マーケの目

オムニチャネルとOMOの違いとは?マルチ・O2Oとの一覧表で解説

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最終更新:2026年10月12日

オムニチャネルとは、店舗、ECサイト、アプリ、コールセンターといった複数の売る経路(チャネル)を、在庫や顧客情報、ポイントまでつないで、生活者がどこから買っても一続きの体験にする考え方です。OMO(Online Merges with Offline)は、そこからもう一歩進んで、オンラインとオフラインの区別そのものをなくし、オンラインを前提に店舗も含めた体験全体を組み立てる考え方です。二つの違いは、つなぐ側の視点にあります。オムニチャネルは売る側がチャネルどうしをつなぐ発想で、OMOは生活者の体験から逆算して境目を前提にしない発想です。結論を先に書くと、どちらの言葉を名乗るかより大事なのは、チャネルの継ぎ目で生活者の体験が途切れていないかを確かめることです。この記事では、マルチチャネル・クロスチャネル・O2Oを含めた違いの一覧表、言葉の出どころ、継ぎ目の点検の手順、2026年の日本での注意点まで書いていきます。

オムニチャネルとOMOとは?マルチ・クロス・O2Oとの違いの一覧

オムニチャネルとOMOは、チャネルの「つなぎ方」の段階を表す言葉の一つです。チャネルが一つしかない状態から、複数あるだけの状態、一部がつながった状態、全部がつながった状態、そして境目が意識されない状態へと、段階的に並べると違いが見えてきます。

言葉 意味 つながっているもの 生活者から見た体験
シングルチャネル 売る経路が一つだけ なし(一つしかない) その店に行くしかない
マルチチャネル 店舗、EC、カタログなど経路が複数ある ほとんどない。チャネルごとに別の商売 店とネットで価格もポイントも別
クロスチャネル チャネルの一部をまたいで使える 在庫や受け取りなど一部の情報 ネットで注文して店で受け取れる
オムニチャネル すべてのチャネルを一つの顧客体験として運営する 在庫、顧客情報、購入履歴、ポイント どこで買っても同じ客として扱われる
O2O(Online to Offline) オンラインから実店舗へ人を送る施策 クーポンや位置情報など、送客の仕組み アプリのクーポンを見て店に行く
OMO(Online Merges with Offline) オンラインとオフラインを区別せず、一つの体験として設計する 体験そのもの。データはオンラインを前提に一本化 ネットか店かを意識せずに買える

マルチからオムニまでは、売る側が持っているチャネルを「いくつ、どこまでつなぐか」の話です。O2Oは段階というより施策の名前で、オンラインを店への入口として使う考え方です。OMOは、そもそもオンラインとオフラインを分けて考えない立場で、店舗もオンラインの体験の一部として扱います。言葉は違っても、生活者の側から見れば問いは一つです。「さっきの続きが、ここでもできるか」。

言葉の出どころ──2011年のHBR論文と、OMOの提唱

オムニチャネルという言葉を広めたとされるのが、コンサルティング会社ベイン・アンド・カンパニーのダレル・リグビー(Darrell Rigby)が「ハーバード・ビジネス・レビュー」2011年12月号に書いた論文「The Future of Shopping」です。リグビーは、ネットの小売がまったく別のものに変わりつつあり、新しい名前が必要だとして、オムニチャネル・リテイリングという呼び方を示しました(ベイン・アンド・カンパニーの紹介ページ)。

この論文では、ウェブサイトや店舗だけでなく、コールセンター、カタログ、SNS、モバイル端末など、生活者と接するあらゆる経路が挙げられています。オムニ(omni)は「すべての」を意味する言葉で、デジタルと店舗の体験を組み合わせられる小売が勝つ、というのが論文の主張です。

O2Oは、それより少し前の2010年に、米国の起業家アレックス・ランペル(Alex Rampell)がテック系メディアへの寄稿で使ったのが始まりとよく紹介されます。オンラインで見つけた人を、飲食店や美容室などの実店舗に送る商売に、大きな市場があるという主張でした。

OMOは、中国の投資家でグーグル中国の元トップでもある李開復(カイフー・リー)が2017年ごろに提唱したとされる言葉です。ただ、最初にどの媒体で使ったかの一次資料は、ぼくが確認した範囲ではたどりきれませんでした。日本でOMOの考え方が広く知られるきっかけになったのは、藤井保文さんと尾原和啓さんの「アフターデジタル」(日経BP、2019年)です。オンラインが生活のあらゆる場面を包み込み、店舗はその中の一つの接点になる、という見方を中国の事例とともに示しました。

