コードは書けるけど、プログラミングは自己流。エンジニアに頼むか、ツールを使うしかない——そう思っていた。
博報堂に13年、アクセンチュアに6年。マーケターとしてキャリアを積んできたぼくにとって、プログラムはずっと「時間をかけなければ完成しないもの」だった。
でも今、ぼくはPythonのスクリプトを書いて、WordPressに自動で記事を投稿し、OGP画像を自動生成して、XとThreadsへの自動投稿をしている。エンジニアに頼んでいない。外注もしていない。
全部、Claude Codeを使ってやっている。
今日はその話を書く。「マーケターがClaude Codeを使い始めた」という、ぼくの実体験だ。
Claude Codeとは何か、普通のClaudeやChatGPTと何が違うか
Claude Codeとは、Anthropicが出しているコーディングエージェントだ。
「エージェント」という言葉が出るとわかりにくく感じるかもしれないけれど、簡単に言うと「AIがコードを書くだけでなく、実際にファイルを作って、実行して、結果を確認して、修正まで自分でやってくれる」ツールだ。
普通のChatGPTやClaudeとの違いはここにある。
通常のAIチャットは「コードを書いて提示する」ところまでだ。提示されたコードをコピーして、自分でファイルに貼り付けて、実行して、エラーが出たらまたAIに相談して、また修正して——という往復が必要になる。コードが読めない人間には、この往復がかなりしんどい。
Claude Codeはターミナル(コマンドライン)の中で動く。「こういうものを作ってほしい」と日本語で伝えると、Claude Codeが自分でファイルを作り、コードを書き、実行し、エラーが出たら自分で修正する。ぼくがやることは「指示を出す」ことだけだ。
コードが読めなくても、「何を作りたいか」「どういう動作が欲しいか」を日本語で説明できれば動く。これがマーケターにとって革命的だった。
ぼくが最初にやったこと
このブログを始めるにあたって、ぼくが最初に考えたのは「記事を書くこと」より「仕組みを作ること」だった。
マーケターとして、コンテンツの量産と質の維持を両立させるには、できるだけ手作業を減らす必要があると思っていた。WordPressに記事をコピペする作業、アイキャッチ画像を作る作業、SNSに投稿する作業——これらをひとつひとつ手でやっていたら、それだけで時間が溶ける。
だからまず、「記事をWordPressに自動投稿するスクリプト」をClaude Codeに作ってもらうことにした。
ぼくがClaude Codeに伝えたのはこういうことだ。「PythonでWordPressのREST APIを使って、記事タイトルと本文HTMLとスラッグを渡したら投稿できるスクリプトを作ってほしい。カテゴリも設定できるようにしたい。認証情報は.envファイルから読み込む形で」
Claude Codeはその場でスクリプトを書き、実行し、エラーが出たら修正した。最終的に動くものができるまでに、ぼくが書いたのは日本語の指示だけだ。
所要時間は30分程度。エンジニアに外注したら、打ち合わせだけで1時間かかる。
外注していた作業①:アイキャッチ画像の自動生成
ブログの記事を書くたびに必要になるのが、アイキャッチ画像だ。SNSでシェアされたときのOGP(Open Graph Protocol)画像として使われる、あの横長の画像だ。
以前のぼくなら、デザイナーに依頼するかAdobeで自分で作っていた。デザイナーへの依頼は1枚3,000〜5,000円。Adobeで自分で作ると30分〜1時間かかる。20記事分で考えると、どちらも相当なコストになる。
Claude Codeに「Pillowというライブラリを使って、記事タイトルを自動でデザインしたOGP画像を生成するスクリプトを作ってほしい。背景は#FAF9F6、フォントはヒラギノ明朝を使って、ブランドカラーに合わせて」と伝えた。
最初のバージョンはフォントの読み込みでエラーが出た。ヒラギノのフォントファイルがPostScript形式で、使おうとしていたライブラリが対応していなかった。Claude Codeは自分でエラーを読み、代替のフォントファイルを探して、修正した。
ぼくはその過程を見ているだけだった。
最終的に完成したのは、記事タイトルを渡すだけでOGP画像を自動生成して、WordPressにアップロードして、アイキャッチとして設定するまでを一気にやるスクリプトだ。
1記事あたりの所要時間:ゼロ秒。スクリプトが全部やるから。
外注していた作業②:SNSへの自動投稿
記事を書いたら、XとThreadsに投稿する必要がある。これも毎回手動でやるのは手間だ。
Claude Codeに頼んで、XのAPI(tweepy)とThreadsのAPI(Meta Graph API)を使った自動投稿スクリプトを作った。
