最終更新:2026年10月17日
薬機法で使えない広告表現とは、医薬品・医薬部外品・化粧品・医療機器などについて、認められた範囲を超えて効能効果を言う表現や、効果や安全性を保証する表現、最大級の言葉で強調する表現のことです。根拠は医薬品医療機器等法(薬機法)第66条の誇大広告の禁止と第68条の承認前の医薬品等の広告の禁止で、具体的な線引きは厚生労働省の「医薬品等適正広告基準」とその解説に書かれています。化粧品で言える効能は通知で定めた56項目までで、健康食品は医薬品のような効能を言った時点で薬機法の問題になります。結論から言えば、薬機法の広告ルールが問うのは「効くかどうか」ではなく「その商品に言ってよいと認められた範囲かどうか」です。効きそうに書くほど、書けなくなる。この記事では、条文と基準の全体像、NG表現とOK言い換えの対応表、健康食品の3層の規制、アフィリエイトの記事を書く側の確認手順を、公式の資料に書かれた範囲でまとめます。医学的な判断は扱いません。
薬機法で使えない広告表現とは?66条・68条と適正広告基準の一覧
薬機法の広告規制の土台は、虚偽・誇大な広告を禁じる第66条と、承認を受けていない医薬品などの広告を禁じる第68条の2つです。どちらも主語が「何人も」なので、メーカーだけでなく、広告を作る人や記事を書く人も対象に含まれます。
| 決まり | 中身 | 違反したとき |
|---|---|---|
| 第66条第1項 | 医薬品・医薬部外品・化粧品・医療機器・再生医療等製品の名称、製造方法、効能、効果、性能について、明示的か暗示的かを問わず、虚偽または誇大な記事を広告し、記述し、流布してはならない | 措置命令(第72条の5)、課徴金(第75条の5の2)、2年以下の拘禁刑または200万円以下の罰金(第85条) |
| 第66条第2項 | 医師その他の者が効能効果を保証したと誤解されるおそれがある記事も、第1項に当たる | 同上 |
| 第68条 | 承認や認証を受けていない医薬品・医療機器・再生医療等製品について、名称や効能効果などを広告してはならない | 措置命令(第72条の5)、第85条の罰則 |
| 広告に当たる3要件 | 顧客を誘引する意図が明確、特定の商品名が明らか、一般人が認知できる状態。3つとも満たせば広告と判断される(1998年の厚生省通知) | ― |
具体的に何が誇大に当たるかは、厚生労働省の「医薬品等の広告規制について」のページに載っている「医薬品等適正広告基準」(2017年9月29日全面改正)とその解説で決まっています。基準は新聞・テレビだけでなく、ウェブサイトやSNSを含むすべての媒体の広告が対象です。マーケターが踏みやすい項目を抜き出すと、次のようになります。
| 基準の項目 | 中身 | 解説に挙がっている例 |
|---|---|---|
| 効能効果の範囲 | 承認された範囲を超えない。化粧品は「化粧品の効能の範囲」を超えない | 化粧品で薬理作用による効能を言う |
| 保証表現の禁止 | 効能効果や安全性が確実だと保証する表現をしない | 「根治」「全快する」「安全性は確認済み」「副作用の心配はない」 |
| 最大級表現の禁止 | 効能効果や安全性について最大級やそれに類する表現をしない | 「最高のききめ」「無類のききめ」「絶対安全」「売上げNo.1」(化粧品と、新指定医薬部外品以外の医薬部外品は除く) |
| 発現程度の表現 | 速効性や持続性は医学・薬学上認められた範囲を超えない | 「すぐ効く」「飲めばききめが3日は続く」 |
| 医薬関係者等の推せん | 医薬関係者や病院、学会などが推せん・公認している旨の広告をしない。事実でも不可 | 医師の推せん、「厚生労働省認可」などの表現 |
| 体験談 | 使用経験や体験談の広告は、化粧品などの使用感の説明やタレントが単に製品を説明する場合などを除いて行わない | 愛用者の感謝の言葉、「私も使っています」 |
