マーケの目

トンマナとは?トーン&マナーの意味と例、トンマナシートの作り方

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最終更新:2026年10月12日

トンマナとは、トーン&マナー(tone and manner)の略で、ブランドの表現に一貫して流れる雰囲気(トーン)と、守るべき作法(マナー)のことです。色や書体、写真の光の具合、文章の言葉づかいまで、生活者がブランドに触れるあらゆる場面に関わります。トンマナがそろっているかどうかの検算は一つで、担当が変わっても崩れないかです。デザイナーやライターが入れ替わったとたんに表現がぶれると、生活者には同じ会社が別のブランドに見えてしまいます。トーンとマナーの分解表、ガイドラインとの違い、トンマナシートの項目と作り方までまとめました。

トンマナとは?トーンとマナーの分解一覧

トンマナとは、表現の「雰囲気」と「作法」をそろえて、どこで見てもそのブランドだと分かる状態をつくるための考え方です。トーンとマナーは一語のように使われますが、分けて考えると、何をそろえればいいのかがはっきりします。

要素 意味 デザインでの例 文章での例
トーン(雰囲気) 受け手が感じる印象や温度。形容詞で言い表せるもの 落ち着いた配色、余白の多いレイアウト、やわらかい光の写真 やさしい、率直、少しくだけている、真面目
マナー(作法) 表現するときに守るルール。決まりとして書き出せるもの ロゴのまわりの余白、使う書体と色の指定、写真に入れないもの 一人称、です・ます調、使わない言葉、数字と記号の表記

トーンは「どう感じさせたいか」、マナーは「何をしてはいけないか」と覚えると混同しにくいと思います。トーンだけ決めて「やさしい感じで」と頼むと、やさしさの解釈は人の数だけ出てきます。マナーだけ決めて色と書体を指定しても、言葉づかいが冷たければ印象はそろいません。二つがそろって初めて、担当が変わっても同じ人格で話せるようになります。

トンマナが問われる場面は、デザインに限りません。Webサイト、広告、パッケージ、SNSの投稿、メールの文面、プレゼン資料、動画の編集、写真の色味まで、ブランドが外に出すものすべてが対象になります。「トンマナを合わせる」という言い方は、新しく作るものの雰囲気と作法を、既存の表現にそろえることを指しています。

トンマナの出どころ──日本の現場の言葉と、英語のボイス&トーン

トンマナには、「この人が提唱した」と言える一次出典は見当たりません。日本の広告やデザインの現場で使われてきた略語で、英語圏ではtone of voice、voice and tone、brand guidelinesといった言い方のほうが一般的です。

英語圏の整理で参考になるのが、メールマーケティングのサービスを運営するメールチンプが公開している文章のスタイルガイドです。そこではボイス(voice)とトーン(tone)が分けられていて、ボイスは日によってほとんど変わらないもの、トーンは場面や相手の気持ちに合わせて変わるもの、と説明されています。親しい友人との食事と上司との会議で話し方を変えても、話している本人は同じ人。この例えは、トンマナを考えるときにもそのまま使えます。

トーンが生活者の受け取り方を実際に変えることは、調査でも確かめられています。UXの調査会社ニールセン・ノーマン・グループのケイト・モラン(Kate Moran)は、2016年の記事で文章のトーンを4つの軸で整理しました。

軸 両端
改まり度 堅い ⇔ くだけた
真剣さ 真面目 ⇔ 遊び心がある
敬意 うやうやしい ⇔ 型破り
熱量 淡々とした ⇔ 熱っぽい

モランは、内容が同じでトーンだけが違う文章をアメリカの回答者50人に読ませ、トーンの違いでサイトへの印象に統計的に意味のある差が出たと報告しています。差は5段階評価で0.5〜1ポイントほどと控えめですが、言っていることが同じでも、言い方だけで印象が動くという結果です。自社のトーンを決めるとき、この4つの軸のどこに置くかを話し合うと、「やさしい感じ」よりずっと具体的に合意できます。

ブランドガイドライン・コンセプト・世界観との違い

トンマナは、ブランドガイドラインの中身の一部です。ガイドラインがロゴの使い方から理念までを含む規程の束だとすると、トンマナはそのうち「表現の雰囲気と作法」を受け持つ部分にあたります。ブランドが何を約束するかを一言で束ねるタグラインは言葉の中身を、トンマナはその言葉の言い方を受け持つ、と分けると役割が混ざりません。

言葉 指すもの トンマナとの関係
トンマナ 表現の雰囲気(トーン)と作法(マナー) ―
ブランドガイドライン ロゴ・色・書体・写真・言葉づかい・理念などをまとめた規程 トンマナを含む、より大きな束
デザインシステム ボタンや部品などを再利用できる形で決めた設計の仕組み 主にWebやアプリでマナーを部品に落としたもの
コンセプト 誰に何をどう届けるかの設計図 トンマナの上流。コンセプトからトーンが決まる
世界観 ブランドが描く物語や価値観の全体像 トンマナはそれを表現の細部に落とした結果

注意したいのは、トンマナは上流から決まるものだという点です。コンセプトがあいまいなまま「とりあえずおしゃれなトンマナで」と始めると、見た目は整っても、なぜその雰囲気なのかを誰も説明できません。説明できないルールは、担当が変わった瞬間に守られなくなります。コンセプトの決め方はコンセプトとは?意味と作り方の型、テーマやキャッチコピーとの違いに、ブランド全体の一貫性の話はブランディングとは?わかりやすく解説|マーケティングとの違い一覧にまとめています。

