最終更新:2026年10月12日
離脱(ドロップオフ)とは、商品を知ってから買うまでの道のりの途中で、生活者がやめてしまうことです。Webサイトでは「そのページを最後にサイトを出た割合」を離脱率と呼び、1ページだけ見て帰った割合を示す直帰率とは計算の対象が違います。結論を先に書くと、離脱率は全体を少しずつ良くするための数字ではありません。いちばん人が落ちている一か所を見つけて、そこだけを直すための数字です。この記事では、離脱率の計算方法と段階ごとの離脱の一覧、直帰率との違い、改善する場所の選び方まで書いていきます。
離脱率とは?計算方法とファネルの段階ごとの離脱一覧
離脱率とは、ある地点まで来た人のうち、そこで先に進むのをやめた人の割合です。Webのアクセス解析では「離脱数 ÷ そのページのページビュー数 × 100(%)」で計算し、購買の流れ全体で見るときは「1 − 次の段階に進んだ人数 ÷ その段階にいた人数」で段階ごとの離脱率を出します。
離脱はWebのページの上だけで起きるものではありません。広告を見てから、買い続けるまでのどの段階にも、やめる人がいます。段階ごとに、どこで誰が抜けていくのかを一覧にしました。購入までの段階の区切り方そのものは、パーチェスファネルとは?段階の例とダブルファネルとの違いを解説で書いています。
| 段階 | 離脱の例 | 測る数字 | よくある原因 |
|---|---|---|---|
| 広告・検索結果 | 見たが、クリックしない | クリック率 | 自分に関係があると思えない |
| サイトの入口 | 最初のページだけ見て帰る | 直帰率 | 広告と中身が食い違う・表示が遅い |
| 商品ページ | 読んだが、カートに入れない | カート投入率・ページの離脱率 | 価格や条件が分からない・決め手がない |
| カート・申し込みフォーム | 入力の途中でやめる | カゴ落ち率・フォーム完了率 | 送料が後から出る・会員登録を求められる・入力が長い |
| 初回購入のあと | 2回目を買わない | F2転換率 | 試しに買っただけ・思い出すきっかけがない |
| 契約・定期購入の継続 | 解約する | 解約率 | 使う場面がなくなる・価格に見合わない |
計算の例を置いておきます。数字はすべて説明のための架空のものです。商品ページを1,000人が見て、そのうち200人がカートに入れたなら、商品ページからカートへの離脱率は「1 − 200 ÷ 1,000」で80%になります。カートに入れた200人のうち100人が購入を完了したなら、カートの離脱率は50%です。
この表で見てほしいのは、段階ごとに「測る数字」の名前が変わることです。クリック率、直帰率、カゴ落ち率、F2転換率、解約率。名前はばらばらでも、どれも「ここで何人が抜けたか」を別の場所で測っているだけです。離脱という一つの言葉でつなぎ直すと、ばらばらの指標が一本の道の上に並びます。どの段階をどんな順番で通るのかを描く地図としては、カスタマージャーニーの作り方と項目の一覧にまとめています。
離脱率と直帰率の違い──分母が違う
離脱率と直帰率のいちばんの違いは、分母です。離脱率はそのページが表示されたすべての回を分母にし、直帰率はそのページから始まった訪問だけを分母にします。
Googleの公式ヘルプ「離脱率と直帰率の違い」は、離脱率を「そのページがセッションの最後のページになった割合」、直帰率を「そのページから始まったセッションで、そのページが唯一のページだった割合」と説明しています。違いを表にしました。
| 項目 | 離脱率 | 直帰率(従来の定義) |
|---|---|---|
| 分母 | そのページのすべてのページビュー | そのページから始まったセッション |
| 分子 | そのページを最後に出た回数 | そのページだけ見て出た回数 |
| 途中で見たページも含むか | 含む | 含まない(入口ページだけ) |
| 分かること | どこで道が途切れているか | 入口で期待に応えられたか |
