独立・フリーランス

マーケターが独立を考え始めたときに読む記事【40歳で独立したぼくの話】

「会社を辞めて、やっていけるのか」—— 独立前夜の不安

「独立してみたいけど、本当にやっていけるんだろうか」

夜、スマホでフリーランスの体験談を読みながら、そんな不安を抱えていませんか。会社では一定の評価を得ている。マーケターとしてのスキルにも自信はある。でも、会社の看板を外したとき、自分に仕事が来るのかわからない。

ぼくも40歳でアクセンチュアを辞めて独立するまで、まったく同じ不安を抱えていました。博報堂で13年、アクセンチュアでマネージャーを経験して、それなりのキャリアは積んできた。副業としてマーケティングの仕事を本業とは別に受注もしてきた。でも「自分個人」に大きな仕事が来るのか、正直まったく自信がなかったんです。

この記事では、ぼくが独立を決意したプロセスと、独立後のリアルな話をお伝えします。独立を「いつか」と考えているあなたに、少しでも判断材料を提供できればと思っています。

アクセンチュアのマネージャーなのに、なぜ独立を考えたのか

完全独立を考え始めたのは、アクセンチュアでマネージャーとして働いていた39歳のときでした。仕事は充実していたし、給与面の不満も当然なかった。社内やクライアントからの評価も悪くなかったと思います。

それでも、ぼくの中に「このままでいいのか」というモヤモヤがありました。

きっかけは、あるクライアントとの打ち合わせでした。提案が高く評価されたとき、クライアントは「さすがアクセンチュアさんですね」と言ってくれた。もちろん嬉しかったんですが、同時に「これ、ぼく個人への評価じゃないな」とも思ったんです。

結局、気づけば博報堂時代からずっと「会社の看板」で仕事をしてきました。それは間違いなく強みだったし、そのブランド力に何度も助けられた。心の中で、「これは自分の仕事だ」と強く思っていても、最後に評価されるのは「大企業の名前」。だから、40歳を前にして「本当に純粋な個人で、戦えるのか」を試してみたくなったんです。

独立への漠然とした憧れが確信に変わったのは、副業で受けた小さなプロジェクトがきっかけでした。知人の紹介で、スタートアップのマーケティング戦略を手伝ったんです。会社の肩書なしで、自分の名前だけで提案して、それが採用された。その瞬間、「あ、もしかしたらいけるかもしれない」と思いました。

もちろん不安は山ほどありました。でも「やらずに後悔するより、やって後悔したほうがいい」。そう思って、40歳の誕生日までに完全独立を決意しました。

独立前に確認すべき3つのこと

独立を考え始めたとき、ぼくは「勢い」だけで辞めないように、いくつかの条件を自分に課しました。この3つをクリアできていないなら、独立はもう少し待ったほうがいいと、今でも思っています。

① ポータブルスキルはあるか(会社を離れても通用するか)

まず最初に確認すべきは、「会社の看板を外しても通用するスキル」があるかどうかです。

大手代理店やコンサルで働いていると、「〇〇社の△△さん」として評価されることが多くなります。でもそれは、あなた個人のスキルではなく、会社のブランド力が評価されている部分も大きい。独立したら、その看板は使えません。

ぼくの場合、博報堂とアクセンチュアで培った「戦略立案」と「コンテンツ設計」のスキルは、会社を離れても通用すると判断しました。実際、独立後の案件の多くは、この2つのスキルを軸にしています。

あなたのスキルを棚卸ししてみてください。「○○社の人だから」ではなく、「あなただから」頼まれるスキルはありますか?

