最終更新:2026年10月6日
PASONAの法則とは、経営コンサルタントの神田昌典さんが1999年に発表した、セールスレターやLPの文章を「問題→親近感→解決策→提案→絞り込み→行動」の順に組み立てる構成の型です。2016年の改訂で「新PASONAの法則」になり、旧版の「Agitation(あぶりたて)」が「Affinity(親近感)」に置き換わりました。「PASONAは古い」と言われる理由の大半は、この旧版の煽りのイメージにあります。骨格そのものは、2026年のいまも十分に使えます。
ぼくは博報堂で13年、ゲームや製菓、外資製薬のテレビCMとWEBを組み合わせたキャンペーンに関わり、アクセンチュアで5年BtoBマーケに携わってから独立しました。その実務の目線で、新旧の違いと、型どおりに書くと失敗しやすいところまで書いていきます。
PASONAの法則とは?新PASONAの6要素一覧
新PASONAの法則は、読み手の「問題」を言い当てるところから始め、親近感・解決策・提案・絞り込みを経て「行動」へつなぐ6段の構成です。頭文字をつなげるとP・A・S・O・N・Aになります。
6つの要素と役割は次のとおりです。例文は、架空の「小さな会社向けの経費精算ツール」を題材にしたサンプルで、実在の商品ではありません。
| 頭文字 | 要素 | 英語 | その段の役割 | 例文(架空) |
|---|---|---|---|---|
| P | 問題 | Problem | 読み手が抱えている問題を、本人の言葉で言い当てる | 「月末になると、机の上に領収書の束が積み上がっていませんか。」 |
| A | 親近感 | Affinity | 同じ痛みを知る側に立ち、「わかってくれている」と感じてもらう | 「わたしたちも小さな会社なので、あの束を前にしたときの憂うつはよく知っています。」 |
| S | 解決策 | Solution | 問題が解ける仕組みと、その根拠を示す | 「スマホで撮るだけで、日付と金額が読み取られ、仕訳まで終わります。」 |
| O | 提案 | Offer | 価格・特典・保証など、具体的な取引条件を差し出す | 「最初の30日間は無料。合わなければ、そのまま解約できます。」 |
| N | 絞り込み | Narrow down | 誰のための提案かをはっきりさせ、対象や条件を絞る | 「社員10名以下で、経理の専任者を置いていない会社のために作りました。」 |
| A | 行動 | Action | 迷わず動けるよう、次の一歩を一つに絞って示す | 「下のボタンから、今月の領収書を3枚撮るところまで試せます。」 |
6つのなかで型の性格を決めているのは、2つ目のAです。ここが「親近感」であることで、PASONAは痛みを大きくする型から、痛みに寄り添う型に変わりました。Problemで言い当てた悩みに対して、書き手が上から解決策を投げるのではなく、同じ側に立ってから話を始める。この順番があるから、続くSolutionやOfferが売り込みに聞こえにくくなります。
もう一つの特徴は、SolutionとOfferが別の段に分かれていることです。「この仕組みで解決できます」と「この条件で手に入ります」は、読み手の頭の中では別々の判断です。仕組みに納得しても、条件が曖昧なら人は動きません。新PASONAは、納得と決断を一段ずつ積み上げる構造になっています。
PASONAの法則の出典──神田昌典さんの旧版と新版の違い
PASONAの法則の提唱者は神田昌典さんです。1999年に発表した5段の旧版を、2016年の著書「稼ぐ言葉の法則」(ダイヤモンド社・副題は新・PASONAの法則と売れる公式41)で6段の新版に改めました。
改訂の経緯は、ダイヤモンド・オンラインに掲載された神田さん本人の解説に書かれています。それによると、旧版は発表当初、勘違いや悪用の懸念から神田さんのコンサルティングのクライアント以外には広く知られず、一般向けに初めて登場したのは著書「禁断のセールスコピーライティング」(フォレスト出版)でした。あぶりたては一つ間違えば恐怖感をあおる文章につながる危険があり、書き手の良識が必要だった、と神田さん自身が振り返っています。
その後、ネットの普及でLPを使った販売が定着し、コピーライティング自体も広く知られるようになりました。そこで問題をあぶりたてるより、「この人は自分のことをわかってくれている」という親近感を印象づけることが大事になった、というのが改訂の理由です。新旧の差分を表にすると、次のようになります。
| 比較項目 | 旧PASONA(1999年発表) | 新PASONA(2016年〜) |
|---|---|---|
| 2つ目のA | Agitation(あぶりたて)。問題を放置したときの痛みを強調する | Affinity(親近感)。痛みを知る者として寄り添う |