もう一つ知っておいてほしいのは、GA4(Googleアナリティクス4)で直帰率の意味が変わったことです。Googleの公式ヘルプ「エンゲージメント率と直帰率」によると、GA4の直帰率は「エンゲージメントが発生しなかったセッションの割合」で、10秒以上続いたか、キーイベントが起きたか、2ページ以上見たかのどれも満たさなかった訪問を指します。1ページで帰っても、じっくり読んだ訪問は直帰に数えません。古い記事の直帰率の説明と数字が合わないときは、この定義の変更が原因のことが多いです。直帰率とセッションの細かい話はセッションと直帰率とは?GA4での定義とエンゲージメント率との関係に任せて、ここでは「離脱は道の途中、直帰は入口」とだけ押さえておけば十分です。
出典と数字──カゴ落ちの平均70%が教えること
離脱という言葉には、特定の提唱者がいません。アクセス解析や通販の現場で使われてきた実務の言葉で、英語ではドロップオフ(drop-off)、Webの指標としてはイグジット・レート(exit rate)、カートでの離脱はカート・アバンダンメント(cart abandonment)と呼ばれます。
段階ごとの離脱のなかで、出典のある数字がいちばん揃っているのがカゴ落ちです。米国のUX調査機関ベイマード・インスティテュート(Baymard Institute)は、通販のカゴ落ち率を扱った50の調査をまとめ、平均のカゴ落ち率を70.22%と計算しています。カートに商品を入れた人のうち、10人に7人は買わずに去っている計算です。
ぼくがこの調査で大事だと思うのは、平均値よりも理由の内訳のほうです。同じページによると、米国のオンライン買い物客の42%が「見ていただけ、まだ買う気がなかった」という理由でカートを放置した経験があります。そしてこの層を除いた残りの理由では、「送料・税・手数料などの追加費用が高すぎた」が40%、「アカウントの作成を求められた」が18%、「手続きが長い・複雑だった」が17%でした。
つまり離脱には二種類あります。一つは、まだ買う段階になかった人が抜けていく、直さなくていい離脱です。もう一つは、買うつもりだった人が、送料の後出しや入力の長さでつまずいた、直せる離脱です。離脱率の数字だけを見ていると、この二つが同じ一つの数字に混ざってしまいます。
ただ、この調査は米国の買い物客が対象です。日本の通販で、出典のはっきりした離脱率の平均や業種ごとの相場は、ぼくが調べた範囲では見当たりませんでした。他社の平均と比べて安心したり焦ったりするより、自社の段階ごとの数字を、先月や改善前と比べるほうが確かです。
実務でどう使うか──いちばん落ちる一か所から直す
離脱率の使い方は一つに絞れます。全体をまんべんなく改善しようとするより、離脱がいちばん大きい一か所を見つけて直すほうが効きます。ぼくが用語集に「離脱率が高い一箇所を直す方が、全体改善より効く」と書いたのは、この判断を毎回の検算にしたいからです。
理由は、購買の流れが掛け算でできているからです。架空の例で考えます。サイトに1万人が来て、商品ページに進むのが40%、カートに入れるのが20%、購入を完了するのが50%なら、売れるのは「10,000 × 0.4 × 0.2 × 0.5」で400件です。
| 例のケース(架空の数字) | 商品ページへ | カートへ | 購入完了 | 購入件数 |
|---|---|---|---|---|
| 改善前 | 40% | 20% | 50% | 400件 |
| 全段階を少しずつ改善(各5%増) | 42% | 21% | 52.5% | 約463件 |
| カートへの一か所だけ改善 | 40% | 30% | 50% | 600件 |
掛け算なので、どの段階を1.5倍にしても結果は1.5倍になります。それでも一か所を選ぶ意味があるのは、通過率がいちばん低い段階ほど伸びしろが大きく、しかも原因が一つの具体的なことに絞れている場合が多いからです。送料が最後の画面で初めて出る、入力欄が多すぎる、価格の条件が読み取れない。こうした一つの原因を取り除くだけで、その段階の通過率が大きく動くことがあります。全段階を少しずつ良くする計画は、手を広げたぶん一つ一つの打ち手が浅くなりがちです。
自分で売る側になってから、ぼくが最初に見るようにしているのも、売上の合計ではなく段階ごとの人数の並びです。手順にすると、次のようになります。
- 購買の流れを段階に区切り、各段階の人数を同じ期間で並べる
- 段階ごとの通過率と離脱率を出し、いちばん落ちている場所に印をつける
