退職願は「辞めさせてください」とお願いする書類で、退職届は「辞めます」と通告する書類です。上司に口頭で伝えて退職日まで決まっているなら、どちらを出しても辞める日は変わりません。会社に決まった書式があればそれが最優先で、なければ退職願を出しておけば角は立ちません。
この記事には、そのまま使える退職願と退職届のテンプレート(Word・縦書き)を置いています。書き方、用紙と封筒、出す順番までまとめました。
ぼくは博報堂で13年、アクセンチュアで5年働いて、40歳で独立しました。辞めるときに大事なのは書類の体裁より、出すタイミングと順番だと思っています(2026年10月時点の情報です)。
退職願・退職届のテンプレート(Word・縦書き)をダウンロードする
退職願と退職届のテンプレートを、縦書きのWord2種類とコピペ用のテキストで無料配布しています。
▼ 退職願のテンプレート(Word・B5縦書き)をダウンロードする
▼ 退職届のテンプレート(Word・B5縦書き)をダウンロードする
Wordの2つは、〇の部分を書き換えるだけで完成する縦書きの書式です。用紙はB5で、三つ折りにすると長形4号の封筒にちょうど入ります。Wordを持っていない場合は、テキスト版をGoogleドキュメントに貼り付けて縦書き設定にすれば同じものが作れます。
書き上がりはこうなります(人物と会社名は架空です)。
退職願
私儀
このたび、一身上の都合により、来たる令和八年十二月三十一日をもちまして退職いたしたく、ここにお願い申し上げます。
令和八年十一月二日
営業部 第一課
山田 太郎 印
株式会社〇〇〇〇
代表取締役社長 〇〇 〇〇 殿
テンプレートは自由に編集して使ってかまいません。転載や再配布のときは、この記事へのリンクを添えてもらえると助かります。
退職願・退職届・辞表の違い
3つの違いは、誰が辞めることを決めるかです。退職願は会社に決めてもらう書類、退職届は自分で決めたことを知らせる書類、辞表は役員や公務員が使う書類です。
| 書類 | 意味 | 出すタイミング | 撤回 |
|---|---|---|---|
| 退職願 | 退職を願い出る(会社の承諾で成立) | 上司に口頭で伝えたあと | 会社が承諾する前ならできる場合がある |
| 退職届 | 退職を一方的に届け出る | 退職日が決まったあと、または退職願を受け取ってもらえないとき | 原則できない |
| 辞表 | 役職を辞する意思を示す | 役員・公務員が辞めるとき | 会社員は使わない |
ドラマで会社員が「辞表」を出す場面はよくありますが、一般の会社員が出すのは退職願か退職届です。
退職願は撤回できると言われますが、それは会社が承諾するまでの話です。最高裁は、人事部長が退職願を受け取った時点で会社の承諾があったと判断し、翌日の撤回を認めませんでした(大隈鐵工所事件・最高裁昭和62年9月18日判決)。出したら戻れない書類だと思って、気持ちを決めてから書くほうが安全です。
退職願の書き方|6つのパーツを右から順に
縦書きの退職願は、右の行から左へ6つのパーツを並べるだけです。
- 表題:1行目の中央に「退職願」と書く
- 書き出し:2行目の下のほうに「私儀(わたくしぎ)」と書く。「私事」でもかまわない
- 本文:「このたび、一身上の都合により、来たる令和〇年〇月〇日をもちまして退職いたしたく、ここにお願い申し上げます。」
- 日付:提出する日を書く。縦書きなら数字は漢数字にする
- 所属と氏名:行の下に寄せて書く。押印は法律上の要件ではないので、会社の慣行に合わせる
- 宛名:会社の代表者を、自分の名前より上の位置に書く。「代表取締役社長 〇〇 〇〇 殿」
自己都合で辞めるなら、退職理由は「一身上の都合」だけで十分です。転職先の話や会社への不満を書いても、得になることはひとつもありません。
退職届の場合は、本文の最後を「退職いたします。」に変えるだけです。宛名を直属の上司にしないこと、退職日と提出日を取り違えないことの2つは、書き終えたあとにもう一度確認します。
例外は、退職勧奨や会社の事業縮小など会社の都合で辞める場合です。このときに「一身上の都合」と書くと、自己都合退職として扱われて、失業給付の条件が不利になることがあります。会社から退職願を求められたら、書く前に人事に退職理由の扱いを確認します。
用紙・ペン・封筒の選び方
会社が決まった書式を用意しているなら、それを使います。ない場合は、次の組み合わせにしておけば失礼になりません。
- 用紙:白無地の便箋か、コピー用紙。サイズはB5かA4
- 書き方:手書きなら黒のボールペンか万年筆。消せるボールペンは使わない。パソコンで作って印刷してもかまわない
- 封筒:白無地で郵便番号の枠がないもの。B5を三つ折りなら長形4号、A4を三つ折りなら長形3号
- 封筒の表:中央に「退職願」
- 封筒の裏:左下に所属と氏名
便箋は、書き出しが上に来るように三つ折りにして入れます。手渡しならのり付けはしてもしなくてもかまいません。郵送するときは封をして、閉じ目に「〆」と書きます。
