独立・フリーランス

マーケターの独立・副業ロードマップ|会社員のうちに「外の値段」を知る

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40歳で独立して、一番怖かったのは営業でも税金でもなかった。「自分の値段を、自分で決めること」だった。会社にいたころは、給料は勝手に振り込まれてきた。ぼくが何円の人間かなんて、考えたこともなかった。独立した瞬間、その値札を自分で書かなきゃいけなくなる。この記事で一番言いたいのはここだ。いきなり辞めるのはギャンブルだけど、「外の値段」は会社員のうちに小さく試せる。試してから決めても、遅くない。

独立や副業が気になり始めているマーケターに向けて書く。辞めるべきか、まだ早いか、という話はしない。その手前の「試し方」だけを、ぼくの実体験も含めて包み隠さず書こうと思う。

独立の前に副業で試すべき理由

独立をギャンブルにする人と、しない人の違いは一つだけだと思っている。「辞める前に、外で自分がいくらで売れるか知っているかどうか」だ。

ここには、リスクの非対称性がある。会社員のまま副業を試して失敗しても、失うのは週末の数時間と、少しの自尊心くらい。でも、いきなり辞めて独立して失敗したら、収入がゼロになり、生活が傾き、下手をすると自信そのものを失う。同じ「失敗」でも、ダメージの大きさが全然ちがう。だったら、ダメージの小さいほうで先に転んでおくのが合理的だ。

それに、副業で小さく試すと、頭で考えていても分からなかったことが、からだで分かるようになる。ぼくが実際にやってみて分かったのは、大きく3つだった。

1つめは、値付け。これがいちばん怖くて、いちばん学びが大きい。「この仕事、いくらでやりますか?」と聞かれて、口ごもらずに数字を言えるかどうか。会社の看板がない状態で、自分の時間に値札をつける。この筋肉は、実際に一回やってみないと絶対につかない。ぼくも最初、正直な話、安く言ってしまった。相手に嫌われたくない、断られたくない、という気持ちが先に立って、自分の時間を安売りした。でも安く受けると、その値段が次の相場になってしまう。一度つけた値札は、あとから上げるのがすごく難しい。この「最初の一発をどう置くか」の感覚は、頭では分かっていても、実際に何度か口に出してみないと身につかなかった。

2つめは、営業。といっても、飛び込みで売り込むような話じゃない。「困っている人に、自分ができることをどう差し出すか」という、地味なやりとりのこと。案件は営業して取るものじゃなくて、信頼のあるところに勝手に流れてくるものだ、というのが副業で分かる。

3つめは、自分の商品。これが一番大事かもしれない。「ぼくは結局、何を売っている人なのか」が、副業をやると輪郭を持ってくる。会社では「マーケティング部の人」で済んでいた自分が、外に出た瞬間、「で、あなたは具体的に何ができるの?」と問われる。その問いに一言で答えられるかどうかが、独立できるかどうかの分かれ目だったりする。

おもしろいのは、自分が売りたいものと、実際に相手が買いたいものが、けっこうズレることだ。ぼくは戦略設計みたいな上流の仕事を売りたかったけれど、最初に声がかかったのは、もっと手を動かす実務のほうだった。「あなたにはこれを頼みたい」と、相手が勝手に自分の商品を教えてくれる。この、市場からのフィードバックで自分の商品が定まっていく感覚は、副業という小さな場で試すからこそ、痛みなく受け取れる。独立してから「思っていた需要と違った」と気づくのは、なかなかしんどい。

この3つは、辞めてから学ぶには授業料が高すぎる。在職中の、失っても痛くない環境で先に払っておいたほうがいい。

会社員のうちにやっておく5つの仕込み

「じゃあ何から準備すればいいの」という話をする。派手なことは要らない。むしろ地味で、今日から始められることばかりだ。ぼくが独立前にやっておいてよかったと思うものを、5つに絞った。

