転職戦略

コンサルに向くマーケター・向かないマーケター。5年いてわかった分かれ目

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「気がする」が通らない世界に、あなたは耐えられるか

マーケターからコンサルに転職して向いている人と向いていない人の分かれ目は、煎じ詰めると「数字と論理で自分の直感を説明しきれるかどうか」です。ぼくは博報堂に13年いて、そのあとアクセンチュアに5年いました。その間ずっと感じていたのは、マーケターの世界とコンサルの世界では「正しさの証明方法」がまったく違うということです。

マーケターの仕事には「なんかこっちのほうがいい気がする」が許される場面があります。クリエイティブの判断、ブランドのトーン、生活者のインサイト。感性で語ることが価値になる瞬間が確かにあります。

でもコンサルでは、「気がする」はほぼ通りません。「なぜそう言えるのか」「根拠は何か」「他の選択肢と比べてどう優れているのか」を、毎回ロジックと数字で詰められます。これが苦痛な人もいれば、快感な人もいます。その差が、向き不向きの根っこにあるとぼくは思っています。

この記事では、マーケターからコンサルへの転職を考えている人に向けて、5年間コンサルにいたぼくの実感をもとに「向く人」「向かない人」の特徴を書きます。向かない人は無理に行かなくていい、という話もちゃんとします。

マーケターとコンサルでは「仕事の進め方」が根本的に違う

マーケターからコンサルに移って最初に驚くのは、仕事の進め方そのものの違いです。同じ「クライアントワーク」でも、求められる動き方がかなり異なります。

アウトプットの基準が違う

マーケター時代、ぼくは企画書を「ストーリーの面白さ」で評価される場面が多かったです。生活者のインサイトをどう切り取るか、コピーにどう落とすか。主観と感性が武器になりました。

コンサルでは、資料のすべてのページに「So What(だから何なのか)」を問われます。グラフを載せたら「この数字から言えることは何か」。事例を出したら「クライアントの状況との差分は何か」。1枚のスライドに対して上司から5回ツッコミが入ることも普通でした。

「任される」と「詰められる」のバランスが違う

広告代理店では、ある程度の年次になると「好きにやっていいよ」と任されることが増えます。ぼくも博報堂の後半はかなり自由にやらせてもらっていました。

コンサルでは、マネージャー以上でもパートナーやクライアントから細かくレビューが入ります。自由裁量はあるけれど、その裁量で出した結論に対して「なぜこれなのか」という説明責任が常についてきます。任されているのに詰められる。この感覚に慣れるまで、ぼくは半年くらいかかりました。

スピード感が違う

代理店の仕事もスピードは求められますが、コンサルのプロジェクトは「3カ月で結論を出す」「2週間で仮説を検証する」というように、区切りが明確です。のんびり考えている時間はほとんどありません。

ぼくの場合、博報堂では1つのキャンペーンに数カ月かけることもありました。アクセンチュアでは、2週間で業界分析から戦略仮説の提示まで求められたこともあります。このスピードに食らいつけるかどうかは、向き不向き以前の前提条件です。

コンサルに向いているマーケターの5つの特徴

5年間コンサルにいて、マーケター出身で活躍している人には共通点がありました。ぼく自身が全部できていたかというと怪しいですが、少なくとも「この要素がある人は生き残っている」という特徴を5つ挙げます。

1. 数字で語る癖がすでにある

「このクリエイティブ、CTRが1.2%から1.8%に上がったので横展開したい」のように、日常的に数字で判断している人はコンサルに馴染みやすいです。

ぼくは博報堂時代、広告運用を担当していた時期が長かったので、CPA・ROAS・LTVといった指標を毎日見ていました。この経験がコンサルに行ってからかなり役に立ちました。逆に、ブランディングやクリエイティブ畑で「数字はあまり見てこなかった」という人は、最初にかなり苦労する印象です。

2. 「なぜ?」と聞かれるのが嫌いではない

コンサルでは、上司にもクライアントにも「なぜそう考えたのか」と毎日聞かれます。これを「詰められている」と感じる人と、「思考を整理するチャンスだ」と感じる人がいます。

後者のタイプは向いています。マーケターの中でも、クライアントから「なんでこの施策なんですか?」と聞かれたときにちゃんと嬉しそうに説明できる人。そういう人は、コンサルの「Why攻め」にも耐えられます。

3. 業界をまたいで考えるのが好き

コンサルでは、今月は消費財メーカー、来月は金融、再来月は製造業、というようにプロジェクトが変わります。マーケターの中でも「1つの業界を極めたい」よりも「いろんな業界を見てみたい」と思う人のほうが向いています。

ぼくの場合、博報堂時代にBtoB・BtoCの両方を担当していたので、業界が変わること自体への抵抗は少なかったです。ただ、特定ブランドに愛着を持って何年もかけて育てたいタイプの人は、コンサルのプロジェクト制に物足りなさを感じるかもしれません。

4. ドキュメントを書くことに抵抗がない

コンサルの仕事は、極端に言えば「考えて、書いて、説明する」の繰り返しです。パワーポイントやワードで大量のドキュメントを作ります。

マーケター時代に企画書を書くのが苦手だった人、口頭で伝えるほうが得意だった人は、コンサルの資料文化にストレスを感じる可能性があります。逆に、企画書を丁寧に作り込むのが好きな人は、その能力をそのまま持ち込めます。

