結論:第二新卒×未経験でもマーケティング職には入れる。ただし「入口」を間違えると遠回りになる
第二新卒で未経験からマーケティング職に就くことは、現実的に可能です。ぼく自身、博報堂に13年いた頃からアクセンチュアでの5年間まで、採用面接で「未経験だけどマーケティングをやりたい」という第二新卒の方に何人も会ってきました。受かる人と落ちる人の差は、スキルではなく「どの入口を選んでいるか」でした。
いきなり事業会社のマーケティング部を狙う人が多いのですが、これが最も難易度が高いルートです。未経験から入りやすいのは、広告代理店やマーケティング支援会社の「運用職」。ここで1〜2年の実務経験を積むと、その後のキャリアが一気に広がります。
この記事では、採用側が第二新卒に何を見ているのか、具体的にどんな職種が入口になるのか、そして「やってしまいがちな遠回り」を、ぼくの採用経験をもとに書いていきます。
採用側は第二新卒のマーケティング志望者に何を見ているか
スキルや資格ではありません。見ているのは「考え方の筋」と「数字への態度」、この2つです。
第二新卒は社会人1〜3年目。マーケティングの実務経験がないのは前提として織り込み済みです。だから「グーグル広告を回せます」みたいなアピールは、正直そこまで響きません。それよりも、面接のやりとりの中で見ているポイントがあります。
「なぜマーケティングか」の答えに論理があるか
「マーケティングに興味があります」だけだと、ほぼ落ちます。面接官が聞きたいのは「なぜ今の仕事ではなく、マーケティングなのか」のロジックです。
たとえば、営業をやっていた人なら「お客さんと1対1で向き合う仕事を続けるうちに、もっと手前の「そもそも誰に届けるか」を設計する側に回りたくなった」という流れには論理があります。「なんとなくかっこいいから」ではなく、自分の仕事の延長線上にマーケティングがある、という説明ができるかどうか。ここが分かれ目です。
前職の経験をマーケティング文脈で話せるか
未経験であっても、前職で「数字を見て改善した経験」があれば、それはマーケティング的な思考です。
営業のトークスクリプトを変えてアポ率が上がった話。ECサイトのカスタマーサポートで、問い合わせ内容を分類してFAQを整備した話。こうした経験を「これって要するに、仮説を立てて、数字で検証して、改善するサイクルですよね」と翻訳できる人は強いです。
ぼくが面接官のときは、まさにそこを聞いていました。「前の仕事で、自分なりに工夫して数字が変わった経験はありますか?」と。答えの規模は小さくていいんです。自分の頭で考えて動いたかどうかが見えれば、それで十分でした。
数字への抵抗がないか
マーケティング職は、想像以上に数字を扱います。広告のCPA、LTV、CVR、ROAS。事業会社ならKPIツリーを日常的に見ます。
「数学が得意か」ではなく、「数字を見ることを苦にしないか」。エクセルで集計したり、前月比を出したり、そういう作業にアレルギーがないか。面接でそこを確認するために、「前職で数字を管理していた経験はありますか?」と聞くケースは多いです。
逆に言えば、「数字よりもクリエイティブがやりたい」という人がマーケティング職に応募してくると、ちょっとミスマッチの不安があります。マーケは数字と表現の両方を行き来する仕事なので、数字から逃げたい気持ちがあるなら、先にそこは自分に問いかけておいたほうがいいです。
未経験から入りやすいマーケティング職の入口
「マーケティング職」と一言でまとめても、実態はかなり幅広いです。未経験の第二新卒が現実的に入れる入口は、大きく3つあります。
広告運用(リスティング広告・SNS広告)
最も間口が広い入口です。グーグル広告やメタ広告(旧フェイスブック広告)のアカウントを運用する仕事で、広告代理店やデジタルマーケティング支援会社で募集が多いです。
なぜ未経験でも入りやすいかというと、業務の基本が「管理画面を見て、数字を確認して、入札や配信設定を調整する」というオペレーション寄りだからです。もちろん慣れてくれば戦略設計もやるのですが、最初は「運用担当」として手を動かすところから始まります。
dodaの求人データを見ると、「未経験歓迎」の文言がつくマーケティング系求人の中で、広告運用職の割合が最も高い傾向があります。第二新卒なら、ここが第一候補になります。
ただ、デメリットもあります。最初の半年〜1年は細かい作業が多く、「思っていたマーケティングと違う」と感じる人もいます。レポート作成やデータ集計が中心の日々に、正直しんどくなる時期はあります。でも、ここを乗り越えると「広告費をいくら使って、何件のリードを獲得して、CPAがいくらだった」と語れるようになる。この実績が、次のキャリアで大きな武器になります。
SEOコンテンツのディレクション
SEO(検索エンジン最適化)関連の職種も、未経験から入りやすい入口です。コンテンツマーケティングの支援会社やSEOコンサルティング会社で、記事の企画・ライターへの発注・公開後の数値分析を行う仕事です。
文章を書くのが好きな人、リサーチが苦にならない人には向いています。検索キーワードの調査やユーザーの検索意図の分析など、マーケティングの基礎的な考え方が身につく職種です。
