転職後に後悔する人、しない人。何が違うのか
転職して3ヶ月後に「前の会社のほうがよかった」と後悔している人を、ぼくは何人も見てきました。
一方で、転職してイキイキと働いている人もいる。同じように転職という選択をしたのに、なぜこんなに差がつくのか。
答えはシンプルです。転職活動を始める前の「準備の質」が、ほぼすべてを決めているんです。
後悔している人たちの共通点は、勢いで動いてしまったこと。「今の会社がつらい」「なんとなく次に行きたい」という感情だけで転職活動を始めて、面接で良いことを言われて、年収が上がって、「よし決めた」と飛び込んでしまう。
でも実際に働き始めると、想像と違った。求めていたものがそこにはなかった。むしろ前の会社のほうがマシだったかもしれない。そう気づくんです。
ぼくも40歳で独立する前、何度か転職を経験しています。博報堂からアクセンチュアに転職したときは、正直、最初の半年は後悔しかけました。でも事前にちゃんと準備していたから、「これは想定内だ」と思えた。準備があったから乗り越えられたんです。
この記事では、マーケターが転職で後悔しないために、動く前に絶対やるべきことをまとめます。チェックリストも用意したので、転職を考えているなら、まずこれを全部やってから動いてください。
転職で後悔する人の5つのパターン
まず、転職で後悔している人たちのパターンを整理します。ぼくが実際に見てきた事例をもとに、代表的な5つを挙げます。
①「逃げ」の転職
「今の上司と合わない」「今のプロジェクトがつらい」「残業が多い」。こういうネガティブな理由だけで転職を決めてしまうパターンです。
逃げの転職が悪いわけじゃありません。でも、逃げることだけが目的になると、次の会社で同じような問題にぶつかったとき、また逃げたくなります。ぼくの知り合いに、3年で3社転職した人がいますが、彼はまさにこのパターンでした。
逃げたい気持ちは分かります。でも「何から逃げたいのか」だけじゃなく、「次に何を得たいのか」まで言語化できていないと、転職先でも同じことを繰り返します。
②軸のないまま転職
「なんとなく次のステージに行きたい」「周りが転職しているから」という、ふわっとした理由で動くパターンです。
転職の軸がないまま活動を始めると、エージェントや企業の言葉に流されます。「あなたならこの会社が合いますよ」と言われて、「そうなのかな」と思ってしまう。自分の判断基準がないから、他人の基準で決めてしまうんです。
結果、入社してから「あれ、ぼくここで何がしたかったんだっけ」と迷子になります。
③会社名だけで選んだ
「大手だから」「有名企業だから」「名刺の肩書きがかっこいいから」。こういう理由で転職先を選ぶと、高確率で後悔します。
ぼくがアクセンチュアに転職したとき、正直、会社名の魅力もありました。でもそれだけじゃなかった。「コンサルのフレームワークを身につけたい」「事業戦略の上流から関わりたい」という明確な目的があった。だから会社名だけで選んだわけじゃなかったんです。
会社名はあくまで看板です。看板の中でどんな仕事をするのか、どんな人と働くのか、どんなキャリアが描けるのか。そこまで見ないと、入社後にギャップを感じます。
④年収だけで選んだ
「今より100万円上がる」「年収1000万円超える」。確かに魅力的です。でも年収だけで選ぶと、他の部分で大きな代償を払うことになります。
年収が上がる代わりに、労働時間が激増した。年収は上がったけど、やりたい仕事ができなくなった。年収は上がったけど、社風が合わなくてストレスが溜まる。こういうケースは本当に多いです。
年収は大事な要素です。でもそれが「唯一」の判断基準になってしまうと、他の大切なものを見失います。
⑤エージェントに言われるままに決めた
転職エージェントは味方です。でも、彼らのビジネスモデルは「あなたを企業に入社させること」で成立しています。だから、必ずしもあなたの利益が最優先されるとは限りません。
「この会社、絶対合いますよ」「今決めないと枠が埋まります」「この年収は破格です」。こういう言葉に流されて、冷静な判断ができなくなる。エージェントの言葉を鵜呑みにして転職した人で、後悔している人は少なくありません。
エージェントは活用すべきです。でも最終的に決めるのはあなた自身。エージェントの言葉を参考にしつつ、自分の軸で判断する。これができないと、後悔します。
転職前にやるべき「自己棚卸し」