5. 年収や市場価値を冷静に考えている

コンサルに向いている人は、「自分の市場価値をどう上げるか」を感情論ではなく構造的に考えている傾向があります。「なんとなくコンサルってかっこいいから」ではなく、「マーケティングの実行経験に戦略の上流経験を足すと、その後の選択肢が広がる」という計算がある人です。

ぼくがアクセンチュアに転職したのも、正直なところ「このまま代理店にいても年収が頭打ちになる」「戦略側の経験がないとキャリアの幅が狭い」と思ったからです。こういう計算が自然にできる人は、コンサルの環境にも合いやすいです。

コンサルに向いていないマーケターの4つの特徴

向いていないからダメだという話ではありません。コンサルが合わない人には、コンサルでは得られない強みがあります。ただ、以下の特徴に当てはまるなら「無理して行く必要はない」とぼくは思っています。

1. 感性やセンスで勝負するのが好き

コピーライティング、ビジュアルの判断、ブランドの空気感を作ること。こういう仕事が好きで得意な人は、コンサルに行くと自分の強みが活きない場面が多いです。

コンサルでは「センスがいい」は評価軸にほぼ入りません。「論理的に正しい」「数字的に妥当」が評価の中心です。自分の感性が武器だと思っている人は、その武器を封じられるような感覚になるかもしれません。

2. 一つのプロダクトやブランドに深く関わりたい

「このブランドを3年かけて育てたい」「ユーザーの声を聞きながらプロダクトを改善していきたい」という人は、事業会社のマーケターのほうが向いています。コンサルは基本的に3〜6カ月単位でプロジェクトが変わるので、1つの対象に長く向き合う機会が少ないです。

3. 「なぜ」と詰められるのが苦痛

何度も書いていますが、コンサルでは「なぜ?」が日常です。上司から、クライアントから、チームメンバーから。これを「攻撃されている」と感じてしまう人は、精神的にかなりキツくなります。

ぼくも最初はしんどかったです。博報堂では「いい企画だね」で通っていたものが、アクセンチュアでは「その根拠は?」から始まる。でもぼくの場合は、そのプロセスを通じて自分の思考が鍛えられる感覚があったから続けられました。その感覚がない人は、無理しないほうがいいです。

4. ワークライフバランスを最優先にしたい

最近はコンサル業界も働き方改革が進んでいますが、それでもプロジェクトの繁忙期にはかなり忙しくなります。dodaの調査ではコンサル業界の平均残業時間は月30時間前後とされていますが、プロジェクトの山場ではこれを大きく超えることもあります。

「定時で帰りたい」「休日は絶対に仕事をしたくない」という優先順位の人は、コンサルでストレスを溜めやすいです。これは能力の問題ではなく、価値観の問題です。

マーケター出身がコンサルで活きる場面と、苦労する場面

マーケター出身者がコンサルで働くと、活きる場面と苦労する場面の両方があります。ぼくの5年間の経験をもとに整理します。

活きる場面

  • 施策の実行イメージが持てる:戦略コンサルタントは「戦略を描くけど実行は知らない」と言われがちです。マーケターは広告運用やキャンペーン設計の実務を知っているので、「この戦略は現場で回るか」を判断できます。これはクライアントからの信頼に直結します。
  • 生活者の視点を持っている:コンサルの資料はロジックが先行しがちですが、マーケター出身者は「その施策で生活者が本当に動くか」を考えられます。ぼくもプロジェクトの中で「それ、ユーザーから見たらこう見えますよ」と発言して重宝された場面が何度かありました。
  • クライアントとの関係構築がうまい:代理店出身者はクライアントワークに慣れているので、クライアントとの距離の取り方やコミュニケーションの勘所をすでに持っています。

苦労する場面

  • 財務・会計の知識が足りない:コンサルではPL・BSを読んでクライアントの経営状態を把握することが必要です。マーケター出身だとこの部分が弱いことが多く、ぼくも最初は苦労しました。入社前にファイナンスの基礎書を2〜3冊読んでおくだけでもだいぶ違います。
  • 仮説思考の深さが足りない:マーケターも仮説を立てますが、コンサルの仮説思考はもう1〜2段深いです。「売上が落ちている」→「なぜか」→「チャネル別に見ると店頭が落ちている」→「なぜか」→「競合のPB商品が伸びている」のように、因果の連鎖を3〜4段掘り下げることを日常的に問われます。
  • 構造化の訓練が不足している:MECE(漏れなくダブりなく)に物事を分解する能力は、マーケター時代にはそこまで意識しない人が多いです。コンサルでは初日から当たり前に問われるので、ここにギャップを感じる人は多いです。

「コンサルに行くべきか」を判断するための3つの問い

ぼくがマーケターからコンサル転職を考えている人に聞くのは、いつも同じ3つの問いです。

問い1:今の仕事で「物足りない」と感じているのは何か

「もっと上流の戦略に関わりたい」「経営層と直接話がしたい」「マーケティング以外のビジネス領域も理解したい」。こういう物足りなさがある人は、コンサルで得られるものが大きいです。

