最終更新:2026年10月17日
ARPUとARPPUの違いは、割り算の分母にあります。ARPU(Average Revenue Per User)は売上を利用者全員の数で割った「一人あたりの平均売上」、ARPPU(Average Revenue Per Paying User)は売上を実際にお金を払った人の数だけで割った「課金した人一人あたりの平均売上」です。二つは「ARPU=課金率×ARPPU」の式でつながっていて、ARPUが動いたときに、払う人の割合が変わったのか、払う人の金額が変わったのかを切り分けるために並べて使います。MAUやDAUが「何人が使ったか」を数える指標なのに対して、ARPUとARPPUは「その人たちが一人あたりいくら払ったか」を測る指標です。違いの一覧表と計算式、架空の数字で作った計算例、ゲームやアプリや通信会社の決算での使われ方、数字を誤読しやすい場面と読み方まで順に書いていきます。
ARPUとARPPUの違い一覧──分母が「全員」か「払った人」か
ARPUはサービスを使った全員で売上を割り、ARPPUはお金を払った人だけで割ります。ARPUは「事業として一人からどれだけ稼げているか」を、ARPPUは「払うと決めた人がどれだけ深く払っているか」を語る数字です。
| 比べる軸 | ARPU | ARPPU |
|---|---|---|
| 正式名称 | Average Revenue Per User(ユーザー一人あたりの平均売上) | Average Revenue Per Paying User(課金ユーザー一人あたりの平均売上) |
| 計算式の分母 | 期間中の利用者全員(無料で使った人も含む) | 期間中にお金を払った人だけ |
| 答えてくれる問い | 利用者一人を集めると、平均でいくらの売上になるか | 払う人は、平均でどれくらい払っているか |
| 数字を動かすもの | 課金率とARPPUの両方 | 価格・まとめ買い・高額プラン・払う人の顔ぶれ |
| よく使われる場面 | 通信の契約、広告収入のあるメディア、全員が払うサブスク | 基本無料のゲームやアプリ、無料版のあるサービス |
| 単独で見たときの落とし穴 | 無料の利用者が増えると、売上が増えていても下がって見える | 値下げで払う人が増えると、売上が増えていても下がって見える |
全員が料金を払う月額サービスなら、ARPUとARPPUはほとんど同じ数字になります。差が開くのは、無料で使える人が多いサービスです。払う人が利用者の3%しかいなければ、ARPPUはARPUのおよそ33倍になります。二つの数字の距離そのものが、そのサービスの課金の構造を表しています。
ARPUとは/ARPPUとは──計算式と、課金率との三角関係
ARPUは「期間中の売上÷期間中の利用者数」、ARPPUは「期間中の売上÷期間中に払った人の数」で計算します。課金率は「払った人の数÷利用者数」なので、ARPUは課金率とARPPUの掛け算に分解できます。
| 指標 | 計算式 | 意味 |
|---|---|---|
| ARPU | 売上 ÷ 利用者数 | 利用者一人あたりの平均売上 |
| ARPPU | 売上 ÷ 課金した人の数 | 払った人一人あたりの平均売上 |
| 課金率 | 課金した人の数 ÷ 利用者数 | 利用者のうち、払った人の割合 |
| 三角関係 | ARPU = 課金率 × ARPPU | ARPUの変化を「割合」と「深さ」に分けられる |
架空のアプリで計算してみます。次の表の数字はすべて説明のための例で、実在のサービスの数字ではありません。
| 項目(例) | 数字 | 計算 |
|---|---|---|
| その月に使った人(MAU) | 20,000人 | ― |
| その月に課金した人 | 600人 | ― |
| その月の売上 | 1,800,000円 | ― |
| 課金率 | 3% | 600 ÷ 20,000 |
| ARPPU | 3,000円 | 1,800,000 ÷ 600 |
