副業を始めようと思ったとき、最初に立ちはだかる壁がある。
スキルはある。時間もある。やる気もある。でも、案件がない。
ぼくも同じだった。博報堂で13年、広告の仕事をしてきた。コピーも書けるし、ブランド戦略も立てられる。でも「副業で仕事をください」と言えるクライアントが、最初はどこにもいなかった。
この記事では、ぼくが副業で最初の1件を取るまでの話を書く。そして、そこから気づいた「副業で生き残るための考え方」も合わせて伝えたい。
最初の案件は、知人のスタートアップだった
副業を始めようと動き出した頃、知人からこんな連絡が来た。「今度スタートアップを立ち上げるんだけど、会社説明資料を作るのを手伝ってもらえないか」という話だった。
資料作成の依頼だった。ただ、ぼくは資料を作るだけじゃつまらないと思って、打ち合わせのなかで「せっかくなら、ブランドのスローガンも一緒に考えませんか」と提案した。
そこで出したスローガンが、社長に刺さった。
「このコピー、すごくいい。ウェブサイトも全部リニューアルしたいんだけど、任せてもらえますか」
気づいたら、資料作成の依頼がウェブサイトのリデザインに変わっていた。その後も同じ知人から、CMキャンペーンのコピーライティング、企業動画の制作と、仕事が立て続けに入ってきた。
最初の依頼から半年ほどの間に、副業の売上はかなり安定した。
「一人の信頼を厚く深く」が副業の鉄則だと思う
副業を始めたばかりの頃、誰もが「たくさんのクライアントを持たないといけない」と思いがちだ。案件を分散させることでリスクをヘッジしようとする。気持ちはわかる。
でも、副業には本業がある。使える時間は限られている。そのなかで八方美人をしていると、全部が中途半端になる。
ぼくが気づいたのは、副業で大切なのは「広さ」じゃなくて「深さ」だということだ。
一人のクライアントに、期待以上の仕事を届ける。そうすると何が起きるか。
相手が別の仕事を持ってきてくれる。紹介してくれる。単価を上げても発注してくれる。
これが副業の本当の収益構造だと思う。新規営業に使うエネルギーを、既存クライアントへの価値提供に全振りする。それだけで、副業は驚くほど安定する。
「期待を超える」とはどういうことか
ぼくがスタートアップの知人から継続的に仕事をもらえたのは、毎回「頼んだこと以上」を出したからだと思っている。
会社説明資料を頼まれたとき、ブランドスローガンも提案した。ウェブサイトのリデザインを頼まれたとき、ターゲット像の整理と訴求軸の再定義まで一緒にやった。
「頼まれたことをやる」のはプロとして当然だ。でも「頼まれていないことを考える」のが、信頼になる。
マーケターはここが強い。広告を作るだけじゃなくて、ビジネスの上流から考える習慣がある。その視点を副業でも使えば、単なる「作業者」じゃなく「相談相手」になれる。
相談相手になれたクライアントは、なかなか離れない。
もし「知人」がいないなら、小さく経験を積む
「そんな都合よく知人がいるわけじゃない」という人もいると思う。それは正直、そうだと思う。
ぼくも最初の入口は運と縁に助けられた部分が大きかった。
でも、知人がいないなら別のルートがある。ランサーズやクラウドワークスで小さく経験を積むことだ。
最初は単価が低くても構わない。むしろ単価より「実績」と「信頼」を積むことを優先する。
なぜなら、副業の本当のゴールは「最初の1件」じゃないからだ。最初の1件は、次の仕事への入口に過ぎない。
クラウドソーシングで丁寧に仕事をしていると、必ず「また頼みたい」と言ってくれるクライアントが現れる。あなたの仕事の質が確かなら、継続発注してくれる人は必ず出てくる。そこから関係を深めていけばいい。
副業で最初の1件を取る3つのルート
整理すると、最初の案件を取る方法は大きく3つある。
① 知人・友人からの依頼
最も確率が高いルート。SNSで「副業始めました」と一言発信するだけで、案外声がかかったりする。
大事なのは、依頼が来たときに「資料を作るだけ」で終わらせないこと。ひとつの依頼の中に、もう一段上の提案を忍び込ませる。それが次の仕事につながる。
② クラウドソーシング(ランサーズ・クラウドワークス)
知人がいない、またはいきなり知人に頼むのが気まずいという人にはこちら。