  • 売れるスキルを1つに絞る。「マーケティング全般できます」は、外では「何もできません」とほぼ同じに聞こえる。SNS運用でも、広告運用でも、ブランド設計でも、CRMでもいい。「この人といえばこれ」という旗を1本立てる。全部やろうとした瞬間、あなたの値段は下がる。まず1本に絞って、そこで「あの人に頼めば間違いない」と言われる状態を作る。
  • 実績の見える化。会社の中では「みんな知ってる前提」で通っていた成果が、外では一切通じない。数字と、そこに至った判断を、他人が読める形で残しておく。守秘義務があるものは、業種や規模をぼかしつつ「何をどう考えて、どうなったか」を書けばいい。大事なのは結果の数字じゃなくて、あなたの思考プロセスが見えることだ。それが「一緒に働きたい理由」になる。
  • 発信を始める。これは営業の代わりになる。SNSでもブログでもいい。自分が何を考えている人間かを、外ににじませておく。売り込みじゃなくて、日々の気づきでいい。発信は、あなたが眠っている間も勝手に「あなたはこういう人です」と説明してくれる名刺になる。ぼくの場合、独立の話が来るきっかけは、たいてい発信を見た人からだった。
  • 就業規則の確認。ここは地味だけど飛ばせない。副業が禁止されていないか、許可制ならどう申請するか、競業避止の縛りはどこまでか。ここを曖昧にしたまま始めると、あとで面倒なことになる。まず自社のルールを一次情報で確認する。分からなければ人事に聞く。それだけで消える不安がある。
  • 生活防衛資金を貯める。独立の一番の敵は、才能でも運でもなく「お金の不安による判断のブレ」だ。残高が減っていくと、人は安い仕事でも取りにいってしまう。それが自分の値段をどんどん下げる悪循環になる。目安として、生活費の半年分から1年分。この金庫があるだけで、「その仕事は受けない」という判断ができるようになる。断れる余裕が、結局いい仕事を呼ぶ。

この5つは、全部やってから辞める必要はない。ただ、始めておくと「いつでも動ける状態」になる。その状態でいること自体が、精神的にすごく効く。

案件の取り方は3ルート

副業を始めるとして、じゃあ最初の仕事はどこから来るのか。大きく3つのルートがある。順番も大事なので、上から試すのがいい。

人脈ルート:最初の仕事はだいたい知人から来る

身も蓋もないけれど、最初の副業案件は、ほとんどが知り合い経由で来る。前職の同僚、取引先の担当者、なんなら飲み仲間。「そういえば、あの人こういうの詳しかったな」と思い出してもらえるかどうかが全てだ。

だから、耕し方はシンプルで、「自分が何をやっている人か」を周りに軽く共有しておくこと。売り込みじゃない。「最近こういうことに興味あって」「副業でこんなの手伝ってみてる」くらいの温度でいい。人は、思い出せない人には仕事を振れない。逆に、ふとした瞬間に顔が浮かぶ人になっておけば、向こうから声がかかる。

ぼくの独立初期の仕事も、9割は昔つながった人からだった。営業らしい営業は、ほとんどしていない。日ごろの信頼の貯金が、一番の営業になる。逆に言うと、在職中に人間関係を雑に扱ってきた人は、独立した瞬間にそのツケを払うことになる。誰かの案件を無理やり取りにいったり、手柄を独り占めしたり。そういうことは全部、辞めたあとに効いてくる。だから、独立の準備で一番地味で一番大事なのは、今いる場所での信頼を、丁寧に積んでおくことだったりする。派手なスキルより、ここが効く。

マッチングルート:小さい案件から試す

人脈がまだ細い、あるいは前職と関係ない分野で試したい。そういうときは、案件マッチングのサービスを使う手がある。

Anycrewは、人脈ベースの副業・フリーランス案件マッチングサービスだ。特徴は、週1稼働くらいの小さい案件から探せること。いきなりフルコミットではなく、本業を続けながら「週に1回だけ、よそのチームに入ってみる」みたいな試し方ができる。副業の入り口としては、リスクが低い。

こういうサービスの使いどころは、「案件を取ること」そのものより、「外の相場と、自分の需要を知ること」にある。どんなスキルが、いくらで、どれくらい募集されているか。それを眺めるだけでも、自分の「外の値段」の見当がつく。応募して面談まで進めば、自分がどう評価されるかも分かる。取れなくても、その情報だけで価値がある。

スキル販売ルート:値付けの練習場

もう一つ、自分でスキルに値札をつけて売ってみるルートがある。

ココナラは、自分のスキルを商品として出品して売れるサービスだ。「マーケ戦略の壁打ち30分」「SNS運用の初期設計」みたいに、自分ができることをメニュー化して、値段を自分でつける。ここが独特で、価格を自分で決めなきゃいけない。