トンマナシートの項目と作り方──担当が変わっても崩れないか

トンマナシートとは、トーンとマナーを1枚に書き出し、初めてそのブランドを担当する人でも同じ表現ができるようにする資料です。作るときの検算は、この1枚だけを渡された新しい担当者が、迷わず同じものを作れるかどうかです。

項目 書くこと 書き方のコツ
なぜこのトーンか コンセプトと、届けたい相手 1〜2行で。理由があるとルールが守られやすい
ブランドの人格 人に例えたときの性格を表す形容詞3つ 「〇〇だが、〇〇ではない」の形で書くとぶれにくい
トーンの位置 改まり度・真剣さ・敬意・熱量のどこに置くか 場面ごとに変えてよい幅も書いておく
色と書体 メインの色、補助の色、使う書体 色はコードで、書体は名前で指定する
写真・イラスト 光の具合、人物の表情、入れないもの OKとNGの見本を並べる
言葉づかい 一人称、文末、呼びかけ方、表記ルール 使わない言葉の一覧がいちばん効く
見本 実際の制作物のOK例とNG例 説明文より見本のほうが伝わる

ぼくが自分で書く側になってから、いちばん実感したのは「使わない言葉」の効き目です。ブログとnoteとSNSを一人で書いていても、媒体や日によって口調は少しずつずれていきます。そこで文体のルールを書き出して手元に置き、使わない言葉と言い換え先を一覧にしました。「やさしく、率直に」と書くより、「この言葉は使わない、こう言い換える」と書いたほうが、書き手が自分でも他人でも、ぶれがはっきり減ります。トーンは感覚で共有するのが難しいぶん、マナーの側で縛るほうが確実です。

作り方の順番は、上流から下流です。まずコンセプトと届けたい相手を確かめ、ブランドの人格を形容詞3つで決め、トーンの位置を4つの軸で合意する。そのあとで色や書体、言葉づかいといったマナーを決め、最後に見本をつけます。いきなり色や書体から決めると、なぜその色なのかを誰も説明できないシートになります。届けたい相手の解像度を上げる方法はペルソナとは?マーケティングでの意味と作り方、ターゲットとの違いで書いています。

トンマナでよくある失敗と2026年の注意点

トンマナでいちばん多い失敗は、広告や公式サイトだけそろえて、ほかの接点がばらばらになることです。生活者はブランドを広告だけで見ているわけではなく、問い合わせの返信、届いた箱、SNSのコメント返し、請求書の文面まで含めて一人の人格として受け取ります。

よくあるのが、広告はやわらかく親しみのある口調なのに、サポートのメールが規程どおりの堅い文章で届くパターンです。どちらも間違ってはいません。でも、生活者から見ると、同じ会社に二人の別人がいるように感じます。トンマナシートは制作チームだけで持つのではなく、生活者に言葉を届けるすべての部署で共有して初めて機能します。どの接点でブランドに触れているかはタッチポイントとは?顧客接点の種類一覧と設計のやり方を解説で一覧にしています。

2026年の注意点は、生成AIで表現を量産するようになったことです。文章も画像も、AIに頼めば数分で何本も出てきます。そのぶん、トンマナを持たないブランドほど、出てくる表現がAIの平均的な口調や画風に寄っていきます。トンマナシートは、人の担当者に渡す資料であると同時に、AIに渡す指示書にもなりました。使わない言葉の一覧や、OKとNGの見本は、AIにとってもいちばん効く材料です。

もう一つ、トンマナを守ることが目的化する失敗にも気をつけたいところです。災害時やおわびの場面で、普段どおりの明るいトーンを崩さないのは、守っているのではなく場面が見えていないだけです。メールチンプの整理のとおり、変えてはいけないのはボイス(人格)で、トーンは相手の状況に合わせて動かしていい。シートには、トーンを変えてよい場面と、その幅も書いておくと安心です。

トンマナに関するよくある質問

トンマナは英語で何と言いますか?

トンマナはtone and mannerの略ですが、英語圏ではtone of voice、voice and tone、brand guidelinesと言うほうが一般的です。トンマナは日本の広告やデザインの現場で定着した言い方だと考えると分かりやすいと思います。

「トンマナを合わせる」とはどういう意味ですか?

新しく作るものの雰囲気と作法を、既存のブランドの表現にそろえるという意味です。色や書体だけでなく、写真の光の具合や文章の言葉づかいまで含みます。言い換えるなら「雰囲気と作法をそろえる」「表現の統一感を出す」が近いと思います。

トンマナはデザインだけの話ですか?

デザインだけの話ではありません。文章、写真、動画、プレゼン資料、メールの文面、SNSの返信まで、ブランドが外に出すものすべてが対象です。デザインがそろっていても言葉づかいがばらばらなら、生活者には一貫した印象は残りません。

トンマナは一度決めたら変えてはいけないのですか?

変えてはいけないのはブランドの人格で、トーンは場面に合わせて動かしてかまいません。おわびや災害時に普段の明るい口調を保つ必要はありません。トンマナシートに、トーンを変えてよい場面と幅を書いておくと、担当者が迷わずに済みます。

おわりに──誰が作っても、同じ人に見えるために

トンマナの話になると、つい色や書体の指定から入りたくなります。でも、トンマナの本当の役目は見た目をそろえることではなく、作る人が入れ替わっても、生活者には同じ一人の人格に見え続けることだと思います。

トンマナとは、守るためのルールではない。担当が変わっても、ブランドが別人にならないための約束です。

自分のブランドのトンマナを確かめたいときは、明日から新しい担当者が来たと想像してみると早いと思います。その人に渡せる1枚があるか。それが、トンマナがあるかどうかの答えです。

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