博報堂に入って最初に叩き込まれたのは、「コピーはセンスじゃない」ということだった。
コピーライティングを「才能のある人が書くもの」と思っている人は多い。確かに、一流のコピーライターには言葉の感性がある。でも、売れる文章には必ず「構造」がある。構造を知れば、センスがなくても機能する文章が書ける。
ぼくは約20年、広告のコピーを書いてきた。コンサルでも、デジタルマーケティングの文脈でコピーライティングをさらに体系化して学んだ。今は独立して、クライアントのLPやWebサイト、プレゼン資料のコピーを書いている。
この記事では、ぼくが実務で使い続けているコピーライティングのフレームワークと、それを使った実例を紹介する。「文章でもっと人を動かしたい」と思っているマーケター、フリーランス、副業をしている人に読んでほしい。
売れる文章の正体
コピーライティングとは何かを一言で言うと、「読んだ人が行動する文章を書くこと」だ。
広告のコピーなら購買。LPなら申し込み。メールなら返信。どんな媒体でも、コピーライティングの目的は「読者に何かをさせること」に尽きる。
逆に言うと、どれだけ美しい文章でも、読んだ人が動かなければコピーライティングとして失敗している。
では、人が動く文章と動かない文章の違いはどこにあるか。ひとつの答えは「読者の頭の中に景色を作れているかどうか」だ。博報堂時代、上司に何度も言われた言葉がある。「お前の文章は情報を並べているだけで、景色がない」と。
景色を作る文章は、読んだ人が「あ、これ自分のことだ」「この商品を使ったら自分の生活がこう変わる」と具体的に想像できる。情報を並べた文章では、それが起きない。
フレームワークを学ぶ目的は、景色を作るための「型」を手に入れることだ。
フレームワーク①:AIDMA(アイドマ)
コピーライティングの基本中の基本。消費者が購買に至るまでの心理プロセスを5段階で表している。古くから活用されているもので、既に今の時代には合っていないという意見も多いが、コピーライティングに関して言えば、このプロセスを軸に考えるのが最も理にかなっていると思う。
- A(Attention):注意を引く
- I(Interest):興味を持たせる
- D(Desire):欲しいと思わせる
- M(Memory):記憶に残す
- A(Action):行動させる
AIDMAで最も重要なのは最初のA、注意を引く部分だ。読まれなければ何も始まらない。ここで機能するのが「見出し」と「冒頭の一文」だ。
博報堂でコピーを書いていたとき、ひとつの広告に対して見出し案を100本書くことがよくあった。100本書いて、最終的に使うのは1本。それくらい、見出しは重要だということだ。
Attentionを取るための見出しの型をいくつか紹介する。
- 数字を入れる:「3ヶ月で月収50万円になった方法」
- 読者の悩みをそのまま言う:「なぜあなたのLPは読まれないのか」
- 意外性・逆説:「頑張るほど成果が出ない理由」
- 疑問形:「コピーライティングで稼げる人と稼げない人の差は何か?」
- 限定性・緊急性:「今月末で終了する、独立支援プログラム」
フレームワーク②:PASONA(パソナ)
PASONAは日本のマーケター・神田昌典氏が提唱した、LPやセールスレターに最適なフレームワークだ。
- P(Problem):読者の問題を提示する
- A(Agitation):問題を煽り、危機感を持たせる
- SO(Solution):解決策を提示する
- N(Narrowing):対象を絞り込む
- A(Action):行動を促す
PASONAの肝はAgitation(煽り)だ。読者が「まあ、今すぐじゃなくてもいいか」と思っているうちは、行動しない。「このまま放置すると、あなたにとって何が失われるか」を具体的に見せることで、今すぐ動く理由を作る。
例えば、フリーランス向けの会計ソフトのLPでこう書くとする。
(Problem)確定申告の時期が近づくたびに、領収書の山と格闘していないか。
(Agitation)青色申告65万円控除を逃すと、年間15万円以上の税金を余分に払い続けることになる。しかも、その機会損失は毎年積み重なる。
(Solution)freeeを使えば、毎月30分の帳簿付けで青色申告が完成する。
(Narrowing)特に、独立1〜3年目で会計の知識がないフリーランスに向けて作られている。
(Action)今なら30日間無料で試せる。
Problemで共感し、Agitationで危機感を作り、Solutionで希望を見せる。この流れが人を動かす。
フレームワーク③:PREP法
ビジネス文書やブログ記事の本文を書くときに使いやすいフレームワークだ。
- P(Point):結論を先に言う
- R(Reason):理由を説明する
- E(Example):具体例を出す
- P(Point):結論を繰り返す
日本人は結論を後に持ってきがちだが、読者は最初の数秒で「読む価値があるか」を判断する。結論を先に書くことで、「続きを読む理由」を最初に与えられる。