化粧品・雑貨で言えること、言えないこと──効能56項目とNG・OK言い換え表
化粧品の広告で言える効能は、厚生労働省の通知「化粧品の効能の範囲の改正について」(2011年7月21日)に並ぶ56項目と、事実に反しないメーキャップ効果・使用感までです。56項目には「肌のキメを整える」「皮膚にうるおいを与える」「肌にはりを与える」「日やけによるシミ、ソバカスを防ぐ」などがあり、56番目の「乾燥による小ジワを目立たなくする」は、日本香粧品学会の「化粧品機能評価ガイドライン」に基づく試験などで効果を確かめた場合に限られます。
次の表は、言いたくなる表現を、基準と解説に書かれた範囲で言い換えたものです。言い換え後の言葉も、商品の種類や事実に合うときだけ使えます。
| 言いたくなる表現(NG例) | 基準・解説での扱い | 公式資料に沿った言い方(OK例) |
|---|---|---|
| シワが消える | 化粧品の効能の範囲を超える | 「乾燥による小ジワを目立たなくする」(試験で確かめた場合に限る)。ファンデーションなどの「小じわを目立たなく見せる」(メーキャップ効果・事実に反しない限り) |
| シミが消える、美白する | 化粧品の効能の範囲を超える | 日やけ止めなどで「日やけによるシミ、ソバカスを防ぐ」。薬用化粧品(医薬部外品)なら承認された範囲で、作用機序によっては「メラニンの生成を抑え、しみ、そばかすを防ぐ」 |
| 肌の奥から細胞を活性化 | 化粧品はほとんどが薬理作用で効能を認められたものではないため、薬理作用による効能は言えない | 「皮膚にうるおいを与える」「肌を整える」など56項目の範囲の言葉 |
| 話題の○○成分配合で効く | 特定の成分を強調すると有効成分だと誤解させるため、原則として認められない | 配合の目的を併記して誤解を与えない書き方にする(例:保湿の目的で○○を配合) |
| 皮膚科医も推薦 | 医薬関係者の推せんは事実でも不可。事実でなければ第66条第2項にも抵触 | 推せんを広告に使わない。美容師などが店頭で使い方を実演することは禁止の趣旨ではない |
| 絶対に肌荒れしない、副作用なし、刺激が少ない | 安全性の保証、最大級の表現に当たる | 効能の範囲にある「肌荒れを防ぐ」。低刺激性は立証されていて安全性を強調しない場合に限る |
| 愛用者の声「3日でニキビが治りました」 | 体験談は使用感の説明に限られ、「治る」は効能の範囲を超える | 使用感を事実の範囲で書く。洗顔料なら「(洗浄により)ニキビ、アセモを防ぐ」 |
雑貨も油断できません。薬機法第2条は、医薬品や医療機器を「疾病の診断、治療又は予防」や「身体の構造又は機能に影響を及ぼすこと」を目的とする物と定義しています。定義が「目的」で書かれているため、雑貨として売っている物でも、広告で病気が治る、体の機能が良くなるとうたうと、承認のない医療機器や医薬品の広告として第68条が問題になりえます。雑貨の広告では効能を言わず、素材や形、使い方といった事実を書くのが基本です。当たるかどうかは個別に判断されるので、迷ったら最後の章の窓口に確かめてください。
健康食品は3層で見る──薬機法・景品表示法・健康増進法の違い
健康食品の広告は、薬機法・景品表示法・健康増進法の3つの法律が重なって規制しています。同じ一文が3つの法律に同時に引っかかることもあります。
| 法律 | 何を禁じるか | 誰が対象か | 所管 |
|---|---|---|---|
| 薬機法 第68条など | 医薬品のような効能効果を言うと医薬品とみなされ、承認がなければ効能を広告できない | 何人も | 厚生労働省・都道府県 |
| 景品表示法 第5条 | 品質などを実際より著しく優良と示す表示、取引条件を著しく有利と誤認させる表示 | 商品を供給する事業者(広告主) | 消費者庁 |
| 健康増進法 第65条第1項 | 食品として売る物の健康保持増進効果などについて、著しく事実に相違する表示、著しく人を誤認させる表示 | 何人も | 消費者庁・都道府県 |
