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所得補償保険とは?就業不能保険との違いとフリーランスに必要か判定

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最終更新:2026年10月20日

所得補償保険とは、病気やけがで働けなかった期間の給与や事業の収益を補うために保険金を支払う損害保険です(国税庁 No.1760[令和8年4月1日現在法令等])。必要かどうかは、商品を見比べる前に「自分の立場で、公的な制度から何が出るか」で決まります。国民健康保険に入っている個人事業主には、会社員の健康保険にある傷病手当金が原則としてありません。この穴をどう埋めるかが判断の中心になります。

ぼくは40歳でtiny合同会社を一人で設立したマーケターです。独立したときの健康保険の選び方は独立したら保険証はどうなるかの記事に任せ、この記事は「働けなくなったときの収入」の備えだけを、厚生労働省・協会けんぽ・日本年金機構・国税庁と、業界団体の解説で確認できた範囲で整理します。特定の保険会社や商品はすすめません。2026年10月20日時点の制度で書いています。

所得補償保険とは?結論から

所得補償保険は、働けない状態が続いたときに、毎月決まった額を受け取れる保険です。必要性は、公的な制度で休業中の収入がどこまで出るかによって、人ごとに大きく変わります。

論点 要点
何を補う保険か 病気やけがで働けなかった期間の給与・収益(国税庁 No.1760)
受け取り方 免責期間が過ぎたあと、就業不能の1か月ごとに保険証券に書かれた額(平均月間所得が低ければその額)
会社員・一人法人の役員 健康保険の傷病手当金がある。まずそこで足りるかを見る
国保の個人事業主 傷病手当金は市町村が条例で定めた場合だけの任意給付。原則として出ないので、穴が大きい
税金 受け取った保険金は非課税。個人事業主が自分にかけた保険料は必要経費にならない(国税庁 No.1760)

就業不能の意味は、日本損害保険協会の解説では、入院や医師の指示による自宅療養などのために、保険証券に書かれた業務にまったく従事できない状態です。死亡や治ったあとは含まれません(日本損害保険協会 損害保険Q&A 問91)。「少しは働ける」状態で受け取れるかどうかは約款で決まるので、ここは商品ごとに確認が要ります。

公的保障の穴と所得補償保険の仕組み

働けなくなったときに公的な制度から出るお金は、加入している健康保険と年金の種類で決まります。いちばん差が出るのは、短期の休業を支える傷病手当金です。

制度 確認できた内容 出典
傷病手当金(協会けんぽ) 業務外の病気やけがで仕事に就けず、連続3日の待期のあと4日目以降も休み、給与の支払いがない日に支給。1日あたり、支給開始日以前12か月の標準報酬月額の平均÷30×2/3。支給期間は支給開始日から通算1年6か月。給与が出ていれば支給されず、傷病手当金より少なければ差額 協会けんぽ 傷病手当金
任意継続被保険者 任意継続の期間中に発生した病気・けがには、傷病手当金は支給されない 協会けんぽ 傷病手当金
国民健康保険 市町村と国保組合は、条例または規約の定めるところにより傷病手当金を支給できる(国民健康保険法58条2項)。厚生労働省は「いわゆる任意給付」と説明 e-Gov 国民健康保険法、厚生労働省 国民健康保険制度の概要(PDF)
障害基礎年金 障害等級1・2級が対象。令和8年4月分からの年額は、昭和31年4月2日以後生まれで1級1,059,125円、2級847,300円(子の加算あり)。障害の状態を見るのは原則として初診日から1年6か月を過ぎた日 日本年金機構 障害基礎年金、日本年金機構 障害認定日
障害厚生年金 厚生年金に入っている間に初診日がある人は1〜3級が対象。3級の最低保障額は令和8年4月分から635,500円(昭和31年4月2日以後生まれ) 日本年金機構 障害厚生年金

新型コロナの時期に国保で傷病手当金が出た話を聞いた人もいると思います。厚生労働省の資料では、国が財政支援したこの特例の対象は「被用者」で、適用は令和2年1月1日から9月30日の間に働けなかった期間でした(厚生労働省 医療保険部会資料(PDF))。自分で事業をしている人の休業を広く支える仕組みにはなっていません。住んでいる市区町村の国保に独自の給付があるかは、各自治体で確認してください。

