夜、布団に入っても頭が静かにならない夜がある。
「あの会議、あの一言で大丈夫だったか」「あのメール、言い方が悪かったかもしれない」「来月の案件、本当にうまく回るか」──誰かに話しているわけでもないのに、頭の中だけが喋り続けている。
思考を整理したくて、ジャーナリングを試みたことが何度かある。でも続かなかった。それが変わったのは、iFLYTEK AINOTE 2というデバイスを手にしてからだ。
ジャーナリングとは何か
ジャーナリングとは、思考や感情をそのまま書き出す習慣のこと。
日記に似ているが、目的が違う。日記が「出来事の記録」なら、ジャーナリングは「頭の中の整理」だ。うまく書こうとしなくていい。誰かに見せるものでもない。ただ、頭の中にあるものを外に出す。それだけでいい。
心理学的には「感情の言語化」がストレス軽減に効くとされている。頭の中でぐるぐる回っている不安や懸念も、言葉にして紙の上に置いてしまうと、少し距離が生まれる。そうすると不思議と、落ち着く。テキサス大学の心理学者ジェームズ・ペネベーカーの研究では、感情的な出来事について書き続けた人は、免疫機能が向上し、医療機関の受診回数が減ったという結果が出ている。
マーケターとして考えると、ジャーナリングは「観察→言語化→気づき」のループを自分の内側に向ける作業だと思っている。外の現象を分析するのと同じ構造で、自分の思考や感情を解析している感覚だ。
続かなかった時期──ちょっといいノートを買っては挫折した
最初にジャーナリングを意識して始めたのは、独立してすぐの頃だった。会社という構造がなくなって、自分で考えて動くしかない状況になったとき、頭の整理が追いつかなくなった。
書店でちょっといい手帳型のノートを買った。革のカバーがついていて、見た目は気に入っていた。最初の1週間は書けた。でも2週間目から義務感が出てきた。「今日も書かないといけない」という感覚。書けなかった日は罪悪感が残った。
きれいなノートだからこそ、きれいに書こうとしてしまう。乱雑な思考をそのまま書くのに、少し抵抗が生まれる。そして次第に、ノートを開かなくなった。
アプリも試した。スマートフォンのメモアプリ、専用のジャーナリングアプリ。でも画面を開くと通知が目に入る。SNSを少し見てしまう。気づいたら書くつもりが全然関係ないことに時間を使っていた。
「ジャーナリングが続く人は意志が強いんだろう」とどこかで諦めかけていた。
AINOTE 2との出会い
iFLYTEK AINOTE 2を買ったのは、電子ペーパーを探していたのがきっかけだった。iPadを使っていたが、夜に使うと目が疲れる問題があって、e-inkディスプレイのタブレットを探していた。
AINOTE 2はe-inkにもかかわらず、Android OSで動いている。つまりKindleアプリをインストールできる。電子書籍リーダーとして使えて、なおかつ手書きのメモやノートも書ける。
スペックを見たとき「これでジャーナリングもできるかもしれない」とは思っていなかった。でも使い始めてから3ヶ月、気づいたら毎晩書くようになっていた。
特に驚いたのが書き心地だ。e-inkのディスプレイにペンで書くと、本物の紙に近い摩擦感がある。iPad + Apple Pencilよりも手の動きに素直についてくる感覚で、「書いている」という感触がちゃんとある。スラスラと、考えながら手を動かせる。これがジャーナリングに向いていた。タイピングでは出てこない思考が、手書きだと出てくることがある。手を動かすことで、脳の別の回路が働く気がする。
なぜ続いたのか──3つの理由

① e-inkだから、夜でも目が疲れない
スマートフォンやタブレットのディスプレイは光を発している。夜に見ると、脳が「昼間だ」と勘違いして覚醒してしまう。睡眠の質が下がる原因のひとつだ。
e-inkは光を発しない。紙に印刷された文字を見ているのと同じ原理で、目への負担がほとんどない。だから夜、布団に入る前に使っても、眠れなくなることがない。むしろ、手を動かして書いているうちに頭が落ち着いて、自然と眠くなる。
「夜に書こう」という選択肢が生まれたのは、これが大きかった。
② 薄くて軽いから、どこにでもある
習慣化の研究でよく言われることがある。「始めるための摩擦を減らすと、習慣が続く」。
AINOTE 2は薄い。鞄に入れておいても存在を忘れるくらい軽い。カフェでも、出張先のホテルでも、ソファの上でも、手の届くところに常にある。「書こうかな」と思ったとき、すぐ手に取れる。
ノートとペンのセットより、起動の手間がない分だけ始めやすい。ペンを探す、ノートのどのページを開く、という小さな手間すら、習慣の敵になる。
③ 読書のついでに書く習慣ができた
これが一番大きかった。