ただ、SEOディレクションだけだと「数字で成果を語る」経験がやや積みにくいという面はあります。広告運用と比べると、成果が出るまでに時間がかかるので、短期間で実績をつくりたい人にはもどかしいかもしれません。
マーケティング支援会社のアシスタント・コンサルタント職
MA(マーケティングオートメーション)ツールの導入支援や、CRM運用の支援を行う会社のアシスタントポジションも入口になります。
BtoBマーケティングの領域では、セールスフォースやハブスポットといったツールの運用支援を行う会社が増えていて、第二新卒を育てながら採用するケースがあります。ぼくの専門がBtoBマーケティングなのでよく見ていますが、この領域は人手不足が続いていて、ポテンシャル採用に積極的な会社が少なくありません。
以下、3つの入口を比較します。
- 広告運用職:求人数が多い。数字を扱う経験が積みやすい。最初はオペレーション中心で地味な時期がある
- SEOディレクション:文章・リサーチ好きに向く。成果が出るまで時間がかかり、短期で実績を語りにくい
- MA・CRM支援のアシスタント:BtoB領域で需要が伸びている。ツールの学習コストがやや高い
どれが正解というより、自分の性格や前職の経験との相性で選ぶのが現実的です。「細かい数字管理が苦にならない」なら広告運用。「調べものや文章が好き」ならSEO。「システム寄りの仕事に抵抗がない」ならMA・CRM支援。こういう判断軸で考えてみるといいと思います。
マーケターとしてのキャリアをどう設計するか、もう少し長い視点で整理したい場合は20代マーケターの転職戦略|「スキル不足」で迷う人ほど動き方を間違えるも参考にしてください。
避けたい遠回りルート3つ
「マーケティング職に就きたい」と思ったとき、やってしまいがちだけど遠回りになるルートが3つあります。ぼく自身、面接で「もったいないな」と感じたパターンをまとめます。
いきなり事業会社のマーケティング部を狙う
これが最も多い遠回りです。「支援会社(代理店側)ではなく事業会社でマーケティングがしたい」という気持ちはわかります。でも、事業会社のマーケティング部は、未経験の第二新卒にとってかなりハードルが高いです。
理由は単純で、事業会社のマーケティング部は少人数のことが多く、即戦力を求める傾向が強いからです。リクルートワークス研究所の調査でも、中途採用では「経験者」を条件にする企業が多数を占めています。第二新卒向けに「マーケティング部で育てます」と明確に打ち出す事業会社は、大手を除くとかなり限られます。
だから、最初の1〜2年は支援会社側で経験を積んで、その実績をもって事業会社に転職する、という2段階のルートが現実的です。遠回りに見えて、実はこちらのほうが早かったりします。
高額なマーケティングスクールに通ってから転職活動する
最近、「未経験からマーケターになれる」と謳うスクールが増えています。費用は30万〜60万円台が多いです。
全部が悪いとは言いません。基礎知識のインプットにはなります。ただ、採用側の本音を言うと、「スクールを卒業しました」は選考でそこまで加点にならないんです。ぼくが面接官だったとき、重視していたのはスクールの修了証ではなく、「自分で何かを試した経験」のほうでした。
たとえば、自分でブログを立ち上げてSEOを試してみた。友人の飲食店のインスタグラム運用を手伝った。規模は小さくても、自分の手で「やってみた」経験のほうが、面接での説得力は圧倒的に高いです。
スクールに数十万円かけるくらいなら、その時間とお金で小さくてもいいから実践してみるほうが、結果的に近道になります。
マーケティング「っぽい」仕事で経験を積もうとする
「まずはマーケに近い仕事から入ろう」と考えて、営業事務やカスタマーサポートに就く人がいます。気持ちはわかるのですが、そこからマーケティング職への社内異動は、実際にはあまり起きません。
会社側にとって、「今の部署で戦力になっている人」を別部署に異動させるインセンティブは低いからです。「マーケティング部に異動できたらいいな」くらいの期待で入社すると、気づいたら3年経っていた、ということになりかねません。
マーケティング職に就きたいなら、最初からマーケティング職として採用される会社を探すほうが確実です。
第二新卒がマーケティング職の選考で準備すること
入口を決めたら、次は選考の準備です。未経験の第二新卒が面接で見られるポイントは、経験者とは違います。
志望動機は「前職との接続」で組み立てる
先ほども書きましたが、「なぜマーケティングか」の論理が最も大事です。組み立て方のフレームは3ステップで考えるとシンプルになります。
- 前職でどんな仕事をしていたか(事実)
- その仕事を通じて、何に関心を持つようになったか(変化)
- だからマーケティングの「この領域」で働きたい(結論)
ポイントは3つ目の「この領域」を具体的にすることです。「マーケティング全般がやりたい」だと漠然としすぎています。「広告運用で数字を見ながら改善する仕事がしたい」「SEOの分析とコンテンツ企画に興味がある」というレベルまで絞ると、面接官は「ちゃんと調べてきたな」と感じます。
ポートフォリオは小さくていいから「やってみた」を見せる
