秋から冬にかけて仕事が進まなくなるのは、気合いが足りないからではなく、日が短くなって体のリズムが崩れやすくなるからかもしれません。対策は、根性を出すことではなく、予定の組み方を季節に合わせることです。朝の光を予定に入れる、重い仕事を明るい時間に寄せる、夕方以降に判断の要る仕事を置かない。この3つで、冬の失速はかなり小さくなります。
ぼくは博報堂で13年、アクセンチュアで5年働き、40歳で独立しました。ADHD気味で、調子のいい日と悪い日の差が大きいほうです。体重も1年で10kgくらい上下していて、体調によって朝の起きやすさや頭の回り方がまるで違います。そういう体と付き合ってきて分かったことがあります。体調は気合いでは変えられないので、予定のほうを合わせるしかありません。この記事は、その考え方を日の短い季節に当てはめて整理したものです(医学的な診断や治療の話ではなく、働き方の工夫の話です)。
秋冬は、昼の長さが夏より5時間近く短い
東京の昼の長さは、夏至のころで約14時間半、冬至のころで約9時間45分です。夏と冬で5時間近く違います(日の出・日の入りの時刻は国立天文台 暦計算室で確認できます)。10月に入ると、夕方5時台にはもう暗くなり始めます。
会社員のころは、日の長さをあまり意識しませんでした。朝は通勤で外を歩き、昼は外に食べに出て、夕方は会議室にいる。季節が変わっても、1日の流れは会社が決めてくれていました。
独立して家やカフェで働くようになると、外に出ない日が増えます。気づいたら一日中、部屋の明かりの下にいた、という日もあります。日が短い季節にこれが重なると、浴びる光の量はさらに減ります。
日が短くなると、体のリズムが崩れやすくなる
人の体には、約24時間の周期で眠気や体温を調整する体内時計があります。この時計は、朝の光を浴びることで毎日リセットされると説明されています(出典:厚生労働省 健康づくりのための睡眠ガイド2023)。
日が短くなると、朝の光を浴びる量が減り、リセットがうまく働きにくくなります。朝起きられない、日中ぼんやりする、夕方になると何も手につかない。秋冬の不調として語られることの多くは、このリズムの乱れで説明がつきます。
秋から冬にかけて気分の落ち込みが続き、春になると回復する状態は、季節性のうつ病(冬季うつ病)と呼ばれることがあります。厚生労働省の「こころの耳」では、日照時間の短縮が関わっているといわれ、早朝に強い光を浴びる光療法が有効とされていると説明されています(出典:こころの耳「季節性うつ病」)。
気分の落ち込みが2週間以上続く、仕事や生活に支障が出ている、という場合は、働き方の工夫ではなく専門の医療機関に相談する話です。この記事で扱うのは、そこまでではないけれど、なんとなく冬は仕事が進まない、という人の予定の組み方です。
予定1:朝の光を、予定として入れる
日の短い季節にいちばん効くのは、朝の光を浴びる時間を、予定として先に入れておくことです。気が向いたら散歩する、では続きません。
具体的には、起きてから1時間以内に、外に出る用事をつくります。コンビニにコーヒーを買いに行く、近所を10分歩く、ベランダで朝食をとる。曇りの日でも、屋外の光は室内の照明よりずっと明るいです。
独立して通勤がなくなった人ほど、この予定を意識して入れる必要があります。通勤は、朝の光を浴びる仕組みを自動で用意してくれていました。それがなくなったぶんを、自分で予定に組み込みます。
予定2:重い仕事を、明るい時間に寄せる
企画を考える、文章を書く、提案書の骨子を組む。頭を使う重い仕事は、日の出ている午前から昼過ぎに寄せます。
夏は夕方以降も明るいので、午後遅くから重い仕事に取りかかっても、なんとか集中が続きます。冬は同じ時間帯にもう暗くなっていて、体が一日の終わりに向かい始めています。夏と同じ時間割のまま冬を迎えると、夕方の重い仕事が進まず、それが積み残しになって翌日を圧迫します。
季節が変わるタイミングで、1日の時間割ごと見直すのがおすすめです。体調のいい時期と悪い時期で頭の回り方が違うのと同じで、季節でも回り方は変わります。変わる前提で、時間割を組み替えます。
予定3:夕方以降に、判断の要る仕事を置かない