最初は単価より実績を優先する。レビューを丁寧に積んで、プロフィールを育てていく。コピーライティング・SNS運用・マーケティング戦略の立案など、マーケターが出せる価値は幅広い。
コツは「提案文」。他の応募者と同じような文章を送っていると埋もれる。クライアントの課題を自分なりに読んで、「こういう観点で取り組みます」という一言を入れるだけで通過率がかなり変わる。
③ SNSからの流入
XやThreadsで、マーケターとしての知見を発信し続けると、徐々に「相談したい」という声が届くようになる。即効性はないが、長期的には最も質の高い案件が来るルート。
発信のコツは「自分の仕事の実況中継」をすること。「今日、クライアントにこんな提案をした」「こういう考え方でコピーを書いた」というような話は、同じ悩みを持つ人に刺さる。
単価はどう決めるか
副業を始める人が最も悩むのが「いくらで請けるか」だと思う。
ぼくの考えは、最初は「相場の7〜8割」くらいでいい、というものだ。
副業には本業がある。品質のリスクヘッジとして、最初は少し低めに設定する。そのかわり、納品物の質で「この人はもっと払っていい」と思わせる。そうやって実績ができてから、少しずつ単価を上げていく。
一方で、最初から極端に安くするのもやめた方がいい。安すぎる単価は「安い仕事」という印象をクライアントに与えてしまう。それが定着すると、後から単価を上げるのがかなり難しくなる。
マーケターの副業における目安としては、こんなイメージ。
- SNS運用代行(月次):3〜8万円 / 月
- コピーライティング(LP・Web):5〜15万円 / 本
- マーケティング戦略立案:10〜30万円 / プロジェクト
- ブランドスローガン・コンセプト開発:15〜50万円
もちろん経験やクライアントの規模によって変わる。ただ、博報堂・アクセンチュアなど大手出身というだけで、単価の説得力は格段に上がる。経歴はちゃんと使った方がいい。
継続発注につながる仕事の仕方
副業で大切なのは「1回の仕事」ではなく「継続的な関係」だ。そのために意識しておきたいことを3つ書く。
納期より1日早く出す
これだけで印象がかなり変わる。「期日通り」は当たり前。「早い」は信頼になる。特にスタートアップや小さな会社のクライアントは、スピード感を非常に重視する。
フィードバックを求める
納品したら終わり、ではなく「いかがでしたか?改善できる点があれば教えてください」と聞く。これをやるだけで、クライアントとの関係が一段深まる。そして修正依頼が来たときに、それをゼロ追加費用で対応することで、信頼は一気に固まる。
ちょっとした情報提供を続ける
仕事の間隔が空いているときも、「この記事、参考になりそうだと思って」「最近こういうトレンドが来てますよ」という短い連絡を入れておく。これが「忘れられない」ための最安コスト。
副業から独立へ、ぼくの場合
副業で積み上げた信頼が、最終的にはぼくの独立を支えた。
アクセンチュアを辞めてtiny合同会社を立ち上げたとき、最初から仕事があった。副業時代に関係を作っていたクライアントが、独立後も発注してくれたからだ。
副業は「収入の補填」だけじゃない。独立するときのセーフティネットになる。本業と並行してクライアントとの関係を育てておくことが、将来の選択肢を広げることに直結する。
副業を始めるのに、完璧な準備は要らない。まず1件取ることだけ考えればいい。その1件を丁寧にやり切れば、次の仕事は向こうからやってくる。
まとめ
副業で最初の1件を取るための要点をまとめる。
- 最初の案件は知人・友人からが最も確率が高い
- 依頼されたこと以上を出すことで、次の仕事が生まれる
- 知人がいなければ、クラウドソーシングで小さく実績を積む
- 八方美人より、一人の信頼を厚く深くする
- 継続発注してくれる人が必ず現れる
- 副業の実績が、将来の独立を支える土台になる
ぼくが副業で最初に気づいたのは、「案件を取る技術」より「信頼を作る姿勢」の方がずっと大事だということだ。
マーケターとして長年培ってきた「相手の頭の中に景色を作る力」は、副業の場でも必ず活きる。そのスキルを、まず一人のクライアントのために使ってみてほしい。