3つの関係は、消費者庁の「健康増進法(誇大表示の禁止)」のページにある「健康食品に関する景品表示法及び健康増進法上の留意事項について」(2022年12月5日一部改定)に整理されています。留意事項は、「便秘改善」「花粉症に効果あり」のような疾病の治療・予防の効果や、「疲労回復」「免疫力を高める」「アンチエイジング」のような身体の機能の一般的な増強の効果を言うものは、薬機法上の医薬品とみなされ、承認を受けない限り表示できないとしています。言葉を直接使わなくても、「腸活」「デトックス○○」「血液サラサラ」のような商品名やキャッチフレーズ、医師の談話や体験談の引用でも、効果をうたう表示に当たります。
では健康食品は何なら書けるのか。留意事項では、含有する成分の量(「カルシウム○○mg配合」)や特定の原材料を使っている旨も「健康保持増進効果等」に含まれ、事実であれば直ちに違反にはなりません。効果を言わずに、原材料、含有量、味、食べ方といった事実を書くのが言い換えの基本になります。特定保健用食品は消費者庁長官の許可を受けた表示、機能性表示食品は届け出た表示の範囲でだけ機能を言えます。届け出た内容を超える表示は問題になると留意事項は書いています。
実務でどう使うか──アフィリエイトの記事を書く側の確認手順
アフィリエイトの記事を書くときの実務は、商品の良さを自分の言葉で盛る前に、その商品に「言ってよい範囲」を先に確かめることです。書き手は広告主ではありませんが、薬機法第66条と健康増進法第65条は「何人も」と定めています。
消費者庁の留意事項は、アフィリエイターは通常、商品を自ら供給していないので景品表示法上の措置を受ける事業者には当たらないが、表示の内容の決定に関与している場合は、健康増進法上の措置を受ける者に当たりうるとしています。広告主の側も、表示の内容をアフィリエイターに任せていれば責任を問われます。
| 手順 | 確かめること |
|---|---|
| 1. 商品の区分を確かめる | 医薬品、医薬部外品、化粧品、健康食品(特定保健用食品・機能性表示食品を含む)、雑貨のどれか。パッケージや販売ページの表示で確認する |
| 2. 言ってよい範囲を確かめる | 承認された効能効果、化粧品の56項目、許可や届出の表示。広告主の公式の説明を超える効能を自分で足さない |
| 3. 体験の書き方を決める | 使用感や使い方など事実の範囲にとどめる。「治った」「○kg痩せた」のように効果を示す書き方をしない |
| 4. 強調の言葉を外す | 「最高」「絶対」「副作用なし」「医師も推薦」など、保証・最大級・推せんの言葉が残っていないか |
| 5. 本文以外も見る | 見出し、画像の説明、ボタンの文言、商品名の横の一言。暗示的な表現も第66条の対象 |
ブログを書く側に立つと、いちばん効き目を書きたくなるのは見出しと締めの一言です。コピーの作り方では、買った人に起きる良い変化を先に言う型が強いと書きました(キャッチコピーの作り方とコツ|型5つと手順を名コピーの例で解説)。でも薬機法の領域では、その良い変化が「効能」の言葉になった瞬間に書けなくなります。効きそうに書くほど、書けなくなる。だからこの領域では、効果ではなく、使う場面や使い心地の側から良さを言い直すことになります。
体験談を他人に書いてもらう場合は、広告であることを隠した表示を禁じるステマ規制も関わります。仕組みはUGCとは?マーケティングでの意味と種類、ステマとの違いを解説にまとめました。
日本市場・2026年時点での注意点──課徴金・措置命令と法的助言ではないこと
2026年の時点で押さえておきたいのは、薬機法の誇大広告に課徴金と措置命令があり、実際に命令が出ていることと、健康食品の監視が四半期ごとに続いていることです。