- その場所の離脱が「まだ買う段階になかった人」か「つまずいた人」かを、画面の操作や問い合わせの内容から確かめる
- つまずきの原因を一つに絞って直し、同じ段階の通過率を改善前と比べる
失敗しやすい点も三つ書いておきます。一つ目は、離脱率が高いページを悪いページと決めつけることです。購入完了のページや、店舗の地図を確かめるページは、目的を果たした人がそこで帰るので離脱率が高くて当然です。二つ目は、入口を広げて人数を増やした結果、後ろの段階の離脱率が上がったのを失敗と読むことです。関心の薄い人が増えれば、途中で抜ける人も増えます。段階ごとの率だけでなく、最後まで進んだ人数で判断します。三つ目は、分母が小さいまま判断することです。数十人の段階で率が上下しても、それは偶然の揺れかもしれません。
日本市場・2026年時点での注意点
2026年の日本で離脱を扱うときに押さえたいのは、測り方の変化と、離脱を止める手段に法律の線があることの二つです。
測り方では、先に書いたGA4の直帰率の定義変更に加えて、検索の段階での離脱が見えにくくなっています。検索結果やAIの回答画面で答えを得た人は、サイトに来る前にやめているので、サイトの離脱率には一度も現れません。サイトの中の数字が良くなっても、入口に来る人が減っていれば売上は伸びません。サイトの外で起きている離脱は、検索の表示回数とクリック数の差のように、外側の数字から推し量るしかありません。購買行動のモデルがどう変わってきたかは、AIDMA・AISAS・ULSSASの違いと購買行動モデルの変遷で整理しています。
法律の線では、通販の最終確認画面に表示のルールがあります。消費者庁の特定商取引法ガイドの通信販売のページは、インターネット通販では最終確認画面にも定められた事項を表示するよう求めていると説明しています。離脱を減らしたいからといって、送料や定期購入の条件を見えにくくするのは、離脱を減らす工夫ではなくトラブルの種です。解約の離脱も同じで、解約の手続きをわざと見つけにくくして解約率を下げても、それは生活者の信頼と引き換えにした数字です。止めるべき離脱は、買いたい人がつまずいた離脱だけです。
離脱率に関するよくある質問
離脱率の計算方法は?
Webのページの離脱率は「そのページで離脱した回数 ÷ そのページのページビュー数 × 100(%)」で計算します。購買の流れの段階ごとに見るときは「1 − 次の段階に進んだ人数 ÷ その段階にいた人数」です。どちらの場合も、分母と期間をそろえて比べることが前提になります。
離脱率と直帰率の違いは何ですか?
分母が違います。離脱率はそのページのすべての表示回数を分母にして「ここで最後になった割合」を見ます。直帰率はそのページから始まった訪問だけを分母にして「入口で1ページだけ見て帰った割合」を見ます。なおGA4では、直帰率はエンゲージメントがなかった訪問の割合に定義が変わっています。
離脱率の平均や目安はどれくらいですか?
ページや業種を問わない離脱率の平均で、出典のはっきりしたものは見当たりませんでした。カゴ落ちについては、ベイマード・インスティテュートが50の調査から平均70.22%と計算していますが、これは米国中心の数字です。他社の平均より、自社の段階ごとの数字を前の期間と比べるほうが判断を間違えにくいです。
離脱率が高いページは改善すべきですか?
高いからといって、必ずしも改善が必要とは限りません。購入完了ページや地図・連絡先のページのように、目的を果たした人が帰る場所は離脱率が高くて当然です。改善すべきなのは、次の段階に進むはずの人がつまずいて抜けている場所で、その見極めには操作の記録や問い合わせの中身を見る必要があります。
おわりに──離脱は全体の問題ではなく、一か所の問題
売上が伸びないとき、人はつい全部を少しずつ直したくなります。広告の言葉も、ページのデザインも、フォームも、メールも。でも、手を広げるほど、一つ一つの打ち手は浅くなります。離脱率は、その焦りを止めてくれる数字です。
全体を良くしようとすると、どこも良くならない。一か所を直すと、全体が動く。ぼくが離脱を見るときに自分に問い直しているのは、「いま直そうとしているのは、いちばん人が落ちている場所か」という一点だけです。数字の並びの中から、その一か所を見つけるところから始めてもらえたら嬉しいです。