キャリアデザイン

ジャーナリングとは何か|自分の解像度が上がると、意思決定が速くなる

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ジャーナリングという言葉を、日記の少しおしゃれな言い方だと思っている人が多いようです。でも、実際に続けてみると、効いてくる場所がまったく違いました。結論から書きます。ジャーナリングの本当の効用は、心が整うことではなく、意思決定が速くなることです。自分の解像度が上がると、迷う時間そのものが減るからです。

ぼくは博報堂で13年、アクセンチュアで5年働き、40歳で独立しました。独立してから、決めることの量が一気に増えました。そこで効いたのが、書き出す習慣です。順番に書いていきます。

ジャーナリングとは何か

ジャーナリングとは、頭に浮かんだことを、評価せずにそのまま書き出していく習慣のことです。日記との違いは、出来事の記録ではなく、そのとき自分が何を考え、何を感じていたかを書くという点にあります。

形式は決まっていません。紙のノートでも、スマホのメモでも構いません。うまく書こうとしないことだけが条件です。誰かに見せる文章ではないので、文法も体裁も要りません。

大事なのは、頭の中にある状態から、外に出すことです。この移動そのものが目的だと考えると、続けやすくなります。

なぜ書くと、意思決定が速くなるのか

ここがこの記事の中心です。書くことと決めることは、一見つながっていないように見えます。でも、迷いの正体を分解すると、理由がはっきりします。

迷いの多くは、選択肢ではなく基準の問題

人が迷うとき、選択肢が多すぎるから決められない、と思いがちです。でも実際は違います。選ぶ基準が自分の中で言葉になっていないから、決められないのです。

転職するかどうかで迷っている人に、何を大事にしたいかを聞くと、多くの人が答えに詰まります。年収なのか、時間なのか、成長なのか。ここが曖昧なままだと、どの選択肢を見ても決め手がありません。基準がないところに情報だけ足しても、迷いは増えます。

書き出すという行為は、この基準を可視化する作業です。自分が何に反応し、何に嫌悪を感じるかは、書いてみると驚くほどはっきり出ます。

同じことを何度も考え直さなくなる

もうひとつ大きいのが、思考の再利用です。頭の中だけで考えていると、翌週には同じ問いをゼロから考え直すことになります。結論が残らないからです。

書いておけば、次に同じ場面が来たときに「前に自分はこう考えた」から始められます。これが積み上がると、判断のたびに考える量が減っていきます。速くなるのは、頭の回転が上がったからではなく、考え直す回数が減ったからです。

解像度が上がる、とはどういう状態か

自分の解像度が上がるという言い方をしましたが、具体的には次のような変化です。

解像度が低い状態 解像度が高い状態
感情の把握 なんとなく嫌だ 裁量がないことが嫌だと分かる
判断の基準 その都度ぶれる 優先順位が決まっている
迷う時間 長い。堂々巡りになる 短い。判断材料がすぐ揃う
説明 うまく言えない なぜそう決めたか言葉にできる

注目してほしいのは、いちばん下の行です。自分の判断を説明できる状態は、そのまま仕事の評価にもつながります。ぼくが採用の面接をしていたときも、評価が高かったのは実績の派手な人ではなく、自分の判断を自分の言葉で語れる人でした。

独立してから、この効果を実感した

会社員のときは、決めることの多くが誰かとの相談で進みました。上司がいて、前例があって、判断の枠が用意されている。迷っても、時間をかければ誰かが一緒に決めてくれます。

独立して、それが全部なくなりました。受ける仕事、断る仕事、価格、使う時間。すべて自分で決める必要があり、しかも相談相手がいません。

最初の頃、ぼくは決められませんでした。断ったほうがいい仕事も、なんとなく引き受けていた。理由は明確で、自分が何を大事にしているかを、言葉にしていなかったからです。基準がないので、目の前の依頼を断る理由が作れませんでした。

書き出すようになって変わったのは、判断の速さです。いまは、依頼を見た時点でほぼ決まります。悩んでいないわけではなく、悩む部分が前倒しで終わっているという感覚です。

