最終更新:2026年10月6日
RFM分析とは、顧客を「最後にいつ買ったか(Recency)」「どれくらいの頻度で買っているか(Frequency)」「いくら使ったか(Monetary)」の3つの指標で採点し、グループに分けて打ち手を変えるための顧客分析です。結論を先に書くと、RFM分析で大事なのは点数の高い順に並べることではなく、3つの点数の組み合わせから「次に誰へ、何を言うか」を決めることです。合計点が同じお客さんでも、打つべき手が正反対になることがあります。3つの指標とスコアの付け方の一覧表、出典、架空の例で5人を採点する手順、セグメント別の打ち手、LTVとの違い、2026年の今も使えるのかまで、実務の判断の順番でまとめました。
RFM分析とは?3つの指標とスコアの付け方一覧
RFM分析とは、Recency(最新購入日)・Frequency(購入頻度)・Monetary(購入金額)の頭文字をとった、購買履歴だけで顧客を分けられる分析の型です。3つの指標をそれぞれ5段階などで採点し、その組み合わせで顧客の状態を読みます。
3つの指標の中身と、スコアの区切り方の例は次のとおりです。区切りの数値は説明のための架空の例で、実際の基準は商材の買い替えサイクルに合わせて自社で決めます。
| 指標 | 英語 | 測るもの | データの出し方 | スコア5の例 | スコア1の例 |
|---|---|---|---|---|---|
| R | Recency(最新購入日) | いまの関係の近さ | 最後に買った日から今日までの日数 | 30日以内 | 241日以上 |
| F | Frequency(購入頻度) | 関係の太さ・習慣になっているか | 集計期間内の購入回数 | 10回以上 | 1回 |
| M | Monetary(購入金額) | 関係の深さ・財布の中での比重 | 集計期間内の累計購入金額 | 5万円以上 | 5千円未満 |
3つの指標は、同じ「良いお客さん」を別の角度から見ています。Rは時間の距離、Fは接点の回数、Mはお金の重さです。たとえばRが高くFが低い人は「最近はじめて買ってくれた人」で、Rが低くFとMが高い人は「以前はよく買ってくれていたのに、最近は姿を見せない人」です。どちらも点数だけ見れば中くらいに並びますが、置かれている状況はまるで違います。
RFM分析が長く使われてきた理由は、必要なデータが「誰が・いつ・いくら買ったか」の購買履歴だけで済むことにあります。アンケートも外部データもいりません。通販でも店舗の会員データでも、注文の記録さえあれば表計算ソフトで回せます。
RFM分析の出典──ダイレクトメールの送り先を絞る道具として生まれた
RFM分析は、アメリカのダイレクトメールやカタログ通販の実務から生まれた手法です。考案者としてよく名前が挙がるのはジョージ・カリナン(George Cullinan)で、1960年代のはじめにこの考え方を使いはじめ、1977年にダイレクトメールの業界団体から、RFMで発送先を管理する方法についての文書を出したとされています。
ただ、ぼくはこのカリナンの原資料そのものを直接確認できたわけではありません。研究論文の中で引用されている情報として知っている範囲です。だからこの記事では「カリナンが発明した」と断定はせず、ダイレクトメールの業界で使われていた実務の知恵が、カリナンの名前とともに記録されている、という位置づけにしておきます。
当時の目的ははっきりしていました。カタログを刷って送るにはお金がかかるので、反応してくれそうな人にだけ送りたい。そこで「最近買った人」「よく買う人」「たくさん買う人」ほど次の注文につながりやすい、という経験則を点数にしたのがRFMです。出発点は顧客を理解するためというより、郵送費を無駄にしないための送り先選びでした。
この手法を広く知られる形に整えたのが、アーサー・ヒューズ(Arthur M. Hughes)の著書「Strategic Database Marketing」(1994年)です。ヒューズはR・F・Mそれぞれを5段階に分ける方法を紹介していて、5×5×5で125のグループができます。今のRFM分析の解説で「各指標を5段階で採点する」のが定番になっているのは、この流れを受けています。
