独立・フリーランス

マーケターが副業で最初の1件を取る方法──八方美人より、一人の信頼を深く

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副業を始めようと思ったとき、最初に立ちはだかる壁がある。

スキルはある。時間もある。やる気もある。でも、案件がない。

マーケターなら、コピーも書けるし、ブランド戦略も立てられる。それでも「副業で仕事をください」と言える相手が、最初はどこにも見当たらない。ここで足が止まる人は多いと思う。

ぼくは博報堂で13年、アクセンチュアで5年働いたあと、40歳で独立した。この記事では、マーケターが副業で最初の1件を取るまでの考え方と手順を整理する。そして、取った1件を次の仕事につなげるための「副業で生き残るための考え方」も合わせて伝えたい。

動き出す前に、2つだけ決めておく

案件を探し始める前に、決めておきたいことが2つある。

ひとつは、何を売るかを一言で言えるようにしておくこと。「マーケティング全般できます」と言われても、相手は何を頼めばいいのか分からない。コピーライティングなのか、SNS運用なのか、戦略の壁打ちなのか。最初の入口は1つに絞ったほうが、声をかける側も思い出しやすい。

もうひとつは、本業のルールを確認しておくこと。副業が認められているか、許可制ならどう申請するか、競業にあたる仕事はどこまでか。ここを曖昧にしたまま始めると、あとで面倒なことになる。就業規則を一次情報で確認して、分からなければ人事に聞く。それだけで消える不安がある。

この2つが決まったら、あとは最初の1件を取りにいくだけだ。

「一人の信頼を厚く深く」が副業の鉄則だと思う

副業を始めたばかりの頃、誰もが「たくさんのクライアントを持たないといけない」と思いがちだ。案件を分散させることでリスクをヘッジしようとする。気持ちはわかる。

でも、副業には本業がある。使える時間は限られている。そのなかで八方美人をしていると、全部が中途半端になる。

副業で大切なのは「広さ」ではなくて「深さ」だ。

一人のクライアントに、期待以上の仕事を届ける。そうすると何が起きるか。

相手が別の仕事を持ってきてくれる。紹介してくれる。単価を上げても発注してくれる。

これが副業の本当の収益構造だと思う。新規営業に使うエネルギーを、既存クライアントへの価値提供に全振りする。それだけで、副業は驚くほど安定する。

「期待を超える」とはどういうことか

継続して仕事を頼まれる人は、毎回「頼まれたこと以上」を出している。

たとえば、会社説明資料の作成を頼まれたとする。資料を作るだけで終わらせず、打ち合わせのなかで「せっかくなら、ブランドのスローガンも一緒に考えませんか」と提案してみる。ウェブサイトのリデザインを頼まれたら、ターゲット像の整理と訴求軸の再定義まで一緒にやる。頼まれたのは資料1本でも、提案が相手に刺されば、次の相談はウェブサイトになり、その次はキャンペーンになるかもしれない。

「頼まれたことをやる」のはプロとして当然だ。でも「頼まれていないことを考える」のが、信頼になる。

マーケターはここが強い。広告を作るだけではなくて、ビジネスの上流から考える習慣がある。その視点を副業でも使えば、単なる「作業者」ではなく「相談相手」になれる。

相談相手になれたクライアントは、なかなか離れない。

副業で最初の1件を取る3つのルート

では、最初の1件はどこから来るのか。大きく3つのルートがある。上から順に試すのがいい。

① 知人・友人からの依頼

最も確率が高いルート。前職の同僚、取引先の担当者、学生時代の友人。SNSで「副業始めました」と一言発信するだけで、案外声がかかったりする。

人は、思い出せない人には仕事を振れない。「そういえば、あの人こういうの得意だったな」と顔が浮かぶ状態を作っておくことが、いちばん地味で、いちばん効く営業になる。

大事なのは、依頼が来たときに「資料を作るだけ」で終わらせないこと。ひとつの依頼の中に、もう一段上の提案を忍び込ませる。それが次の仕事につながる。

② クラウドソーシング(ランサーズ・クラウドワークス)

「そんな都合よく知人がいるわけではない」という人もいると思う。それは正直、そうだと思う。いきなり知人に頼むのが気まずい人もいるはずだ。

そういう人は、ランサーズやクラウドワークスで小さく経験を積むところから始めればいい。

最初は単価が低くても構わない。むしろ単価より「実績」と「信頼」を積むことを優先する。レビューを丁寧に積んで、プロフィールを育てていく。コピーライティング・SNS運用・マーケティング戦略の立案など、マーケターが出せる価値は幅広い。