未経験者が選考で差をつけやすいのが、自分でやってみた実績です。立派なものでなくて構いません。
- 自分のブログを3ヶ月運営して、PV推移を記録した
- X(旧ツイッター)で特定テーマの発信を1ヶ月続けて、インプレッション数をまとめた
- グーグル広告の認定資格を取って、その過程で学んだことをノートにまとめた
こういう「小さな実績」を、数字とセットで見せられると強いです。結果が出ていなくても大丈夫。「やってみて、こういう仮説を持って、こう改善しようとした」というプロセスを語れるかどうかが大事です。
面接で聞かれやすい質問に備える
ぼくの面接官としての経験から、第二新卒のマーケティング志望者によく聞いていた質問を挙げます。
- 「なぜ前職を辞めるのか。マーケティングに変えることで何が解決するのか」
- 「普段、何かの広告やプロモーションを見て分析する習慣はあるか」
- 「マーケティングの仕事で、地味な作業が続いても続けられるか」
- 「3年後にどういう仕事をしていたいか」
3つ目の質問は意外に感じるかもしれませんが、実は大事です。マーケティングという言葉の華やかなイメージと、実務のギャップで辞めてしまう人が一定数います。面接官はそのリスクを測りたいので、「レポート作成やデータ集計のような地味な仕事も含めて、やっていく覚悟がありますか」と聞くわけです。
ここで正直に「やったことがないのでわからない部分はありますが、前職で◯◯の地道な作業を続けた経験があるので、耐性はあると思います」と言えると、信頼感が生まれます。
第二新卒の転職活動で使えるサービス
第二新卒で未経験職種への転職となると、通常の転職サイトで求人を探すだけでは選択肢が限られます。第二新卒や20代に特化した転職エージェントを使うと、未経験歓迎の求人が集まっているので効率がいいです。
たとえばUZUZは、第二新卒・既卒・フリーターの転職支援に特化していて、一人あたりの平均サポート時間が12時間以上と手厚いのが特徴です。IT・Web系の求人も扱っているので、マーケティング支援会社の運用職など、この記事で書いた「入りやすい入口」に合致する求人を紹介してもらえる可能性があります。
相談は無料で、オンラインで完結します。「そもそも自分はマーケティング職に向いているのか」を壁打ちする相手としても使えるので、まだ方向性が固まっていない段階でも相談してみる価値はあります。
よくある質問
文系でもマーケティング職に就けますか?
就けます。マーケティング職の実務で求められるのは高度な数学ではなく、四則演算と割合の理解、エクセルでの集計ができれば十分です。ぼく自身も文系出身で、博報堂でもアクセンチュアでもマーケティングの仕事をしてきました。文理の区分は採用時にほとんど見られません。
マーケティング関連の資格は取っておいたほうがいいですか?
必須ではありません。グーグル広告の認定資格は無料で取れるので、取っておくと「基礎知識を学ぶ意欲がある」ことの証明にはなります。ただ、資格よりも「自分で何かを試した経験」のほうが面接での評価は高いです。資格取得に時間をかけすぎるよりは、小さくても実践に時間を使うほうがいいと思います。
第二新卒の期間を過ぎたらマーケティング未経験での転職は無理ですか?
無理ではないですが、難易度は上がります。一般的に第二新卒は卒業後3年以内を指すことが多く、この期間は「ポテンシャル採用」の枠で見てもらえます。それを過ぎると「経験者採用」の枠で比較されるため、未経験というハンデが大きくなります。マーケティング職への転職を考えているなら、早めに動くほうが選択肢は広いです。
年収は下がりますか?
未経験で職種を変える場合、年収が一時的に下がる可能性は高いです。広告運用職の第二新卒の初年度年収は、dodaのデータを参考にすると300万〜380万円あたりが相場になります。ただ、マーケティング職は経験を積むほど年収が上がりやすい職種でもあります。2〜3年の実務経験がつけば、400万〜500万円台への転職は十分に狙えます。短期的な年収ダウンを受け入れられるかどうかは、事前に計算しておいたほうがいいです。
支援会社(代理店)と事業会社、どちらから始めるべきですか?
未経験の第二新卒なら、支援会社から始めるのが現実的です。理由は2つ。求人数が多いことと、複数のクライアントの案件を通じて短期間で幅広い経験が積めることです。事業会社は自社の事業に深く関われる魅力がありますが、未経験で入れるポジションが限られます。支援会社で1〜2年の実績をつくってから事業会社に移る、というステップを踏む人が多いです。
迷っている時間が一番もったいない
「マーケティングに興味はあるけど、未経験だし……」と悩んでいる間にも、第二新卒の期間は過ぎていきます。
ぼくが採用側で見てきた中で、うまくマーケティング職に入った人には共通点がありました。完璧に準備してから動いたのではなく、「まだ自信はないけど、とりあえず動いてみた」人たちでした。
広告運用でもSEOでもMA支援でも、入口はどこでもいいです。大事なのは「マーケティングの実務に触れる場所に、まず身を置くこと」。そこからキャリアが動き始めます。
未経験であることを恥ずかしいと思う必要はありません。誰にでも、最初の1年目はあります。