マーケの目

RFP(提案依頼書)とは?広告・マーケ発注の書き方と提案書との違い

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最終更新:2026年10月17日

RFPとは、Request for Proposal(リクエスト・フォー・プロポーザル)の略で、日本語では提案依頼書と呼ばれます。発注する側が「何のために、何を、どんな条件で頼みたいのか」を文書にまとめ、複数の会社に提案を求めるための書類です。この記事で扱うのは、ITシステムの調達ではなく、広告・マーケティングの発注で使うRFPです。検索するとシステム開発の解説が多く出てきますが、広告の発注では書く項目も、失敗の仕方も少し違います。結論から言えば、RFPが薄いと、どれだけ優秀な会社に頼んでも提案は全部空振りになります。ここでは、RFPに書く項目の一覧、RFI・RFQとの違い、提案書やオリエンシートとの違い、書き方の手順と記入例、2026年の日本での注意点まで書いていきます。

RFPとは?広告・マーケ発注のRFPに書く12の項目一覧

広告・マーケティングのRFPは、提案する側が「何を考えればいいのか」で迷わないように、判断の材料を先に渡しておく書類です。書く項目を並べると、次の12個になります。

項目 書く内容 抜けると起きること
1. 背景 事業や商品の現状、なぜ今この発注をするのか 提案が一般論から始まり、前提の確認に時間を取られる
2. 目的 この施策で最終的に何を変えたいのか(売上、認知、応募数など) 提案の良し悪しを比べる物差しがなくなる
3. 課題 目的と現状の間にある、いちばん大きな障害 各社が別々の課題を置き、提案を横に並べて比べられない
4. ターゲット 誰に届けたいのか。属性だけでなく、置かれている状況や気持ちまで 「20〜40代の男女」のような、誰にも届かない企画になる
5. 目標の指標 KGIとKPI、いつまでにどこまで 成果の約束が各社ばらばらになり、終わってから揉める
6. 予算 総額、または上限と下限。媒体費と制作費をどう分けて考えるか 規模の違う提案が並び、どれも採用できない
7. スケジュール 質問の締切、提案の締切、選定日、実施の時期 間に合わない計画や、急ごしらえの提案が届く
8. 依頼範囲 戦略・企画・制作・媒体・運用・効果測定のどこまでを頼むか 頼んでいない部分に提案の大半が割かれる
9. 前提条件と制約 必ず入れる要素、使えない表現、既存の素材、社内の決まり 良い案が、社内のルールにぶつかって通らない
10. 提出物 提案書の形式、分量の目安、見積の書式 比べにくい形で届き、評価に時間がかかる
11. 選定基準と選び方 何を重視して選ぶか、参加する社数、プレゼンの有無 各社が「何で勝てばいいのか」を推測で埋める
12. 提案の取り扱い 秘密保持、提案内容の権利、採用しなかった案の扱い、提案の対価 あとから権利や費用のことで揉める

12個のうち、空欄になりやすいのは3の課題、6の予算、11の選定基準の三つです。どれも、発注する側が社内で決めきれていないときに書けなくなる項目です。言い換えると、この三つが書けないうちは、まだRFPを出す段階ではありません。

5の目標の指標は、最終的なゴールと途中の目安を分けて書くと伝わりやすくなります。分け方はKPIとKGIの違いとは?KAI・OKRも含めた比較表で整理しています。

RFI・RFP・RFQの違い──調達の言葉が広告の発注に入ってきた

RFI・RFP・RFQは、どれも発注する側が相手に出す依頼の書類で、求めるものがそれぞれ「情報」「提案」「見積」と違います。順番に使うなら、RFIで候補を絞り、RFPで提案を比べ、RFQで条件と金額を詰める、という流れになります。

書類 正式名称 日本語 求めるもの 広告・マーケでの使いどころ
RFI Request for Information 情報提供依頼書 会社の概要、実績、体制、得意な領域 付き合いのない会社も含めて、候補を広く集めたいとき
RFP Request for Proposal 提案依頼書 課題への考え方、具体的な企画、体制、概算の費用 戦略や企画から一緒に考えてほしいとき
RFQ Request for Quotation 見積依頼書 やることが決まった業務の金額と条件 制作物や媒体の仕様が決まっていて、価格を比べたいとき

この三つは、もともと公共の調達やITシステムの調達で使われてきた言葉です。広告業界で誰がいつから使い始めたのか、はっきりした一次出典は見当たりません。広告の現場では長いあいだ、発注する側が資料と口頭で説明する「オリエン(オリエンテーション)」が主流で、RFPという言葉は、書面で条件をそろえて複数の会社を比べたい場面で使われることが多い言葉です。

その「比べる場面」は増えています。公正取引委員会の広告業界の取引実態に関するフォローアップ調査報告書(2010年)では、約4分の3の広告主が業務を複数の広告会社に分けて頼む分割発注を行っていると回答しています。同じ報告書では、書面を取り交わさなかったことや、書面の内容が不十分だったことでトラブルが生じた事例も指摘されています。頼む相手が増えるほど、口頭の説明だけでは条件がそろわなくなります。RFPは、その条件をそろえるための道具です。