LTV・デシル分析との違いと使い分け
RFM分析は「いま、そのお客さんとどれくらい近いか」を測る分析で、LTVは「そのお客さんがこの先どれくらいの価値を生むか」を見積もる指標です。デシル分析は購入金額だけで顧客を10等分する分析で、RFMのMだけを取り出したものと考えるとわかりやすいと思います。
| 概念 | 見ているもの | 時間の向き | 向いている使い方 |
|---|---|---|---|
| デシル分析 | 購入金額だけ(顧客を金額順に10等分) | 過去 | 売上がどの層に偏っているかを一目で見る |
| RFM分析 | 最新購入日・頻度・金額の組み合わせ | 過去から現在 | セグメントごとに打ち手を変える |
| LTV(顧客生涯価値) | 取引が続く間に生む売上や粗利の見込み | 未来 | 1人の顧客の獲得にいくらまでかけられるかを決める |
デシル分析は手軽ですが、金額だけで並べると「昔たくさん買ってくれたけれど、もう半年来ていない人」と「今まさに通ってくれている人」が同じ上位に入ってしまいます。そこにRを足すと、上位層の中に「離れかけている人」が混ざっていることが見えてきます。RFMの価値は、この時間の軸を持っていることにあります。
LTVとの関係でいうと、RFMはLTVを伸ばすための現場の地図です。LTVは「この先いくら」を表す結果の数字なので、それだけ眺めていても、誰に何をすればいいかは出てきません。RFMで「2回目を買ってもらえていない人」「離れかけている人」を見つけて手を打つと、その積み重ねがLTVに表れます。ファンの熱量がLTVをどう押し上げるかは、推し活経済の正体──ファンダムマーケとLTV・共創で解剖で、課金の構造から書いています。LTVそのものの計算式は、LTVの意味と計算式3種、CACとの関係で整理しました。
もうひとつ、RFMを使うときに頭に置いておきたいのが、RFMは「すでに買ってくれた人」しか見えない分析だということです。ブランドの成長の多くは、まだ買っていない人に一度買ってもらうことから生まれる。この見方はダブルジョパディの法則とは?意味とロイヤルティ神話への示唆で詳しく書いていますが、RFMの表の上位ばかり見ていると、この視点がすっぽり抜け落ちます。RFMは既存顧客の中の優先順位を決める道具で、新しいお客さんを連れてくる道具ではありません。
RFM分析のやり方──架空の5人を採点してセグメント別の打ち手を決める
RFM分析は、期間を決める、3つの数字を出す、5段階に区切る、合計せずに組み合わせで読む、セグメントごとに打ち手を1つ決める、の5つの手順で回せます。いちばん失敗しやすいのは4つ目で、合計点で並べた瞬間にRFMの良さは消えます。
手順を順番に書くと、次のとおりです。
- 集計期間を決める(商材の買い替えサイクルより長めにとる。食品なら短め、家具や家電なら長め)
- 顧客ごとに、最後に買った日からの日数(R)、期間内の購入回数(F)、期間内の累計金額(M)を出す
- それぞれを5段階に区切る(人数が均等になるように五等分するか、自社で意味のある基準を決める)
- 3つの点数を足さずに、組み合わせのまま読む
- セグメントごとに打ち手を1つだけ決め、次の期間に点数が動いたかを確かめる
ここからは架空の例です。ある雑貨のネットショップで、過去1年の購買データから5人を、冒頭の表の基準(Rは30日以内が5、31〜60日が4、61〜120日が3、121〜240日が2、241日以上が1。Fは10回以上が5、6〜9回が4、3〜5回が3、2回が2、1回が1。Mは5万円以上が5、3万〜5万円が4、1万〜3万円が3、5千〜1万円が2、5千円未満が1)で採点しました。数字はすべて説明用の作り話です。
| 顧客(例) | 最後の購入 | 購入回数 | 累計金額 | R・F・M | 読み取れる状態 |
