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電子契約とは?印紙不要の理由と法的効力、立会人型・当事者型の違い

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最終更新:2026年10月19日

電子契約とは、紙の契約書と押印のかわりに、PDFなどの電子データと電子署名で結ぶ契約のことです。民法は、法令に特別の定めがある場合を除いて契約の成立に書面を求めていないので、電子でも契約は成立します。電子署名法3条の要件を満たす電子署名があれば、そのデータは本人が作ったものと推定され、電磁的記録は印紙税の課税対象になりません。この記事では、e-Govの条文と、総務省・法務省・経済産業省(のちにデジタル庁・法務省が改定)のQ&A、国税庁の資料で確認できた範囲だけを使って、立会人型と当事者型の違い、一人法人・個人事業主が使うときの注意を整理します。特定の電子契約サービスはすすめません。内容は最終更新日時点の制度にもとづいています。

電子契約とは?結論から

電子契約は、契約の中身は紙と同じで、「本人が作った証拠」と「保存のしかた」が紙と違う契約です。紙の契約書と並べると、違いは次の表のとおりです。

比べる点 紙の契約書 電子契約 確認した公式ページ
契約が成立する根拠 どちらも当事者の合意。書面の作成その他の方式は、法令に特別の定めがある場合を除き不要(民法522条2項) e-Gov 民法
本人が作ったと推定される条件 本人または代理人の署名か押印(民事訴訟法228条4項) 本人だけが行うことができる電子署名(電子署名法3条) e-Gov 民事訴訟法/e-Gov 電子署名法
印紙税 課税文書なら必要 電磁的記録は文書に含まれず、課税されない 国税庁 質疑応答事例
税法上の保存 紙で保存 電子帳簿保存法の「電子取引」にあたり、データで保存する 国税庁 電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】
相手に求めること 署名・押印と郵送 電子で結ぶことへの合意と、署名の操作 内閣府・法務省・経済産業省 押印についてのQ&A

電子契約の「法的効力」を心配する声は多いのですが、契約の成立そのものは紙でも電子でも同じ合意です。差が出るのは、あとで相手と争いになったときに、そのデータを本人が作ったと示せるかどうかです。電子署名法と各省のQ&Aは、主にこの「示し方」について書かれています。

制度・要件──電子署名法2条・3条と印紙税

電子契約の制度は、電子署名の定義(電子署名法2条)、本人が作ったと推定される条件(同法3条)、印紙税がかからない根拠(国税庁の質疑応答事例)の3つで説明できます。条文はe-Gov法令検索で確認しました。

電子署名法2条1項は、「電子署名」を、電磁的記録に記録できる情報について行う措置で、次の2つの要件をどちらも満たすものと定めています。

  1. その情報が、措置を行った者の作成にかかるものであることを示すためのものであること
  2. その情報について改変が行われていないかどうかを確認できるものであること

同法3条は、電磁的記録に記録された情報に本人による電子署名が行われているとき、その電磁的記録は真正に成立したものと推定すると定めています。ただし対象は、電子署名を行うために必要な符号や物件を適正に管理することで、本人だけが行うことができる電子署名に限られます。紙の契約書で本人の押印があれば本人が作ったと推定される、民事訴訟法228条4項の電子版にあたる規定です。法務省の電子署名法の概要と認定制度についても、電子署名法の施行により、一定の要件を満たす電子署名が行われた電子文書等は本人の意思にもとづき作成されたものと推定される、と説明しています。

押印も万能ではありません。内閣府・法務省・経済産業省の「押印についてのQ&A」(令和2年6月19日)は、契約は当事者の意思の合致で成立し、書面の作成や押印は特段の定めがある場合を除き必要な要件ではないとしています。そのうえで、押印による推定は相手方の反証で破られ得るもので、効果は限定的と書いています。紙か電子かより、成立の経緯を後から示せるかが大事、という整理です。

印紙税については、国税庁の質疑応答事例「取引先にメール送信した電磁的記録に関する印紙税の取扱い」が、印紙税の課税対象は課税物件表に掲げられた文書で、電磁的記録は文書に含まれないため課税されない、と答えています(関係法令は印紙税法2条)。紙なら印紙が必要な請負の契約書でも、電子で結べば印紙税はかかりません。

比べ方──立会人型と当事者型

電子契約サービスは、誰の署名鍵で暗号化するかによって、一般に「立会人型」と「当事者型」に分けて呼ばれます。この2つの呼び方は法令の用語ではありません。政府のQ&Aは、立会人型にあたるものを「利用者の指示に基づきサービス提供事業者自身の署名鍵により暗号化等を行う電子契約サービス」と呼んでいます。

