問いを立てないと、答えは出ない。
人生の答えに巡り合っていないのは、問いを立てていないから。
代理店で働いている人の中に、明らかに2種類いる。
消耗している人と、していない人。
同じ職場、同じ業務量、同じクライアント。なのに、一方はすり減っていき、一方はどこか楽しそうに見える。この差はどこから来るのか、ぼくはずっと気になっていました。
消耗の正体

スキルの問題じゃない。要領の問題でも、メンタルの強さの問題でもない。
ぼくが見てきた限り、消耗する人としない人の差は一つだけです。
「何のためにこの仕事をしているか」が、自分の中にあるかどうか。
目的がある人は、しんどい仕事でも「これは自分が選んでいる」という感覚を持てます。目的がない人は、同じ仕事でも「やらされている」という感覚から抜け出せない。消耗とは、方向のないエネルギーの使い方のことです。
燃料を積んだまま、目的地を設定していない車が走り続けているようなもの。走れているうちはいい。でも、走り続ける理由がないから、どこかで力が尽きる。
「忙しいのに充実していない」という感覚に心当たりがある人は、消耗のど真ん中にいます。忙しさと充実は別物です。忙しさは外から来る。充実は内側から来る。この2つを混同していると、どれだけ頑張っても手応えが積み上がっていきません。
代理店が人を消耗させる構造
広告代理店という仕事には、消耗を加速させる構造的な問題があります。
一つは、成果の主語が自分じゃないことです。クライアントのビジネスを成功させるのが仕事なので、どれだけいい仕事をしても「クライアントがよかった」で終わることが多い。自分が何を作ったかより、クライアントがどう評価したかが基準になる。自分の成長の実感が持ちにくい構造です。
もう一つは、優秀な人ほど仕事が増えることです。できる人に仕事が集まる。断りにくい雰囲気がある。気づいたら複数のプロジェクトを同時に抱えている。体力とスキルで乗り越えられているうちはいいけれど、それは消耗を先送りしているだけです。
ぼく自身、博報堂に13年いました。代理店の仕事は好きでした。でも、ある時期から「何のためにこれをやっているのか」という問いが頭に浮かぶようになった。答えが出ないまま仕事を続けているうちに、じわじわと消耗していくのがわかりました。
ぼく自身の話