逆に、「もっとクリエイティブなことがしたい」「ユーザーに直接届く仕事がしたい」なら、コンサルではなく事業会社やスタートアップのほうが合っています。

問い2:3年後にどこにいたいか

コンサルは「ゴール」ではなく「経由地」として使うのが合理的です。コンサルで3〜5年経験を積んだあとに、事業会社のマーケティング責任者になるのか、独立するのか、コンサルに残るのか。その先の絵がぼんやりでもある人は、コンサルでの経験を有効に使えます。

ぼくの場合は「独立するための武器を増やしたい」という目的があったので、5年でアクセンチュアを辞めて独立しました。目的が曖昧なまま行くと、コンサルの激務に耐える理由がなくなって辛くなります。

問い3:年収が上がらなくてもコンサルの仕事をやりたいか

これはちょっと意地悪な問いです。実際にはコンサルに転職すると年収が上がるケースが多いですが、年収だけが目的だと、仕事の厳しさに対するモチベーションが持ちません。

「年収が同じでもコンサルの仕事内容に興味がある」と言える人は、向いている可能性が高いです。「年収が上がるから耐えられる」だけだと、正直キツいと思います。

無理にコンサルに行かなくていい人

ここまで読んで「やっぱり自分には合わないかも」と思った人に、ぼくが伝えたいのは「それでいい」ということです。

マーケターとしてのキャリアは、コンサルを経由しなくても十分に積めます。事業会社でCMOを目指す道もあるし、代理店の中でスペシャリストとして評価される道もあります。リクルートワークス研究所の調査でも、マーケティング人材の需要は年々高まっているとされていて、マーケターというポジション自体の市場価値は上がっています。

コンサルに行くことが「正解」ではないし、行かないことが「逃げ」でもありません。自分の強みが一番活きる場所を選ぶのが、キャリアの基本です。

ただ、「向いているかもしれないけど不安」という人は、一度コンサル転職に詳しいエージェントに話を聞いてみるのも手です。ぼく自身がアクセンチュアに転職したときの経験は広告代理店からコンサルに転職して本当に変わったことをまとめた記事に詳しく書いています。

コンサル業界に特化したエージェントだと、自分のマーケター経験がどのファームのどのポジションに合うかを具体的に教えてもらえます。ぼくが使った中では、コンサル転職に絞って相談できるのが楽でした。

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よくある質問

マーケター経験は何年あればコンサルに転職できますか?

目安は3年以上です。コンサルファームの中途採用では「自分で施策を設計・運用した経験があるか」が見られます。ぼくの場合は博報堂で13年のあとに転職しましたが、5〜7年目くらいで動く人も多いです。早すぎると実務経験が浅いと判断されやすく、遅すぎるとコンサルのカルチャーに馴染むのに時間がかかります。

マーケターからコンサルに転職すると年収はどのくらい変わりますか?

転職時のポジション次第ですが、広告代理店からコンサルファームへの転職では年収が1.2〜1.5倍になるケースが多いとされています。ただしファームによって差が大きく、戦略系と総合系でもレンジが違います。年収だけで判断せず、仕事内容との兼ね合いで考えることが大事です。

デジタルマーケティング専門でもコンサルで通用しますか?

通用します。むしろ今はデジタルマーケティングの知見を持つコンサルタントの需要が高いです。アクセンチュアのようなファームではデジタルマーケティング案件が増えていて、広告運用やCRM、データ分析の経験がある人は重宝されます。ぼく自身もBtoBマーケティングと広告運用の経験がそのまま武器になりました。

コンサルに向いていないとわかったら、他にどんなキャリアがありますか?

事業会社のマーケティング部門に行く、スタートアップでグロースを担う、フリーランスのマーケティング支援者になる、といった選択肢があります。コンサルに行かなくても、マーケターとしてのキャリアアップの道はたくさんあります。自分が何に面白さを感じるかを基準に選ぶのが一番です。

コンサル転職の面接では何を聞かれますか?

ケース面接(お題に対して論理的に回答する面接)と、ビヘイビア面接(過去の経験を深掘りされる面接)の2種類が基本です。マーケター出身者の場合、「どういう状況に対して、どんな仮説を立てて、どう解決したか」を構造的に語れるかどうかがポイントになります。「なんとなくうまくいきました」では通りません。

向き不向きを知ることが、一番のキャリア戦略になる

コンサルに向いている人は、行けばキャリアの幅がぐっと広がります。でも向いていない人が無理に行くと、自分の強みを殺すことになります。

ぼくはアクセンチュアでの5年間で、自分の思考の甘さを何度も突きつけられました。正直しんどかったです。でも「マーケティングの実行経験」と「コンサルの戦略経験」の両方を持てたことで、独立後に仕事の選択肢が大きく広がりました。

だから「向いてるかもしれない」と感じた人には、行ってみる価値はあると伝えたいです。でも「向いてないな」と感じた人には、その直感を大事にしてほしいです。自分に合う場所で勝負するほうが、結局は遠くまで行けます。

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