Android OSなのでKindleが使える。寝る前に本を読む習慣は以前からあった。AINOTE 2を導入してからは、本を読んで、気になった一節やそこから広がった自分の考えをそのままメモするようになった。
「ジャーナリングをしよう」と意気込むのではなく、「本を読む→面白いことを思ったら書く」という流れが自然と生まれた。
習慣化の世界では「ハビットスタッキング」という概念がある。すでに習慣になっていること(読書)に、新しい習慣(ジャーナリング)を乗っかせる方法だ。「本を読み終わったら書く」というトリガーができたことで、ジャーナリングが「特別なこと」ではなくなった。
朝と夜、どちらに書くといいか
ジャーナリングを始める人がよく迷うのが、朝に書くべきか夜に書くべきかだ。結論から言うと、どちらでもいい。ただ、目的によって向いている時間帯が違う。
朝のジャーナリングは「今日の自分を整える」のに向いている。起きてすぐ、頭がまだクリアな状態で書く。昨日の残像が残っていたら書き出して捨てる。今日やることを一つだけ決める。朝の5〜10分で、その日の軸が定まる感覚がある。ぼくも一時期、朝のコーヒーを淹れる前に書く習慣を試した。頭が整って一日を始められるのは良かったが、朝は時間の余裕がないと続かないとも感じた。
夜のジャーナリングは「今日の自分を閉じる」のに向いている。一日の出来事を振り返り、感情を整理してから眠る。頭の中に残った「未完了感」を紙に置いてくることで、睡眠の質が上がる。ぼくはこちらが合っていた。
朝型か夜型かだけでなく、「続けやすい方」を選ぶのが一番だ。どちらにしても、既存の習慣の前後に置くことが鍵になる。
おすすめのジャーナリング方法5選
ひとくちにジャーナリングといっても、目的によって向いているやり方が違う。ぼくが試してよかったものと、知人から勧められて参考になったものを紹介する。
① フリーライティング(モーニングページ)
ジュリア・キャメロンの著書『ずっとやりたかったことを、やりなさい。』で提唱された方法。毎朝、思考を検閲せずにA4用紙3枚分書き続けるというシンプルなルール。
「書くことがない」と思っても手を止めない。「書くことがない」と書いてもいい。そのうち本当に思っていることが出てくる。創造性の解放と、脳内のノイズ除去に効果があるとされている。
向いている人:頭の中がいつもごちゃごちゃしている、アイデアが出にくいと感じる人
時間:朝20〜30分
② 感謝日記(グラティチュード・ジャーナル)
その日あった「良かったこと」「感謝できること」を3〜5つ書く。シンプルだが、ポジティブ心理学の観点では効果が実証されている方法のひとつ。
「今日も普通の1日だった」と感じる日でも、書こうとすると発見がある。コーヒーが美味しかった、エレベーターのドアを誰かが押さえてくれた。見落としていた小さな出来事に気づくようになる。
向いている人:ネガティブ思考が強い、気分が落ちやすいと感じる人
時間:夜5〜10分
③ 3つの質問ジャーナリング
毎日同じ質問に答えることで、自己理解が深まる方法。ぼくが参考にしている3つはこれ。
- 今日、何に一番エネルギーを使ったか?
- 今、何が気になっているか(不安・楽しみ・引っかかり)?
- 明日、一つだけやるとしたら何か?
質問が決まっていると、「何を書こう」と悩まずに書き始められる。特に忙しくて頭が回っていない日に向いている。
向いている人:フリーライティングが苦手、テーマがないと書けない人
時間:夜10〜15分
④ 意思決定ジャーナリング
何かを迷っているとき、決断を下す前に書き出す方法。ぼくが独立を決めたときに使っていた。
まず「迷っていること」を一言で書く。次に「なぜ迷っているのか」を書く。そして「最悪の場合どうなるか」「理想的にはどうなりたいか」を書く。最後に「直感ではどうしたいか」を正直に書く。
頭の中だけで考えていると、感情と論理が混在してぐるぐるする。書き出すことで、それぞれを分けて見ることができる。多くの場合、書き終えた時点で答えは出ている。
向いている人:転職・独立・大きな買い物など、重要な意思決定を抱えている人
時間:必要なときに20〜30分
⑤ 読書後ジャーナリング(ぼくの方法)
AINOTE 2でやっているのがこれ。本を読み終えた後(または読んでいる途中)に、気になった箇所と自分の感想・連想を書く。
「この一節が面白かった。なぜなら自分も〇〇と感じているから。それで言うと、自分の今の状況は〜」という形で、本のテキストを起点に自分の思考を広げていく。
読書メモと日記の中間のような感覚。本を読む習慣がある人は特に取り入れやすい。また、本の内容が自分の思考と結びつくので記憶に残りやすくなる副次効果もある。
向いている人:読書習慣がある人、「本を読んでも身につかない」と感じている人
時間:読書後10〜15分
何が変わったか
3ヶ月続けてみて、変化を感じていることがある。