博報堂にいた20代後半、社内スタートアップを立ち上げる機会がありました。小さな組織で、採用も予算も事業の方向性も、全部自分たちで決める。大変でした。深夜まで働くこともあった。でも消耗はしなかった。
理由は単純で、やる理由が自分の中にあったからです。「これを作りたい」「ここに行きたい」という感覚が、毎日の仕事に意味を与えていた。しんどいことでも、目的地に向かっている感覚があると、疲れ方が違います。
その後、本社業務に戻ったとき、感覚が変わりました。
仕事の量は減っていない。むしろ増えた。でも「自分がやっている」という手応えが薄くなった。調整、確認、承認、また調整。自分の判断が入る余地が少ない仕事が続くと、じわじわと消耗していく感覚がありました。
スキルは変わっていない。環境も大きくは変わっていない。変わったのは「これは自分が選んでいる」という感覚だけです。
このときの経験が、のちにアクセンチュアへ転職する判断の根拠になりました。仕事の中身より、「自分が意思決定している実感があるか」を基準に環境を選ぶようになったのはこの時期からです。
目的は「見つける」ものじゃない
「自分の目的を見つけましょう」という話をすると、「そんな大きなものはない」と感じる人が多い。
でも、目的は崇高なものである必要はないと思っています。「広告を通じて世界を変えたい」じゃなくていい。
「この仕事で、自分はどんな人間になりたいか」。それだけでいい。
目的というのは、未来への方向性のことです。遠くを見ていなくていい。1年後、3年後に「こうなっていたい」というイメージが少しでもあれば、今日の仕事はその積み上げになります。それだけで、消耗の質が変わります。
方向性があるとき、人は同じ疲れでも「使った」と感じます。方向性がないとき、人は同じ疲れでも「奪われた」と感じます。消耗とは、疲れそのものではなく、疲れ方の問題です。
目的は一度決めたら変えてはいけないものでもありません。むしろ、仕事を続ける中で少しずつ更新していくものです。大事なのは「今の自分には方向性があるか」を定期的に確認することです。
自分に問う、5つの問い
ここからは、コーチングでよく使う問いを紹介します。できれば紙に書き出しながら読んでください。頭の中だけで考えるのと、手を動かして書き出すのとでは、出てくるものが違います。
① 時間を忘れる瞬間はあるか
最近、仕事の中で「気づいたら時間が過ぎていた」という経験はありましたか?あるなら、それは何をしていたときか。
プレゼンの構成を考えているとき。データを読み解いているとき。後輩に何かを教えているとき。場所によって答えは違います。でも、そこにあなたのエネルギーが自然に向かう方向があります。強みはたいてい、好きなことの中に隠れています。
② 評価されなくてもやりたいことは何か
上司に褒められなくても、給料に反映されなくても、やり続けたいと思う仕事はありますか?
評価と切り離したときに残るものが、本来の動機に近い。代理店にいると、評価されることが目的になりやすい。でも評価は結果であって、目的じゃない。評価を外した場所に、本当にやりたいことのヒントがあります。
③ 3年後、どんな仕事をしていたら満足か
役職や年収ではなく、「どんな仕事をしているか」で答えてみてください。誰と、何を、どんな形で。
「まだわからない」という答えが返ってくることが多いけれど、わからないなりに書いてみることが大事です。具体的に書こうとする過程で、自分が何を望んでいるかが少しずつ見えてきます。白紙のまま3年が経つより、ぼんやりした地図を持って3年が経つ方が、到達できる場所が全然違います。
④ 今の仕事で、自分は何を学んでいるか
消耗しているときは、この問いに答えられないことが多い。「何も学んでいない気がする」という感覚があるなら、それ自体が大事なシグナルです。
学んでいる実感がある環境では、しんどさが成長痛になります。学んでいる実感がない環境では、しんどさがただの消耗になります。成長の実感がない状態が1年以上続いているなら、環境を変えることを真剣に考えていい。
⑤ 誰のために働いているか
会社のため、生活のため、家族のため。それは正直な答えです。でも、その先に「自分のため」がありますか?
自分の何のために、この仕事をしているか。この問いに答えられると、仕事の景色が少し変わります。「誰かのために働く」と「自分のために働く」は、矛盾しません。自分の目的の延長に、誰かへの貢献がある。そういう仕事の仕方が一番長続きします。
消耗を止める、たった一つのこと

5つの問いを書き出したあと、一つだけ行動を決めてください。
大きくなくていい。「来週、上司に○○の仕事をやらせてほしいと言う」「副業で一本だけ案件を受けてみる」「転職エージェントに登録して話を聞く」。何でもいい。
重要なのは、「自分が選んだ」という感覚を取り戻すことです。
消耗は、外から来るものではありません。自分の選択肢が見えなくなったときに始まります。選択肢を一つでも持てると、同じ環境でも感覚が変わります。
ぼくが博報堂の社内スタートアップで感じていた手応えは、仕事の内容より「自分が選んでいる」という感覚からきていたと、今なら思います。逆に言えば、同じ場所にいても「自分で選んでいる」という感覚さえあれば、消耗は止まります。転職が唯一の答えじゃない。今いる場所で、自分の選択肢を広げることから始められます。
装いとは、生き方を選ぶことだ

このブログのテーマに「装い=生き方をデザインする」という言葉があります。
服装を整えることも、キャリアを考えることも、根っこは同じだとぼくは思っています。どちらも「自分がどう見られたいか」ではなく、「自分はどう生きたいか」を問うことだからです。
消耗している人の多くは、生き方を他人に委ねています。会社に、上司に、業界の空気に。悪意があってそうしているわけじゃない。ただ、自分で決めることを後回しにしてきた結果です。
目的を持つというのは、その委ね方をやめることです。全部自分でコントロールする必要はない。でも、方向だけは自分で決める。
まだ消耗してるの? という問いは、責めているわけじゃない。
「そろそろ自分で決めてみない?」という誘いです。
一人で決められないよ、という方にはコーチングサービスもおすすめ。
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国際資格を持つプロコーチとマンツーマンでセッションを行うコーチングサービス。ビジネスパーソン向けに特化していて、仕事のパフォーマンス向上・リーダーシップ・キャリアの意思決定などを扱う。
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20〜30代のビジネスパーソンに利用者が多く、転職活動のサポートというより「自分がどう働きたいか」の整理に向いている。新しい環境に入る前後に、自分の軸を言語化しておきたい人に特に合うと思う。