転職活動を始める前に、まず自分自身を棚卸しする必要があります。でもここで注意してほしいのが、「スキルの棚卸し」じゃなくて「価値の棚卸し」をするということです。
「スキル」ではなく「価値」を棚卸しする
多くの人が「自分にはどんなスキルがあるか」を考えます。「Googleアナリティクスが使える」「SNS運用ができる」「広告運用の経験がある」。確かにこれも大事です。
でもマーケターとして本当に大事なのは、そのスキルを使って「何を届けてきたか」です。どんな価値を生み出してきたか。誰にどんなインパクトを与えてきたか。
たとえばぼくの場合、博報堂時代に「ブランド戦略の立案」をしていました。でもスキルとして書くなら「戦略立案スキル」となる。これだとありきたりです。
価値として書くなら、「クライアントの事業課題を起点に、ブランドの再定義を行い、売上を前年比120%に成長させた」となります。こっちのほうが、あなたが何者かが伝わるはずです。
自分に問うべき3つの質問
価値の棚卸しをするために、以下の3つの質問に答えてみてください。
- 何を届けてきたか:これまでのキャリアで、あなたが生み出してきた成果や価値は何ですか。数字で表せるものがあれば、具体的に書いてください。
- 何が得意か:あなたが他の人より上手くできること、得意なことは何ですか。スキルではなく、あなたの「強み」として言語化してください。
- 何をやりたくないか:意外と見落とされがちですが、これが一番大事です。どんな仕事はやりたくないのか。どんな環境は合わないのか。ここを明確にしないと、転職先でまた同じストレスを抱えます。
この3つに答えられると、自分の「転職軸」が見えてきます。
転職軸の作り方
転職軸とは、「自分が次の職場で何を大切にしたいか」の基準です。これがないまま転職活動をすると、ブレます。
たとえばぼくの場合、アクセンチュアに転職するときの軸は以下でした。
- 事業戦略の上流から関われる環境
- コンサルのフレームワークを体系的に学べる
- グローバルなプロジェクトに関われる
- 裁量がある働き方ができる
この軸があったから、面接で聞くべきことが明確でした。この軸に合っているかを確認しながら、転職先を選べました。
あなたの転職軸は何ですか。これを言語化しておくことが、後悔しない転職の第一歩です。
転職前に確認すべき「3つの問い」
自己棚卸しができたら、次に以下の3つの問いに答えてください。この3つに明確に答えられない状態で転職活動を始めると、高確率で後悔します。
①なぜ今転職するのか
「なんとなく」はNGです。今このタイミングで転職する理由を、具体的に言語化してください。
「今の会社では得られない経験がある」「市場価値を高めるために、このタイミングでステップアップが必要」「ライフステージが変わって、働き方を変える必要がある」。理由は人それぞれです。
大事なのは、その理由が「逃げ」ではなく「前進」であることです。もちろん逃げたい気持ちもあるかもしれません。でもそれだけじゃなく、前に進むための理由があるかどうか。ここを確認してください。
②次の職場で何を得たいのか
転職は手段です。目的じゃありません。だから、次の職場で「何を得たいのか」を明確にする必要があります。
「新しいスキルを身につけたい」「より大きな裁量で仕事をしたい」「特定の業界の知見を深めたい」「ワークライフバランスを改善したい」。何でもいいです。
でもこれが曖昧なまま転職すると、入社後に「あれ、ぼく何しに来たんだっけ」となります。
ぼくがアクセンチュアに転職したとき、「コンサルのフレームワークを体系的に学ぶ」「戦略の上流工程を経験する」という明確な目的がありました。だから5年間で得るべきものを得て、次のステージに進めたんです。
③3年後どうなっていたいか
これが一番難しいかもしれません。でも、これに答えられないと、キャリアの方向性が定まりません。
3年後、あなたはどんな仕事をしていたいですか。どんなポジションにいたいですか。どんなスキルを持っていたいですか。
「マーケティングの責任者になっていたい」「事業をゼロから立ち上げた経験を持っていたい」「独立の準備が整っている状態になっていたい」。具体的であればあるほど、転職先の選び方が変わります。
ぼくの場合、アクセンチュアに入ったとき「40歳で独立する」という目標がありました。だから5年間で得るべきスキルと経験を逆算して、転職先を選びました。