タッチポイント・カスタマージャーニー・ユニファイドコマースとの違い

タッチポイントは生活者がブランドに触れる「点」、カスタマージャーニーはその点を結ぶ「線」で、オムニチャネルはチャネルとチャネルのあいだの「継ぎ目」をなくす考え方です。どれも生活者の体験を見る言葉ですが、見ている場所が違います。

言葉 見ている場所 主な問い
タッチポイント 生活者がブランドに触れる一つひとつの場面 この接点で、何を言うか
カスタマージャーニー 知ってから使い続けるまでの道のり どの段階で、何が起きているか
オムニチャネル・OMO チャネルとチャネルの継ぎ目 経路が変わっても、体験が続いているか
ユニファイドコマース 売る仕組みの裏側(システム) 在庫や顧客のデータが、一つの基盤にあるか

接点の洗い出し方と、段階ごとに言うことを変える設計はタッチポイントとは?顧客接点の種類一覧と設計のやり方で詳しく書きました。タッチポイントの設計が「点ごとに何を言うか」なら、オムニチャネルは「点から点へ移るときに、何を持ち越せるか」です。店で試したサイズを、家でネット注文するときに覚えていてくれるか。アプリで見ていた商品の在庫を、店で聞けば分かるか。持ち越せないものが、継ぎ目です。

ユニファイドコマースは、オムニチャネルを支える仕組みの側の言葉です。チャネルごとに別々のシステムをつなぎ合わせるのではなく、最初から一つの基盤で在庫や顧客、注文を管理する考え方を指します。体験の言葉と仕組みの言葉が混ざって語られやすいので、議論の場では、いまどちらの話をしているかを分けておくと話が早くなります。

実務での使い方──チャネルの継ぎ目で、体験が切れていないか

オムニチャネルやOMOを実務で使うときに確かめたいのは、新しいチャネルを足すことではなく、いまあるチャネルの継ぎ目で生活者の体験が切れていないかです。チャネルの数は多いのに、移るたびに一から説明し直させているなら、それはオムニチャネルではなく、マルチチャネルのままです。

点検には、生活者がチャネルを移る場面を並べ、それぞれで何が持ち越せないかを書き出す表が使えます。下は小売の架空の例で、中身は説明のための仮のものです。

継ぎ目(例) 切れているときの生活者の声(例) 持ち越したいもの(例)
ネットで見て、店に行く 「サイトでは在庫ありだったのに、店にない」 店ごとの在庫
店で試して、家で注文する 「店で合わせたサイズが分からなくなった」 試した商品とサイズの記録
ネットで買って、店で返す 「ネットで買った物は店では返品できないと言われた」 注文履歴と返品の受付
店の会員から、アプリへ 「ポイントカードとアプリのポイントが別々」 会員情報とポイント
チャットから、電話へ 「チャットで話したことを、電話でまた最初から説明した」 問い合わせの履歴

手順としては、まず自社のチャネルを全部書き出し、次に生活者がチャネルを移る場面を事実で拾います。問い合わせや口コミの中にある「さっき」「別の窓口で」「店では」といった言葉は、継ぎ目で切れた体験の跡です。そのうえで、いちばん多く移られている継ぎ目から一つずつ、何を持ち越せるようにするかを決めていきます。全部を一度につなごうとすると、システムの話だけで何年もかかります。

つまずきやすいのは、技術より組織のほうです。広告会社にいた頃も、広告、ECサイト、店頭の売り場、会員向けの施策が、それぞれ別の部署や別の取引先の持ち場になっていることは珍しくありませんでした。チャネルごとに売上の目標が分かれていると、ネットで調べて店で買った人の売上は店の手柄になり、ECの担当者には店に送客する理由がなくなります。継ぎ目をなくしたいなら、評価の数字のほうも、チャネル別ではなく生活者一人あたりで見る形に寄せる必要があります。生活者一人の価値を見る考え方はLTVとは?マーケティングでの意味と計算式3種で整理しました。