比べる点 立会人型(事業者署名型) 当事者型
署名鍵は誰のものか サービス提供事業者自身の署名鍵(自動で発行する利用者名義の一時的な電子証明書を含む) 契約する本人の署名鍵。本人が認証事業者から電子証明書の発行を受けて使う
電子署名法2条の電子署名になるか 事業者の意思が介在する余地がなく、利用者の意思だけで機械的に暗号化されることが担保され、送信者や日時などの付随情報を含めて利用者の措置と言える場合は、利用者が措置を行った者と評価し得る(2条関係Q&A) 本人が自分の署名鍵で措置を行う
電子署名法3条の推定が働く条件 利用者と事業者の間のプロセスと、事業者内部のプロセスの両方で十分な水準の固有性を満たすこと。前者は2要素認証が例示されている(3条関係Q&A) 本人だけが行うことができる電子署名であること(3条)。国の認定を受けた認証業務もある(法務省)
相手に求める準備 サービスに登録したメールアドレスなどで認証して操作する(3条関係Q&Aの2要素認証の例を参照) 相手も電子証明書を用意する

2条関係Q&Aは令和2年7月17日に総務省・法務省・経済産業省が、3条関係Q&Aは令和2年9月4日に同じ3省が公表し、令和6年1月9日にデジタル庁と法務省が一部を改定しています。どちらも法務省の電子署名法に基づく特定認証業務の認定についてのページに掲載されています。改定後の3条関係Q&Aは、利用者と事業者の間のプロセスについて、登録済みのメールアドレスとパスワードに加え、SMSやトークンで受け取るワンタイム・パスワードを入力する方法などを、十分な水準の固有性を満たすと評価され得る2要素認証の例に挙げています。2要素認証が必須というわけではない、とも書かれています。

当事者型の基礎になるのは、電子署名法2条2項の「認証業務」、つまり利用者が電子署名を行ったことを確かめるための情報が、その利用者のものであることを証明する業務です。認証業務のうち一定の基準を満たすものは、内閣総理大臣と法務大臣の認定を受けられる制度があります(法務省)。

どちらを選ぶかについて、3条関係Q&Aの問5は、身元確認の水準やなりすましの防御レベルはサービスごとに様々で、低い場合は裁判で真正な成立の推定に不十分と判断される可能性があるとしています。そのうえで、契約の重要性の程度や金額に照らして、推定が得られない場合の損害も考えて慎重に選ぶのが適当、としています。電子契約を始める手順は次のとおりです。

  1. 相手と電子で結ぶことを合意する:押印についてのQ&Aは、メールで契約を結ぶことを事前に合意した場合、その合意を保存しておくと立証が容易になり得る例に挙げています
  2. 契約書のデータを確定する:最終版のPDFを1つに決め、版の取り違えを防ぎます
  3. 署名の方法を決める:電子契約サービスを使うか、電子証明書で自分で署名するか、PDFとメールのやり取りで結ぶかを、契約の重要性と金額で決めます
  4. 双方が署名・同意する:サービスを使う場合は、署名した人と日時の記録が残るかを確かめます
  5. データのまま保存する:署名済みのデータと、成立までのメールのやり取りを保存します

一人法人・個人事業主の判断ポイント

一人法人と個人事業主が電子契約を使うときは、法律上の立場と保存期間が、法人か個人かで少しずつ違います。違いが出る点を表に分けます。

論点 一人法人 個人事業主 確認した公式ページ
フリーランス法の「特定受託事業者」にあたる条件 代表者1人のほかに役員がなく、従業員を使用しない法人 従業員を使用しない個人 e-Gov 特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(2条・3条)
発注側が示す取引条件の方法 給付の内容・報酬の額・支払期日などを、書面または電磁的方法で示す。電磁的方法で示した場合、受託側が書面を求めたら、原則として遅滞なく交付する
電子契約のデータの保存 所得税・法人税の保存義務者は、電子取引のデータをデータのまま保存する。令和6年1月1日以後の電子取引は、データの保存に代えて印刷した書面で保存することは認められない 国税庁 電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】(問2・問17・問29)
契約書の保存期間 7年(確定申告書の提出期限の翌日から。青色申告で欠損金が生じた事業年度などは10年) 青色申告者は5年(作成または受領の日の属する年の翌年3月15日の翌日から)

受注することが多い一人法人にとっての要点は、フリーランス法の対象に一人法人も入っていることです。同法2条1項2号は、代表者以外に役員がなく、従業員を使用しない法人を「特定受託事業者」に含めています。発注側には取引条件を書面か電磁的方法で示す義務があるので(3条)、電子契約やメールで条件を受け取ったら、そのデータが自分を守る記録にもなります。

自分から電子契約を提案する側になるときは、相手の会社に電子で結ぶ慣れがあるかを先に確かめます。立会人型なら相手はメールから操作するだけですが、当事者型は相手にも電子証明書の準備を求めます。どの方式でも、相手が電子で結ぶことに合意していることが出発点です。新しい取引先なら、相手の会社が実在するかを法人番号公表サイトで確かめておくと安心です。調べ方は法人番号とはの記事に書きました。