| ARPU | 90円 | 1,800,000 ÷ 20,000 |
| 検算 | 90円 | 3% × 3,000円 |
売上を利用者数で割っても、課金率にARPPUを掛けても、同じ90円になります。この検算が合わないときは、分母の人数の数え方か、期間の区切り方がずれています。ARPUは利用者を月で数え、課金した人は日で数える、といった混ぜ方をすると、三つの数字の関係が崩れます。
実在の会社の開示でも、この関係は確かめられます。ゲームのプラットフォームを運営するロブロックスは、米国証券取引委員会に提出した2025年12月期の年次報告書で、1日あたりの平均利用者(DAU)1億2,700万人のうち、1日に課金した人は平均約180万人だったと書いています。DAU一人あたりの1日の平均ブッキング(その期間の販売額にあたる、同社が使う指標)は0.15ドル、課金した人一人あたりでは10.36ドルでした(ロブロックスの2025年の年次報告書)。180万を1億2,700万で割ると約1.4%で、それに10.36ドルを掛けると約0.15ドル。名前は違っても、中身はARPUとARPPUの三角関係そのものです。
逆に、名前がARPUでも中身がARPPUのこともあります。音楽配信のスポティファイは、年次報告書で「プレミアムARPU」を、有料プランの売上を有料会員の数(四半期の1日平均)で割って月あたりに直した数字と定義していて、2025年は4.63ユーロでした(スポティファイの2025年の年次報告書)。分母は払っている会員だけなので、この記事の言葉でいえばARPPUです。指標の名前ではなく、分母に誰が入っているかを先に確かめる必要があります。
混同されやすい理由と、間違えると起きること
ARPUとARPPUが混同されるのは、名前が一文字違いで、どちらも「一人あたりの平均売上」と訳されるからです。でも分母が違う以上、同じ施策の結果を見ても、二つの数字は逆の方向に動くことがあります。
さきほどの架空のアプリ(MAU 20,000人・課金した人600人・売上180万円)で、三つの施策を打った翌月を想定してみます。これも説明のための例です。
| 施策(例) | MAU | 課金した人 | 売上 | 課金率 | ARPPU | ARPU |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 施策前 | 20,000人 | 600人 | 180万円 | 3.0% | 3,000円 | 90円 |
| A:値下げセール | 20,000人 | 1,000人 | 200万円 | 5.0% | 2,000円 | 100円 |
| B:広告で新規を集客 | 30,000人 | 660人 | 198万円 | 2.2% | 3,000円 | 66円 |
| C:高額パックを追加 | 20,000人 | 480人 | 216万円 | 2.4% | 4,500円 | 108円 |
どの行も「課金率×ARPPU=ARPU」で検算が合います。そのうえで、この表を一つの数字だけで読むと、次のような誤読が起きます。
| 誤読の型 | 実際に起きていること | 正しい読み方 |
|---|---|---|
| A「課金した人が1.7倍。セールは大成功」 | 売上は約1.1倍にとどまり、ARPPUは3分の2に下がった | 安さで初めて払った人が、定価に戻った翌月も払うかを、同じ月に払い始めた人の塊で追う |
| B「ARPUが90円から66円へ。稼ぐ力が落ちた」 | 売上は増え、ARPPUも変わっていない。分母に新規が入っただけ | 新規と既存に分けてARPUを出す。新規の課金率は時間とともに上がるかを見る |
| C「ARPUが過去最高。高額パックは正解」 | 払う人は2割減り、一部の人の深い課金に頼る形になった | 課金率の低下を、将来払う人の減少の兆しとして別に見る。上位の人の金額にも目を通す |