|---|---|---|---|---|---|
| Aさん | 12日前 | 8回 | 42,000円 | 5・4・4 | いま通ってくれている優良顧客 |
| Bさん | 5日前 | 1回 | 3,800円 | 5・1・1 | 買ったばかりの新規顧客 |
| Cさん | 150日前 | 11回 | 68,000円 | 2・5・5 | 離れかけている優良顧客 |
| Dさん | 300日前 | 1回 | 2,500円 | 1・1・1 | 休眠している一度きりの顧客 |
| Eさん | 45日前 | 1回 | 54,000円 | 4・1・5 | 一度だけ大きく買った顧客 |
この表で見てほしいのは、AさんとCさんです。合計点はAさんが13、Cさんが12で、足し算で並べるとほぼ同じ「上位客」になります。でもAさんはいまも通ってくれていて、Cさんは5か月近く姿を見せていません。Aさんにはいつもどおりの関係を続ければよく、Cさんには「何かあったのか」を確かめに行く必要があります。同じ点数の2人に同じクーポンを送ると、Aさんには不要な値引きをし、Cさんには的外れな連絡をすることになります。
5人の状態を、よく使われるセグメントの名前に置き換えて、打ち手を整理すると次のようになります。
| セグメント | RFMの形 | 打ち手の例 | 避けたいこと |
|---|---|---|---|
| 優良顧客(Aさん) | R高・F高・M高 | 新商品の先行案内や、感謝の気持ちが伝わる連絡 | 放っておいても買う人への値引き |
| 新規顧客(Bさん) | R高・F低 | 使い方の案内や、2回目につながる次の一品の提案 | 買った直後からの売り込みの連打 |
| 離反しかけの優良顧客(Cさん) | R低・F高・M高 | 個別の声かけ、離れた理由を聞く連絡。最優先で手を打つ | ほかの人と同じ一斉配信で済ませること |
| 休眠顧客(Dさん) | R低・F低・M低 | 掘り起こしは1〜2回で見切り、配信の頻度を落とす | 反応のない人への配信を続けて、ブランドの印象を下げること |
| 高単価の一見客(Eさん) | F低・M高 | 買ったものに合わせたフォロー(使い方・手入れ・関連品) | 買った商品と関係のない安売り情報 |
実務でぼくが一番気をつけたいと思っているのは、表を作ったところで満足してしまうことです。RFM分析は、セグメントに名前をつけた時点ではまだ何も起きていません。打ち手を1つ決めて実行し、次の期間にCさんのRが戻ったか、BさんのFが2になったかを確かめて、初めて分析が仕事になります。初めて買った人のうち2回目に進んだ割合を追う指標は、F2転換率の計算方法と目安で書きました。
もうひとつは、Fの数え方を最初に決めておくことです。1回の注文で3つ買った人を「1回」と数えるのか「3点」と数えるのか、同じ日の2回の注文を分けるのか。ここが曖昧なまま集計すると、期間をまたいで比べたときに数字が動いた理由がわからなくなります。地味ですが、定義を先に揃えることが、RFMを続けられるかどうかを分けます。
日本市場・2026年時点での注意点──RFM分析は古いのか
RFM分析は1960年代のダイレクトメールから続く古い手法ですが、2026年の今も使えます。古くなったのは道具ではなく、「R・F・Mを購入データだけで測る」という当時の前提のほうです。商売の形に合わせて、3つの指標の中身を置き換えれば、今の事業にもそのまま効きます。
いちばん大きな変化は、月額課金やサブスクリプションの広がりです。毎月同じ金額が自動で引き落とされる商売では、FもMも契約したプランでほぼ決まってしまい、顧客の間に差がつきません。ぼく自身、月額課金のサービスやnoteの有料記事、アフィリエイトのブログを自分で運営していますが、小さく売る側に立つと、課金の記録より先に「最近使ってくれているか」のほうが気になります。サブスクではRを「最後に買った日」から「最後に使った日」に置き換え、Fを「利用回数」、Mを「契約プランや追加購入」と読み替えるほうが、解約の手前にいる人を見つけやすいと感じています。