② 最初の1〜3件の仕事のあてはあるか

独立してすぐに困るのが「仕事がない」状態です。営業活動を始めても、成果が出るまでには時間がかかります。

だから、独立前に「最初の1〜3件の仕事」の目処を立てておくことを強くおすすめします。ぼくの場合、退職前に副業で関わっていたクライアント2社が、独立後も継続して依頼してくれることになっていました。これがあったから、精神的にかなり楽に独立できました。

理想は、独立後3〜6ヶ月分の売上が見込める状態を作っておくことです。そうすれば、焦らずに営業活動や新規案件の開拓に時間を使えます。

③ 6ヶ月分の生活費は確保できるか

独立直後は収入が不安定です。特に最初の数ヶ月は、思ったように案件が取れないことも珍しくありません。

だから、最低でも6ヶ月分の生活費は貯蓄しておくべきです。ぼくは少し保守的に、1年分の生活費を確保してから独立しました。この貯金があったおかげで、「今月の支払いどうしよう」みたいな不安を抱えずに、仕事に集中できました。

独立後は、会社員時代のような「毎月決まった日に給料が振り込まれる」という安心感はありません。その不安に耐えられるだけの資金的余裕は、独立前に必ず作っておいてください。

マーケターが独立で強い理由

「マーケターとして独立して、本当に仕事があるの?」と不安に思う人もいるかもしれません。でも実は、マーケターは独立に向いている職種だとぼくは思っています。

企業のマーケティング課題は尽きない

どんな企業も「売上を伸ばしたい」「認知を拡大したい」「ブランドを強化したい」といったマーケティング課題を抱えています。そしてその課題は、時代とともにどんどん複雑化しています。

SNSマーケティング、コンテンツマーケティング、データドリブンマーケティング、グロースハック…。次々と新しい手法が登場し、企業の担当者だけでは追いつかない状況です。

だからこそ、外部のマーケターへの需要は高まる一方なんです。実際、ぼくのところにも「デジタルマーケティングの戦略を一緒に考えてほしい」「新規事業のマーケティング設計を手伝ってほしい」といった相談が絶えません。

「外部の視点」に高い需要がある

企業の中にいると、どうしても視野が狭くなります。「うちの業界では」「今までこうやってきたから」という前提に縛られて、新しい発想が出にくくなる。

そこで価値を発揮するのが、外部のマーケターです。業界の常識にとらわれない視点、他社の成功事例の知見、客観的な分析。これらは、社内の人間にはなかなか提供できない価値です。

ぼくが独立後に関わったクライアントの多くが、「社内だけでは煮詰まっていたので、外の視点が欲しかった」と言っていました。マーケターとしての経験と知識があれば、この「外部の視点」を武器にできます。

副業・複業から始めやすい職種

マーケティングの仕事は、必ずしもフルタイムで拘束される必要がありません。戦略立案、コンテンツ制作、広告運用など、プロジェクトベースで関われる案件が多いんです。

だから、いきなり独立するのではなく、副業から始めて実績を積むことができます。ぼくも最初は副業から始めて、「これなら独立してもやっていける」という手応えを得てから会社を辞めました。

クラウドソーシングやマッチングサービスも充実しているので、案件を見つける手段も豊富です。まずは小さく始めて、徐々に規模を拡大していく。そんな段階的な独立が可能なのも、マーケターの強みだと思います。

独立後のリアル – 想像と現実のギャップ

独立から2年が経ちました。振り返ると、想像していたことと実際が違ったことがたくさんあります。良い意味でも、悪い意味でも。

収入の不安定さとの付き合い方

正直に言うと、収入の不安定さは想像以上でした。会社員時代は、どんなに忙しくても暇でも、毎月同じ給料が振り込まれていました。でも独立すると、月によって収入が3倍くらい変動することもあります。

最初の半年は、この波に慣れるのが大変でした。「来月の売上、大丈夫かな」と不安になる夜もありました。でも1年くらい経つと、波のパターンが見えてきて、精神的に楽になりました。

今は「月ごと」ではなく「年間」で収入を見るようにしています。良い月もあれば悪い月もある。でも年間で見れば、会社員時代より収入は増えています。この「長期視点」を持てるかどうかが、独立後のメンタルを保つ鍵だと思います。

想像以上によかったこと

一番よかったのは、「自分で選択できる」自由です。どの仕事を受けるか、誰と働くか、どんなペースで働くか。すべて自分で決められます。

会社員時代は、興味のないプロジェクトでも断れないことがありました。でも今は、「この案件は自分の強みが活かせないな」と思ったら断れます。結果として、自分が本当にやりたい仕事、得意な仕事に集中できるようになりました。