所得補償保険の仕組みは、日本損害保険協会の解説によると次の3つで組み立てられています。保険金が出ない「免責期間」、保険金が出る最長の期間である「てん補期間」、そして受け取る額の上限になる「平均月間所得」(免責期間の直前12か月の所得の月平均)です。公的な制度と同じく、短い休みより長い休みに備える作りです。

所得補償保険と就業不能保険の違いと比べ方

所得補償保険と就業不能保険は、どちらも働けないときの収入を補う保険です。一般的には、所得補償保険は損害保険会社が、就業不能保険は生命保険会社が扱い、受け取れる条件と期間の考え方に違いがあります。

比べる点 所得補償保険 就業不能保険(就業不能保障保険)
主な扱い手(一般的には) 損害保険会社 生命保険会社(特約として付ける会社もある)
就業不能の考え方 入院・医師の指示による自宅療養などで、保険証券に書かれた業務にまったく従事できない状態 入院・在宅療養のほか、国民年金の障害等級1・2級や要介護2以上を対象に含める商品もあり、幅がある
支払いが始まる時期 免責期間のあと(期間は契約で決める) 60日などの支払対象外期間のあとに受け取るタイプが一般的
受け取る期間 てん補期間まで 保険期間の満了までや、一定期間など商品で異なる
精神疾患の扱い 損保協会の解説は精神障害を保険金が出ない主な場合に挙げている 対象に含む商品と除く商品がある

出典は、所得補償保険が日本損害保険協会 問91、就業不能保険が生命保険文化センター 就業不能保障保険です。どちらも「商品によって異なる」と繰り返し書いています。名前で選ぶのではなく、約款の就業不能の定義・支払いまでの日数・受け取る期間・対象外の病気の4つを並べて比べるのが確実です。

公的な制度で足りるかは、架空の数字で計算すると見えます。例:一人法人の役員で、標準報酬月額が12か月以上30万円の人が、業務外の病気で30日続けて休み、その間の役員報酬が出なかった場合です。

計算の段(例) 計算
1日あたりの額 300,000円÷30=10,000円、10,000円×2/3=6,667円(1円未満を四捨五入)
支給される日数 30日−待期3日=27日
30日休んだときの傷病手当金 6,667円×27日=180,009円
同じ30日、国保の個人事業主 条例に定めがなければ0円

検算します。6,667円は10,000円の約3分の2で、27日分は180,009円です。月30万円の報酬に対して、手元に入るのは6割ほどになります。国保の個人事業主はこの18万円がまるごとありません。所得補償保険を検討する意味がいちばん大きいのは、この差を貯蓄で何か月しのげるかを計算して、足りないと分かった人です。

個人事業主・一人法人の判断ポイント

個人事業主と一人法人の役員では、入っている公的な制度が違うので、同じ「フリーランス」でも穴の大きさが違います。表で分けると、どちらが民間の備えを厚く考える必要があるかがはっきりします。

比べる点 個人事業主(国保・国民年金=第1号) 一人法人の役員(協会けんぽ・厚生年金=第2号)
短期の休業 傷病手当金は原則なし(市町村の条例しだい) 傷病手当金あり。ただし休業中も役員報酬を払い続けると支給されない
長期の障害 障害基礎年金(1・2級) 障害基礎年金に加え、障害厚生年金(1〜3級)
仕事中のけが 労災保険の特別加入(任意)を検討 代表者は原則として労災の対象外。被保険者5人未満の事業所で従業員と変わらない仕事をしていれば健康保険で給付されるが、その場合も傷病手当金は出ない
所得補償保険を考える優先度 高い。短期の休業の穴を埋める手段が少ない 傷病手当金で足りない分と、1年6か月を超えた後を見て判断