課徴金制度は2021年8月1日に始まりました。厚生労働省の資料によると、第66条第1項に違反した期間の対象商品の対価の合計額に4.5%を掛けた額が課徴金になり、225万円未満なら命じられません。厚生労働省は2025年11月、家庭用電位治療器を販売するインプレッション株式会社に対し、第72条の5第1項に基づく措置命令を行いました。認証された効能は「頭痛、肩こり、不眠症及び慢性便秘の緩解」なのに、体験会場で営業員が、継続して使えば糖尿病や高血圧などが緩和・治癒するかのような説明をしていたことが、虚偽または誇大な広告とされています。会場での口頭の説明も広告として扱われた点は覚えておきたいところです。
健康食品については、消費者庁が2026年9月4日、同年4月から6月のインターネット監視の結果として、117事業者の126商品に健康増進法第65条第1項に違反するおそれのある表示があったとして改善指導を行ったと公表しました。挙がっている表示には、ダイエット、脂肪燃焼、免疫力向上、腸内環境を整える、などが並んでいます。
法改正では、2025年5月に公布された薬機法の改正(令和7年法律第37号)があります。厚生労働省の改正のページの概要を見る限り、柱は品質と安全性の確保、安定供給、創薬、薬局の機能で、2026年10月17日時点では第66条や第68条を変える内容は見当たりませんでした。
この記事は薬機法などの一般的な解説であって、個別の広告についての法的助言ではありません。厚生労働省のページは、個別の相談は都道府県の薬務主管課に問い合わせるよう案内しています。健康食品の表示は消費者庁、難しい案件は広告表示にくわしい弁護士にも確認してください。
薬機法の広告表現に関するよくある質問
薬機法の広告の3要件とは何ですか?
顧客を誘引する意図が明確であること、特定の商品名が明らかにされていること、一般人が認知できる状態であることの3つです。1998年の厚生省の通知で示されたもので、3つとも満たすものが広告に当たると判断されます。ウェブサイトやSNSの投稿も、この3つを満たせば広告として扱われます。
化粧品の効能56項目とは何ですか?
化粧品の広告で言える効能を、厚生労働省の通知で56項目に定めたものです。「肌のキメを整える」「皮膚にうるおいを与える」などが並び、56番目の「乾燥による小ジワを目立たなくする」は、決められた試験などで効果を確かめた場合に限って使えます。この範囲を超える効能は、化粧品の広告では言えません。
健康食品で「痩せる」と書くと何の法律に関わりますか?
消費者庁の留意事項は、「脂肪燃焼を促進!」のような身体の機能の一般的な増強をうたう表示を医薬品的な効能の例に挙げており、承認がなければ薬機法上表示できません。著しく事実と違う、または誤認させる表示なら健康増進法第65条、広告主が実際より著しく優良と示せば景品表示法第5条の問題にもなり、消費者庁の監視でも「ダイエット」をうたう表示が改善指導の対象に挙がっています。一つの言葉に3つの法律が関わる、と考えておくと安全です。
アフィリエイターや個人のブログも薬機法の対象になりますか?
薬機法第66条は「何人も」と定めているので、商品を売る会社に限らず、広告を書く人も対象に含まれます。健康食品についても、消費者庁の留意事項は、表示の内容の決定に関与したアフィリエイターは健康増進法上の措置を受ける者に当たりうるとしています。自分は広告主ではないから関係ない、とは言えません。
おわりに──言える言葉は、効き目ではなく範囲で決まる
薬機法の広告ルールを読んでいると、効き目のある商品ほど書きにくいことに気づきます。良いものだから、もっと良く言いたくなる。でもその気持ちが強いほど、言葉は認められた範囲の外へ出ていきます。
効く言葉を探すのではない。言ってよい言葉の中から、伝わる言葉を探す。
書きたい一文が浮かんだら、その言葉が56項目や承認された効能の中にあるかを、先に確かめてみてほしいと思います。範囲の中で言い直した言葉は弱く見えても、消されずに長く読まれます。