最終更新:2026年10月17日
ブランドセーフティとは、自社の広告が違法なサイトや、ブランドを傷つける不適切なページ・コンテンツに表示されないように守ることです。日本インタラクティブ広告協会(JIAA)は「広告掲載先の品質確保による広告主ブランドの安全性」と定義しています。作業靴の話ではなく、デジタル広告の用語です。隣の言葉としてよく並ぶアドフラウドが「広告が本当に人に届いたか」の問題なのに対して、ブランドセーフティは「人に届いた広告が、どんな場所に出ていたか」の問題です。不適切な掲載面の分類と、活動を止めたGARMの現在地、除外設定のチェックリストを順に書いていきます。
ブランドセーフティとは?不適切な掲載面の分類一覧
ブランドセーフティの分類は、どの広告主でも避けるべき「違法・不当な面」と、広告主によって判断が分かれる「ブランドを傷つけるおそれのある面」の二段で考えます。JIAAが2019年4月に定めた広告掲載先の品質確保に関するガイドライン(ブランドセーフティガイドライン)が、この二段の分類を別表で示しています。
一段目の「広告掲載不適切コンテンツカテゴリ」は、広告を扱う事業者が掲載の排除に努めるとされている、違法なサイトの分類です。
| カテゴリ | コンテンツの例(ガイドラインの別表より) |
|---|---|
| 犯罪助長 | 自殺・殺人の幇助や教唆 |
| 猥褻・違法な性表現 | 売春、児童ポルノ |
| 死・暴力 | 武器・銃刀の売買 |
| 詐欺 | 詐欺・悪質商法 |
| 差別・人権侵害 | プライバシー侵害、ヘイトスピーチ、誹謗中傷・名誉毀損 |
| 商標権・著作権侵害 | 偽ブランド品・模倣品・偽造品、海賊版サイト、リーチサイト(違法なコンテンツへのリンクを集めて載せるサイト) |
| 違法薬物 | 覚せい剤や危険ドラッグの販売・肯定 |
| その他違法・不当、社会通念上不適切 | 上のどれにも当てはまらない違法・不当な内容 |
二段目の「ブランド毀損リスクコンテンツカテゴリ」は、違法ではないけれど、広告主によってはブランドの価値が損なわれるおそれがある面です。ガイドラインは、広告主と広告を扱う事業者が協議したうえで、必要に応じて掲載の排除に努めるとしています。別表に並んでいるのは次の項目です。
- 違法・脱法行為に関する情報
- アダルトグッズの販売、露骨な性表現、過剰な肌の露出、芸術的なヌード
- 暴力的な表現、醜悪・グロテスクな表現、映画やゲームなどの暴力表現
- 投機心を著しくあおる表現、非科学的・迷信的な情報で不安を与える表現
- ハラスメントを助長する表現
- 薬物に関する情報
- 一段目のカテゴリにあたるものについての研究、論説、教育、啓発、ニュース
- 虚偽の情報で社会的な混乱を生じさせるもの
- その他、広告主のブランドへの考え方によってはリスクになりうるもの
二段目に「ニュース」や「研究・教育」が入っているところに、この分類の性格が出ています。犯罪を報じるニュースは違法ではありませんし、社会にとって必要な情報です。それでも、自社の広告がその隣に並ぶことは避けたい広告主もいます。避けるかどうかを決めるのは法律ではなく、ブランドの考え方のほうです。
GARMの枠組みと、2024年の活動停止
GARM(Global Alliance for Responsible Media)は、ブランドセーフティの国際的な共通言語をつくってきた業界横断の枠組みですが、2024年8月に活動を止めています。世界広告主連盟(WFA)は2024年8月9日付の公式発表で、GARMの活動を終えると発表しました。
同じ発表によると、GARMは2019年、ニュージーランドのクライストチャーチのモスクで起きた銃撃事件の映像がフェイスブックでライブ配信されたことをきっかけに生まれた、自主的な業界横断の枠組みです。違法・有害なコンテンツの隣に広告が出る問題が相次いでいたことが背景にありました。
