最終更新:2026年10月6日
F2転換率とは、初めて商品を買った人のうち、2回目の購入に進んだ人の割合です。計算式は「2回目を買った人数 ÷ 初回購入した人数 × 100(%)」で、通販やD2Cでリピートの入口を測る指標として使われます。結論を先に書くと、F2転換率の「平均」や「目安」として出典のはっきりした相場は、ぼくが調べた範囲では見当たりませんでした。だから他社の数字と比べるより、初回購入の月ごとに区切った自社の推移で見るのが確かです。計算式とF1・F2・F3の一覧表、計算するときの決めごと、上げるための打ち手まで、自分でも小さく売る側にいる視点からまとめました。
F2転換率とは?計算式とF1・F2・F3の一覧
F2転換率とは、F1(初回購入した顧客)のうちF2(2回購入した顧客)に移った人の割合のことです。FはFrequency(購入回数)の頭文字で、F1は1回、F2は2回、F3は3回買った顧客の段階を指します。
段階ごとの意味と計算式を、架空の例の数字と一緒に表にしました。例の数字はすべて説明のための仮のものです。
| 段階 | 意味 | 転換率の計算式 | 例(架空の数字) |
|---|---|---|---|
| F1 | 初回購入した顧客 | ― | 4月に初めて買った人が1,000人 |
| F2 | 2回目を買った顧客 | F2の人数 ÷ F1の人数 × 100 | そのうち250人が2回目を購入→F2転換率25% |
| F3 | 3回目を買った顧客 | F3の人数 ÷ F2の人数 × 100 | 250人のうち125人が3回目を購入→F3転換率50% |
| F4以降 | 4回目以降を買った顧客 | 1つ前の段階の人数で割る | ― |
F3転換率の分母には、1つ前のF2の人数を使う数え方と、最初のF1の人数を使う数え方があります。どちらが正しいとは決まっていないので、社内でどちらを使うか決めておくと、会議で数字が食い違いません。
F2がとくに注目されるのは、初回購入者のなかに「試しに買ってみただけの人」が混ざっているからです。広告やお試し価格で入ってきた人は、まだその商品を選んだとは言えません。2回目は、本人の意思で戻ってきた最初の証拠です。例の数字でも、1回目から2回目のあいだで4分の3の人が離れています。試しに買っただけの人が分母に混ざる以上、リピートの階段は最初の段差が高くなりやすい構造です。
F2転換率の出どころ──提唱者ははっきりしない
F2転換率には、「この人が提唱した」と言い切れる一次出典が見当たりません。日本の単品通販やD2Cの現場で使われてきた実務の言葉で、英語の資料では repeat purchase rate や second purchase rate のような言い方で扱われることが多く、F2という呼び方はあまり見かけません。ぼくが確認できた範囲では、最初に使った人や時期を特定できる資料にはたどりつけませんでした。
Fの由来は、顧客を最終購入日(Recency)・購入回数(Frequency)・購入金額(Monetary)の3つで分けるRFM分析のFだと考えられます。RFM分析は米国のカタログ通販やダイレクトマーケティングで顧客を分ける方法として使われてきたもので、そのFrequencyの段階に番号を振って、F1・F2・F3と呼ぶようになった。そう整理すると、言葉の成り立ちに筋が通ります。ただ、これも特定の文献で確かめられた経緯ではないので、有力な説明の一つとして受け取ってもらえればと思います。RFMの3つの軸で顧客を分ける手順そのものは、RFM分析のやり方とスコアの付け方にまとめました。
リピート購入そのものを研究の対象にした古典としては、アンドリュー・アレンバーグ(Andrew Ehrenberg)の「Repeat-Buying」(1972年)があります。どのブランドの買い手が、どれくらいの頻度でまた買うのかを、大量の購買データから規則として描いた研究です。F2転換率という言葉は現場で生まれたものでも、「2回目を買うかどうか」を数字で追う発想には、こうした長い研究の蓄積があります。
リピート率・継続率・LTVとの違い
F2転換率は、リピートに関わる指標のなかで「最初の1回分の戻り」だけを切り出した数字です。リピート率は購入者全体のうち複数回買った人の割合、継続率は定期購入や月額課金が翌月以降も続いている割合、LTVは1人の顧客が取引の期間全体でもたらす価値で、それぞれ見ている範囲が違います。
| 指標 | 何を見るか | 分母 | 向いている売り方 |
|---|---|---|---|
| F2転換率 | 初回から2回目に進んだ割合 | 初回購入した顧客 | 都度購入の通販・D2C |
| リピート率 | 期間内に複数回買った人の割合 | 期間内の購入者全体 | 売り方を問わない |
| 継続率 | 定期購入や月額課金が続いている割合 | 前の月の契約者 | 定期便・サブスク |
| LTV | 1人の顧客がもたらす価値の合計 | 顧客1人 | 売り方を問わない |