だから、ここは値付けの練習場として使える。冒頭に書いた「自分の値段を自分で決める怖さ」を、失っても痛くない場所で先に体験できるということだ。安すぎれば買われるけど疲弊するし、高すぎれば売れない。その反応を見ながら、自分の適正価格の感覚を掴んでいく。独立してから初めてこの試行錯誤をやると、痛い。会社員のうちに、小さな金額で失敗しておくのがいい。

ここまでで、自分が独立や副業に向いているタイプなのか、少し気になってきた人もいると思う。マーケターキャリアタイプ診断(無料・10問)で、自分がどの動き方に向いているか、目安をつけてから読み進めてもらってもいい。

お金の不安を消す道具立て

副業や独立で一番効いてくるのは、スキルの話じゃなくてお金の不安だ。会社員のときは「会社の信用」という見えない盾に守られていた。独立すると、その盾がなくなる。代わりになる道具を、先に知っておくと不安が減る。

ここで大事なのは、道具そのものを今すぐ使うことじゃない。「困ったときに、こういう逃げ道がある」と知っているだけで、判断が変わるということだ。人は、逃げ道がないと思うと視野が狭くなる。追い詰められた状態で決めた値段や、受けた仕事は、たいていあとで後悔する。だから、実際に使うかどうかは別として、選択肢の地図だけは先に頭に入れておくといい。以下は、その地図に載せておくと安心な道具を2つ紹介する。

FREENANCE:会社の信用の代わりを作る

会社を辞めて一番不安なのは、「もし仕事で相手に損害を出したら、誰も守ってくれない」という点だったりする。会社員のときは、何かあっても会社が矢面に立ってくれた。独立すると、全部自分でかぶる。

FREENANCEは、フリーランス向けの損害賠償保険と、請求書の即日払い(ファクタリング)を組み合わせたサービスだ。仕組みとしては、フリーランスが抱えがちな「もしもの賠償リスク」と「入金までのタイムラグ」という、会社員時代には気にしなくてよかった2つの弱点を、まとめて補う設計になっている。

向き不向きでいうと、対人・対クライアントの仕事で「万が一の賠償が怖い」と感じる人には、精神的な保険として意味がある。逆に、リスクの小さい仕事しかしないなら、そこまで急がなくてもいい。大事なのは、「会社の信用」の代わりをどう自分で組み立てるか、という発想を持っておくことだ。会社員でいるあいだは、この「信用の代わり」を意識する機会がない。名刺を出せば信用され、何かあれば会社が守ってくれる。その前提が消えたとき、自分は何を盾にするのか。保険に入るかどうかそのものより、この問いを一度考えておくだけで、独立後の心もとなさがだいぶ減る。

ラボル:入金サイトの長さ対策

もう一つ、独立して地味にきついのが「入金の遅さ」だ。会社員なら給料日は毎月決まっていた。でもフリーランスの請求は、月末締めの翌々月払い、みたいに入金まで2ヶ月空くことがざらにある。仕事はしたのに、お金が入ってこない期間が生まれる。

ラボルは、請求書買取(ファクタリング)のサービスだ。仕組みとしては、まだ入金されていない請求書を先に買い取ってもらうことで、入金を待たずに資金化できる。手数料はかかるけれど、「今月の生活費が足りない」という一番判断を狂わせる状況を回避できる。

向き不向きでいうと、独立初期でまだ生活防衛資金が薄く、入金サイトの長さがキャッシュフローを直撃しやすい人には、緊急時の選択肢として知っておく価値がある。逆に、資金に余裕があるなら手数料の分だけ損なので、常用するものではない。あくまで「詰まったときの逃げ道」として、存在を頭に入れておく、くらいがちょうどいい。

独立後のリアル

ここからは、ぼく自身が独立して実際にどうだったか、包み隠さず書く。きれいな成功譚じゃない。

まず、収入には波がある。会社員のときの、毎月同じ額が振り込まれる安心感は、独立すると消える。ある月はよくても、次の月がすっと落ちる。この波に、最初はかなり心を持っていかれた。残高を見ながら「大丈夫かな…」と何度も思った。今でもときどき思う。でも、生活防衛資金という金庫があると、この波を「季節みたいなもの」として眺められるようになる。金庫の有無で、同じ波でも見え方がまるでちがう。