この3つの問いに答えられない状態で転職活動を始めるのは、地図を持たずに旅に出るようなものです。動く前に、必ず言語化してください。
転職活動を始める前にやること・チェックリスト
ここからは、実際に転職活動を始める前に「やっておくべきこと」をチェックリスト形式でまとめます。全部やってから動いてください。
□ 職務経歴書を作る(完成度60%でOK)
まず職務経歴書を作りましょう。いきなり完璧を目指す必要はありません。60%くらいの完成度で十分です。
大事なのは、自分のキャリアを言語化するプロセスです。「何をやってきたか」「どんな成果を出したか」を書き出すことで、自分の強みが見えてきます。
ぼくは職務経歴書を作るとき、まず「プロジェクトごと」に成果を書き出します。そのうえで、共通する強みやパターンを見つけます。そうすると、自分の「価値」が言語化できます。
□ 市場価値を確認する
自分の市場価値を客観的に把握しておくことは重要です。希望する年収と、市場での評価にギャップがあると、転職活動が長引きます。
市場価値を確認するには、スカウト型の転職サービスに登録するのが手っ取り早いです。[AFFILIATE:ビズリーチ]や[AFFILIATE:リクルートダイレクトスカウト]に職務経歴を登録すると、企業やヘッドハンターからスカウトが届きます。
スカウトの内容を見れば、「今の自分がどう評価されているか」が分かります。想定年収のレンジも見えてきます。ここで現実を知っておくと、転職活動がスムーズになります。
□ 転職エージェントに相談する(複数社)
転職エージェントには必ず相談してください。ただし1社だけじゃなく、最低でも2〜3社には会ったほうがいいです。
エージェントによって得意な業界や職種が違います。また、担当者との相性もあります。複数社と話すことで、情報の偏りを防げます。
エージェントと話すときのポイントは、「自分の軸を伝える」ことです。「こういう理由で転職を考えていて、こういう環境を求めています」と明確に伝える。そうすると、エージェントも的確な提案をしてくれます。
□ 社内でできることを試したか確認する
これ、意外と見落とされがちですが超重要です。転職する前に、「今の会社でできることを全部やったか」を確認してください。
上司に相談しましたか。部署異動の可能性を探りましたか。働き方の改善を提案しましたか。やりたいプロジェクトに手を挙げましたか。
もし何もせずに「今の会社はダメだ」と決めつけているなら、それは早計です。転職してもまた同じパターンを繰り返す可能性があります。
ぼくも博報堂を辞める前、上司に「こういう仕事がしたい」と何度も伝えました。部署異動も打診しました。でも叶わなかった。だから「やるべきことはやった」と納得して、転職できたんです。
□ 転職の「締め切り」を決めない
「3ヶ月以内に転職する」みたいな締め切りを設定すると、焦って判断を誤ります。
転職はタイミングです。良い会社、良いポジション、良い条件。この3つが揃ったときに動くべきです。無理に締め切りを設定すると、妥協が生まれます。
もちろん、だらだら続けるのもよくありません。でも「いつまでに決める」ではなく、「こういう条件が揃ったら決める」という基準を持つほうが、後悔しない選択ができます。
□ 最低3社は比較検討する
内定が出たからといって、すぐに決めてはいけません。最低でも3社は比較検討してください。
1社しか見ていないと、その会社が本当に良いのか判断できません。相対的に比較することで、それぞれの会社の強みと弱みが見えてきます。
ぼくもアクセンチュアに決める前、他に2社の内定をもらっていました。比較したからこそ、「アクセンチュアが一番自分の軸に合っている」と確信を持って決められました。
「転職しない」という選択も検討する
ここまで転職の準備について書いてきましたが、実は一番大事なのは「転職しないという選択肢も検討する」ことです。
転職が唯一の答えではありません。今の会社で状況を変える方法もあります。
今の会社で交渉する
給与や働き方、担当業務に不満があるなら、まず交渉してみてください。意外と通ることもあります。
ぼくの知り合いで、「辞めます」と伝えたら、会社が引き止めるために希望のポジションを用意してくれたケースがありました。彼は結局、転職せずにその会社で新しいチャレンジをしています。
もちろん全部が通るわけじゃありません。でも何も言わずに諦めるのはもったいないです。