注意したいのは、RFPとRFQを取り違えることです。やることも仕様も決まっているのに「提案をください」と頼むと、受ける側は頼まれていない企画まで考えることになり、発注する側も読む量が増えるだけです。決まっているなら、RFQで足ります。

RFPと提案書・オリエンシートの違い

RFPは発注する側が書く「問い」で、提案書は受ける側が書く「答え」です。オリエンシートもRFPと同じく発注する側が書く書類で、中身の多くは重なりますが、選定基準や提出物まで含めて「比べるための条件」をそろえる役割は、RFPのほうがはっきりしています。受ける側の広告会社では、RFPの問いを作り手向けに一つに絞り直したクリエイティブブリーフを書いてから、提案書の中身を作り始めることが多いと思います。

書類 書く人 出すタイミング 役割 中心になる中身
RFP(提案依頼書) 発注する側 提案を求める前 問いと、比べるための条件をそろえる 目的・課題・予算・依頼範囲・選定基準
オリエンシート 発注する側 オリエン(説明の場)で 背景と頼みたいことを伝える 背景・課題・ターゲット・依頼内容
提案書 受ける側 提案の締切まで 問いに答え、選ばれる 課題の捉え直し・戦略・企画・体制・見積

受ける側がRFPをどう読むかを知っておくと、書くべきことが見えてきます。提案書は多くの場合、「背景と課題→提案内容→スケジュール→体制と見積→会社概要」の順で組み立てます。この順番は、RFPの項目をほぼそのまま写したものです。背景と課題はRFPの1〜3、提案内容は4・5・8・9、スケジュールは7、体制と見積は6と10に対応します。RFPに書かれていない項目は、提案書の側でも推測で埋めるしかありません。

大きなコンペでは、RFPの要求項目と提案書のページ番号を一覧にした対応表を、提案書の冒頭に置くこともあります。要求項目が箇条書きではっきりしているRFPほど、この対応表が作りやすく、結果として横に並べて比べやすい提案が集まります。

そのうえで、提案書のいちばんの差は、RFPに書かれた課題をどう捉え直すかに出ます。捉え直しの材料になるのは生活者の本音で、その見つけ方はインサイトとは?マーケティングでの意味とニーズとの違い・見つけ方に書きました。RFPの課題が具体的であるほど、提案する側は捉え直しに頭を使えます。課題があいまいだと、捉え直す前の「課題探し」で提案の大半が終わってしまいます。

実務でどう使うか──RFPが薄いと提案は全部空振りになる

RFPを書く前に決めておくのは、この発注で何を決めたいのか、その一点です。提案を集めてから考えようとすると、集まった提案のどれが良いのかを判断する物差しがなく、最後は声の大きい人の好みや見た目の派手さで決まってしまいます。

広告会社で提案を受ける側にいた頃、RFPを受け取ってまずやっていたのは、書かれていないことの洗い出しでした。質問の締切までに確認できなかったところは、推測で埋めるしかありません。推測が外れた提案は、どれだけ作り込んでも的を外します。RFPが薄いと提案が全部空振りになるのは、各社の腕の問題ではなく、問いが渡されていないからです。

よくある薄さは、次の四つです。

  • 課題の欄に手段が書いてある。「TVCMを作りたい」「SNSを強化したい」は課題ではなく、すでに決めた打ち手です
  • 予算が書いていない。「予算は提案次第」と書くと、各社が金額を探り合い、規模の違う提案が並びます
  • 選定基準がない。何で選ぶかが分からないと、受ける側は全方位に手を広げ、どの提案も浅くなります
  • 目的が三つも四つも並んでいる。認知も売上も採用もブランドも、と書くと、提案はどれにも中途半端に答えます

書くときは、次の順番で進めると抜けが減ります。

  1. この発注で決めたいことを一文で書く。「新しい購入者を増やす方法を決めたい」くらいの粒度で構いません
  2. 目的と目標の指標を決める。最終的なゴールと途中の目安を分けます
  3. 課題を一つに絞る。手段ではなく、生活者や市場の「状態」で書きます
  4. 予算の幅を書く。正確な額が決まっていなくても、上限と下限は書けるはずです
  5. 依頼範囲と選定基準を書く。何を何点で評価するかまで書けると、提案の焦点がそろいます
  6. 質問の受け付け方を決める。どこかの会社に答えた内容は、参加する全社に同じように共有します
  7. 出す前に、社内で最終的に決める人に読んでもらう。決裁者の考えとずれたRFPは、選定の段階でひっくり返ります