2つ目は、データの取りやすさです。ポイントアプリや会員IDで購買履歴をまとめられるお店が増え、以前より多くの事業者がRFMを回せるようになりました。外部のCookieに頼らず、自社が持っている購買データだけで完結するのもRFMの強みです。ただし購買履歴は個人情報なので、個人情報保護法にもとづいて示している利用目的の範囲で扱うことが前提になります。分析のために集めたデータを、案内していない目的に使わないことは、手法の新旧に関係なく守るべき線です。
3つ目は、予測モデルとの関係です。2026年の今は、機械学習で「次に離反しそうな人」を予測するツールも珍しくありません。でもぼくは、RFMの価値はむしろ上がっていると思っています。予測モデルの答えは中身が見えにくく、チームで「なぜこの人に連絡するのか」を説明しづらい。RFMは3つの数字で理由を説明できるので、施策を決める会議の共通言語になります。凝ったモデルを入れる前の土台として、RFMで顧客を見る目を揃えておく価値は残っています。
日本の生活者向けで気をつけたいのは、離反しかけた人への連絡の温度です。「最近お見かけしませんね」と追いかけるような文面は、相手によっては監視されているような印象を与えます。Cさんのような人には、値引きで呼び戻すより、新しく入った商品や使い方の情報をさりげなく届けるくらいの距離感のほうが、日本では受け入れられやすいと思います。
RFM分析に関するよくある質問
RFM分析はExcelでもできますか?
できます。顧客ID・購入日・購入金額の3列がある注文データがあれば、ピボットテーブルで顧客ごとの最終購入日・購入回数・累計金額を出し、それぞれを5段階に区切るだけで形になります。顧客数が数万人を超えて重くなってきたら、専用のツールやデータベースに移すことを考えれば十分です。
RFM分析の集計期間はどのくらいにすればいいですか?
商材の買い替えサイクルより長めにとるのが基本です。毎週買う食品なら数か月でも差が見えますが、年に一度しか買わない商品なら1年以上とらないと、ほとんどの人のFが1になってしまいます。期間を決めたら、比べるときは毎回同じ長さで集計します。
RFM分析とデシル分析の違いは何ですか?
デシル分析は購入金額だけで顧客を10等分する分析で、RFM分析は最新購入日・購入頻度・購入金額の3つを組み合わせて見る分析です。デシル分析では、昔たくさん買って今は離れている人も上位に入ってしまいます。最新購入日の軸があるぶん、RFM分析のほうが「いま手を打つべき人」を見つけやすくなります。
BtoBでもRFM分析は使えますか?
使えますが、指標の中身を置き換える必要があります。BtoBは取引の回数が少なく、1件ごとの金額の差も大きいので、購買データだけでは差がつきにくいからです。Fを問い合わせやセミナー参加などの接点の回数に、Rを最後の接点からの日数に読み替えると、次に声をかける相手の優先順位が見えてきます。
おわりに──RFMが測っているのは、お客さんの価値ではなく距離
RFM分析は、お客さんの価値を測る道具ではない。お客さんとの距離を測る道具です。
この記事の一行を選ぶなら、これになります。Rは時間の距離、Fは会う回数、Mはその人の暮らしの中で自分たちが占めている重さ。点数が低い人は「価値の低い人」ではなく、「いまは遠くにいる人」です。そう読むと、休眠しているDさんにも、離れかけているCさんにも、それぞれにふさわしい声のかけ方があることが見えてきます。
LTVが「この先いくら」を見る数字だとすれば、RFMは「いま、どれくらい近いか」を見る物差しです。近い人には関係を続け、遠ざかりつつある人には先に手を伸ばす。その順番を決めるために使うと、RFMは60年前の道具とは思えないくらい、今の商売でもよく働いてくれると思います。使い方で迷うことがあれば、ぼくのXアカウント(@yosooi3)に問いかけてもらえれば、できる範囲で答えようと思います。