このブログ記事も、セクションごとにPREP構造を使っている。「フレームワーク①はAIDMAだ(Point)→なぜなら〜(Reason)→例えば〜(Example)→だからAIDMAを使う(Point)」という流れになっている。
フレームワーク④:FAB(フィーチャー・アドバンテージ・ベネフィット)
コピーライティングで最もよくある失敗は、「フィーチャー(機能・特徴)ばかり書いてベネフィット(読者への利益)を書かないこと」だ。
- Feature(特徴):商品・サービスの機能・性質
- Advantage(優位性):他と比べて何がいいか
- Benefit(利益):読者の生活・仕事がどう変わるか
例えば、こんな比較を見てほしい。
| Feature(特徴) | Benefit(利益) |
|---|---|
| 銀行1,043社と連携 | 毎日の帳簿入力がほぼゼロになる |
| AI-OCRでレシートを自動読取 | 打ち合わせの帰り道1分で経費登録が終わる |
| 青色申告に対応 | 年間15万円以上の節税が、知識ゼロでできる |
左の「Feature」を読んでも、読者は「それで自分にどんないいことがあるの?」と思う。右の「Benefit」は、読者の生活の変化を具体的に見せている。
コピーを書くときは、必ず「この特徴は、読者にとって何を意味するか」を考える習慣をつける。Featureを書いたら、必ず「つまり、あなたは○○できる」というBenefitに変換する。
数字と固有名詞の力
「具体性」はコピーライティングにおいて最も強力な武器のひとつだ。
抽象的な表現と具体的な表現を比べてみる。
- 「多くの人が使っています」→「62万事業所が導入済み」
- 「短時間で終わります」→「月平均30分で帳簿付けが完了」
- 「節税できます」→「年間15万円以上の節税になることが多い」
- 「著名企業も使っています」→「博報堂・電通・リクルートの社員が個人利用」
数字を入れると、文章の信頼性が上がり、読者の頭の中に具体的な景色が生まれる。「多くの人」では誰も「すごい」と思わないが、「62万事業所」と言われると「そんなに使われているのか」と感じる。
固有名詞も同様だ。「大手企業のクライアントがいます」より「博報堂・NTTドコモ・資生堂のプロジェクトを担当した」の方が圧倒的に説得力がある。固有名詞は、読者の脳内で「実在する景色」を作る。
社会的証明の使い方
人は、他の人が選んでいるものを安心して選ぶ。これを「社会的証明」と呼ぶ。コピーに組み込むことで、読者の不安を取り除き、行動への障壁を下げられる。
社会的証明には主に4種類ある。
① 数字による証明
「累計10万部突破」「登録者15万人」「導入企業2,000社以上」。数が多いほど、「みんなが選んでいる=間違いない」という心理が働く。
② 権威による証明
「元博報堂コピーライター監修」「税理士推薦」「Forbes Japan掲載」。専門家や権威ある媒体からのお墨付きは信頼性を高める。
③ ユーザーの声(レビュー・推薦文)
実際に使った人の声は、企業が書くコピーより信頼されやすい。具体的な変化(「3ヶ月で月収が1.5倍になった」)が入っているほど効果が高い。
④ 著名人・インフルエンサーの推薦
読者が知っている人が使っている・おすすめしているという事実は、購買判断に大きく影響する。
ぼくが博報堂で担当したキャンペーンで、社会的証明を適切に使うことで問い合わせ率が2.3倍になったケースがある。コピー本文より、「お客様の声」のセクションを見て申し込んだ人が最も多かった。
見出しだけで勝負が決まる
WEBのコピーライティングでは、「見出しだけ読む人」が大半だ。本文を全部読む人は少ない。
だからこそ、見出しだけ読んでも内容が伝わる構成にする必要がある。見出しをすべて縦に並べて読んだとき、記事の要旨がわかるかどうかを確認する。これは、ぼくが記事を書くたびにやっているチェックだ。
効果的な見出しの条件を整理する。
- 読者の便益が入っている(「〜する方法」「〜でできること」)
- 具体的な数字が入っている(「3つの方法」「15選」「年間15万円」)
- 読者の感情に触れている(「なぜ〜なのか」「〜で失敗する理由」)
- 15〜30字程度に収まっている(長すぎると読まれない)
見出しの改善だけで、記事の滞在時間と直帰率が大きく変わる。本文を書く前に、見出しの構成を先に決めることをすすめる。
CTAを機能させる書き方
CTA(Call To Action)とは、読者に次の行動を促す文章のことだ。「お申し込みはこちら」「今すぐ無料で試す」などのボタンテキストや、それに付随する文章が該当する。
CTAで最もよくある失敗は「弱いCTA」だ。「詳細はこちら」だけでは弱い。何が得られるかが明確ではないからだ。
強いCTAの条件は3つある。
① 行動の先の利益を明示する
「申し込む」より「30日間無料で使い始める」の方が強い。行動した結果、何が手に入るかを書く。
