最終更新:2026年10月17日
オープン懸賞とクローズド懸賞の違いは、応募が商品の購入や来店と結びついているかどうかです。オープン懸賞は、買わなくても店に行かなくても誰でも応募できる懸賞で、景品表示法の景品規制は適用されず、賞品の上限額の定めもありません。クローズド懸賞は、購入者や来店者を対象にする懸賞で、景品表示法の一般懸賞(または共同懸賞)として、賞品の最高額と総額に上限がかかります。一般懸賞の最高額は、取引価額が5,000円未満なら取引価額の20倍、5,000円以上なら10万円です。以下、2つの違いの比較表、景品規制の3類型(一般懸賞・共同懸賞・総付景品)の上限額、オープン懸賞のつもりがクローズド扱いになる典型、同時に走らせるときの考え方までを、消費者庁の公開資料をもとに書きます。
オープン懸賞とクローズド懸賞の違い一覧
オープン懸賞は「取引に付随しない」懸賞、クローズド懸賞は「取引に付随する」懸賞です。違いはこの一点で、上限額があるかないかは、その結果にすぎません。
| 比較の軸 | オープン懸賞 | クローズド懸賞 |
|---|---|---|
| 参加条件 | 購入も来店も不要。誰でもウェブサイト・SNS・はがき等から応募できる | 商品・サービスの購入者や来店者が対象(レシート・応募券・購入画面などで応募) |
| 景品表示法上の扱い | 景品規制の対象外(景品類に当たらない) | 景品類の提供として景品規制の対象。法律上の区分は一般懸賞または共同懸賞 |
| 賞品の最高額 | 具体的な上限額の定めなし(2006年4月に規制が撤廃) | 一般懸賞は取引価額の20倍(上限10万円)、共同懸賞は30万円 |
| 賞品の総額 | 定めなし | 一般懸賞は売上予定総額の2%、共同懸賞は3% |
| 向いている目的 | 認知の拡大、SNSアカウントの獲得、話題づくり | 購入の後押し、まとめ買い、指名買いの促進 |
| 崩れやすいところ | パッケージでの告知、購入で当たりやすくなる設計、来店しないと受け取れない賞品で、クローズド扱いになる | 賞品の価額の見積もり、同じ取引に付く別企画との合算、当選者数の告知 |
表の上限額と2006年の撤廃は、消費者庁の景品規制の概要のページで確認できます。このページは、購入や来店を条件とせずに広く告知し、抽選で金品を提供する企画には「景品規制は適用されません」と書き、そうした企画が一般に「オープン懸賞」と呼ばれていると説明しています。
一つ知っておいてほしいのは、「クローズド懸賞」が法律の言葉ではないことです。景品規制の概要のページにも、懸賞の告示にも、この言葉は出てきません。実務で取引に付随する懸賞をそう呼んでいるだけで、条文の上では「一般懸賞」と「共同懸賞」に分かれます。
オープン懸賞とは/クローズド懸賞とは
オープン懸賞とは、新聞・テレビ・ウェブサイトなどで広く告知し、購入や来店を条件にせず応募を受け付け、抽選で金品を提供する企画のことです。クローズド懸賞とは、商品・サービスの取引に付随して、くじなどの偶然性や、クイズの正誤・作品の優劣で景品類を提供する企画のことで、景品表示法の景品規制を受けます。
出発点になるのは、景品表示法第2条第3項の「景品類」の定義です。顧客を誘引するための手段として、事業者が自己の供給する商品・サービスの取引に付随して相手方に提供する物品・金銭その他の経済上の利益を指します(条文はe-Gov法令検索の景品表示法)。取引に付随しないオープン懸賞の賞品は、この定義から外れるので、第4条にもとづく景品の制限もかかりません。
「懸賞」の定義は、懸賞による景品類の提供に関する事項の制限(昭和52年公正取引委員会告示第3号)の第1項にあります。くじその他偶然性を利用して定める方法と、特定の行為の優劣または正誤によって定める方法の2つです。来店や申込みの先着順は懸賞に当たらず、総付景品の規制を受けることがあると、同告示の運用基準に書かれています。