ぼくは独立するとき、会社名と同じドメインを取り、会社のメールアドレスを持ちました。見積書を送り、取引先と契約を交わすとき、会社名とそろったメールアドレスがあることは、小さいけれど信用の一部になりました。そのときの準備は一人で合同会社を設立したときにやったことリストにまとめています。電子契約は、そのメールアドレスとやり取りの記録が、そのまま契約の証拠の一部になる仕組みでもあります。電子署名そのものを自分で扱う手順は、会社設立の場面ですが電子定款を自分で作る方法で書きました。電子契約サービスの利用料をどの科目で処理するかは、サブスクの勘定科目の記事が参考になります。

よくある間違いと注意点

電子契約でいちばん多い間違いは、「電子で結んだから、紙に印刷して保存しておけば十分」と考えることです。国税庁の電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】問29によると、所得税と法人税の保存義務者が令和6年1月1日以後に行う電子取引では、データの保存に代えて出力した書面で保存することは認められません。ほかにも注意したい点を並べます。

  • どんな契約でも電子で結べると思い込む:民法522条2項は「法令に特別の定めがある場合を除き」書面などの方式を求めていません。逆に言えば、法令で書面などが定められた契約は例外になります。自分の契約が例外にあたらないかは、個別に確かめてください。
  • 電子契約のあとに紙で変更契約書を交わす:国税庁の質疑応答事例「変更契約書に電磁的記録(電子契約)を引用する旨の記載がある場合」によると、紙の変更契約書は、そこに書かれた内容だけで印紙税の課税文書かどうかを判断します。紙で交わした時点で、印紙が必要になることがあります。
  • 印刷した紙に双方が署名し直す:国税庁のNo.7120は、メールで送られて送付先で出力された文書は写しと同様で課税対象にならないとしています。ただし、双方の署名・押印のある紙は、契約の成立を証明する文書として課税対象になり得ます。
  • メールアドレスだけで本人と決めつける:3条関係Q&Aの問4は、裁判で推定が認められるには、サービスの利用者と契約書の作成名義人が同じであることを立証する必要があるとしています。新しい相手なら、契約前の本人確認の情報や、成立までのやり取りを保存しておきます(押印についてのQ&A 問6)。
  • 無料かどうかだけで選ぶ:無料プランの有無や上限はサービスごとに違い、この記事では扱いません。選ぶ基準は、3条関係Q&Aのとおり、契約の重要性と金額に見合う本人確認と記録が残るかです。

この記事は、最終更新日時点の制度で、e-Gov・法務省・国税庁で確認できた範囲だけを書いています。個別の判断(自分の会社がどうするか)は、税理士・司法書士・社労士に確認してください。契約の中身そのものの法律相談は弁護士の領域です。

電子契約に関するよくある質問

電子契約について、検索で一緒に調べられている「無料」「印紙不要」「法的効力」「立会人型」の疑問に答えます。内容は、最終更新日時点で公式ページで確認できたものだけです。

電子契約は無料でできますか?

契約は当事者の合意で成立するので、PDFとメールのやり取りで結ぶこと自体に費用はかかりません。ただし、本人が作ったことを後から示しにくくなるため、押印についてのQ&Aは、電子で結ぶ合意の保存やPDFへのパスワード設定などの工夫を挙げています。電子契約サービスの無料プランの有無や上限は、各社の公式ページで確認してください。

電子契約に印紙が不要なのはなぜですか?

印紙税の課税対象は、印紙税法の課税物件表に掲げられた文書で、国税庁の質疑応答事例は電磁的記録は文書に含まれないと答えているからです。紙なら印紙が必要な請負の契約書でも、電子で結べば印紙税はかかりません。紙に印刷して双方が署名し直した場合は別です。

電子契約に法的効力はありますか?

あります。民法522条2項により、法令に特別の定めがある場合を除いて、契約の成立に書面は要りません。さらに、本人だけが行うことができる電子署名があれば、電子署名法3条により、そのデータは本人が作ったものと推定されます。

立会人型と当事者型はどちらを選べばいいですか?

3条関係Q&Aは、契約の重要性の程度や金額に照らし、推定が得られない場合の損害も考えて慎重に選ぶのが適当としています。立会人型は相手がサービス上の認証で署名でき、当事者型は相手にも電子証明書の準備を求めます。日々の取引の量と、一件ごとの重さで決めてください。

おわりに──電子契約で守るのは、紙ではなく「合意した経緯」

電子契約は、ハンコを電子に置き換える道具ではありません。契約はもともと合意で成立していて、紙と押印はその合意を後から示すための記録でした。電子契約は、その記録をデータと署名の履歴で残す方法です。印紙が要らないことより、合意した経緯をデータのまま残せることのほうに価値があります。

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