| 「ARPPUが高い。うちのファンは熱い」 | 平均は、少数の高額課金者に大きく引っぱられる | 平均と中央値を並べる。上位1割を除いたARPPUも出してみる |
Aの読み方は、同じ時期に始めた人をまとめて追うコホート分析の読み方が、Bの読み方は利用者を属性や行動で分けるセグメンテーションの考え方がそのまま使えます。
広告の効果測定の報告では、「課金者数」や「ARPU」の一つだけが成果として並ぶことがよくあります。ぼく自身、課金した人が増えたという報告を聞いて、売上も同じだけ伸びたと受け取りかけたことがあります。数字が一つしかないときは、残りの二つを自分で出してみる。三角関係の式は、そのための道具です。
どちらを使うべきか・使い分けの判断
どちらか一方を選ぶのではなく、ARPUで事業の稼ぎ方を見て、変化があったらARPPUと課金率に分けて原因を探すのが基本の使い方です。そのうえで、サービスの課金の形によって、主に見る数字が変わります。
| サービスの形 | 主に見る数字 | 理由 |
|---|---|---|
| 基本無料のゲーム・アプリ | 課金率・ARPPU・ARPU の三つすべて | 払わない人が大半なので、割合と深さを分けないと何が起きたか分からない |
| 無料版のあるサブスク | 有料への転換率と、有料会員一人あたり(実質ARPPU) | 無料から有料に移る人の数と、有料会員の単価が別の打ち手で動く |
| 全員が払う月額サービス | ARPU(=ARPPUとほぼ同じ)と解約率 | 課金率がほぼ100%なので、単価と継続の二つで売上が決まる |
| 広告収入が中心のメディア・アプリ | ARPU(利用者一人あたりの広告売上) | 利用者全員が売上の源になるので、全員で割るのが自然 |
| 通信の契約 | ARPU(1回線あたり) | 全回線が料金を払うので、分母は回線の数になる |
判断に迷ったら、「この売上を生んだのは誰か」を考えると分母が決まります。広告の売上は無料の利用者も生んでいるので全員で割る。アイテム課金の売上は払った人だけが生んでいるので、払った人で割った数字も見る。分母に入れる人を、売上の出どころに合わせるのが筋です。
ARPUは、顧客獲得の採算を測る式の材料にもなります。月額のARPUに粗利率を掛けて解約率で割ると、顧客生涯価値のおおよその値になることはLTVの意味と計算式3種で書きました。気をつけたいのは、ARPUで出したLTVが、無料の利用者まで含めた一人あたりの価値になることです。比べるべき獲得費も、利用者一人あたりのCAC(顧客獲得コスト)になります。ARPPUで出したLTVを、利用者全体の獲得費と比べると、採算が実際よりよく見えてしまいます。LTVと獲得費の比率を一人あたりの単位でそろえる考え方は、ユニットエコノミクスの記事にまとめています。
ぼくは自分でも、月額のサービスとnoteの有料記事を運営しています。無料で読んでくれる人と、お金を払ってくれる人は、同じ読者でもまったく違う動き方をします。全員を一つの平均に混ぜると、どちらの人の顔も見えなくなる。ARPUとARPPUを並べる意味は、この二種類の人を一度ちゃんと分けて見ることにあると思っています。
日本市場・2026年時点での注意点
日本でARPUという言葉がいちばん目に入るのは、携帯電話会社の決算です。ただし、そこでいう「ユーザー」は人ではなく回線で、何を分子と分母に入れるかは会社ごとに決めています。
KDDIは2026年8月7日に公表した2027年3月期第1四半期の決算詳細資料で、「モバイルARPU」を、モバイル通信収入(データ関連、基本料・音声関連、各種割引額、コンテンツ等)に端末補償サービス等を加えた額を、主要回線の稼働数の平均で割ったものと定義しています。同じ資料の注記には、セグメントの変更に合わせて一部のサービスをARPUの対象から外し、前の期の数字も修正したとあります(KDDIの決算詳細資料)。NTTドコモも決算説明資料でARPUの推移を示していて、注記に「法人名義含む」と書いています(ドコモの2026年度第1四半期の決算説明資料)。