クローズド懸賞の上限は、景品規制の3類型をまとめて見ると早く分かります。消費者庁のページの上限額を並べます。
| 類型 | どんな提供か | 最高額 | 総額 | 根拠の告示 |
|---|---|---|---|---|
| 一般懸賞 | 購入者・来店者を対象に、抽選やクイズで提供(共同懸賞以外の懸賞) | 取引価額5,000円未満は取引価額の20倍、5,000円以上は10万円 | 懸賞に係る売上予定総額の2% | 懸賞による景品類の提供に関する事項の制限 |
| 共同懸賞 | 一定の地域の小売業者・サービス業者の相当多数、商店街、一定の地域の同業者の相当多数が共同で実施 | 取引価額にかかわらず30万円 | 懸賞に係る売上予定総額の3% | 同上(第4項) |
| 総付景品 | 購入者・来店者にもれなく提供(先着順も含む) | 取引価額1,000円未満は200円、1,000円以上は取引価額の10分の2 | 定めなし | 一般消費者に対する景品類の提供に関する事項の制限(昭和52年公正取引委員会告示第5号) |
商店街の共同懸賞は、中元・年末などの時期に年3回まで、年間通算70日以内に限られます。新聞業・雑誌業・不動産業・医療用医薬品業などには別に業種別の告示があります。
オープン懸賞の歴史も押さえておくと、混乱が減ります。オープン懸賞は、もともと景品表示法ではなく独占禁止法の側で、広告においてくじの方法等による経済上の利益の提供を申し出る場合の不公正な取引方法(昭和46年公正取引委員会告示第34号)が規制していました。公正取引委員会の平成17年度年次報告によると、限度額は1996年2月に100万円から1,000万円に引き上げられ、その後、上限やそれに近い額の企画がほとんど見られないことなどから、2006年4月27日にこの告示が廃止されました。いまネット上に残る「オープン懸賞の上限は1,000万円」の説明は、この廃止前の情報です。
混同されやすい理由と、間違えると起きること
オープン懸賞とクローズド懸賞が混同されやすいのは、応募の入口が「誰でも応募できる」形をしていても、企画のどこかに取引とのつながりがあれば、全体が取引に付随すると判断されるからです。景品類等の指定の告示の運用基準は、取引を条件としない場合でも、取引の相手方を主たる対象として行われるときは取引に付随すると定め、取引に付随しない提供方法を併用していても同様だとしています。
消費者庁の景品に関するQ&A(景品類とは)には、オープン懸賞のつもりで設計された企画の判断例がまとまっています。代表的なものを並べます。
| 企画の設計(Q&Aの例の要約) | 判断 | 理由 |
|---|---|---|
| SNSでフォローと「いいね」で応募、賞品は郵送(Q18) | 景品規制の対象外 | フォローや「いいね」は通常、購入に直ちにつながらず、受け取りに来店も要らない |
| ハッシュタグ投稿で応募、自社商品の画像や使用感を載せると当選確率2倍(Q19) | 一般懸賞 | 応募にあたり商品を購入する蓋然性が高い |
| SNSの友達登録で応募、賞品は店舗で受け取り(Q20) | 総付景品 | 受け取りに来店が必要で、来店すればもれなく提供される |
| ホームページから誰でも応募できるが、応募要領を商品パッケージにも印刷(Q22) | 一般懸賞 | パッケージで告知しているので、その商品の購入者を主な対象とみられる |
| 誰でも応募できるが、当選者は自動車を買わないとカーナビをもらえない(Q23) | 総付景品 | 購入すればもれなく提供されることになる |
| 無料のアプリをダウンロードした人が対象、賞品は郵送(Q17) | 景品規制の対象外 | 購入や来店なしにダウンロードでき、取引につながる要素がない |
判断は応募の入口だけでなく、告知の場所、当選の確率、賞品の受け取り方まで、企画の最初から最後までを見て行われます。Q&Aは、取引に付随しないと言えるためには「告知から景品提供まで一切取引に付随しない」ことを求める書き方です。