② 障壁を取り除く
「クレジットカード不要」「解約はいつでも可能」「5分で登録完了」など、行動を躊躇わせる不安を先回りして解消する。
③ 緊急性・希少性を加える
「今なら初月無料」「残り3席」「〇月末まで」などの限定要素は、今すぐ動く理由を作る。ただし、嘘の緊急性は逆効果になるため、実態に即した範囲で使う。
景色を作るコピーの書き方
最後に、ぼくがコピーを書くときに最も意識していることを話す。
「読者の頭の中に景色を作ること」だ。
景色を作るとは、読者が文章を読みながら、自分の生活の変化を具体的に想像できる状態を作ることだ。
例えば、こんな2つの文章を比べてみる。
景色のない文章:
「この会計ソフトを使えば、確定申告が楽になります」
景色のある文章:
「毎朝のコーヒーを飲みながら、昨日の取引をスマホで確認する。銀行口座の明細は自動で同期されていて、ぼくがやることは『これ、交通費でOK』とタップするだけ。確定申告の3月が来ても、もう領収書の山に苦しまない。」
景色のある文章は、「コーヒー」「スマホ」「タップ」という具体的な動作を通じて、読者が使っているシーンを想像できる。抽象的な「楽になる」ではなく、「何がどう変わるか」を映像として見せている。
景色を作るためのコツは3つだ。
- 登場人物を一人に絞る:「多くのユーザーが〜」より「独立2年目のマーケターが〜」の方が景色が生まれる
- 時間軸を入れる:「毎朝」「確定申告の3月が来ても」など、いつの話かを明示する
- 五感に訴える言葉を使う:「タップする」「コーヒーを飲みながら」など、身体感覚を伴う表現を入れる
実践:フレームワークを組み合わせて書く
ここまで紹介したフレームワークは、単独で使うより組み合わせた方が効果が高い。
例として、フリーランス向けコピーライティング講座のLPの冒頭を書いてみる。
【見出し(Attention)】
文章ひとつで、案件の受注率が3倍になった理由【冒頭(Problem)】
提案書を送っても返事が来ない。SNSで発信しても反応がない。仕事の質に自信はある。でも、言葉にすると伝わらない。【Agitation】
コピーライティングを学ばないまま副業・フリーランスを続けると、どれだけ良い仕事をしても「見つけてもらえない」状態が続く。価格競争に巻き込まれ、単価を上げられないまま消耗する。【Solution+Benefit】
このプログラムでは、博報堂・アクセンチュアで培ったコピーライティングの構造を、実践課題を通じて習得できる。受講後3ヶ月以内に、案件単価が1.5倍以上になった受講生が73%。【CTA】
まず、7日間の無料メール講座を試してみてほしい。クレジットカード不要、解除はいつでも可能。
AIDMAのAttention→Interest→Desire、PASONAのP→A→SO→A、FABのBenefit提示、社会的証明(73%)、CTAの障壁除去──これらが一つのLP冒頭に組み込まれている。
コピーライティングを磨く3つの習慣
フレームワークを知っても、使いこなすには練習が必要だ。ぼくが博報堂時代から続けている3つの習慣を紹介する。
① 良いコピーを書き写す
「写経」と呼ばれる練習だ。自分が「これは刺さる」と感じた広告・LP・記事のコピーを、手書きまたはタイプして書き写す。書き写すことで、なぜそのコピーが機能しているかが身体で理解できるようになる。
ぼくは広告を見るとき、「なぜこの言葉を選んだか」「どのフレームワークが使われているか」を考える癖がついている。街の中の広告、ネットのバナー、メールの件名──すべてがコピーライティングの教材になる。
② 書いたコピーを声に出して読む
声に出して読むと、「引っかかる部分」がすぐわかる。言葉が硬い、リズムが悪い、長すぎる──これらは黙読では気づきにくいが、音読すると一発でわかる。
③ A/Bテストを繰り返す
「どちらの見出しの方がクリックされるか」「どちらのCTAの方がコンバージョンが高いか」を実際のデータで確認する。感覚だけに頼らず、数字で検証する習慣がコピーライターとしてのレベルを上げる。
まとめ
売れる文章には構造がある。センスより先に、構造を知ること。
- AIDMA:注意→興味→欲求→記憶→行動の流れを設計する
- PASONA:問題→煽り→解決→絞り込み→行動で読者を動かす
- PREP法:結論を先に書き、理由・例・結論の順で展開する
- FAB:特徴ではなく、読者への利益(Benefit)を書く
- 数字と固有名詞:具体性が信頼と景色を生む
- 社会的証明:他の人が選んでいるという事実が不安を取り除く
- CTA:行動の先の利益を明示し、障壁を取り除く
- 景色を作る:読者の生活の変化を具体的に想像させる
コピーライティングは、マーケターが持つべき最もコスパの高いスキルのひとつだ。一度習得すれば、LP・SNS・提案書・メール・どんな媒体でも使える。言葉で人を動かす力は、フリーランスとして独立してからも、副業をしている間も、ずっと武器になる。