最終更新:2026年10月17日
MCPとは、モデル・コンテキスト・プロトコル(Model Context Protocol)の略で、AIアプリと外部のデータやツールをつなぐためのオープンな共通規格のことです。この記事で扱うのはAIのMCPで、マイクロソフトの旧資格やマインクラフトの開発ツールのMCPではありません。公式サイトはこの規格を「AIアプリのUSB-Cポート」にたとえています。充電器もモニターも同じ差し込み口でつながるように、カレンダーも社内資料も顧客管理のツールも、同じ約束事でAIにつなげるようにしたものです。非エンジニアのマーケターにとってMCPは、自分の資料やいつも使うツールをAIに手渡す手段です。結論から言えば、MCPで問われるのはつなぐ技術ではなく、AIにどの鍵を渡すかという判断です。この記事では、MCPの意味と仕組みの一覧、生まれた経緯、APIやRAGとの違い、非エンジニアの始め方、2026年時点の注意点まで書いていきます。
MCPとは?意味と仕組みの一覧(登場人物3つと部品3つ)
MCPは、AIが外の世界に手を伸ばすときの「つなぎ方」だけを決めた約束事です。AIの賢さそのものを上げるものではなく、AIがどのデータを読み、どの道具を使えるかを、どのAIアプリからでも同じ手順でそろえられるようにしています。
プロトコルとは、通信の約束事のことです。以前は、AIにツールをつなぐにはAIとツールの組み合わせごとに専用の接続を作る必要がありました。MCPはその形を一つに決めたので、ツール側が一度対応すれば、対応しているAIアプリならどれからでもつながります(MCP公式サイトの紹介ページ)。仕組みは三者の分担で動いています。
| 登場人物 | 公式の説明 | 非エンジニア向けの言い換え | 例 |
|---|---|---|---|
| ホスト | 複数の接続を調整・管理するAIアプリケーション | あなたが話しかけているAIアプリ本体 | Claudeのアプリ、Claude Code、VS Code(プログラミング用の編集ソフト) |
| クライアント | サーバーとの接続を保ち、文脈を取ってくる部品 | ホストの中にいる取り次ぎ係。つなぐ先ごとに一人つく | ホストが自動で用意する。使う側はほぼ意識しない |
| サーバー | クライアントに文脈を提供するプログラム | データや道具をAIに差し出す側。手元のパソコンにもネット上にも置ける | Slack、Notion、Googleアナリティクスなどの公式MCPサーバー |
サーバーがAIに差し出すものは、公式ドキュメントで3種類に整理されています。
| 部品 | 公式の説明 | 言い換え | 例 | 使うと決めるのは |
|---|---|---|---|---|
| ツール(Tools) | AIが呼び出せる関数。データの書き込みや外部サービスの操作 | AIに「やらせること」 | 予定を作る、メッセージを送る、データを検索する | AIモデル |
| リソース(Resources) | 文脈として読む、読み取り専用のデータ | AIに「見せるもの」 | 文書、ナレッジベース、カレンダーの中身 | アプリケーション |
| プロンプト(Prompts) | ツールやリソースの使い方を指示する既製のテンプレート | AIに「渡す手順書」 | 会議の要約、メールの下書き、旅行計画 | ユーザー |
マーケターが押さえておきたいのは、「見せるもの」と「やらせること」が最初から分けて設計されている点です。資料を読ませるだけなら、AIは何も壊せません。送信や更新のツールを渡した瞬間に、AIの間違いが外の世界に出ていきます。この区別は、あとで書く権限の話にそのままつながります(出典:MCP公式のアーキテクチャ解説、サーバーの概念)。
MCPの出典と経緯──Anthropicの公開から、業界共通の財団へ
MCPは、2024年11月25日にAnthropicがオープンソース(設計図を公開し、誰でも使い、手を入れられる形)として発表した規格です。1社の製品として始まり、2025年のうちにOpenAIとGoogleが対応を表明し、同年12月には中立の財団へ移されました。
| 時期 | 出来事 | 出典 |