WFAは、GARMの道具立てとして「ブランドセーフティ・フロア」と「隣接基準フレームワーク(Adjacency Standards Framework)」の二つを挙げ、広告主がそれぞれ自社に合った安全の基準をつくるのを支えてきたと説明しています。そのうえで、こうした道具によって、有害・違法なコンテンツへの広告が2020年の6.1%から2023年の1.7%に減ったとしています。活動をやめる理由としては、GARMの目的と活動を誤解した申し立てによって、小さな非営利の枠組みの資源と資金が大きく消耗したことを挙げています。
活動が止まっても、GARMが広めた考え方は残っています。最終更新日時点で、Metaのビジネスヘルプセンターのインベントリーフィルターについてには、Metaのポリシーはブランドセーフティ・フロアとブランド適合性のフレームワークに基づく業界標準に広く準拠している、と書かれています。旗振り役の団体はなくなっても、「誰にとっても避けるべき床」と「その上で自社に合う場所を選ぶ基準」の二段の考え方は、設定の中に引き継がれています。日本ではJIAAのガイドラインの二段の分類が、同じ役割を担っています。
GARMの分類の一覧そのものは、最終更新日時点でWFAの公式サイト上で確認できなかったため、ここではJIAAの分類を本体にしています。
ブランドスータビリティ・アドフラウドとの違い
ブランドセーフティが「どの広告主でも避ける場所」を決める考え方なのに対して、ブランドスータビリティ(ブランド適合性)は「自社にとってふさわしい場所」を決める考え方です。JIAAの分類に重ねるなら、一段目がセーフティ、二段目から先がスータビリティの領域に近いと考えると整理しやすくなります。
| 言葉 | 守るもの | 問いの形 | 主な手段 |
|---|---|---|---|
| ブランドセーフティ | ブランドと、広告費の行き先 | 違法・有害な場所に出ていないか | ブロックリスト、第三者機関が提供する違法・有害サイトの情報、プラットフォームの標準の除外 |
| ブランドスータビリティ(適合性) | ブランドの文脈 | 自社らしい場所に出ているか | インベントリの段階設定、テーマやキーワードの除外、配信してよい先だけを並べたセーフリスト |
| アドフラウド対策 | 広告費 | 本当に人に届いているか | 無効トラフィックの除外、検証ツール、認証を受けた事業者との取引 |
| ビューアビリティ | 広告の効き目 | 見える状態で表示されたか | 視認可能なインプレッションの計測 |
JIAAは2017年の広告掲載先コントロールによる「ブランドセーフティ」確保に関するJIAAステートメントで、ビューアビリティ、アドフラウド、ブランドセーフティ、ユーザビリティ(使いやすさを損なう広告の形式の排除)を、インターネット広告の品質の4大テーマとしています。同じステートメントは、正当な掲載先のように偽装した不適切な掲載先に広告が配信されるケースは、詐欺的な手法なのでアドフラウドとして扱う、とも書いています。
境目はここです。出た場所が本物で、その中身が不適切なら、ブランドセーフティの問題。出た場所そのものが偽物なら、アドフラウドの問題になります。二つは同じツールに入っていることが多く混ざりがちですが、守っているものが違うので、悪化したときに見る数字も違います。どこに出たかの報告と、人に届いたかの報告は、分けて受け取るほうが判断を誤りにくいと思います。広告の届き方そのものを数える指標はインプレッション・リーチ・フリークエンシーの違いとは?計算例で解説で整理しています。
実務でどう使うか──除外設定のチェックリスト
ブランドセーフティを実務に落とすときの出発点は、ツールの設定ではなく、「自社の広告の隣に置きたくない内容」を言葉にして決めることです。設定画面の選択肢は、その言葉を機械に伝える手段にすぎません。