| CPO | 注文1件を取るのにかかった広告費 | 注文数 | 通販 |
この中でF2転換率がLTVの入口と呼ばれるのは、2回目に進んだ人しか3回目に進めないからです。F2が動くと、その後ろの段階すべての人数が動きます。架空の例で比べてみます。初回の粗利が1人2,000円、2回目と3回目も同じ粗利、F2から3回目に進む割合は50%で固定、計算は3回目までで打ち切る、単純化した「例」です。
| 例のケース | 1人あたりの平均購入回数 | 1人あたりの粗利(3回目まで) | 初回のCPOが3,000円なら |
|---|---|---|---|
| F2転換率25% | 1 + 0.25 + 0.125 = 1.375回 | 2,750円 | 250円の赤字 |
| F2転換率35% | 1 + 0.35 + 0.175 = 1.525回 | 3,050円 | 50円の黒字 |
同じ広告費で同じ人数を集めても、F2転換率が違うだけで、広告にかけてよい上限が変わります。通販の現場でF2が経営の数字として扱われるのは、このためです。熱量の高い顧客がLTVをどう押し上げるかは推し活経済の正体|ファンダムマーケとLTV・共創で解剖でも書いています。LTVの計算式と、広告にかけてよい上限を決めるCACとの関係は、LTVの意味と計算式3種、CACとの関係で整理しました。
ただし、F2転換率さえ上げれば小さなブランドが大きなブランドに勝てる、とまでは言えません。アレンバーグらの研究の流れからは、シェアの小さいブランドほど顧客の数もリピートも少なく出るという規則が見つかっています。ダブルジョパディの法則とは?意味とロイヤルティ神話への示唆で書いたとおり、リピートはブランドの規模にある程度ついてくる数字です。F2転換率は大事な体温計ですが、成長の大半は新しい買い手を増やすことから生まれる、という前提は外さないでおきたいところです。
F2転換率の平均・目安は?──出典のある相場は見当たらない
F2転換率の「平均」や「目安」として、調査した主体と対象と期間がはっきり示された相場は、ぼくが調べた範囲では見つかりませんでした。ネット上には目安の数字を書いた記事もありますが、どの業種の、何社の、何日間のデータなのかが示されていない数字は、自社の判断の物差しには使えません。
相場が出しにくいのには理由があります。F2転換率は、計算の決めごとしだいで同じ会社でも大きく変わる数字だからです。とくに差が出やすい決めごとを表にしました。
| 決めごと | 選び方の例 | 決めずに計算すると起きること |
|---|---|---|
| 分母 | 初回購入の月で区切った新規顧客(コホート)だけを数える | 昔からの顧客が混ざり、率が高く出る |
| 観測期間 | 初回から30日・90日・180日など、商品を使い切るまでの日数に合わせて決める | 期間が短いと低く、長いと高く出る |
| 2回目の数え方 | 別の日の注文だけを数え、同じ日の追加注文や返品・キャンセルは除く | 実態より高く出る |
| 定期購入の扱い | 定期の2回目配送を含めるか、別に集計するかを決める | 自動で届いた分と自分で選んだ分が混ざる |
| 初回の入口 | お試し価格・通常価格、広告経由・自然流入で分けて計算する | 入口の違いが平均に埋もれる |
化粧品のように1か月で使い切る商品と、家具のように何年も使う商品では、2回目までの時間がまったく違います。お試し価格で集めた初回と、通常価格で買ってもらった初回でも、2回目に進む人の気持ちは別物です。決めごとも商材も違う数字を並べて「平均」を出しても、自分の店の良し悪しは分かりません。
そこでおすすめしたいのが、自社のコホートを並べて推移で見る方法です。初回購入の月ごとに新規顧客を区切り、同じ観測期間で2回目に進んだ割合を出します。
| 初回購入の月(例) | 新規顧客数 | 90日以内に2回目を購入 | F2転換率 |
|---|---|---|---|
| 4月 | 1,000人 | 250人 | 25% |
| 5月 | 1,200人 | 264人 | 22% |
| 6月 | 900人 | 252人 | 28% |
この表の数字も架空の例です。こうして並べると、比べる相手が他社ではなく過去の自分になります。5月は新規顧客が増えたのにF2転換率は下がっているので、その月だけ入口の何かが違ったのではないか、と問いが立ちます。値引きを強めた月だったのか、いつもと違う媒体から人が来たのか。相場との比較からは出てこない問いが、推移からは出てきます。目安を探すより、自分の数字の動きに理由をつけられる状態をつくるほうが、打ち手につながります。
F2転換率を上げる打ち手と、2026年の日本で気をつけたいこと
F2転換率を上げる打ち手は、2回目の案内を工夫するより先に、1回目の体験を設計し直すことです。2回目を買うかどうかは、1回目を使い終えたときの気持ちでおおかた決まっている、とぼくは考えています。
| 打ち手 | 中身 | 見る数字 |