コマンドラインから「python x_post.py –post “投稿内容”」と打つだけで、Xに投稿される。Threadsも同様だ。
さらに進めて、「Threadsでバズっている投稿を分析して、よそおいブログのコンセプトに合った投稿文を自動生成して投稿するエージェント」まで作ってもらった。複数のAIエージェントがチームを組んで、リサーチ→執筆→レビュー→投稿という流れを自動でこなす仕組みだ。
これが動いたとき、正直驚いた。
「マーケティングについて考えてインサイトを出してくれる人」をAIで作れるとは思っていなかった。でもClaude Codeが書いたコードは、実際にそれをやっている。
つまずいたこと、失敗したこと
うまくいったことばかり書くのは正直じゃないので、失敗も書く。
最初の1週間は、エラーとの戦いだった。
WordPressのURL設定を間違えていて、APIが404エラーを返し続けた。XのAPIにも苦労した。Xは2023年以降、APIの仕様を何度も変えている。ネット上の情報が古くて、古い書き方で試してもエラーが出る。Claude Codeは最新の仕様に詳しくない場合があるから、「このエラーの意味は何か」「最新の仕様ではどう書くべきか」を自分で調べる必要があった場面もあった。
Threadsに至っては、APIのアクセストークンを取得するまでのステップがわかりにくくて詰まった。Meta Developer Portalでテスターとして自分のアカウントを追加する必要があって、それをやっていなかった。Claude Codeは「トークンが正しいか確認してください」と言い続けたけれど、問題はトークン自体じゃなく、設定の問題だった。
こういうとき、Claude Codeに頼り過ぎると詰まる。AIはコードを書くのは得意だが、「人間が手動でやらないといけない外部サービスの設定」は自分でやるしかない。
でも、エラーの調査と修正についてはClaude Codeがかなり役立った。エラーメッセージを貼り付けると、原因を推測して修正案を出してくれる。全部が正解ではないが、方向性を絞る助けになる。
Claude Codeがマーケターに向いている本当の理由
使い始めて数ヶ月で気づいたことがある。Claude Codeがマーケターに向いているのは、「コードが書けなくてもシステムが作れる」という点だけじゃない。
もっと本質的な理由がある。
マーケターは「何を作るべきか」の設計が得意だ。ユーザーの行動を想像して、どういう仕組みがあれば課題が解決するかを考える。これはマーケティングの本質的なスキルだ。
Claude Codeは「設計をコードに変換する」作業を担う。マーケターが「こういう仕組みが欲しい」と言語化できれば、Claude Codeがそれを実装する。
つまり、マーケターがずっと持っていたスキル(要件定義・設計・言語化)が、そのままClaude Codeへの指示出しに使えるということだ。
エンジニアリングの素養がない人間が急にコードを書けるようになったわけじゃない。でも、「何を作るか」を日本語で設計する力は、マーケターが元々持っている。その力を使える新しい手段が生まれた、という話だ。
「コードを書く」より「設計する」ことが大事だとわかった
Claude Codeを使い続けてわかったのは、アウトプットの質は「指示の質」で決まるということだ。
漠然と「SNS投稿を自動化して」と伝えても、使えないものができる。「XのAPIをOAuth 1.0aで認証して、140文字以内のテキストをコマンドライン引数から受け取って投稿するスクリプトを作って。認証情報は.envファイルに書く」と伝えると、一発で動くものができる。
これはマーケティングの要件定義と同じ構造だ。「広告を出して」ではなく、「ターゲットは30代マーケター、クリック後のLPはこれ、KPIはCVR1%、予算は月50万円」と詳細に定義するほど、良い結果が出る。
Claude Codeへの指示出しは、エンジニアリングスキルよりもマーケティングスキルに近い。
ぼくが思うに、これからの数年で「要件定義が得意なマーケター」と「AIに丸投げするだけのマーケター」の差は、じわじわと広がっていく。前者はAIをレバレッジとして使えるが、後者はAIの限界がそのまま自分の限界になる。
具体的に何が変わったか、数字で整理する
実際にClaude Codeを使い始めてから、何がどう変わったか。できる限り数字で書く。
記事投稿の工数。以前は記事の原稿を書いて、AIで校正し、画像を用意して、カテゴリを設定して、と1記事あたり2時間ほどかかっていた。今はアイデア出しもリサーチもClaude Codeに任せている。スクリプトを実行するだけで5分以内に終わる。
アイキャッチ画像の費用。デザイナーへの外注なら1枚3,000〜5,000円。20記事で最大10万円。Claude Codeで自動化してからはゼロ円。