|---|---|---|
| 2024年11月 | AnthropicがMCPを発表しオープンソース化。初期採用にBlock、Apollo。Googleドライブ、Slack、GitHubなどをつなぐサーバーが初回発表で例示された | Anthropicの発表 |
| 2025年3月 | OpenAIのサム・アルトマン(Sam Altman)が、自社製品でのMCP対応を表明 | TechCrunch |
| 2025年4月 | Google DeepMindのデミス・ハサビス(Demis Hassabis)が、GeminiでのMCP対応を表明。「AIエージェント時代のオープンな標準になりつつある」と評した | TechCrunch |
| 2025年5月 | MicrosoftがWindowsでのMCP対応方針と、安全対策の原則を公開 | Microsoftの発表(Windowsブログ) |
| 2025年11月 | 公開1周年。公式のMCP Registry(サーバーの登録簿)は2,000件近くに | MCP公式ブログ |
| 2025年12月 | AnthropicがMCPをAgentic AI Foundation(AAIF)に寄贈。AAIFは非営利団体Linuxファウンデーション(Linux Foundation)の傘下で、共同設立はAnthropic、Block、OpenAI。Google、Microsoft、AWSなどが支援 | Anthropic/Linuxファウンデーション |
寄贈を発表した2025年12月の時点で、Anthropicは、活発に動いている公開MCPサーバーが1万を超え、SDK(開発キット。プログラムからMCPを使うための部品一式)の月間ダウンロードが9,700万回を超えたと公表しています(Anthropicの発表)。どれも2025年12月時点の数字で、2026年の公式な集計はぼくの調べた範囲では見つかりませんでした。
着想のもとは、プログラミング用の編集ソフトと言語解析ツールをつなぐ言語サーバープロトコル(Language Server Protocol)だと、MCP公式の仕様書にあります。1社の規格が1年で業界共通の財団に移ったのは、つなぎ方を各社がばらばらに作るより、共通の差し込み口を持つほうが全員の得になると判断されたからだと思います。
MCPとAPI・RAG・AIエージェントの違い
MCPはAPIの置き換えではなく、AIがAPIなどの道具を使うときの「つなぎ方」をそろえる規格です。APIは個々のサービスの窓口、MCPはその窓口をAIから同じ手順で使えるようにする変換プラグ、と考えると位置関係がつかめます。
| 用語 | 何か | MCPとの関係 |
|---|---|---|
| API | 外部のサービスやソフトと、決まった形式でやりとりするための窓口 | MCPサーバーの中身はAPIを呼んでいることが多い。APIがサービスごとの窓口、MCPはAIから見た共通の差し込み口 |
| ツール呼び出し(function calling) | AIモデルが「この関数を実行して」と返し、アプリ側が実行する仕組み | モデルが道具を呼ぶ仕組みそのもの。MCPは道具の置き場所と見つけ方を共通化する外側の層(公式の直接比較はなく、ぼくの整理) |
| RAG | AIが答える前に、信頼できる資料を検索して参照する手法 | RAGは「答え方」、MCPは「つなぎ方」。MCPサーバーがRAG用の検索ツールを差し出すことはできる |
| AIエージェント | 目的を受け取り、手順を自分で決めてツールを使いながら動くAI | エージェントは使う側。MCPはその手足をつなぐ規格で、エージェントそのものではない |
| A2A | Google発の、AIエージェント同士が会話するための規格(2025年4月発表) | 公式の整理では、MCPは各エージェントを自分の道具に、A2Aはエージェント同士をつなぐ(A2A公式サイト) |
RAGとAIエージェントはそれぞれの解説記事で詳しく書いたので、ここでは位置関係だけにとどめます。マーケティングの現場に置き換えるなら、CRMとは?マーケティングでの意味とSFA・MAとの違いで書いたCRM(顧客関係管理)のデータを読んで提案を出すのがRAGやエージェントの仕事で、そのCRMにAIが手を伸ばすための配線がMCPです。