| 解決策と提案 | 「SO」の2文字でSolutionとして一体 | Solution(解決策)とOffer(提案)に分離 |
| 段の数 | 5段 | 6段 |
| Nの位置づけ | Narrow down(絞り込み) | Narrow down(絞り込み)。2021年の共著では「適合」と説明 |
| 背景にあった媒体 | 広告コピーやダイレクトメール | ネット普及後のLP・ウェブ |
| 書き手に必要なもの | 煽りすぎない良識 | 読み手の痛みへの理解 |
2021年の共著「コピーライティング技術大全」(神田昌典・衣田順一、ダイヤモンド社)では、Narrowを「絞り込み」ではなく、理想の顧客にぴったり合う相手を選ぶ「適合」と位置づけ直しています。同じ本では、PASONAをウェブ向けに発展させたPASBECONAという型も紹介されています。PASONAは一度作って終わりの公式ではなく、提唱者自身が時代に合わせて書き換え続けてきた型です。
旧版の書き方の例は、売れる文章の構造──プロのコピーライターが使うフレームワークと実例集で紹介しています。新旧を並べて読むと、2つ目のAの温度差がよくわかると思います。
QUESTフォーミュラ・AIDMAとの違いと使い分け
PASONAとQUESTフォーミュラのいちばんの違いは、入口と「絞り込み」の位置です。PASONAは読み手の問題から入って最後のほうで絞り込み、QUESTは絞り込みから入ります。
| 型 | 入口 | 絞り込みの位置 | 向いている場面 |
|---|---|---|---|
| 新PASONA | 読み手の問題(Problem) | 後半(提案の直後) | 悩みがはっきりしていて、本人も自覚している商材 |
| QUEST | 読み手の絞り込み(Qualify) | 冒頭 | 「これは自分向けだ」と先に思ってもらいたい商材 |
| AIDMA | 注意(Attention) | 型の中にない | 文章の手順より、認知から購買までの全体像をつかむとき |
同じ「絞り込み」でも、置き場所で働きが変わります。QUESTの絞り込みは「この先を読むべき人」を選ぶ入口の扉です。PASONAの絞り込みは、条件を示したあとで「この提案は、こういう人のためのもの」と線を引く出口の扉で、読み手に自分が選ばれた側だと感じてもらう役目を持っています。QUESTの詳しい書き方はQUESTフォーミュラとは?セールスコピーの型を例文つきで解説にまとめています。
AIDMAは、そもそも書く手順の型ではありません。生活者が商品を知ってから買うまでの心の段階を説明するモデルなので、一本のLPを組み立てる道具としては粒度が大きすぎます。AIDMAで全体の流れをつかみ、一本の文章はPASONAかQUESTで書く、という分担が実務では回しやすいと思います。顧客を主人公、売り手をガイド役に置いて物語の順で組み立てる型と比べたいときは、ストーリーブランド戦略(SB7)の7要素を並べて読むと、問題から入る点は同じでも語り手の立ち位置が違うことがわかります。
Problemの奥にある「人はなぜそれを解決したいのか」を掘るときは、LF8(ライフフォース8)とは?人間の8つの欲求一覧と使い方で整理した欲求の地図が役に立ちます。表面の問題が「領収書が面倒」でも、その奥には「月末の夜を家族と過ごしたい」があるかもしれない。そこまで降りると、Affinityの一文の温度が変わります。
PASONAの法則を実務でどう使うか──Problemの解像度で決まる
PASONAを使うときにいちばん時間をかけたいのは、最初のProblemです。ここが曖昧なまま書き進めると、親近感も解決策も、すべて少しずつ的を外します。そもそも読み手は広告の文章を読まない・信じない・行動しないという前提は、3つのNOT(読まない・信じない・行動しない)を越えるコピー術で整理しました。
学生時代、博報堂のインターンの頃に、ある先輩からクリエイティブブリーフを何度も書き直させられました。赤字の常連は「具体性が弱い」と「で、結局、何が課題なのか分からない」。当時は「たかがブリーフ1枚に、なぜそこまで」ときつく感じていました。でもいまは、PASONAのProblemを書くたびにあの赤字を思い出します。問題の言い当てが甘いと、そのあとどれだけ手を動かしても、文章は読み手の痛みの横を素通りしていくからです。
ぼくがPASONAで書くときの手順は、次のとおりです。
- Problemは、売り手の言葉ではなく読み手が口にする言葉で書く。「経理業務の効率化」ではなく「月末の領収書の束」
- Affinityでは不安を足さない。共感とは痛みを大きくすることではなく、言い当てて隣に座ること
- Solutionは機能を並べず、「なぜそれで解けるのか」の仕組みを一つ示す
- Offerは条件を数字で書く。「お得に」ではなく、何がいくらで、やめたいときにどうなるか
- Narrowは本当に絞る。「どなたでも歓迎」は、誰にも向いていないのと同じ