日が落ちたあとは、判断の要る仕事を入れません。メールの返信、経費の入力、資料の体裁を整えるといった、手を動かせば終わる仕事を夕方以降に回します。
判断の要る仕事を夕方に置くと、決められずに先延ばしするか、雑に決めてあとで直すかのどちらかになりがちです。日が短い季節は、その「夕方」が来る時刻自体が早まります。
打ち合わせも同じ考え方で、大事な意思決定が要る打ち合わせは午前に入れ、夕方は情報共有や雑談寄りの打ち合わせにします。相手のある予定ほど、季節に合わせて時間帯を選ぶ効果が大きいです。
季節ごとに、1日の時間割を組み替える
3つの予定を、夏と冬の時間割として並べると次のようになります。
| 時間帯 | 夏の時間割 | 秋冬の時間割 |
|---|---|---|
| 起きてから1時間 | 特に決めない | 外に出る用事を1つ入れる |
| 午前 | 打ち合わせ・連絡 | 企画・執筆など重い仕事 |
| 昼過ぎ | 重い仕事 | 意思決定の要る打ち合わせ |
| 夕方 | 重い仕事の続き | メール返信・事務作業 |
| 日没後 | 事務作業 | 新しい仕事を始めない |
ポイントは、冬の時間割を「夏の時間割から削る」ことではなく、「重い仕事を前にずらす」ことです。仕事の量は同じでも、置く時間帯を変えるだけで、進み方が変わります。
体調は気合いで変えられないから、予定のほうを合わせる
ぼくは1年で体重が10kgくらい上下します。困っているのは見た目より体調のほうで、体重が多い時期と少ない時期とで、朝の起きやすさも、頭の回り方も、夕方の粘りも違います。
調子の悪い時期に、調子のいい時期と同じ予定を組むと、まず予定どおりに進みません。進まないと自分を責め、責めると余計に手が止まります。
体調を気合いで引き上げようとするより、体調に合わせて予定を組み替えるほうが、結果として仕事は進みます。季節も同じです。日が短くなるのは毎年のことなので、毎年10月に時間割を冬用に切り替える。それだけで、冬の失速を自分のせいにしなくて済みます。
没頭しすぎて止まれなくなるほうの悩みは過集中は止め方から決めるに、睡眠と仕事の関係は仕事で結果が出ないなら、まず寝てくださいに書いています。
よくある質問
秋冬に仕事のやる気が出ないのは、甘えですか?
甘えと決めつける必要はないと思います。日が短くなると、朝の光を浴びる量が減り、体内時計のリズムが崩れやすくなります。やる気の問題として気合いで乗り切ろうとするより、重い仕事を明るい時間に寄せるなど、予定の組み方を変えるほうが効果的です。
冬季うつと、ただの季節の不調はどう違いますか?
気分の落ち込みが2週間以上続く、仕事や生活に支障が出ているといった場合は、季節性のうつ病の可能性もあるので、専門の医療機関に相談してください。この記事で扱っているのは、そこまでではないけれど冬は仕事が進みにくい、という人向けの予定の工夫です。
在宅勤務で外に出ない日は、どうすればいいですか?
起きてから1時間以内に、外に出る用事を予定として入れるのがおすすめです。コーヒーを買いに行く、近所を10分歩くなど、短くて構いません。曇りの日でも、屋外の光は室内の照明よりずっと明るいです。
時間割はいつ切り替えればいいですか?
夕方の暗さが気になり始める10月ごろが目安です。毎年同じ時期に切り替えると決めておくと、不調に気づいてから慌てて直すより楽です。春に日が長くなってきたら、夏の時間割に戻します。
まとめ:日が短い季節は、重い仕事を前にずらす
秋冬に仕事が進まなくなるのは、気合いの問題ではなく、日が短くなって体のリズムが崩れやすくなるからかもしれません。対策は3つです。朝の光を予定として入れる、重い仕事を明るい時間に寄せる、夕方以降に判断の要る仕事を置かない。
今日やることは1つだけです。明日の予定のうち、いちばん頭を使う仕事を、午前の枠に移しておく。仕事の量は変えずに、置く時間帯だけを変えます。
季節に合わせて予定を変えることは、手を抜くことではありません。毎年来る冬を、毎年同じように乗り切るための準備だと思います。
(この記事は2026年10月時点の内容です。医学的な診断や治療を目的としたものではありません。気分の落ち込みが続く場合は、専門の医療機関に相談してください)