クローズド懸賞の側で崩れやすいのは3点です。同じ事業者が同じ取引に付随して2つ以上の懸賞をすると、別々の企画でも額は合算されます。同じ抽選券でもう一度抽選するダブルチャンスも、合算した額で上限と比べます。異なる絵柄や符号をそろえさせるカード合わせは、告示第5項で上限以前に禁止されています。
上限を超えた景品を出すと、景品表示法第4条にもとづく制限への違反として、第7条の措置命令の対象になります。措置命令に従わなければ、第46条で2年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金です。課徴金は第5条の不当表示にかかる制度なので、景品規制の違反そのものには課されません。ただし、告知した当選者数より実際の当選者が少ないと、取引条件の不当表示として第5条第2号の違反になるおそれがあると、Q&Aは注意しています。有利誤認の仕組みは優良誤認と有利誤認の違いとは?景品表示法の事例と課徴金を解説に詳しく書きました。
どちらを使うべきか・使い分けの判断
オープン懸賞とクローズド懸賞のどちらを選ぶかは、賞品の大きさから決めるのではなく、その企画で生活者に何をしてほしいかから決めます。知ってほしい、フォローしてほしいならオープン懸賞、買ってほしい、もう一つ手に取ってほしいならクローズド懸賞です(販促全体はセールスプロモーション)。
| 企画で起こしたい行動 | 向いている形 | 先に確かめること |
|---|---|---|
| ブランドを知ってもらう、アカウントをフォローしてもらう | オープン懸賞 | パッケージ告知・購入で有利になる仕掛け・来店受取がないか |
| この商品を買ってもらう、まとめて買ってもらう | クローズド懸賞(一般懸賞) | 取引価額と、期間中の売上予定総額の見積もり |
| 買った人全員に確実に何かを渡したい | 総付景品 | 景品の価額が取引価額の10分の2(1,000円未満なら200円)以内か |
| 商店街や地域で盛り上げたい | 共同懸賞 | 参加者が「相当多数」か、商店街なら年3回・通算70日以内か |
クローズド懸賞の上限は、取引価額で決まります。以下は架空の数字で計算した例です。1本300円の飲料を買って応募する一般懸賞なら、賞品1つの最高額は300円の20倍で6,000円です。キャンペーン期間中の対象商品の売上予定総額を1,000万円と見込むなら、賞品の総額は2%の20万円までになります。同じ飲料にもれなく付ける総付景品なら、取引価額が1,000円未満なので200円までです。購入を条件にせず来店者を対象に抽選する場合は、取引価額は原則100円とされ、最高額は2,000円になると景品に関するQ&A(一般懸賞について)は説明しています。
「同時」に走らせる場合の考え方も、同じQ&Aにあります。総付景品と一般懸賞を同時に行うなら、それぞれの規制の範囲内で提供できます(例として、3,000円の商品なら総付景品は600円まで、一般懸賞は6万円まで)。メーカーと小売店が同じ商品を対象に同時期に懸賞をするなら、同一の取引に付随するものとして額を合算して考えます。オープン懸賞とクローズド懸賞を同じキャンペーンで組み合わせるなら、購入者向けのコースを上限内に収め、誰でも応募できるコースに先ほどの表のような取引とのつながりがないかを確かめる順番になると思います。
広告会社でキャンペーンの企画に関わっていた頃、企画の形を最初に決めていたのは賞品のアイデアよりも、この上限でした。賞品を大きくしたいならオープン懸賞にするしかなく、そうなると応募の条件から購入を外すことになる。購入を条件にするなら、賞品は取引価額に縛られる。どちらを取るかは、表現より先に企画の目的として決まっていきました。応募の仕組みを先に決め、賞品はその枠の中で考える順番にすると、企画はあとから崩れにくくなります。
日本市場・2026年時点での注意点──SNS懸賞と、法的助言ではないこと