- Actionは一つにする。資料請求と無料相談と購入を並べると、人は選べずに閉じる
失敗しやすいのは、Affinityのつもりで旧版のあぶりたてに戻ってしまうことです。「このままだと、毎月損をし続けます」と書いた瞬間、その一文は寄り添いではなく脅しになります。書き終えたら、2つ目のAの段だけを読み返して、読み手を追い詰める言葉が混ざっていないかを確かめると、新旧の差がそのまま点検の基準になります。
もう一つ、アクセンチュアでBtoBマーケに携わっていた頃から、法人向けの資料でよく見てきたつまずきがあります。冒頭の「問題」の欄に、読み手の困りごとではなく、売り手が言いたい機能の裏返しが入ってしまうことです。「データが分断されている」は、売り手から見た問題であって、担当者が夜に頭を抱えている問題とは限りません。PASONAのPは、相手の頭の中にある言葉で書いたときにだけ機能します。
PASONAの法則は古い?2026年時点での答え
旧PASONAのあぶりたては古くなりましたが、新PASONAの骨格は古くなっていません。「古い」という声の多くは、改訂前の5段の型をそのまま使った文章への違和感です。
「古い」と言われる理由は、大きく3つあると思っています。一つ目は既視感です。「このままでは大変なことになります」から始まるLPが型どおりに量産された結果、情報感度の高い生活者ほど、冒頭の数行で型を見抜くようになりました。これは旧版の問題で、Affinityで書かれた文章には当てはまりにくいものです。
二つ目は長さです。PASONAはもともと長いセールスレターやLPを前提にした型なので、SNSの投稿やショート動画のように一画面で判断される場では、6段を順に読んでもらうことは期待できません。ただ、型を「長さ」ではなく「順番」として使えば答えは変わります。痛みを言い当て、寄り添い、解決策を一行で添える。この3段だけでも、いきなり商品名から入る投稿とは読後感がまるで違います。
三つ目は、表示のルールです。消費者庁が所管する景品表示法は、うそや大げさな表示を規制しています。不安を過度にあおり、根拠のない効果を約束するあぶりたては、文章の品位の問題である前に、表示の問題になりうるものです。2026年の日本でPASONAを使うなら、Agitationを封印した新版で書くことが、そのまま守りにもなります。
付け加えると、神田さんは、エンタメやファッションのように問題が見えにくい商材でも、心の深いところに痛みが潜んでいると説明しています。ぼくもその見方には同意します。ただ、日本の生活者を相手に隠れた痛みを掘り当てにいく書き方は、加減を誤るとすぐ押しつけに見えます。痛みが浅い商材なら、無理にProblemから入らず、QUESTのように絞り込みから入るほうが自然に書けることも多いです。
PASONAの法則に関するよくある質問
旧PASONAと新PASONAの違いは何ですか?
大きな違いは2つです。2つ目のAがAgitation(あぶりたて)からAffinity(親近感)に変わったことと、解決策に含まれていたOffer(提案)が独立して6段になったことです。改訂は2016年の著書「稼ぐ言葉の法則」で示されました。
PASONAの法則は古くてもう使えませんか?
使えます。古くなったのは、問題を煽って不安を大きくする旧版の書き方です。読み手の痛みを言い当てて寄り添う新版の骨格は、LPやメール、営業資料でいまも機能します。
PASONAとQUESTフォーミュラはどちらを使えばいいですか?
入口で選ぶのがおすすめです。読み手の悩みがはっきりしている商材ならProblemから入るPASONA、まず「自分向けだ」と思ってもらいたいならQualifyから入るQUESTが合います。迷ったら両方で書いて、押しつけがましくないほうを選ぶのが現実的です。
PASONAの法則はSNS投稿でも使えますか?
使えます。ただし6段をすべて並べると長くなるので、短文ではProblemとAffinityで引き込み、SolutionとActionを一行ずつ添える程度に縮めます。順番を守るだけでも、売り込みの匂いはかなり薄まります。
おわりに──古くなったのは、型ではなく煽り
PASONAの法則は、穴を埋めれば売れる魔法の公式ではありません。人が自分の問題をわかってもらい、納得し、条件を確かめ、動くまでの順番を6つの言葉にまとめた地図です。そして提唱者の神田さん自身が、その地図の一番危うい場所を書き換えてきました。
PASONAが古くなったのではない。煽りが古くなっただけ。
痛みを大きくして動かす文章から、痛みをわかって動いてもらう文章へ。2つ目のAを「あぶりたて」から「親近感」に読み替えるだけで、この型はまだ何年も使えると思っています。もし使い方で迷うことがあれば、ぼくのXアカウント(@yosooi3)に問いかけてもらえれば、できる範囲で答えようと思います。