足ります。

ストーリーブランドとは、自社の物語を語る技術ではありません。顧客の物語で、脇役を引き受ける技術です。

主人公の席を空けたとき、はじめて顧客がそこに座ります。SB7の使い方で迷うことがあれば、ぼくのXアカウント(@yosooi3)に問いかけてもらえれば、できる範囲で答えようと思います。

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