2026年時点で、景品規制の違反を理由にした措置命令はまれですが、指導は出ています。消費者庁の令和7年度における景品表示法等の運用状況によると、2025年度の景品事件は、措置命令・確約計画の認定が0件、指導が3件で、3件とも総付景品の告示に関するものでした。
同じ資料には、指導事案の一例として、ペット用品を合計5,000円以上買った人に、もれなく2,000円相当のケア用品を提供した企画が載っています(事業者名は伏せられています)。取引価額5,000円の総付景品の上限は1,000円なので、その範囲を超えていました。もれなく渡すおまけは気軽に企画されるぶん、上限の計算が抜けやすいのだと思います。
同じ資料によると、2025年度に消費者庁と公正取引委員会の地方事務所などが受けた景品表示法の相談は13,217件で、景品規制の相談としては「取引に付随する」の考え方、値引き、景品類の価額の考え方などが挙げられています。オープン懸賞かどうかの線引きは、それだけ迷われやすいところです。
いまの懸賞は、SNSのフォローやハッシュタグ投稿で応募させる形が主流になっています。フォローだけなら景品規制の対象外になり得ますが、商品の写真つき投稿で当選しやすくするような設計にすると、一般懸賞になります。投稿を募る企画は、表示の面でステマ規制とも関わるので、UGCとは?マーケティングでの意味と種類、ステマとの違いもあわせて読んでおくと安全です。応募期限や当選者数で急がせる見せ方は、希少性の原理とは?例とクッキー実験、限定表示の景表法の注意で書いた有利誤認の線とも重なります。
この記事は、消費者庁と公正取引委員会の公開資料をもとにした一般的な解説で、法的な助言ではありません。個別の企画がオープン懸賞に当たるか、上限内に収まっているかは、消費者庁の景品表示法に関する情報提供・相談の受付窓口や弁護士に確認してください。
オープン懸賞とクローズド懸賞に関するよくある質問
結局、オープン懸賞とクローズド懸賞は同じ「懸賞」ではないのですか?
抽選で賞品を出すという見た目は同じですが、法律上の扱いがまったく違います。クローズド懸賞は取引に付随する景品類の提供なので、景品表示法の上限がかかります。オープン懸賞は取引に付随しないため景品類に当たらず、景品規制の対象外で、上限額の定めもありません。
オープン懸賞なら、賞品はいくらでもかまわないのですか?
景品規制の上限はありません。かつて独占禁止法の告示で定められていた1,000万円の上限も、2006年4月に撤廃されています。ただし、パッケージでの告知、購入で当たりやすくなる仕掛け、来店しないと受け取れない賞品などがあると取引に付随すると判断され、一般懸賞や総付景品の上限がかかります。
オープン懸賞とクローズド懸賞を同時に実施してもいいですか?
同時に実施すること自体は禁じられていません。購入者向けのコースは一般懸賞の上限内に収め、誰でも応募できるコースが取引とつながっていないかを確かめる必要があります。同じ取引に付随する懸賞が複数あるときは、別々の企画でも景品類の額を合算して上限と比べます。
総付景品とは何ですか?上限はいくらですか?
総付景品(そうづけけいひん)は、懸賞によらず、購入者や来店者にもれなく提供する景品で、先着順の提供も含みます。最高額は、取引価額が1,000円未満なら200円、1,000円以上なら取引価額の10分の2です。総額の規制はありません。
おわりに──オープン懸賞は、上限のない懸賞ではない
オープン懸賞とクローズド懸賞の違いは、賞品の上限で語られることが多い言葉です。でも、上限は結果であって、分かれ目は企画がどこまで取引から離れているかにあります。
オープン懸賞とは、上限のない懸賞ではない。買わせる仕掛けを、一つも持たない懸賞のこと。
だから企画を考えるときは、賞品の大きさより先に、応募から受け取りまでの道のりを一度紙に書き出してみるといいと思います。その道のりのどこにも店やレジが出てこないと言い切れるかどうかが、2つの懸賞を分ける線になります。