|---|---|---|
| 初回の入口を見直す | お試し価格や大きな値引きで集めた層と、通常価格の層を分けて追う | 入口別のF2転換率 |
| 使い始めを支える | 同梱物や使い方の案内、届いてから最初の数日の連絡で、良さを感じる前の離脱を防ぐ | 初回到着後の利用状況・問い合わせ |
| 案内の時期を合わせる | 商品がなくなる頃、使い終わる頃に合わせて連絡する | 案内から2回目の購入までの日数 |
| 思い出される接点をつくる | メールやLINE、パッケージの言葉で、また欲しくなった瞬間に名前が浮かぶ状態にする | 2回目の購入の流入経路 |
| 2回目の選び方を増やす | 同じ商品の買い直しだけでなく、関連商品やサイズ違いを用意する | 2回目に買われた商品の内訳 |
4つ目の「思い出される接点」は見落とされがちです。2回目を買わなかった人の多くは、商品を嫌いになったのではなく、また欲しくなった瞬間にその商品を思い出さなかっただけかもしれません。買う場面で頭に浮かぶかどうかの考え方は、メンタルアベイラビリティとは?意味とCEP・実務での高め方にまとめています。
ぼくも独立してから自分で小さく売る側にいますが、そこで実感するのは、2回目は「お願い」からは生まれないことです。1回目で約束したことがちゃんと届いていれば、こちらが何かを仕掛ける前に戻ってきてくれる。届いていなければ、丁寧に案内を送っても反応は鈍い。だから2回目の施策を考える前に、買う前に伝えた価値と、届いた中身がずれていないかを先に確かめるようにしています。
2026年の日本で気をつけたいのは、F2転換率の数字だけを作る手法です。代表的なのは、初回を極端に安くして定期購入に誘導し、2回目を自動で届けるやり方です。日本では令和3年の特定商取引法の改正(2022年6月1日施行)で、通信販売の申し込みの最終確認画面に、分量や代金、契約の期間などをはっきり表示することが義務づけられ、定期購入であることが分かりにくい売り方には厳しい目が向けられています(消費者庁「令和3年特定商取引法・預託法の改正について」)。自動で届いた2回目は、本人が選んだ2回目とは意味が違います。法律の面でも、生活者の信頼の面でも、数字だけ先に作る売り方は割に合いません。
2回目限定の大きな割引も、使い方に注意が要ります。F2転換率は上がりやすいのですが、割引があるときにしか買わない顧客を育ててしまうことがあります。割引で上げたF2は、F3や継続率まで一緒に見て、本当に「続ける人」が増えたのかを確かめておきたいところです。
F2転換率に関するよくある質問
F2転換率の平均や目安はどれくらいですか?
調査の主体・対象・期間がはっきり示された相場は、ぼくが調べた範囲では見当たりません。F2転換率は商材の購入周期や観測期間、初回の売り方によって大きく変わるので、他社の数字と比べても判断の材料になりにくい指標です。初回購入の月ごとに新規顧客を区切り、同じ観測期間で自社の推移を見るのが確かです。
F2転換率は何日間で計算すればいいですか?
決まった日数はなく、商品を使い切るまでの日数に合わせて決めるのが基本です。1か月で使い切る消耗品なら、その周期より少し長めの期間で見ると、2回目を買う人を取りこぼしにくくなります。大事なのは日数を一度決めたら変えず、月ごとのコホートを同じ条件で比べることです。
F2転換率とリピート率の違いは何ですか?
分母が違います。F2転換率は初回購入した顧客を分母にして、そのうち2回目に進んだ割合を見ます。リピート率は期間内の購入者全体を分母にして、複数回買った人の割合を見ます。F2転換率は「新しく来た人が戻ってきたか」、リピート率は「顧客全体のうち何回も買う人がどれくらいいるか」を測る指標です。
F2転換率を上げるには何から始めればいいですか?
まず初回の入口別にF2転換率を分けて計算するところから始めるのがおすすめです。お試し価格と通常価格、広告経由と自然流入で数字を分けると、どこから来た人が戻ってきていないのかが見えます。そのうえで、1回目の体験と、使い終わる頃の連絡のタイミングを見直すと、打ち手の順番が決めやすくなります。
おわりに──F2転換率は「1回目の約束を守れた率」
F2転換率は、2回目を売る力の数字ではありません。1回目の約束を守れたかどうかの数字です。
この記事の一行を選ぶなら、これになります。2回目の案内やクーポンをどれだけ工夫しても、1回目に届いた中身が買う前に伝えた価値とずれていれば、人は戻ってきません。逆に、約束どおりのものが届いていれば、多少案内が下手でも、また欲しくなった瞬間に思い出してもらえます。F2転換率が下がったときに見直すべきなのは、2回目の売り方より先に、1回目の約束のほうです。
平均や目安が見当たらない数字だからこそ、比べる相手は他社ではなく先月の自分で十分だと思います。F2転換率の見方で迷うことがあれば、ぼくのXアカウント(@yosooi3)に問いかけてもらえれば、できる範囲で答えようと思います。