意思決定に効かせるための書き方

ただ書けばいいわけではありません。意思決定に効かせたいなら、書き方に少しだけ型を入れると変わります。ぼくがやっているのは、3つの層に分けることです。

  • 事実:何が起きたか。ここは短くていい
  • 感情:そのとき自分がどう感じたか。良し悪しを判定しない
  • 基準:なぜそう感じたのか。何を大事にしているからか

多くの人は、事実と感情で止まります。でも、意思決定に効くのは3番目です。「なぜそう感じたのか」まで掘ると、そこに自分の判断基準が出てきます。

たとえば、ある打ち合わせが嫌だったとします。そこで止めずに、なぜ嫌だったのかを書く。決まったことを一方的に伝えられただけだったから、と出てきたら、自分は意思決定に関われるかどうかを重視していると分かります。これは転職の判断にも、仕事の受け方にも、そのまま使えます。

続けるためのコツは、量を求めないこと

ジャーナリングが続かない理由の大半は、きちんと書こうとすることです。ぼく自身、何度も挫折しました。いいノートを買って、最初の数日だけ丁寧に書いて、そのまま終わる。

いま続いているのは、3行でいいことにしたからです。うまく書く必要はありません。むしろ、後で読み返して意味が通らなくても構わない。書いた瞬間に頭の外に出ていれば、目的は果たしています。

道具を変えることで習慣になった経験もあります。その話はジャーナリングが続かなかったぼくが習慣化できた理由に詳しく書きました。意志の問題にせず、続く仕組みを作るほうが早いです。

キャリアの判断に、そのまま効いてくる

この習慣がいちばん効くのは、大きな判断のときです。転職するかどうか、独立するかどうか。こうした問いは、その場で考えても答えが出ません。ふだんから自分の基準を書き溜めている人だけが、必要なときにすぐ判断できます。

転職の軸をどう作るかは転職で後悔しないために動く前にやることに、自分の市場価値の測り方は市場価値が高い人と低い人の違いに書いています。どちらも、出発点は同じです。自分を言葉にできているかどうか。

手っ取り早く現在地を知りたい場合は、キャリアタイプ診断を先にやってみると、書き出す取っかかりになります。10問で、いまどの状態にいるかが出ます。

よくある質問

ジャーナリングとは何ですか

頭に浮かんだことを、評価せずにそのまま書き出す習慣のことです。日記が出来事の記録であるのに対し、ジャーナリングは自分が何を考え、何を感じたかを書きます。形式や文章のうまさは問われません。頭の中にあるものを外に出すこと自体が目的です。

日記と何が違うのですか

目的が違います。日記は出来事を記録するものですが、ジャーナリングは思考と感情を可視化するためのものです。そのため、何をしたかより、なぜそう感じたかに重点を置いて書きます。人に見せる前提でもありません。

どれくらい書けばいいですか

3行で十分です。長く書こうとすると続きません。むしろ量を求めないほうが習慣になります。後から読み返して意味が通らなくても問題ありません。書いた時点で頭の外に出ているので、目的は達成されています。

朝と夜、どちらに書くのがいいですか

目的で選びます。朝はその日の優先順位を決めるのに向いていて、夜は起きたことの整理に向いています。意思決定を速くしたい場合は、判断に迷った日の夜に、なぜ迷ったのかを書いておくと、次に同じ場面が来たときの材料になります。

本当に意思決定が速くなりますか

なります。ただし、速くなる理由は頭の回転が上がるからではありません。判断基準が言葉になっていることと、以前考えた結論が残っていることで、考え直す量が減るためです。ゼロから考える回数が減るぶん、結果として速くなります。

まとめ

ジャーナリングは、心を整えるためだけの習慣ではありません。自分の判断基準を言葉にしていく作業です。そして基準が言葉になると、迷う時間が減ります。

迷いの多くは、選択肢が多いからではなく、選ぶ基準が曖昧だから生まれます。だから、情報を集めるより先に、自分を書き出したほうが早い。自分の解像度が上がるほど、意思決定は速くなります。

3行でかまいません。うまく書く必要もありません。書いたぶんだけ、次に迷う量が減っていきます。

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