記入のイメージがわくように、架空の例を一つ置いておきます。会社名も数字も、説明のために作ったものです。

項目 記入例(架空)
決めたいこと 自社通販で、初めて買う人を増やす方法を決めたい
背景 地方の焼き菓子メーカー。売上の大半が店頭と贈答で、通販の購入者は既存客の再購入が中心
課題 贈答で受け取った人は味を知っているのに、自分用に買う理由が見つかっていない
ターゲット 贈り物で一度食べたことがあり、自分へのちょっとしたご褒美を探している人
目標の指標 例:半年で通販の新規購入者を現状の2倍に。途中の目安は商品ページへの訪問数と初回購入率
予算 例:総額800万〜1,000万円(媒体費・制作費を含む)
依頼範囲 戦略・企画・制作・広告運用まで。商品ページの改修は自社で行う
選定基準 例:課題の捉え方30点、企画の実現性30点、体制20点、費用20点
提案の取り扱い 採用しなかった提案の権利は各社に帰属。提案料は支払わない(または一律で支払う)

この例でいちばん効いているのは、課題の欄です。「通販の売上を伸ばしたい」ではなく「自分用に買う理由が見つかっていない」と状態で書いてあるので、提案する側は、その理由をどう作るかに頭を使えます。課題が書ければ、その先のコンセプトもぶれにくくなります。コンセプトの立て方はコンセプトとは?意味と作り方の型にまとめています。

日本市場・2026年時点でのRFPの注意点

2026年の日本でRFPを出すときに気をつけたいのは、提案にかかる労力と費用の扱いです。RFPで何をどこまで求めるかは、そのまま、誰がどれだけの仕事を無償で背負うかにつながります。

公正取引委員会と中小企業庁は2026年6月29日、広告業における取適法違反被疑事件の集中調査の結果を公表し、広告業者に対して71件の指導を行ったとしています。指導の事例には、広告会社がコンペに応募する際に、取引のある制作会社に試作品を無償で作らせた事例や、失注したことを理由に試作品の費用を払っていなかった事例が含まれています。この調査の対象は広告会社と制作会社の取引で、広告主は直接の当事者ではありません。それでも、発注する側がRFPで企画書だけでなく完成に近い制作物まで求めれば、その負担は見えないところで誰かが背負うことになります。

取適法は、下請法が改められた法律で、2026年1月1日に施行されました(日本広告業協会「広告会社におけるサプライチェーン全体での取引適正化に向けた自主行動計画」)。直接の対象は、仕事を委託する事業者と中小の受託事業者との取引ですが、その発注の連鎖の起点にいるのは広告主です。RFPの側でできることは、はっきりしています。

  • 提出物の範囲を絞る。考え方と企画の骨子で比べられるなら、完成した制作物までは求めない
  • 提案の対価を払うのか払わないのかを、最初に書いておく
  • 採用しなかった案の権利と、提出された資料の扱いを決めておく
  • 参加する会社の数を、きちんと読み比べられる数に絞る

もう一つは、生成AIで提案書の見た目を整えることが、どの会社にとっても簡単になったことです。図も文章もそれらしく仕上がるので、見た目の完成度では差がつきにくくなっています。だからこそ、RFPの選定基準には「課題をどう捉えたか」を入れておきたいところです。問いに答えている提案と、問いをなぞっているだけの提案は、選定基準があれば見分けられます。

RFPに関するよくある質問

RFPとは簡単に言うと何ですか?

発注する側が、何のために何を頼みたいのかと、その条件をまとめて、複数の会社に提案を求めるための書類です。Request for Proposalの略で、提案依頼書と訳されます。広告・マーケティングの発注では、目的・課題・予算・依頼範囲・選定基準を書くのが基本です。

RFPと提案書の違いは何ですか?

RFPは発注する側が書く「問い」で、提案書は受ける側が書く「答え」です。提案書は、RFPに書かれた背景・課題・予算・スケジュールなどを前提に組み立てられます。RFPに書かれていないことは、提案書の側で推測するしかないので、RFPの精度が提案の精度を先に決めます。

RFPに予算は書くべきですか?

書いたほうが、比べやすい提案が集まります。予算がないと、各社が金額を探り合い、規模の違う提案が並んで、どれも採用しにくくなります。正確な額が決まっていなくても、上限と下限の幅だけは書いておくのが確実です。

RFPのサンプルやテンプレートはそのまま使えますか?

項目の抜けを確かめるためには役立ちますが、そのまま埋めるだけでは足りません。テンプレートが用意してくれるのは欄であって、中身の判断ではないからです。特に課題・予算・選定基準の三つは、社内で決めきってから書く必要があります。

おわりに──RFPは、提案を集める書類ではなく、問いを渡す書類

RFPは、たくさんの提案を集めるための書類だと思われがちです。でも、受ける側から見ると、RFPは「何に答えればいいのか」を教えてもらう唯一の手がかりです。手がかりが薄ければ、どの会社も推測で答えるしかなく、推測の当たり外れで勝負が決まります。

集まった提案がどれもピンとこないとき、提案した会社の力不足を疑う前に、渡したRFPを読み返してみると、たいてい空欄が見つかります。課題の欄に手段が書いてあったり、選定基準がなかったり。

提案が外れたのではない。RFPに問いが書かれていなかっただけ。

RFPを書き始める前に、この発注で決めたいことを一文で書いてみてほしいと思います。その一文が書けたら、RFPの半分はもうできています。

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