意思決定が速くなった。書いているうちに「自分はどうしたいのか」が見えてくる瞬間がある。頭の中だけで考えているとぐるぐるするのに、言葉にして外に出すと整理される。特に、どちらを選ぶか迷っているときに「なぜ迷っているのか」を書き出すと、選択肢が見えてくる。
翌朝のコンディションが変わった。夜に頭のなかを一度空にしてから寝ると、起きたときに前日の雑念を引きずっていない感覚がある。「今日やること」が朝から明確になっている。
発信のネタが増えた。書いたものを見返すと、Threadsの投稿やブログのネタになりそうな気づきが埋まっていることがある。日常の観察や感情の動きを言語化しておくと、後で使える素材になる。ジャーナリングはアウトプットの畑を耕す作業でもある。
自分の傾向がわかってきた。数週間分を読み返すと、「ぼくはこういうときにエネルギーが下がるんだ」「この種の仕事が好きなんだ」という自分のパターンが見えてくる。自己分析ツールよりも正直な自分像がそこにある。
ジャーナリングを続けるためのコツ
挫折を繰り返してきたからこそ、続けられるようになった理由が少しわかる。
完璧に書こうとしない。文章でなくてもいい。箇条書きでも、単語の羅列でも、図でもいい。ジャーナリングは作文の練習ではない。頭の中のものを外に出す行為が目的なので、体裁は関係ない。
毎日じゃなくていい。「毎日書かないといけない」と思った瞬間、義務になる。書きたいときに書く。書けない日があっても罪悪感を持たない。「書ける環境がある」ことが大事で、「毎日書くこと」はその先の話だ。
場所と道具を固定する。「このベッドに入ったらAINOTE 2を開く」という場所の紐付けを作ると、脳が自動的にジャーナリングモードに入りやすくなる。習慣は、意志ではなくトリガーで動く。
読み返すことに縛られない。書いたものを見返す必要はない。書くこと自体に価値がある。見返すのは気が向いたときだけでいい。日記と違って、記録が目的ではないから。
既存の習慣に乗っかる。ぼくの場合は読書後だった。人によっては「コーヒーを飲みながら」「歯を磨いた後に」「通勤電車の中で」でもいい。単独で新しい習慣を作るのは難しい。すでにある習慣の後ろにくっつける方が圧倒的に続く。
「書けた」を小さく定義する。1行でも書ければ「今日は書けた」でいい。最初のうちは「1文書いたらOK」くらいのハードルで始める方が長続きする。ハードルが低いほど、始める障壁がなくなる。習慣は量よりも頻度の方が先に育つ。
ぼくのジャーナリングのやり方
特にルールは決めていない。でもなんとなく続いていること。
- 夜、Kindleで本を読んだ後に書く(10〜15分)
- その日に気になったこと、引っかかったことを書く。良いことも悪いことも
- うまく書こうとしない。箇条書きでもいい。文章でなくていい
- 読み返さない日もある。書くこと自体が目的で、記録が目的ではない
- 週に一度だけ、その週に書いたものをざっと流し読みして「傾向」を見る
「今日何があったか」より「今日何を感じたか」「何が気になったか」の方が書きやすい。
義務感が出てきたら休む。続けることよりも、「書きたいときに書ける環境がある」ことの方が大切だと思っている。
ジャーナリングに関するよくある質問
Q. ジャーナリングと日記の違いは何ですか?
日記が「何があったか」を記録するものなら、ジャーナリングは「何を感じ、何を考えたか」を外に出すものです。読み返すためではなく、書くプロセス自体に意味があります。完成度より正直さを優先してください。
Q. どのくらいの量を書けばいいですか?
量に決まりはありません。1行でも「今日は頭が重い」だけでも構いません。むしろ「たくさん書かないといけない」と思うと続かなくなる。最初は3行を目標にするくらいがちょうどいいです。
Q. 書いた内容を見られたくないのですが。
AINOTE 2はデバイス単体で使えるため、クラウド同期をオフにすれば外部に漏れる心配がありません。誰にも見せないことを前提にしているからこそ、本音が書けます。それがジャーナリングの価値です。
道具が習慣を作ることがある
「続かないのは意志が弱いからだ」と思っていた時期があった。でもそれは違った。
道具が合っていなかっただけだった。ちょっといい手帳は「きれいに使わないといけない」という心理的プレッシャーを生んだ。スマートフォンは通知という誘惑を連れてきた。
iFLYTEK AINOTE 2は、書くことだけに集中できる環境を作ってくれた。Kindleという既存の習慣と組み合わさったことで、「ジャーナリングをしよう」という意気込みすら不要になった。
習慣化に悩んでいる人は、意志の問題じゃなくて環境の問題かもしれない。道具を変えると、行動が変わることがある。
頭の中がうるさい夜が続いているなら、まず「書けそうな道具」を一つ手に取ってみてほしい。続くかどうかは、やってみてから決めればいい。