コツは「提案文」。他の応募者と同じような文章を送っていると埋もれる。クライアントの課題を自分なりに読んで、「こういう観点で取り組みます」という一言を入れるだけで通過率がかなり変わる。

クラウドソーシングで丁寧に仕事をしていると、必ず「また頼みたい」と言ってくれるクライアントが現れる。あなたの仕事の質が確かなら、継続発注してくれる人は必ず出てくる。そこから関係を深めていけばいい。

③ SNSからの流入

XやThreadsで、マーケターとしての知見を発信し続けると、徐々に「相談したい」という声が届くようになる。即効性はないが、長期的には最も質の高い案件が来るルート。

発信のコツは「自分の仕事の実況中継」をすること。「今日、クライアントにこんな提案をした」「こういう考え方でコピーを書いた」というような話は、同じ悩みを持つ人に刺さる。守秘義務に触れる部分はぼかして、考え方だけを出せば十分だ。

どのルートを選んでも、副業の本当のゴールは「最初の1件」ではない。最初の1件は、次の仕事への入口に過ぎない。

単価はどう決めるか

副業を始める人が最も悩むのが「いくらで請けるか」だと思う。

ぼくの考えは、最初は「相場の7〜8割」くらいでいい、というものだ。

副業には本業がある。品質のリスクヘッジとして、最初は少し低めに設定する。そのかわり、納品物の質で「この人はもっと払っていい」と思わせる。そうやって実績ができてから、少しずつ単価を上げていく。

一方で、最初から極端に安くするのもやめた方がいい。安すぎる単価は「安い仕事」という印象をクライアントに与えてしまう。それが定着すると、後から単価を上げるのがかなり難しくなる。

マーケターの副業における目安としては、こんなイメージ。

  • SNS運用代行(月次):3〜8万円 / 月
  • コピーライティング(LP・Web):5〜15万円 / 本
  • マーケティング戦略立案:10〜30万円 / プロジェクト
  • ブランドスローガン・コンセプト開発:15〜50万円

もちろん経験やクライアントの規模によって変わる。ただ、博報堂・アクセンチュアなど大手出身というだけで、単価の説得力は格段に上がる。経歴はちゃんと使った方がいい。

継続発注につながる仕事の仕方

副業で大切なのは「1回の仕事」ではなく「継続的な関係」だ。そのために意識しておきたいことを3つ書く。

納期より1日早く出す

これだけで印象がかなり変わる。「期日通り」は当たり前。「早い」は信頼になる。特にスタートアップや小さな会社のクライアントは、スピード感を非常に重視する。

フィードバックを求める

納品したら終わり、ではなく「いかがでしたか?改善できる点があれば教えてください」と聞く。これをやるだけで、クライアントとの関係が一段深まる。そして修正依頼が来たときに、それをゼロ追加費用で対応することで、信頼は一気に固まる。

ちょっとした情報提供を続ける

仕事の間隔が空いているときも、「この記事、参考になりそうだと思って」「最近こういうトレンドが来てますよ」という短い連絡を入れておく。これが「忘れられない」ための最安コスト。

副業で積んだ信頼は、その先の選択肢になる

副業で積み上げた信頼は、副業の中だけで終わらない。

一人のクライアントと深い関係を作っておくと、その関係は本業の外にあるもう一つの足場になる。転職を考えるにしても、いつか独立を考えるにしても、「会社の看板なしで自分に仕事を頼んでくれる人がいる」という事実は、判断の大きな材料になる。

副業は「収入の補填」だけではない。将来の選択肢を広げるセーフティネットになる。本業と並行してクライアントとの関係を育てておくことが、キャリアの地図を広げることに直結する。

副業を始めるのに、完璧な準備は要らない。まず1件取ることだけ考えればいい。その1件を丁寧にやり切れば、次の仕事は向こうからやってくる。

まとめ

副業で最初の1件を取るための要点をまとめる。

  • 動き出す前に「何を売るか」と「本業のルール」を確かめておく
  • 最初の案件は知人・友人からが最も確率が高い
  • 依頼されたこと以上を出すことで、次の仕事が生まれる
  • 知人がいなければ、クラウドソーシングで小さく実績を積む
  • 八方美人より、一人の信頼を厚く深くする
  • 副業で積んだ信頼が、将来の選択肢を広げる土台になる

いちばん大事なのは、「案件を取る技術」より「信頼を作る姿勢」だということだ。

マーケターとして長年培ってきた「相手の頭の中に景色を作る力」は、副業の場でも必ず活きる。そのスキルを、まず一人のクライアントのために使ってみてほしい。

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