それから、働く時間と場所を自由に選べるのも大きいです。子どもの学校行事に参加したり、平日の昼間にジムに行ったり。会社員時代にはできなかったことができるようになりました。

想像以上に大変だったこと

一方で、「営業活動」の大変さは想像以上でした。会社員時代は、営業部門が仕事を取ってきてくれました。でも独立すると、自分で案件を取りに行かないといけません。

最初は「営業なんてできるのか」と不安でしたが、幸いマーケターは「自分自身のマーケティング」ができます。SNSで発信し、ブログを書き、セミナーに登壇する。こうした活動を通じて、自然と案件が集まる仕組みを作りました。

あとは「孤独」ですね。会社員時代は、困ったら同僚に相談できました。でも独立すると、基本的にひとりです。判断も、責任も、すべて自分。この孤独感に慣れるまでは、結構しんどかったです。

「会社員に戻りたい」と思ったことはあるか

正直に言うと、一度もありません。

もちろん、会社員時代の安定感や、チームで働く楽しさは懐かしく思うことはあります。でも「戻りたい」とは思わない。それは、今の働き方に満足しているからです。

ただこれは、ぼくが「たまたま」独立に向いていただけかもしれません。人によっては、独立してみて「やっぱり会社員のほうが合っている」と気づくこともあると思います。それはそれで、大切な発見です。

独立の準備ステップ – いきなり辞めるのは危険です

「独立したい」と思っても、いきなり会社を辞めるのはおすすめしません。ぼくは約1年かけて、段階的に準備を進めました。そのステップを共有します。

ステップ① 副業で実績を作る

まずは副業から始めましょう。会社員を続けながら、小さな案件を受けてみるんです。

ぼくは知人の紹介で、小規模企業のマーケティング支援を始めました。最初は月5万円くらいの小さな案件でしたが、これが「会社の看板なしで仕事ができる」という自信につながりました。

副業のメリットは、失敗してもリスクが小さいことです。本業があるので生活は安定している。その安心感の中で、独立後の働き方を試せます。クラウドソーシングやマッチングサービスを使えば、案件も見つけやすいです。

【おすすめの副業マッチングサービス】

  • クラウドワークス: 初心者向けの案件が豊富
  • ランサーズ: マーケティング系の案件が多い
  • ココナラ: スキルを「商品」として出品できる
  • Workship: ハイスキル人材向けのマッチングサービス

ステップ② SNS・ブログで発信して認知を作る

副業と並行して、SNSやブログでの発信を始めましょう。これは「将来の営業活動」への投資です。

ぼくはTwitter(現X)とnoteで、マーケティングやキャリアについての発信を始めました。最初はフォロワー100人もいませんでしたが、コツコツ続けていくうちに少しずつ増えていきました。

発信のメリットは、「探してもらえる」ことです。営業しなくても、発信を見た人から「相談したい」と連絡が来るようになります。実際、ぼくの案件の3割くらいは、SNS経由での問い合わせです。

発信内容は、自分の専門分野について「学んだこと」「気づいたこと」を共有するだけでOKです。完璧を目指さず、まずは週1回でも発信してみてください。

ステップ③ 独立後の「売り物」を定義する

独立前に、「自分は何を売るのか」を明確にしておきましょう。これがないと、案件を取りに行くときに説明できません。

ぼくの場合、「BtoB企業のコンテンツマーケティング戦略立案」を主力商品に設定しました。博報堂とアクセンチュアで培った経験を活かせる領域であり、需要も高いと判断したからです。

「売り物」を考えるときのポイントは、以下の3つです。

  • 自分が得意なこと(強みを活かせる)
  • 市場に需要があること(売れる)
  • 自分がやりたいこと(続けられる)

この3つが重なる領域を見つけられれば、独立後もスムーズに案件を獲得できます。

ステップ④ 法人か個人事業主か決める

独立するとき、「法人を設立するか、個人事業主として始めるか」を決める必要があります。

ぼくは合同会社を設立しました。理由は、クライアントからの信頼度が高いことと、節税メリットがあるからです。ただし、法人設立には費用(10〜20万円程度)と手間がかかります。

