マーケの目

アドフラウドとは?仕組みと手口一覧、割合・対策と発注側の確認点

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最終更新:2026年10月17日

アドフラウドとは、ボット(自動化プログラム)や身元を偽ったサイトを使って、人が見ていない広告の表示やクリックを作り出し、広告費をだまし取る行為です。日本語では「広告詐欺」とも呼ばれます。管理画面の数字は増えているのに、その向こうに生活者がいない状態です。よく並べて語られるブランドセーフティが「広告がどこに出たか」の問題であるのに対して、アドフラウドは「広告が本当に人に届いたか」の問題です。手口の一覧と、公開資料で確かめられる割合、発注する側の確認項目を順に書いていきます。

アドフラウドとは?仕組みと手口の一覧

アドフラウドの仕組みは、偽の「見た」「押した」を作って、広告費の流れの途中に割り込むことです。日本インタラクティブ広告協会(JIAA)はアドフラウドに対するJIAAステートメント(2017年8月)で、ボットを使ったりスパムのコンテンツを大量に作ったりして表示やクリックを稼ぎ、不正に広告収入を得る悪質な手法だと説明しています。

運用型広告では、広告枠が入札で自動的に売り買いされます。たくさんのサイトの枠がまとめて取引されるので、その中に、人の来ないサイトや正規のサイトになりすましたサイトが混ざり込む余地があります。表示やクリックのたびにお金が動くので、偽の表示がそのまま不正な売上になります。

JIAAのステートメントが別紙で挙げている類型を、広告主の側から見える症状とあわせて整理すると次のようになります。

手口(JIAAの類型) 何をしているか 広告主の数字に出やすい症状
ボットによる閲覧・クリック プログラムで動かしたブラウザが、自動で表示やクリックを発生させる クリックは多いのに、サイトでの滞在や成果がほとんどない
乗っ取られた端末からのリクエスト 不正なプログラムに感染した個人の端末に、本人の知らないうちに広告を表示・クリックさせる 普通の利用者のアクセスに見えるので、数字だけでは見分けにくい
隠し広告 ページの見えない領域に広告を仕込み、表示回数を水増しする 表示回数は多いのに、クリックがほぼゼロ
過度な自動リロード ページを短い間隔で読み込み直し、短時間に大量の広告を表示させる 特定の配信先に表示回数が偏る
オークションでのURL偽装 アダルトや違法ダウンロードのサイトが、正規のサイトのURLを名乗って入札を受ける レポート上は、名の通ったサイトに出ているように見える
不正な広告の差し替え 正規のサイトの広告タグを、不正な事業者が自社のタグにすり替える 媒体社の収益が奪われ、広告は意図しない文脈で表示される
過度な広告領域 検索スパムを使い、広告しかないページへ人を誘い込む 単価の安い配信先に予算が流れていく
クッキーの汚染 ポップアップなどで有名な媒体や広告主のページを開かせ、優良な閲覧履歴があるように見せかける リターゲティングや成果報酬で、身に覚えのない成果がつく
トラフィックエクスチェンジ 自動で読み込み直すページを人に見せ続け、その閲覧を対価と交換する 訪問は多いのに、ページを読んだ形跡がない

手口はいくつもありますが、行き着く先は一つです。JIAAのステートメントは、どの手法も最終的には広告費の詐取が目的である以上、不正なサイトやページに行き着くと考えられる、と書いています。だから対策の基本も、不正な配信先に広告を出さないことと、その運営者との取引を止めることにまとまります。

無効トラフィック(IVT)との違い──悪意のあるものと、ないもの

無効トラフィック(IVT)は「広告の成果として数えるべきではないトラフィック」の総称で、アドフラウドはその中の、悪意をもって作られた部分です。検索エンジンのクローラーのように、悪気はないけれど人ではないアクセスもIVTに含まれます。

JIAAが2021年4月に定めた広告トラフィックの品質確保に関するガイドライン(無効トラフィック対策ガイドライン)は、IVTを次の二つに分けています。

区分 中身 例 見つけ方
一般的な無効トラフィック(GIVT) 定型のフィルタで見分けられる、人以外のトラフィック 既知のデータセンターのIPアドレス、検索エンジンのクローラー、重複したクリック 既知のリストや標準のパラメータの確認で、機械的に除外できる
悪意のある無効トラフィック(SIVT) 人のアクセスに見せかけた、見分けにくいトラフィック。アドフラウドによるものを含む ボットネット、ドメインのなりすまし、広告の重ね表示や非表示、クリックファーム 配信後の異常な動きの検出など、踏み込んだ分析が要る

JIAAは2017年のステートメントの時点で、世の中ではアドフラウドとIVTが同じものとして扱われがちだが、目的も対象範囲も大きく違うので区別して考える、と書いています。IVTの除外は、レポートの数字を正しくするための作業です。アドフラウド対策は、お金をだまし取る相手を市場から締め出すための作業です。同じ「無効な数字を消す」でも、前者は計測の精度の話で、後者は取引相手の話になります。