実務でどう使うか──非エンジニアはコネクタから始める
非エンジニアのマーケターがMCPを使う現実的な入口は、AIアプリの「コネクタ」機能です。コードを書かずに画面で接続先を選び、そのサービスにサインインして許可すれば、AIがそのデータを読んだり操作したりできるようになります。
Claudeを例にすると、「Customize」から「Connectors」を開き、接続先を選んで「Connect to Claude」を押し、サービス側でサインインして許可すれば完了です(Claude公式ガイド)。ツール単位で「常に許可」「毎回承認」「ブロック」を選べ、一覧にないサービスもMCPサーバーのURLを登録すれば「カスタムコネクタ」として追加できます(Claude公式ヘルプ)。
マーケティングの仕事に関わる接続先で、2026年10月時点で公式に確認できたものを挙げます。
| サービス | AIからできること(公式ページの記載) | 出典 |
|---|---|---|
| Googleアナリティクス | レポートやリアルタイムレポートの取得。読み取り専用で「試験的(Experimental)」の表記 | Google公式リポジトリ |
| HubSpot | CRMの連絡先や取引の読み書き。キャンペーンなどは読み取りのみ | HubSpot開発者向けページ |
| Canva | デザインの検索・生成・書き出し、ブランドテンプレートへの自動入力 | Canvaヘルプ |
| Notion | ページやデータベースの検索・読み取り・作成・更新 | Notion開発者向けページ |
| Slack | 検索、メッセージ、canvas、ファイルなどの操作 | Slack開発者向けドキュメント |
つなぐ側に回ることもできます。ぼくは無料のSVG(拡大しても荒れない画像形式)アイコン素材サイト「よそおいアイコン」を、2026年8月からMCPサーバーとしても公開しています。アイコンを探すsearch_iconsと、名前を指定してSVGのコードを受け取るget_iconという2つのツールを差し出していて、Claudeなどの対応アプリに登録すると、キーワードで頼むだけでAIが2000本の中から探してきて、そのまま資料やサイトに埋め込めます。サイトは人が見るもの、MCPサーバーはAIが見るもの。同じ素材に、人向けとAI向けの入口を2つ用意した形です。
どのサービスをつなぐかを決めるとき、ぼくは次の順番で考えています。
- AIに「見せたいもの」と「やらせたいこと」を分けて書き出す
- 最初は読み取り専用の接続から始める。レポートを読ませる、過去の資料を探させる、といった仕事はここで十分に回る
- 書き込みや送信のツールは「毎回承認」にする。AIが提案して、人が押す
- 外に出るもの(顧客へのメール、公開する投稿、取引先への資料)は、出る直前に人が見る
AIに作業を任せる仕組みを自分で作ったときに何が起きたかは、マーケターがClaude Codeを使ったら、外注していた作業が半日で終わったに書いています。
日本市場・2026年時点でのMCPの注意点
「つなげる」と「つなげてよい」は別物です。2026年にMCPを使うとき、いちばん気をつけたいのはそこです。MCP公式の仕様書は、ツールの実行は任意のコードを動かすことに相当するので慎重に扱い、ホストは実行前に利用者の明示的な同意を取るべきだとしています。そのうえで「MCP自体はこれらの安全原則をプロトコルの段階で強制できない」と明記しています(MCP仕様書)。守るのは規格ではなく、使う人とアプリ側の設定です。
具体的な危険として公式に挙げられているのが、プロンプトインジェクション(AIに読ませる文章の中に、こっそり指示を混ぜ込む攻撃)です。MCPサーバーが返すデータやツールの説明文に隠れた指示が入っていると、AIがそれを命令として実行するおそれがあります。Microsoftは2025年5月の投稿で、MCP経由のプロンプトインジェクションが遠隔からのコード実行にまで至りうると警告しました(Microsoftの発表)。Claude公式ヘルプも、カスタムコネクタはAnthropicが検証していないサービスにつながりうるので、信頼できるサーバーだけに接続し、権限を絞り、ツールの承認要求を確かめるよう案内しています。