買う瞬間の変化も見ておきたいところです。生活者は、検索や動画、SNSのあいだを短い時間で行き来しながら、ふとしたきっかけで買うことが増えています。その動きはパルス消費とは?Googleが示した瞬間的な購買と従来型との違いで書いたとおりです。買う気になった瞬間に、手元のチャネルで続きができなければ、その気持ちは次の画面に流れていきます。

2026年時点の日本での注意点──店はまだ9割の場所

2026年時点の日本でオムニチャネルやOMOを考えるときの前提は、物販の大半がいまもネットの外で売られていることです。経済産業省の調査では、2024年の物販のEC化率は9.8%でした(令和6年度 電子商取引に関する市場調査・経済産業省)。

つまり、物販の売上の9割ほどは、店舗などネット以外の場所で生まれています。OMOが「オンラインを前提にする」と言っても、日本で考えるべきは店を減らす話ではなく、店での体験にオンラインの続きを持ち込む話です。店員がお客の購入履歴やアプリでのお気に入りを見られるか、店で決めきれなかった人に家で続きを見てもらえるか。店の側から継ぎ目を見ると、手を入れる場所が具体的になります。

継ぎ目をつなぐには、チャネルをまたいで同じ人だと分かるようにする必要があり、それは個人のデータを扱うことでもあります。会員情報と購入履歴、アプリでの閲覧をひもづける前に、何をどの目的で使うかを生活者に示し、同意を得ておく。ここをおろそかにすると、便利さより気味の悪さが先に伝わります。ひもづけたデータを一人ひとりとの関係として持ち続ける仕組みについては、CRMとは?マーケティングでの意味とSFA・MAとの違いを簡単に解説で書いています。

「オムニチャネルは古い」「失敗した」と言われることもあります。国内でも、大がかりな統合サイトやアプリを立ち上げたものの、使われずに縮小や終了に至った例が語られてきました。ただ、その多くは「全部のチャネルを一度に、システムからつなごうとした」ことへの批判で、継ぎ目で体験を切らないという考え方そのものが否定されたわけではありません。小さな継ぎ目を一つずつつなぐ運用なら、大きな投資がなくても始められます。

オムニチャネル・OMOに関するよくある質問

オムニチャネルとOMOの違いは何ですか?

オムニチャネルは、店舗やECなど複数のチャネルを、在庫や顧客情報でつないで一続きの体験にする考え方です。OMOは、オンラインとオフラインの区別そのものをなくし、オンラインを前提に体験全体を組み立てる考え方です。チャネルを起点につなぐのがオムニチャネル、生活者の体験を起点に境目を前提にしないのがOMOと整理すると分かりやすいと思います。

O2OとOMOの違いは何ですか?

O2Oは、アプリのクーポンやネット広告でオンラインから実店舗へ人を送る施策のことです。オンラインとオフラインを別のものと見て、片方からもう片方へ送客する一方通行の考え方です。OMOは両者を分けずに一つの体験として設計するので、送客という発想自体がなくなります。

マルチチャネルとオムニチャネルの違いは何ですか?

マルチチャネルは、店舗やEC、カタログなどの経路が複数あるものの、それぞれが別々に運営されている状態です。オムニチャネルは、すべての経路で在庫や顧客情報、ポイントがつながり、どこで買っても同じ客として扱われる状態を指します。経路の数ではなく、経路のあいだがつながっているかどうかが違いです。

小さな店や個人の事業でもオムニチャネルはできますか?

できます。大きなシステムを入れなくても、店で受けた問い合わせとSNSのメッセージを同じ記録にまとめる、ネットで買った商品を店でも返品できるようにする、といった継ぎ目を一つずつつなぐことから始められます。チャネルが少ないぶん、継ぎ目も少なく、目が届きやすいのは小さな事業の強みだと思います。

おわりに──生活者の買い物は、最初から一本

オムニチャネルやOMOの話になると、どのシステムを入れるか、アプリを作るかどうかに目が向きます。でも、生活者が覚えているのはシステムの名前ではありません。店で言われた「ネットで買ったものはこちらでは扱えません」という一言です。

チャネルは、売る側の組織図です。生活者の買い物は、最初から一本の道。オムニチャネルとは、チャネルを増やすことではなく、売る側の都合で生まれた継ぎ目を、生活者の道から消していくことだと、ぼくは思っています。自社の継ぎ目の見つけ方で迷ったら、ぼくのXアカウント(@yosooi3)に問いかけてもらえれば、できる範囲で答えようと思います。

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