広告会社にいた頃、テレビCMは、どの時間帯のどの枠に流れるかを放送の前に確かめられるのが普通でした。総務省のガイダンスも、4マス媒体の広告は取引に関わる主体が限られていて、いつどの媒体のどの広告枠に出るかを広告主が把握しやすかったと書いています。運用型のデジタル広告では、それが当たり前ではなくなりました。出る場所を選ぶ手間を、設定と確認で取り戻す必要があります。
最終更新日時点で確かめられる設定と、あわせて決めておきたいことをチェックリストにまとめます。
| 項目 | 中身 | 確かめた資料 |
|---|---|---|
| 自社の方針 | JIAAの二段の分類をたたき台にして、一段目はすべて除外、二段目はどれを除外するかを決め、文書にして発注先と共有する | JIAAブランドセーフティガイドライン |
| Google広告:インベントリタイプ | 最大インベントリ・標準インベントリ・制限付きインベントリの3種類から選ぶ。標準は、非常に冒とく的な表現、暴力描写、性的なテーマを除外する | Google広告ヘルプ「コンテンツの適合性について」 |
| Google広告:除外の設定 | デリケートなコンテンツ(惨事・紛争、デリケートな社会問題など)、コンテンツタイプ(ライブ配信など)、除外キーワード(完全一致のみ・アカウントごとに最大1,000個)、除外プレースメント(最大65,000件)、除外コンテンツテーマ。設定はアカウント単位で行う | 同上 |
| Meta広告:インベントリーフィルター | 拡張・中程度・制限の3段階。初期設定は拡張。中程度は極めて不適切なコンテンツを、制限はその他の不適切なコンテンツとライブ動画も除外する | Metaビジネスヘルプセンター「インベントリーフィルターについて」 |
| Meta広告:ブロックリスト | インベントリーフィルターでは特定のパブリッシャーはブロックできないので、パブリッシャーブロックリストやコンテンツブロックリストを別に使う | 同上 |
| 配信先の確認 | 配信先のドメインやアプリを表示数の多い順に確かめ、意図しない配信先はブロックリストに加える | 総務省のガイダンス |
| 見つけたときの手順 | 意図しない媒体への配信を見つけたら、誰が、どこまでに、何を止めるかを決めた広告管理の方針をつくっておく | 総務省のガイダンス |
GoogleもMetaも、ヘルプの中で、厳しい段階を選ぶほどリーチが狭くなりうると書いています。ここで気をつけたいのは、除外のしすぎです。JIAAの二段目の分類にはニュースが含まれますし、Googleのコンテンツの適合性の説明でも、テロや戦争、死などを扱うデリケートな時事ニュースは自動で除外の対象になります(信頼できる提供元のものは、標準インベントリで配信される場合があるとされています)。安全のためにニュースの面をまとめて外すと、広告が届く範囲が狭まるだけでなく、信頼できる報道を支えるお金の流れまで細らせかねません。どこまで外すかは、ブランドの考え方と、届けたい人の数との釣り合いで決めるものです。
配信面とターゲティングの全体像はディスプレイ広告とは?種類と配信面にまとめています。運用を代理店に任せている場合は、どの段階の設定で配信しているか、配信先の一覧を広告主が見られるか、この二つを最初の打ち合わせで確かめておくと、あとから慌てずに済みます。
日本市場・2026年時点での注意点──広告主の責任として見られる
2026年時点の日本では、ブランドセーフティは「広告担当者の設定の話」から「経営が説明する話」に移りつつあります。総務省が2025年6月に公表したデジタル広告の適正かつ効果的な配信に向けた広告主等向けガイダンスは、広告主の広告担当者と経営層の両方が、デジタル広告の流通をめぐるリスクを経営上のリスクとして認識することを目的に掲げています。
同じガイダンスと業界団体の調査には、日本の現状を示す数字が載っています。
| 調査 | 結果 |
|---|---|
| 総務省による広告主・利用者への意識調査(2025年2月、ガイダンスに掲載) | 約3割の広告主が、デジタル広告でブランドセーフティに関する被害を経験したと回答 |