SNS運用の工数。記事ごとに投稿文を考えてXとThreadsに投稿するのに、以前は1回あたり20〜30分かかっていた。今はスクリプトから呼び出すだけなので数分。
これらを合計すると、20記事分で概算40〜50時間の工数削減と、数万円のコスト削減になる。
Claude Codeの月額料金は約3,000円(Claude Proプラン)。コスパで言えば、試さない理由がない。
マーケターがClaude Codeを使うときの注意点
良いことばかり書いてきたので、注意点も正直に書く。
まず、「ターミナルに慣れるまでの壁」がある。Claude Codeはコマンドラインで動くツールだ。Macならターミナルを開いて操作する。この操作感に慣れていない人は、最初の数日で「難しい」と感じるかもしれない。でも、使い方自体はシンプルで、一度慣れれば問題ない。
次に、「外部サービスの設定は自分でやる必要がある」という点。APIキーの取得、各種サービスへのアプリ登録、権限設定——これらはClaude Codeではなく人間がやる作業だ。ここを省略しようとすると詰まる。
また、「作ったものの管理は自分でやる」必要がある。スクリプトが複数になってくると、どれが何のためのファイルかわからなくなる。ファイル名の管理、バックアップ、設定ファイルの管理は自分でルールを作る必要がある。
そして最も重要な注意点は、「AIが書いたコードを盲目的に信頼しない」ということだ。APIキーや認証情報を含むコードは、実行する前に中身を確認する習慣を持つべきだ。セキュリティに関わる部分は、特に慎重に扱う必要がある。
「使えるマーケター」の定義が変わってきている
少し大きな話をする。
ぼくが広告代理店にいた頃、「使えるマーケター」の定義は「クリエイティブを考える力」「メディアを選ぶ知識」「クライアントをマネジメントする力」だった。
アクセンチュアに移ってからは、「データを読む力」「KPIを設計する力」「ROIで語る力」が加わった。
そして今、もう一層加わりつつあると感じる。「AIをどこまで使いこなせるか」という次元だ。
これは「AIに詳しいかどうか」という話じゃない。「自分の仕事をどこまで言語化・設計できるか」という話だ。AIをうまく使える人は、自分の業務フローを言語化できている人だ。「なんとなくやっている」仕事はAIに渡せない。「こういう条件でこういう判断をする」と言語化できている仕事はAIに渡せる。
この言語化能力は、マーケターが元々持っているスキルだ。
コンシューマーインサイトを言語化する、ターゲットの行動を言語化する、施策の要件を言語化する。これらはマーケターが日常的にやっていることだ。その力を、AI活用に転用する。そういう時代になってきていると感じる。
ぼくが実際に感じた一番の変化
数字や効率化の話ばかり書いてきたけれど、Claude Codeを使い始めて一番変わったのは「発想の範囲」だと思っている。
以前のぼくは、「これをやりたいけどエンジニアに頼むほどじゃないな」という諦めが多かった。小さなアイデアを試したくても、実装のコストを考えると手が止まる。
でも今は、「試してみよう」と思ったら数時間で動くものができる。小さな仮説検証のコストが劇的に下がった。
Threadsのバズ投稿を分析するエージェントも、最初は「そんなのできたら面白いな」という軽いアイデアだった。以前なら「まあいいか」で終わっていたかもしれない。でも今は、そのアイデアを言語化してClaude Codeに伝えるだけで実装まで進む。
マーケターにとって「試せる環境」は武器だ。仮説を立てて、素早く試して、結果を見て、改善する。この回転速度が上がったことが、一番大きな変化だと感じている。
これからClaude Codeを使ってみたい人へ
「興味はあるけど、どこから始めればいいか」という人に向けて、ぼくが最初にやったことを書いておく。
まず、Claude.aiのProプランに加入する(月額約3,000円)。次に、MacならターミナルでClaude Codeをインストールする(公式サイトにコマンドが書いてある。コピペで動く)。そして、「自分が毎週30分以上手作業でやっていること」を一つ選んで、それを自動化するスクリプトを作ってもらうところから始める。
最初から複雑なことをしようとしないことがポイントだ。「記事をnotionからWordPressに自動転記したい」「毎週のレポートをスプレッドシートから自動生成したい」「特定のKPIが閾値を下回ったらSlackに通知したい」——こういうシンプルな課題から始めると、達成感を得やすい。
一つ動くものができると、「次は何を自動化しようか」と考え始める。その繰り返しで、気づいたときには自分の仕事の仕組みがかなり変わっている。
ぼくがそうだったように。
コードが書けないマーケターでも、「何を作りたいか」を言語化する力があれば、Claude Codeは使える。それがわかったのが、この数ヶ月で一番大きな発見だった。