仕事中のけがの扱いは、厚生労働省の通知(法人の代表者等に対する健康保険の保険給付について)で確認しました。一人法人の役員が傷病手当金を受けるには、休んでいる日の役員報酬が出ていないことが条件になります。役員報酬は期中に自由に変えられないので、休業時の扱いは役員報酬の変更タイミングの記事を読んだうえで税理士と相談するのが安全です。保険料の負担は役員報酬と社会保険料の計算にまとめています。

ぼくは独立するとき、健康保険の任意継続と国保を電卓で並べて比べました。独立準備でいちばん焦ったのも、この保険証まわりです。その後、法人化して社会保険に入り、保険料は国保や国民年金より重くなりました。それでも保障は国保より厚くなり、その中身が傷病手当金と出産手当金です(一人法人を作った体験の記事)。保険料の額と、働けなくなったときに出る手当は、同じ表に並べないと比べられません。任意継続と国保を比べるときも、保険料の列の隣に「傷病手当金」の列を足しておくと、この記事の論点がそのまま判断材料になります。

よくある間違いと注意点

いちばん多い間違いは、会社員時代の感覚のまま「休めば健康保険から何か出る」と思い込むことです。国保に切り替えた時点で、その前提はなくなります。

  • 国保にも傷病手当金があると思う:国民健康保険法では任意給付で、市町村が条例で定めた場合だけです。新型コロナの特例は被用者が対象でした
  • 任意継続なら会社員と同じだと思う:任意継続の期間中に発生した病気・けがに、傷病手当金は出ません
  • 保険料を経費に入れる:個人事業主が自分を被保険者にした所得補償保険の保険料は家事費で、必要経費になりません(国税庁 No.1760)。法人が払う場合の扱いは契約の形で変わるので、税理士に確認してください
  • 精神疾患も当然対象だと思う:所得補償保険では精神障害が支払われない主な場合に挙げられ、就業不能保険でも商品によって扱いが分かれます
  • 告知を軽く見る:契約時に健康状態の告知を求められ、内容によっては契約できない、または条件付きになることがあります(日本損害保険協会 問91)
  • 公的な制度を確かめずに額を決める:傷病手当金や障害年金で出る分を引かずに保険金額を決めると、保険料を払いすぎます

この記事は最終更新日時点の制度で書いています。特定の保険会社や商品をすすめるものではなく、保険料や返戻率の比較もしていません。商品の中身は各保険会社の約款と重要事項説明書で確認してください。個別の判断(自分の会社がどうするか)は、税理士・司法書士・社労士に確認してください。

所得補償保険に関するよくある質問

所得補償保険はフリーランスに必要ですか?

国保に入っている個人事業主は、傷病手当金が原則としてないので、検討する意味が大きい立場です。一人法人の役員は傷病手当金があるので、まずその額と期間で足りるかを計算します。どちらも、休んだときの固定費と貯蓄を並べてから決めるのが筋です。

所得補償保険と就業不能保険の違いは何ですか?

一般的には、所得補償保険は損害保険会社、就業不能保険は生命保険会社が扱います。就業不能の定義、支払いが始まるまでの日数、受け取れる期間が商品ごとに違います。名前ではなく約款の条件で比べてください。

国民健康保険で傷病手当金はもらえますか?

国民健康保険法では、傷病手当金は市町村や国保組合が条例・規約で定めたときに支給できる任意給付です。定めがなければ支給されません。住んでいる自治体や加入している国保組合に確認してください。

所得補償保険の保険金に税金はかかりますか?

国税庁のタックスアンサー No.1760では、所得補償保険の保険金は身体の傷害に基因して受け取る保険金にあたるので非課税です。一方で、個人事業主が自分にかけた保険料は家事費なので、必要経費には入りません。

おわりに──保険を選ぶ前に、公的な制度の空白を測る

所得補償保険が必要かどうかは、保険の良し悪しでは決まりません。自分の立場で傷病手当金が出るか、何日目から出るか、いつまで出るか。この3つを確かめたあとに残った空白の大きさだけが、民間の保険で埋める理由になります。

今週やることは1つです。いま入っている健康保険の保険証(資格確認書)を見て、国保か、協会けんぽか、健康保険組合かを確かめてください。そこが分かれば、傷病手当金があるかないかが決まります。

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