| 同上 | 偽・誤情報が載った記事などに広告が出ているのを見たとき、92%の利用者が広告主の印象が悪くなると回答 |
| 同上 | 印象が悪くなると答えた人のうち35%が、そうした配信を防ぐために最も対応すべきなのは「広告主」と回答(広告プラットフォームは25.2%、広告を掲載している媒体は21.8%) |
| JAA・宣伝会議「デジタル広告における意識・実態調査」(2019年6月、ガイダンスが引用) | ブランドセーフティの認識率は、広告担当者で5割近く、経営層で15%を下回る |
| JICDAQデジタル広告課題意識調査2025 | ブランドセーフティを言葉も内容も知っている割合は、広告会社・媒体社で8割、広告主で6割 |
利用者は「広告主が対応すべきだ」と見ているのに、広告主の側、とくに経営層の理解が追いついていない構図です。広告の隣に何があったかは、生活者からすれば、広告主が選んだ場所に見えます。選んだつもりがなくても、です。
もう一つの論点は、偽・誤情報と違法アップロードです。ガイダンスは、こうした媒体に広告が意図せず出ることは、ブランドの毀損にとどまらず、発信する側に金銭的な動機を与え、不健全な仕組みに加担するリスクがあると指摘しています。自社の広告費が誰の活動資金になっているかまで含めて、ブランドセーフティの範囲は広がってきています。
広告が意図しない場所に出て、それがSNSで拡散されたときの動き方は、炎上への備えと同じ考え方で準備できます。段階ごとの打ち手は企業のSNS炎上対策とは?4段階の打ち手と初動24時間のチェックリストにまとめました。配信を止める判断、事実の確認、説明の文面を誰が持つかを、先に決めておくことが備えになります。
ブランドセーフティに関するよくある質問
ブランドセーフティとは簡単に言うと何ですか?
自社の広告が、違法なサイトや、ブランドを傷つける不適切なページ・動画の隣に表示されないように守ることです。デジタル広告は配信先が自動で決まることが多く、何もしなければ、望まない場所に広告が出ることがあります。除外の設定や配信先の確認で、その危険を減らしていきます。
ブランドセーフティとアドフラウドの違いは何ですか?
ブランドセーフティは「広告がどんな場所に出たか」、アドフラウドは「広告が本当に人に届いたか」の問題です。前者はブランドが傷つく被害、後者は広告費をだまし取られる被害です。正規のサイトのように偽装した掲載先に広告が出るケースは、JIAAではアドフラウドとして扱っています。
GARMとは何ですか?今も活動していますか?
GARMは2019年に生まれた、ブランドセーフティのための業界横断の枠組みです。世界広告主連盟(WFA)が2024年8月9日に活動の終了を発表しており、最終更新日時点で活動は止まっています。ただ、GARMが広めた二段の考え方は、Metaのヘルプなどプラットフォームの設定の説明に残っています。
Metaの広告でブランドセーフティを設定するにはどうしますか?
広告マネージャやMetaブランドセーフティと適合性センターで、インベントリーフィルターを拡張・中程度・制限の3段階から選びます。初期設定は拡張です。特定のパブリッシャーやコンテンツを避けたい場合は、インベントリーフィルターとは別に、パブリッシャーブロックリストやコンテンツブロックリストを使います。
おわりに──ブランドセーフティとは、広告の隣の席を選ぶこと
広告は、何を言ったかだけで評価されるわけではありません。どこで言ったかも、同じくらい見られています。生活者は、広告の文面と、その隣に並んだ記事や動画を、ひとつながりの景色として受け取るからです。
ブランドセーフティとは、広告の隣の席を選ぶこと。席を選ばない広告は、隣に座った相手の言葉まで、自分の言葉として背負うことになります。設定画面を開く前に、隣に座らせたくない相手を一度書き出してみる。そこから始めるのがいいと思います。