ここから分かるのは、同じARPUという名前でも、会社をまたいで並べたり、同じ会社の過去と比べたりするときには、定義の注記を先に読む必要があることです。自社でARPUを出すときも同じで、分母を「登録者」にするか「その月に使った人」にするかで数字は何倍も変わります。さきほどの架空のアプリに登録者が10万人いたとすれば(例)、同じ売上180万円でもARPUは18円になります。社内で数字を出す前に、分子と分母の定義を一行で書いて共有しておくと、あとで数字が独り歩きしにくくなります。
もう一つ、2026年に意識しておきたいのが課金の経路の変化です。スマートフォンのアプリストアなどの競争を促す「スマートフォンにおいて利用される特定ソフトウェアに係る競争の促進に関する法律」(スマホ法)は、2025年12月18日に全面施行されました(公正取引委員会のスマホ法のページ)。課金の入口がアプリの中だけでなくなっていくと、同じ売上を手数料を引く前で数えるか、引いたあとで数えるかが経路によってずれやすくなります。ARPPUを期ごとに比べるなら、売上をどちらで数えるかをそろえておかないと、課金の深さが変わったのか、数え方が変わったのかが見分けられません。
最後に、課金率やARPPUの「業界の目安」について。基本無料のゲームの課金率は「数%」と語られることが多いのですが、業種やサービスをまたいで使える公的な目安や、公開されている一次資料は見当たりませんでした。この記事で確かめられたのは、さきほどのロブロックスのように、一社が自社の数字として開示しているものだけです。しかもそれは「その日に使った人のうち、その日に払った人」の割合で、月単位の課金率とは分子も分母も違います。他社の数字を自社の目標にするより、自社の過去の月と比べるほうが、判断を間違えにくいと思います。
ARPUとARPPUの違いに関するよくある質問
ARPUとARPPUは、結局同じような数字ではないのですか?
全員が料金を払う月額サービスなら、二つはほぼ同じ数字になります。違いが大きくなるのは、無料で使える人がいるサービスです。課金率が3%なら、ARPPUはARPUのおよそ33倍になり、同じ売上でもまったく違う大きさの数字として報告されます。
ARPAとARPUは何が違いますか?
ARPAはAverage Revenue Per Accountの略で、一つの契約(アカウント)あたりの平均売上です。法人向けのサービスのように、一社の契約の中で何人も使う場合に、人ではなく契約の単位で見たいときに使います。違いは分母が人か契約かで、考え方はARPUと同じです。
ARPUとLTVの違いは何ですか?
ARPUは1か月など一定期間の一人あたりの売上で、LTVは取引の始まりから終わりまでに一人がもたらす価値の合計です。月額のARPUに粗利率を掛け、月間の解約率で割ると、LTVのおおよその値になります。ARPUは今月の断面、LTVは関係の長さを含めた合計、と分けて考えると混ざりません。
ゲームやアプリの課金率の平均はどれくらいですか?
業種やサービスをまたいで使える公的な目安や、公開された一次資料は見当たりません。ロブロックスは2025年の年次報告書で、1日の平均利用者1億2,700万人のうち1日に課金した人は約180万人(約1.4%)と開示していますが、一社の1日あたりの数字です。自社の課金率は、他社の数字より自社の過去の月と比べて読むのが確実です。
おわりに──ARPUは、払う人の割合と深さの掛け算
ARPUを一つの数字として眺めているかぎり、値下げで払う人が増えた月も、高額パックで一部の人が深く払った月も、同じ「上がった」に見えます。でも中で起きていることは逆です。前者は払う人の輪が広がり、後者は輪が狭くなっています。
ARPUは一つの平均ではない。払う人の割合と、払う人の深さの掛け算。
平均が上がったら、どちらの理由で上がったのかを分けて言えるようにしておく。その習慣があれば、ARPUとARPPUのどちらを報告されても、数字の向こうにいる二種類の人の動きが見えてくると思います。