部署異動を試みる
今の会社の社風や待遇は好きだけど、今の仕事内容や上司が合わない。そういう場合は、部署異動が有効です。
同じ会社でも、部署が変わると環境は大きく変わります。転職するリスクを取らずに、新しい環境を手に入れられる可能性があります。
人事に相談する、社内公募に応募する、異動したい部署の責任者に直接アプローチする。いろんな方法があります。
副業を始めてみる
「今の会社では学べないことがある」「もっと自由に仕事がしたい」。そう思っているなら、まず副業を始めてみるのも手です。
副業で小さく試してみて、「やっぱりこっちの方向に進みたい」と確信できたら転職する。逆に「今の会社のほうが恵まれている」と気づくかもしれません。
ぼくも独立する前、博報堂時代から副業をしていました。週末に小さなプロジェクトを受けて、独立後のイメージを具体化していきました。これがあったから、独立後も迷わずに進めたんです。
転職しないことが最善の場合もある
転職が全てを解決するわけではありません。むしろ、今の会社に残ったほうが良いケースもたくさんあります。
ぼくが見てきた中で、転職して後悔している人の多くは、「今の会社の良さに気づいていなかった」人たちです。転職してから、前の会社の良さに気づく。でも、もう遅い。
だから動く前に、今の会社の良いところを書き出してみてください。それでも「やっぱり転職したい」と思えるなら、それが答えです。
後悔しない転職のための「タイミングの見極め方」
準備ができたら、いよいよ転職活動を始めます。でも最後に、「タイミングの見極め方」について書いておきます。
感情的になっている時は動かない
「上司とケンカした」「プロジェクトが失敗した」「評価が低かった」。こういう感情的なタイミングで転職を決めてはいけません。
感情的になっているときは、冷静な判断ができません。転職は人生の大きな決断です。感情が落ち着いてから、改めて考えてください。
ぼくも博報堂時代、プロジェクトがうまくいかなくて「もう辞めたい」と思ったことが何度もあります。でもその感情が落ち着いてから、「本当に辞めるべきか」を冷静に考えました。
複数社と比較してから決める
これはチェックリストにも書きましたが、改めて強調します。1社だけ見て決めてはいけません。
「この会社いいな」と思っても、他と比較してみてください。もっと良い会社があるかもしれません。逆に、やっぱり最初の会社が一番だと確信できるかもしれません。
比較することで、判断の精度が上がります。
内定後に必ず「辞退できるか」を自問する
これが最後の、そして最も重要なチェックポイントです。
内定が出たら、一度立ち止まってください。そして自分に問いかけてください。「今、この内定を辞退できるか?」
もし「辞退できない」と感じたら、それはなぜですか。「他に選択肢がないから」「エージェントに悪いから」「もう疲れたから早く決めたい」。こういう理由なら、危険信号です。
逆に、「辞退できるけど、でもこの会社に行きたい」と思えるなら、それが正解です。選択の余地がある状態で、それでもその会社を選ぶ。これが後悔しない転職です。
ぼくもアクセンチュアの内定を受けたとき、他の選択肢もある中で「それでもここだ」と思えました。だから入社後、つらいことがあっても「自分で決めたことだ」と思えた。後悔しなかったんです。
まとめ:準備が9割、転職活動は1割
転職で後悔する人としない人の差は、ほぼすべて「準備の質」で決まります。
自己棚卸しをして、転職軸を作って、3つの問いに答える。社内でできることを試して、市場価値を確認して、複数のエージェントと話す。そのうえで、冷静にタイミングを見極める。
この準備をちゃんとやれば、転職活動そのものは驚くほどスムーズです。逆に準備を怠ると、転職活動は迷走します。
転職は人生の大きな決断です。焦らず、丁寧に準備してください。そうすれば、後悔しない選択ができます。
この記事で紹介したチェックリストを全部やってから、動き出してください。それがあなたのキャリアを守る最善の方法です。
関連記事として、ビズリーチやリクルートダイレクトスカウトの活用方法については別の記事で詳しく書いています。また、転職エージェントとの付き合い方、職務経歴書の書き方についても、今後公開予定です。
転職を考えているなら、ぜひこのチェックリストを活用してください。ぼくも応援しています。