個人事業主のメリットは、手続きが簡単で、初期コストがほとんどかからないことです。まずは個人事業主で始めて、軌道に乗ったら法人化するという選択肢もあります。

判断基準としては、年間売上が500〜700万円を超えそうなら、法人化を検討したほうが税制面で有利になることが多いです。税理士に相談して、自分に合った形態を選びましょう。

ステップ⑤ 独立のタイミングを決める

最後に、「いつ独立するか」を決めます。これが一番難しい判断かもしれません。

ぼくは40歳の誕生日を独立のタイミングに設定しました。キリがいいというのもありますが、「40代のスタートを新しい挑戦で始めたい」という想いがあったからです。

おすすめは、「○月○日に独立する」と具体的な日付を決めてしまうことです。そうすると、そこから逆算して準備を進められます。ズルズルと先延ばしにせず、期限を設けることで覚悟が決まります。

ただし、焦る必要はありません。準備が整っていないのに勢いだけで独立すると、後悔する可能性が高いです。最低でも、この記事で紹介した「3つの確認事項」をクリアしてから独立してください。

独立に向いている人・向いていない人

独立は、誰にでもおすすめできる選択肢ではありません。向き不向きがはっきりしています。ぼくの経験から、独立に向いている人、向いていない人の特徴をまとめます。

独立に向いている人

自己管理ができる人です。独立すると、働く時間も休む時間も、すべて自分で決めます。誰も管理してくれません。「今日はサボろう」と思えばサボれるし、「休日も働こう」と思えば働けます。この自由を、自分でコントロールできる人は独立に向いています。

営業への抵抗がない人も向いています。独立すると、自分で仕事を取りに行く必要があります。「営業なんて無理」と思う人には厳しいです。ただし、営業といっても飛び込み営業をするわけではありません。SNSで発信したり、セミナーに登壇したり、知人に声をかけたり。そういう「自分を知ってもらう活動」ができれば十分です。

収入の波を許容できる人も重要です。独立すると、収入は安定しません。良い月もあれば悪い月もある。この波に一喜一憂せず、長期的な視点で収入を見られる人が向いています。

独立に向いていない人

安定志向が強い人は、独立に向いていません。「毎月決まった給料がほしい」「ボーナスがないと不安」という人は、会社員を続けたほうが幸せだと思います。独立は、安定を手放す選択です。

承認欲求が強い人も厳しいかもしれません。会社員時代は、上司や同僚から評価されたり、昇進したりすることで承認欲求が満たされました。でも独立すると、そういう「わかりやすい評価」がありません。自分で自分を評価し、モチベーションを保つ必要があります。

孤独に弱い人も、独立後に苦しむ可能性があります。独立すると、基本的にひとりで働きます。相談相手も、愚痴を言い合う同僚もいません。この孤独感に耐えられない人は、コワーキングスペースを使ったり、フリーランス仲間を作ったりする工夫が必要です。

独立は「正解」じゃない。でも、知っておくと地図が広がる

この記事では、ぼくが40歳で独立したときの経験と、独立前に知っておくべきことをお伝えしてきました。

でも誤解しないでほしいのは、「独立が正解」だとは思っていないということです。会社員として働き続けることも、立派なキャリアの選択です。大企業で経験を積み、マネジメントを学び、安定した収入を得る。それも素晴らしいキャリアです。

独立は、あくまで「選択肢のひとつ」です。

ただ、この選択肢を知っているかどうかで、キャリアの地図の広がり方が変わります。「会社員しかない」と思っている人と、「独立という選択肢もある」と知っている人では、見えている景色が違うんです。

ぼくは40歳で独立して、本当によかったと思っています。でもそれは、ぼくにとっての「正解」であって、あなたにとっての正解かはわかりません。

だから、焦らないでください。この記事を読んで、「独立もありかもな」と思ったら、まずは副業から始めてみてください。小さく試して、自分に合っているか確かめる。それからでも、独立は遅くありません。

マーケターとしてのキャリアは、会社員だけじゃない。独立という選択肢も、フリーランスという働き方も、複業という生き方もある。その中から、自分に合った道を選べばいい。

この記事が、あなたのキャリアを考える上で、少しでも参考になれば嬉しいです。