Google広告ヘルプの無効なクリックの定義では、意図的な不正のクリックだけでなく、誤ったクリックや重複したクリックも無効なクリックに含め、無効と判断したクリックやインプレッションには料金がかからないとしています。キャンペーンのレポートに「無効なクリック」の項目を足すと、自動で除外された数を確認できます。

アドフラウドの割合と被害額──公開資料で確かめられる数字

日本のアドフラウドの割合を、市場全体を網羅して測った公的な数字は、最終更新日時点で見当たりません。公開資料で確かめられるのは、広告検証ツールの事業者が自社ツールの計測範囲で出した数字を、業界団体や総務省が引用したものです。

資料 書かれている数字 読むときの注意
日本アドバタイザーズ協会(JAA)デジタル広告の課題に対するアドバタイザー宣言(2019年) 対策をしない場合、アドフラウドは10%を超える割合で存在するとされ、少なく見積もっても日本市場で年間数百億円を超える広告費がかすめ取られていると推定 割合の出典はインテグラル・アド・サイエンス(IAS)の2019年上半期のレポート。7年前の推定
総務省デジタル広告の適正かつ効果的な配信に向けた広告主等向けガイダンス(2025年6月) 2022年上半期の日本のアドフラウド発生率は、デスクトップで3.3%、モバイルウェブで1.7%。世界20か国中ワースト2位で、世界平均は1.3%と0.5% 出典はIASのメディアクオリティレポート第17版。ガイダンス自身が、ツールが使われた範囲での計測で、日本市場を網羅的に調べたものではないと断っている
デジタル広告品質認証機構(JICDAQ)デジタル広告課題意識調査2025 「無効トラフィック」「アドフラウド」を言葉も内容も知っている割合は、広告会社・媒体社で6〜7割、広告主で3〜4割 被害の割合ではなく、知られている割合。広告関連団体の加盟社417社が対象

数字の幅が大きいのは、何を分母にして、どのツールで測ったかが資料ごとに違うからです。2019年の「10%超」は対策をしない場合の話で、2022年の数字は検証ツールが入った配信の中での話です。どちらが正しいかを決めるより、対策の有無で数字が大きく変わるほど混ざっている、と読むほうが実務の役に立ちます。

JICDAQの調査で、言葉も内容も知っている広告主が3〜4割にとどまるなら、残りの多くは、広告費がだまし取られていても気づく手段を持っていないことになります。被害の大きさより、気づける人の少なさのほうが問題だと思います。

対策ツールの事業者による、より新しい国内の被害額の推計もありますが、業界団体や公的機関の資料で確かめられないので載せていません。

実務でどう使うか──発注する側が確かめておきたい項目

発注する側にできるアドフラウド対策は、管理画面の数字を、配信先と照らし合わせて読める状態にしておくことです。ツールを入れるかどうかより先に、どこに出て、何が除外され、だまされたときにどう精算するかを、出稿の前に決めておきます。

代理店そのものを選ぶ判断軸(担当者・体制・報酬方式など)は広告代理店の選び方|中小企業が失敗しない5つの判断軸にまとめたので、ここでは取引の品質に絞った確認項目だけを並べます。

段階 確かめること 根拠になる資料
契約の前 発注先や使う配信プラットフォームが、JICDAQの認証を受けているか 総務省のガイダンス(中小企業などはまず認証事業者との取引から)。認証の有無はJICDAQ登録者リストで確かめられる
契約の前 無効トラフィックをどの方法で除外し、その結果をどう報告してもらえるか JIAAの無効トラフィック対策ガイドライン(除外の方法と、取引先への合理的な協力)
契約の前 無効と分かった配信の費用と、それにかかった手数料をどう払い戻すか JAAのアドバタイザー宣言(補償のプロセスの事前合意、手数料も払い戻しの対象に)
配信中 配信先のドメインやアプリの一覧を、表示数の多い順に見られるか 総務省のガイダンス(すべての目視は難しいので、表示数の多い順に確かめる)
配信中 第三者の検証ツールを使う場合、広告主自身がその結果を見られるか JAAのアドバタイザー宣言(第三者による検証と測定の推奨)
配信後 成果の指標と並べて、無効トラフィックの率などの品質の指標を報告してもらえるか 総務省のガイダンス(成果と品質の指標の両方で見る)

表の中でいちばん後回しにされやすいのは、払い戻しの合意です。媒体費に連動する手数料の形だと、だまされた配信の分にまで手数料が乗っていることになります。手数料の構造は広告代理店の手数料の仕組みで書きましたが、無効な配信が見つかったときに媒体費と手数料の両方がどう戻るのかを、見積の段階で一行書いておくと、あとで揉めにくくなります。

広告の仕事を長く続けていると、悪い数字より、良すぎる数字のほうが気になるようになります。次のような形が出たら、配信先の一覧を開いてみる合図です。

  • クリック率だけが飛び抜けて高いのに、サイトでの滞在や成果がほとんどない(クリック率の見方はCTRとは?クリック率の計算式と平均、高いのに売れない理由で整理しています)
  • 表示回数は多いのに、クリックがほぼゼロの配信先がある
  • 聞いたことのないドメインやアプリに、表示回数が集中している
  • 成果報酬の案件で、問い合わせや会員登録の中に、連絡のつかないものが目立つ