次に、孤独。これは想像以上だった。会社にいたころは、うまくいかないときに愚痴を言える同僚がいた。ランチで「今日の会議、なんだったんだろうね」と笑い合える相手がいた。独立すると、それが全部なくなる。判断も、失敗も、全部一人で抱える。自由の代償は、孤独だった。誰も上司がいないということは、誰も一緒に責任を持ってくれないということでもある。

もう一つ、独立してから気づいたのは、「自分で決めていい」ことの重さだった。会社にいたころは、決断の多くを上司や組織が肩代わりしてくれていた。それを窮屈だと思っていたけれど、いざ全部が自分の判断になると、その自由はけっこう重い。今日は休んでいいのか、この仕事は受けていいのか、値段はこれで合っているのか。誰も答え合わせをしてくれない。「これで正解?」と自問する回数が、会社員のときの何倍にも増えた。

それでも、独立してよかったと思っている。一番は、「自分の時間を、自分の判断で使えること」だ。受ける仕事も、断る仕事も、自分で決められる。合わない相手とは働かなくていい。その代わり、全部の結果が自分に返ってくる。この、怖さと自由がセットになった感覚は、会社員のときには一度も味わえなかったものだった。だから、独立を「バラ色の自由」だと思って飛び込むと、たぶんつまずく。自由と孤独と責任が、全部ひとつのセットで来る。それを分かったうえで選ぶなら、独立はすごくいいものだと思う。

この「独立後のリアル」を、もっと生々しく、数字や具体的な失敗も含めて知りたい人へ。よそおいさんの楽屋(noteメンバーシップ)で、値付けで失敗した話や、収入が落ちた月に何を考えていたか、といった、表では書きづらい部分まで書いている。独立を本気で考えている人には、たぶん一番役に立つ場所だ。

辞める前の最終チェックリスト

ここまで読んで、「そろそろ動いてもいいかもしれない」と思い始めた人へ。辞める前に、これだけは確認しておいてほしい、というリストを置いておく。全部イエスになってから決めても、遅くない。

  • 売れるスキルが1本に絞れているか。「あなたは何ができる人?」に、一言で答えられる状態か。
  • 会社の看板なしで、仕事を1件でも取ったことがあるか。副業でもいい。1件でも「自分の名前で」取れたという事実が、独立後の自信の土台になる。
  • 自分の「外の値段」の見当がついているか。マッチングやスキル販売を通して、自分がいくらで売れそうか、肌感が持てているか。
  • 生活防衛資金が、半年から1年分あるか。お金の不安で判断がブレない金庫が、手元にあるか。
  • 市場価値を、一度は外から測ったか。ここは意外と抜けがちだ。転職する気がなくても、スカウトサービスに登録だけしておくと、外から自分がどう評価されるかが見える。どんな会社が、どんな条件で声をかけてくるか。それは「独立せずに転職する」という選択肢の相場でもあり、独立後に戻る場所があるという保険にもなる。登録だけならタダだし、辞めるかどうかを冷静に決める材料になる。

このチェックリストは、全部そろえてから動け、という脅しじゃない。むしろ逆で、「ここまで準備できるなら、もう試していい」というゴーサインのリストだ。準備が完璧になる日は来ない。ある程度そろったら、小さく動き出したほうがいい。

まとめ:小さく試す人がいちばん強い

独立や副業と聞くと、大きな決断のように思える。でも、ぼくが実際にやってみて思うのは、逆だった。強いのは、大きく賭ける人じゃなくて、小さく試し続けられる人だった。

いきなり辞めるのはギャンブルだ。でも、自分の値段を試すことも、案件を1件取ってみることも、お金の道具立てを知っておくことも、全部会社員のうちに小さくできる。試して、外の値段を知って、それから辞めるかどうかを決めればいい。その順番なら、独立はギャンブルじゃなくなる。

ぼくが40歳で一番怖かった「自分の値段を自分で決めること」も、結局は、小さく試すことでしか慣れなかった。一発で腹をくくれる人なんて、たぶんいない。みんな、小さく転びながら、少しずつ値札を書けるようになっていく。

もし、自分がどんな動き方に向いているか、まだ掴めていないなら、まずそこからでいい。マーケターキャリアタイプ診断(無料・10問)で、自分がどのタイプか目安をつけてみてほしい。動くのは、それからでいい。小さく試す一歩が、いつか大きな自由につながっていく。ぼくはそう思っている。

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