出す順番|退職願は「口頭で伝えたあと」に出す
退職願は、いきなり上司の机に置くものではありません。口頭で伝えて、退職日を話し合ったあとに出す書類です。
- 直属の上司に、口頭で退職の意思を伝える
- 上司と退職日を話し合って決める
- 退職願(会社の書式があればそれ)を、直属の上司に手渡す
- 会社が受理する
- 会社から求められたら、退職届をあらためて出す
いつまでに伝えるかは、就業規則の退職の項に書いてあります。「1か月前まで」としている会社が多く、法律上は期間の定めのない雇用なら、申し入れから2週間で契約が終わります(民法627条1項・出典:e-Gov法令検索 民法)。揉めずに辞めたいなら、就業規則の期限に合わせておくのが現実的です。
上司を飛ばして人事や社長に直接出すのは避けます。上司が人づてに知ると、それだけで引き継ぎの空気が悪くなります。伝える日の決め方と最初の一言は、転職を上司に伝えるタイミングと切り出し方に書きました。
受け取ってもらえないときは、退職届に切り替える
退職願は会社の承諾で成立する書類なので、上司が受け取らないと話が止まります。引き止めが続いて退職日が決まらないときは、退職届に切り替えます。
引き止めで辞めそびれる人は少なくありません。Job総研の「2025年 退職に関する意識調査」(20〜50代の社会人585人)では、54.9%が「辞めようと思っても辞められなかった経験がある」と答えています(出典:Job総研)。お願いの書類を出したまま待ち続ける必要はありません。
退職届は、会社の承諾がなくても効力がある書類です。期間の定めのない雇用なら、退職届が会社に届いてから2週間で退職が成立します。手渡しも拒まれる場合は、内容証明郵便で送れば、届いた日と書いた内容の記録が残ります。
昇給や異動で引き止められて迷ったときは、カウンターオファーとは|引き止めの構造と、受けていい条件を読んでから決めても遅くありません。
それでも話が進まない、あるいは上司と顔を合わせること自体がつらい事情があるなら、退職代行を使う手もあります。会社ともめそうなときや、有給消化や未払いの残業代まで話をつけたいときは、弁護士が対応するところを選びます。弁護士でない業者は、会社との交渉ができないからです。
退職代行の種類と、使ったあとの転職への影響は退職代行を使う前に知っておきたいことにまとめています。
ぼくが退職願を渡したときの失敗
退職願を渡すときに一番準備しておくべきなのは、文面ではなく、話すための時間です。
ぼくが会社を辞めたとき、書き上げた退職願を胸ポケットに忍ばせて部長と話しました。「ちょっと話したいんですが」と声をかけて、その場で時間をもらいました。話しているあいだ、心臓はずっとバクバクしていました。
いま振り返ると、もう少し前にきちんと時間を押さえておけばよかったと思っています。先に予定だけ入れておけば、相手もなんとなく察してくれて、当日はお互いに心の準備ができた状態で話せたはずです。
それができなかったのは、辞めると言いづらい雰囲気と立場だったからです。言い出す日を決めきれず、最後は勢いで声をかけるしかありませんでした。同じ言いづらさを抱えている人ほど、書類を整えるより先に、上司のカレンダーに予定をひとつ入れておくほうが当日の自分を助けてくれます。
書類は形式で、形式は調べればすぐわかります。難しいのは、それを差し出すまでの数分間のほうです。
よくある質問
退職願は手書きでないといけませんか?
法律上の決まりはありません。会社に書式や慣行がなければ、パソコンで作って印刷したものでも受理されます。迷う場合は、本文を印刷して氏名だけ手書きにしておくと無難です。
退職願と退職届は、両方出す必要がありますか?
通常はどちらか1通で足ります。会社によっては、退職願を受理したあとに所定の退職届を求めることがあるので、そのときに出せば十分です。
退職願を出したあとに撤回できますか?
会社が承諾する前なら撤回できる場合があります。ただ、人事の権限を持つ人が受け取った時点で承諾とみなされることがあり、その後の撤回は難しくなります。気持ちが固まってから出すのが前提です。
退職理由は「一身上の都合」以外に書くべきですか?
自己都合で辞めるなら「一身上の都合」だけで十分です。退職勧奨など会社の都合で辞める場合は、そう書くと自己都合扱いになることがあるので、人事に確認してから書きます。
まとめ:退職願は、辞める日が決まってから出す書類
退職願は会社にお願いする書類、退職届は会社に知らせる書類です。会社員が出すのはどちらかで、書式があるならそれに従い、なければテンプレートの〇を埋めれば完成します。
順番は、口頭で伝える、退職日を決める、退職願を手渡す。受け取ってもらえなければ退職届に切り替える。この流れさえ押さえておけば、書類で困ることはほとんどありません。
書き方を調べている時点で、辞めることはもう決まっているのだと思います。あとは日付を書き込むだけです。