もう一つは、獲得単価だけで配信を評価しないことです。総務省のガイダンスも、クリックを獲得する効率ばかりが優先されると、不正な成果の数値が含まれるリスクが高まる場合があるという指摘を紹介しています。同じガイダンスは、安全性の高い商流は比較的コストがかかるのが一般的だとも書いています。安い配信先には、安い理由があることがある。単価の指標どうしの関係はCPC・CPM・CPAの違いで書いていますが、安さは成果ではなく、条件の一つにすぎません。

2026年時点での注意点──対策すると数字は悪く見える

2026年時点でいちばん厄介なのは、アドフラウドを取り除くと、管理画面の成果の数字がいったん悪く見えることです。偽のクリックや偽の成果が消えるので、クリック率も獲得単価も、正しく悪くなります。

総務省のガイダンスは、この板挟みをはっきり書いています。品質の指標を重んじて対策を打つと、即時的な成果の指標が悪化すると予測され、それは問題のある配信や偽装されたクリックが排除された結果なのに、背景を理解していない経営層からの指摘を恐れて対策に踏み切りにくい面がある、という指摘です。だから同じガイダンスは、現場の担当者だけでなく、経営層がリスクを理解して関わることを求めています。数字が悪く見える理由を、対策の前に社内で共有しておく。順番を逆にすると、対策は続きません。

偽物を作る手間も減っています。ガイダンスは、生成AIの登場でボットやスパムのコンテンツが容易に作られ、問題が一層深刻になる可能性に触れています。広告収入を目当てにAIで量産されたページが増えている状況は、AIスロップとは?意味と例、問題点と対策でも書きました。人が読まない記事に、人が見ない広告が並んでも、管理画面の上では普通の配信に見えます。

技術の側では、媒体社が自分の広告枠を誰に売らせているかを公開する仕組みとして、ads.txtやsellers.jsonがあります。JIAAの無効トラフィック対策ガイドラインは、業界が推奨する技術標準の例として、これらを提供している団体の名前を挙げています(IAB Tech Lab)。広告主が直接さわる設定ではありませんが、発注先に対応を確かめる質問の一つにはなります。

「大手の広告プラットフォームなら自動で除外してくれるから大丈夫」という考えにも、半分だけ答えておきます。無効なクリックが自動で除外され、その分の料金がかからないのは確かです。でも、除外されるのは無効と判定できたものだけで、見分けにくい手口ほど残ります。JAAの宣言も、検証のソリューションごとに結果は異なり、一つの正解はないと書いています。任せきりにしないことが、2026年のいまも変わらない基本です。

アドフラウドに関するよくある質問

アドフラウドとは簡単に言うと何ですか?

人が見ていない広告の表示やクリックを、ボットや偽装したサイトで作り出し、広告費をだまし取る行為です。広告主の管理画面では数字が増えて見えますが、その先に生活者はいません。払った広告費の一部が、不正なサイトの運営者に流れることになります。

アドフラウドとブランドセーフティの違いは何ですか?

アドフラウドは「広告が本当に人に届いたか」、ブランドセーフティは「広告がどんな場所に出たか」の問題です。アドフラウドは広告費をだまし取られる被害で、ブランドセーフティは不適切なページの隣に出てブランドが傷つく被害です。正規のサイトのように偽装した掲載先に広告が出るケースは、JIAAではアドフラウドとして扱っています。

アドフラウドの割合はどのくらいですか?

日本市場全体を網羅した公的な数字は、最終更新日時点で見当たりません。総務省のガイダンスが引用する広告検証ツール事業者の調査では、2022年上半期の日本の発生率はデスクトップで3.3%、モバイルウェブで1.7%で、世界20か国中ワースト2位でした。ツールが使われた範囲での計測なので、目安として読む数字です。

中小企業や個人でもできるアドフラウド対策はありますか?

まずは、JICDAQの認証を受けた事業者やプラットフォームと取引することです。総務省のガイダンスも、中小企業などはそこから始めることを挙げています。そのうえで、配信先の一覧を表示数の多い順に確かめ、心当たりのない配信先を除外していきます。獲得単価だけで配信を評価しないことも、だまされにくくする手立てになります。

おわりに──アドフラウドとは、見られていない広告に、見られた値段がつくこと

アドフラウドの話になると、どうしても手口の巧妙さに目が向きます。でも、広告主の側から見た被害の形は単純です。誰も見ていない広告に、見られたのと同じ値段を払っている。それだけです。

アドフラウドとは、見られていない広告に、見られた値段がつくこと。だから対策の出発点は高度な技術ではなく、数字の向こうに人がいるかを疑う手間を、最初から予算の中に入れておくことだと思います。良すぎる数字に喜ぶ前に、配信先の一覧を一度だけ開いてみてほしいです。

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