マーケターにとって現実的なのは、顧客データをつなぐときの線引きです。CRMやアクセス解析をAIにつなげば、顧客の個人情報がAIアプリを経由して流れます。どのデータを、何の目的で、どこまで渡すのかは、MCPの設定より前に決めておく必要があります。自社が直接集めたデータの種類と扱いの考え方はファーストパーティデータとは?ゼロ・サードパーティとの違いと集め方に整理しています。
あと二つ、知っておくと混乱が減ることがあります。一つは、仕様が動き続けていることです。2026年10月時点の公式ドキュメントは2026年7月28日版で、1年前の解説記事とは説明が変わっている箇所があります。初回発表で例示されたGoogleドライブやSlackのサーバーも、現在は公式リポジトリの保管庫に移り、各社が自分の公式サーバーを出す形になりました(MCP公式リポジトリ)。もう一つは、日本語で「MCP」と検索すると、マイクロソフトの旧資格やマインクラフトの開発ツール(Mod Coder Pack)、医療の関節名が混ざって出てくることです。社内で話すときは「AIのMCP」と一言添えるだけで、行き違いが減ります。
MCPに関するよくある質問
MCPとは簡単に言うと何ですか?
AIアプリと、外部のデータやツールをつなぐための共通規格です。公式サイトは「AIアプリのUSB-Cポート」にたとえています。ツール側が一度MCPに対応すれば、対応しているAIアプリならどれからでも同じ手順でつなげるようになります。
MCPは何の略ですか?マイクロソフトの資格のMCPとは別ですか?
AIの文脈ではモデル・コンテキスト・プロトコル(Model Context Protocol)の略です。マイクロソフトの旧資格やマインクラフトの開発ツール、医療用語のMCPとは無関係で、同じ略語が別の分野で使われているだけです。検索するときは「MCP AI」のように文脈を添えると探しやすくなります。
MCPとAPIの違いは何ですか?
APIは個々のサービスと決まった形式でやりとりするための窓口で、MCPはAIからその窓口を同じ手順で使えるようにする共通の差し込み口です。MCPはAPIを置き換えるものではなく、MCPサーバーの中身がAPIを呼んでいることも多くあります。サービスごとの窓口がAPI、AIから見た共通の形がMCP、と覚えると整理できます。
MCPはClaude専用ですか?
Anthropicが2024年11月に公開した規格ですが、Claude専用ではありません。2025年にOpenAIとGoogleが対応を表明し、2025年12月にはLinuxファウンデーション傘下のAgentic AI Foundationに寄贈されて、特定の1社のものではなくなりました。ChatGPT、Gemini、MicrosoftのCopilotなどが採用済みだと、Anthropicは2025年12月の発表で挙げています。
おわりに──MCPは、AIをつなぐ技術ではなく、AIに渡す鍵を人が選ぶ話
MCPの解説は、どうしても「何がつながるか」の話になります。つながる先が増えるほど便利になるのは本当で、ぼく自身も自分の素材サイトをつないで、その便利さを使う側と差し出す側の両方から見ました。
でも、差し込み口が共通になったということは、鍵の形も共通になったということです。どの鍵を、どのAIに、どこまで渡すか。読むだけにするのか、書かせるのか、送らせるのか。その判断は規格の中には書かれていなくて、公式の仕様書ですら「プロトコルでは強制できない」と認めています。AIの時代に残る仕事は選ぶことだとAIを使いこなすマーケターが生き残る理由【2026年】で書きましたが、MCPはその「選ぶ」が、権限という目に見える形になったものだと思います。
MCPとは、AIをつなぐ技術の話ではなく、AIに渡す鍵を人が選ぶ話。
コネクタの一覧を開く前に、自分の仕事でAIに「見せてよいもの」と「触らせてよいもの」を、それぞれ三つだけ書き出してみてほしいと思います。その六つの線が、あなたのMCPの設計図です。